【イベントレポート】専門知識を武器に、カオスへ飛び込むCxOの覚悟 第2期 Next-CFO ― 第9回講義の内容を大公開!
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イベント概要 – Next-CFO
| イベントプログラム | 第2期 Next-CFO 第9回 |
| 開催日 | 2026年2月9日 14:00-17:00 |
| 開催場所 | CPASS LOUNGE(シーパスラウンジ) 〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目14−20 新宿テアトルビル 6F |
| 概要 | 次世代のCFOを目指す方に、CFOとして必要なマインドセットと、マネジメントの経験を提供すべく、最前線で活躍している豪華20名のゲストから彼らの知見とノウハウを学べる場を提供します。それが『Next-CFO』です。全10回開催 |
| 講師 | 羽原 康平 様(株式会社GENDA 常務取締役CSO/公認会計士) 斎藤 祐馬 様(デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 代表取締役社長/公認会計士) |
会計・財務の専門性と、カオスへ飛び込む勇気や好奇心。この両輪が揃って初めて、経営の当事者として組織を動かす力が宿る。
経営の中枢を担うプロフェッショナルの思考を学ぶプログラム「Next CFO」の第9回では、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社(以下、DTVS)代表取締役社長の斎藤祐馬氏と、株式会社GENDA(以下、GENDA)常務取締役CSOの羽原康平氏が登壇した 。
監査法人からキャリアを始めながら、斎藤氏は巨大ファーム内での新規事業立ち上げへ、羽原氏は創業期のスタートアップへ。似て非なる道を歩んできた二人のロールモデルから、モデレーターを務めた国見健介が組織を牽引するための知見を引き出した。

【登壇者プロフィール(写真右から順番に)】
羽原 康平 株式会社GENDA 常務取締役CSO/公認会計士
大学在学中に公認会計士試験に合格。有限責任あずさ監査法人、PwCアドバイザリー合同会社を経て、2019年9月に株式会社GENDAに参画。執行役員経営企画部長として2023年の東証グロース市場への上場を牽引し、現在は常務取締役CSOとしてM&A戦略を主導。累計60件以上のM&Aを牽引するなど、同社が時価総額2300億円規模へと急成長を遂げる過程で経営の屋台骨を支え続けた。
斎藤 祐馬 デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 代表取締役社長/公認会計士
2006年、監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入社 。2010年にDTVSの立ち上げに参画し、27歳で代表に就任 。起業家支援イベント「Morning Pitch」の発起人として知られ、現在は官民両面から日本のスタートアップエコシステムの構築を牽引する 。経団連や経済同友会の要職を歴任し、次世代の産業育成に尽力している 。
国見健介 CPAエクセレントパートナーズ株式会社 代表取締役/公認会計士
1999年、大学在学中に公認会計士試験に合格。監査法人を経て、2001年9月にCPAエクセレントパートナーズ株式会社を設立。公認会計士試験の専門校「CPA会計学院」を日本トップクラスの合格実績へと成長させる。現在は「会計ファイナンス人材に貢献するインフラ企業になる」をビジョンに、人材紹介やコミュニティ運営など多角的な支援を展開している。
ベンチャー支援を事業に。ゼロイチを突破した情熱と組織内での生存戦略
まずマイクを握ったのは、DTVSを率い、日本のスタートアップ・エコシステム構築の第一人者として知られる斎藤祐馬氏だ。このエコシステムとは、スタートアップを核に大企業や行政、金融機関が連携し、新しい産業が次々と生まれ、自律的に育っていく仕組みを指す。
斎藤氏がこの道を志したのは15歳の時。事業を興した父が、周囲に頼れる支援者がいない中で孤軍奮闘する姿を間近で見たことが、ベンチャー支援の必要性を痛感するきっかけとなった。監査法人トーマツに入所後、2010年よりDTVSの立ち上げに参画したが、当時はライブドア・ショックやリーマン・ショックの爪痕が深く、大企業には「ベンチャーアレルギー」のような空気が漂っていたという 。
「当時は大手企業の多くが『ベンチャーは危ない』という拒否反応を示していたんです 。しかし、日本の産業全体を見渡したとき、古い会社だけが生き残っている状況に私は危機感を抱いていました。アメリカや中国のように、スタートアップや大企業の新規事業が次々と経済の新陳代謝を起こす社会にしなければ、日本に未来はない。そう確信していました 」
独立して起業する道もあった中で、あえてデロイトという巨大組織の中での事業化を選んだ背景には、社会を動かすためにその看板やリソースが必要だという合理的な判断があった
「ベンチャーを支援する上で、専門的な知見を提供するアドバイザーの役割に留まるのではなく、社会のメインストリームである大手企業や政府、官公庁を動かせる立場にならなければ、この分野は伸びていかないという直感がありました 。デロイトという巨大組織が持つリソースや信頼を味方につけ、官民を巻き込んだプラットフォームを創り上げる。それが結果として、最も効率的に日本のスタートアップ環境を変える近道だと考えたのです 」

[アドバイザーの枠を超え、巨大組織のリソースで社会を動かす。エコシステム構築の戦略を語る斎藤氏(写真左)]
斎藤氏の挑戦は、公認会計士として監査業務をこなしながら、夜間や休日を使って個人的にベンチャー企業を回って支援先を開拓する活動から始まった 。デロイト内で未稼働だった子会社を母体として新組織の立ち上げを担い、自ら経理や登記までをこなす過酷な二足のわらじ生活を送りながら、十数年かけて今の300人体制の組織へと磨き上げてきたのだ。
「組織の中で新しいことをやるコツは、嫌われないことです(笑)。直属の上司の言うことは素直に聞く。一方で、さらに上の役員たちには徹底的に自分の意見をぶつけ、巻き込んでいく 。2014年に大型の投資予算を獲得した際は、20名以上の役員全員を2周、3周と回り、120回以上も事業計画を修正しました。一人ひとりに『あなたのアドバイスでこう変えました』と伝え、組織全体を味方につける。やり抜けば何かしら動くのだと確信しました 」
モデレーターの国見は、斎藤氏がDTVSの立ち上げに着手した初期、まだ社内でも支援の形が認められていなかった頃からその活動を傍で見てきた一人だ。個人の情熱でゼロから道を切り拓いていく斎藤氏の稀有なキャリアを、次のように称賛した。
「デロイトという巨大組織のアセットやネットワークを活用し、一人の起業家では到底到達できない規模で官民を巻き込む。この戦略は理屈では理解できても、実際に形にするのは困難です。当時、監査業務をこなしながらベンチャーの現場を回り続けていた斎藤さんの覚悟は、他の会計士にはない唯一無二のものでした」
監査10ヶ月からの転身――M&Aを成長エンジンに変えた「専門性に固執しない」覚悟
一方、羽原康平氏は、斎藤氏とは対照的に、組織を飛び出すことで自らのキャリアを築き上げてきた 。神戸大学在学中に公認会計士試験に合格し、あずさ監査法人に入所したものの、わずか10ヶ月でPwCアドバイザリーへと転身 。そこから約2年半後、当時従業員10名ほどだったGENDAに参画するという早いテンポでキャリアをピボットさせている 。
その決断の根底にあったのは、監査という職務に関わることへの違和感であった。
「大学在学中に試験に合格し、学生非常勤として監査法人の現場の門を叩きました。繁忙期の洗礼を受ける中で、当時21歳の私が国内有数の家電メーカーの監査チームに配属され、実務の一部を担当することになったんです。そこで抱いたのが、ビジネスの執行を一度も経験していない自分が、日本経済を支える巨大企業の監査という重責の一部を担うことへのへの違和感でした。まずは自らビジネスの当事者として執行の経験を積んでこそ、将来的に専門家として見える景色があるのではないか。その思いが、キャリアを事業側へと移す動機となりました」

[未来に見える世界を変えるため、あえてビジネスの執行側で生きる道を選んだ羽原氏]
GENDA参画後は、経理部長としてIPO準備を担うかたわら、コロナ禍を機に大型M&Aを主導。当時の同社は年商数億円規模。そこへ年商400億円、従業員3,000名のセガ子会社を買収するという、自社の経営規模を数十倍も上回るディールを牽引する。そして現在までに60件以上ものM&Aを完遂し、同社を時価総額2,300億円規模の企業へ成長させる中核を担った 。
この驚異的な買収スピードと、グループ全体の成長を支えるエンジンとなっているのが、持株会社に集結した約160名のプロフェッショナル集団だ。特徴は人員の約70%をエンジニアなどのテクノロジー人材が占めている点にあり、彼らはグループに加わった企業のDX化やAI導入を内製で一気に推進する役割を担っている。
一方で、案件検討(プレM&A)を担うのは、わずか5名の専属チームだ。財務・法務DDは外部へ委託しつつ、投資判断の要となるビジネスDDやPMI設計を内製化。株式取得から3ヶ月での合併を目指す「鉄は熱いうちに打て」の思想のもと、グループが展開する7つの事業領域を横断し、矢継ぎ早にディールを成約させている。
こうした事業の成長に直結するディールを主導する羽原氏の根底には、公認会計士という専門性に安住しない覚悟がある。
「多くの会計士は、せっかく新しい場所に飛び込んでも、つい経理や会計といった自分の専門領域に固執してしまいがちな印象です 。ですが私は、予算策定や会議体の運営、現場の意思決定プロセスなど、経営の実働部分に深く入り込み、変化に適応することを最優先してきました。現在の私を支えるスキルのうち、純粋な会計士としての素養は20%程度。残りの80%は、GENDAが急成長の渦中で実務に揉まれながら獲得してきたものです」
モデレーターの国見は、羽原氏の歩みを次のように総括しました。
「監査法人に5〜7年留まって基礎を固めるという道は一般的ですが、早期に事業側へ身を置くからこそ得られる経験も確かにあります。重要なのは、専門知識を単なる過去の検証に留めず、いかに未来の事業作りに接続させるか。プロとしての客観的な視点を持ちつつ、誰よりも事業の成功に本気になれるか。その姿勢こそが、管理部門の枠を超えて経営の中枢を担うCxOの条件と言えるでしょう」

[経営のパートナーであるCxOが備えるべき資質を語る国見]
「100人の壁」と信頼残高――スケールする組織で求められるリーダーの資質
事業が急拡大するフェーズにおいて、多くの企業は壁に直面する。特に従業員が100人を超えるあたりから、創業者一人のリーダーシップだけでは組織が回らなくなり、権限移譲や組織化が急務となる。この壁を乗り越えられるリーダーと、そうでないリーダーの違いはどこにあるのか。
斎藤氏は、数多くの起業家を支援してきた経験から「優秀であっても、プライドの高さが成長の足かせになるケースは少なくありません」と指摘する。変化の激しい環境では、PDCAを高速で回す必要があり、そのためには自らの過ちを認め、他者の意見に耳を傾けるコーチャブルな姿勢、すなわち素直さが不可欠だという。
羽原氏もまた、経営陣として人材を登用する際の基準について、「他者を見下すような傲慢な態度は、組織運営において致命的です」と断言する。
多様なバックグラウンドを持つ人材が集まる事業会社では、監査法人のような同質性の高い組織で通用した「言わずもがなの理解」は期待できない。だからこそ、相手の歩んできた背景へのリスペクトを起点としたコミュニケーションが不可欠になる。
「現場がこれまで積み上げてきた手法やノウハウには、必ず何らかの意図や背景があります。まずはそこを肯定し、リスペクトする。その上で、プロフェッショナルとして客観的な視点から『こう変えた方がより良くなるのではないか』と自信を持って対話し、共に事業を創り上げていく。そのプロセスが重要だと考えています」
両氏の言葉に共通するのは、専門スキル以上に、他者とどう向き合うかという人間的な資質の重要性だ。過度な自尊心を手放し、変化を受け入れ、相手に敬意を払う。こうした誠実な姿勢の積み重ねが、結果として組織全体の成長を牽引するエンジンとなるのだ。
質疑応答:正論を越えて、組織と事業を実効的に動かす術
トークセッション後半の質疑応答では、斎藤氏と羽原氏が、理論だけでは突破できない現場のリアルを語った。
Q. 羽原さんはハイペースでM&Aを実行されていますが、成功の鍵となるPMIについて、どのような哲学をお持ちでしょうか?
羽原氏:我々は、しっかりとキャッシュフローが出ていて、オペレーションが回っている会社をM&Aすることを重視しています。そしてPMIに関して象徴的なのが、「相手がやっていたプロセスを一つは取り入れてくれ」という全社員へのお願いです。相互リスペクトを重視し、文化の融合を目指します。また、「一つのビジネスは一つの法人にまとめる」という原則のもと、同業事業はコア会社に合併させ、オペレーションを標準化します」
Q. 斎藤さんに質問です。デロイトという巨大組織の中で、前例のないベンチャー支援事業を立ち上げる際、最も大きな壁は何でしたか?
斎藤氏:やはり当初は「監査法人がなぜそんなことを?」という懐疑的な目が最大の壁でした。そこで意識したのは、反対意見を持つ人たちを無理に説得するのではなく、まずは小さくてもいいから具体的な成功事例を作ること。そして、事業側の言語で「なぜこれがデロイトにとってプラスになるのか」を粘り強く説明し続けることに力を注ぎました。
Q. 公認会計士が事業会社で活躍するために、専門知識以外で最も重要だと考えるスキルやマインドセットは何でしょうか?
羽原氏:「アンラーニング(学びほぐし)」の力だと思います。監査法人で培った「べき論」や完璧主義は、スピード感が求められる事業の現場では足かせになることもあります。過去の成功体験や専門性に固執せず、現場の状況に合わせて柔軟に考え方を変えられるかどうかが、成長の分かれ目だと感じています。
斎藤氏:私は「翻訳力」を挙げたいです。会計や財務の数字が、ビジネスの現場でどのような意味を持つのか。それを専門家でない経営陣や現場のメンバーにも分かる言葉で伝え、意思決定に繋げる力です。これは単なる報告ではなく、未来に向けたストーリーを語る力であり、CFOや経営幹部に不可欠なスキルだと考えています。
専門性を「出発点」に。自らの居場所を、自ら決める覚悟を。
公認会計士という専門性をキャリアの完成形として完結させるのではなく、むしろ新たな価値を積み上げていくための強固な基盤と捉え直す。斎藤氏と羽原氏に共通するのは、事業創造や組織成長という目的のために、自らを変革し続けた姿勢にある。
セッションの締めくくりとして、両氏は次世代を担う会計士たちへエールを送った。
「キャリアを切り拓くための最終的な決め手は、理屈を超えた一歩を踏み出す勇気です。失敗を恐れず、ぜひ新しい世界へチャレンジしてほしいと思います」(羽原氏)
「今、会計士がスタートアップや成長企業に参画し、その中枢で貢献できるチャンスはかつてないほど広がっています。ぜひ、自らの専門性が真に求められる現場に飛び込み、社会的インパクトを生み出す会社を創り上げてください」(斎藤氏)
変化を厭わず、慣れ親しんだ場所から一歩外へ踏み出す。その決断の先に、積み上げてきた専門知識が「事業を成長させる確かな力」へと昇華する未来が待っている。
Next-CFO 登壇者紹介
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| 羽原 康平 Habara Kohei 株式会社GENDA 常務取締役 CSO |
| <プロフィール> 神戸大学経済学部経済学科卒。大学在学中に公認会計士試験に合格し、 有限責任あずさ監査法人にて上場企業を中心とした監査業務に従事。 2017年、PwCアドバイザリー合同会社入社。エンターテイメント企業の 案件も含め、多数のM&A案件に財務アドバイザーとして関与。 2019年9月、株式会社GENDA入社。 2021年8月、執行役員 経営企画部長に就任。 2023年7月に東京証券取引所グロース市場に上場。 2023年9月、執行役員CSOに就任。 |
![]() |
| 斎藤 祐馬 Saito Yuma デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 代表取締役社長 公認会計士 |
| <プロフィール> 2006年監査法人トーマツ入所後、デロイト トーマツ ベンチャーサポートの立ち上げに参画。大企業の新規事業創出やベンチャー政策の立案を担い、起業家支援イベント「Morning Pitch」の発起人としても知られる。著書『一生を賭ける仕事の見つけ方』の執筆やメディア出演に加え、「次代を創る100人」への選出など実績は多岐にわたる。現在は経団連や経済同友会の要職を歴任し、官民両面から日本のスタートアップエコシステムの構築を牽引。公認会計士の専門性を軸に、次世代の産業育成に尽力し続けている。 |
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