【イベントレポート】 元ヤフーCEO小澤氏とSoVa山本氏が語る 会計×AIの未来
この記事は2025年11月10日に開催された、「元ヤフーCEO小澤氏とSoVa山本氏が語る 会計×AIの未来」のイベントレポートです。
事前の申し込み人数が250名を超えるなど、開催前から非常に高い注目を集めた本イベント。当日は、楽天イーグルスやPayPayの立ち上げ、ヤフーCEOを経てBoostCapital株式会社を創業した小澤隆生氏と、会計×AIを掛け合わせ顧客の事業成長をサポートする株式会社SoVaCEOであり、CPA会計学院の講師としても活躍する山本健太郎氏がご登壇。モデレーターにはグロービス・キャピタル・パートナーズにて投資業務に携わる磯田将太氏を迎えました。
AIという「10年に一度の巨大な波」を前に、会計業界はどう進化し、プロフェッショナルとしての価値はどこへ向かうのか。投資家と実務家、双方の視点から語られた熱い議論の様子をお届けします。
※全編ご覧になりたい方はこちらの動画をご覧ください!
イベント概要 – 元ヤフーCEO小澤氏とSoVa山本氏が語る 会計×AIの未来
| イベントプログラム | 元ヤフーCEO小澤氏とSoVa山本氏が語る 会計×AIの未来 |
| 開催日 | 2025年11月10日(月) 19:30~21:00 |
| 開催場所 | CPASSラウンジ/ZOOM(ハイブリッド開催) |
| 概要 | 250名超の申込を集めた、小澤隆生氏と山本健太郎氏による「会計×AIの未来」のトークセッション。AI台頭を前に、会計業界の進化と専門家の価値を、実務と投資の視点から紐解きます。 |
| 登壇者 | ゲスト:小澤 隆生(Boost Capital株式会社 代表取締役) ゲスト:山本 健太郎(株式会社SoVa 代表取締役) モデレーター:磯田 将太(グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパル) |
はじめに:登壇者紹介



第1部:小澤氏は何故SoVaを投資先に選んだのか
中小企業向けの「次世代型の会計事務所」を目指し「AI×専門家」「AI×士業」を軸とした会計事務所を運営する株式会社SoVa。代表の山本氏は、自社が目指す取り組みを「会計事務所のユニクロ」と表現し、次のように語ります。
「税理士が普段やっていることを細かく分解して、会計業務を40工程ぐらいに切りました。通常の税理士事務所だとすべて人手でやっている業務の中で、AIで代替可能な部分をどんどん置き換えていく。そうして来年末までには1人の税理士で100社担当できるような、日本一安く、日本一対応範囲が広く、日本一質が良い会計事務所を作りたいと思っています。」
このビジョンに魅力を感じ投資の決断をした小澤氏。二人の出会いは、小澤氏からのダイレクトアプローチでした。小澤氏は当時を振り返り、こう明かします。
「山本さんにメッセンジャーで連絡して、『話を聞かせてくれ』と声をかけたんです。実際にお会いして、ご飯を食べている最中にもう投資を決めました。私が考えていた世界観と、山本さんが取り組んでいることがほぼ一致していたからです」
小澤氏がこの投資にそこまで確信を持てたのは、自身の投資哲学に照らして「会計×AI」という領域が、インターネットやモバイルに続く10年に一度の巨大な波になると感じていたからでした。
「皆さん、30年前はスマートフォンを持っていませんでしたよね。インターネットも使っていなかったはず。でも今はどうでしょう。肌身離さず持ち歩き、ネットがない生活なんてありえない。こうした変革は10年に一回くらい出てきます。AIもおそらく10年後に聞いたら、使っていないなんてありえないでしょ、という存在になっているはず。インターネットの素晴らしい点は「ネットを使っている」という意識をさせないほど、裏側で当たり前に動いているところです。AIもまさに、こうした存在になっていくでしょう。生活のほぼ全ての領域において、知らず知らずのうちに裏側でAIが動いている世界が来る。これが私の見ている未来です。」
さらに小澤氏は、投資家としてSoVaに、ひいては会計領域に着目した理由をこう語ります。
「私ども投資家の仕事は、10年後に起きるであろう未来からバックキャストして現状を見て、その未来に到達するために今必要な会社や事業に投資をしていくことです。その中で『AI×◯◯』のところに『会計』という二文字が入った会社を探す中でSoVaに出会いました。AIが効果を発揮するのは『ルールがある分野』です。その点会計業務は9割の定型業務と1割の応用ですので、これまで先生方が経験をもとに対応してきたパターン認識の仕事は、実はAIが一番得意な領域なんです。それを生業としている人の前でお話しするのは大変失礼なことだと思いますが、会計とAIとの折り合いはすごく良いのは間違いなくて。それを理解した上で自分のポジションを作れるかどうかが、これから10年の皆さんの給与が3倍になるか、3分の1になるかという境目じゃないかと私は思っています。それはエンジニアの方々にも言っているし、弁護士の方々にも言っていることですよ。」
第2部:会計業務はどこまでAIに代替されるのか
議論は、モデレーターの磯田氏が長年抱いていた、とある違和感をぶつけるところから始まります。
「僕が受験生の頃から、会計業務はAIに取って代わられる、とずっと言われていたんですが、最近になってようやくそれが現実味を帯びてきた気がします。何かきっかけがあったんでしょうか?」
この問いに、小澤氏は「AIの知能が急上昇」したと断言します。
「ここ2、3年でAIの賢さが文字通り桁外れになりましたよね。AIが未来を変えるなんてことは10年以上前から言われてますけど、ChatGPTが出てきてITに詳しくなかった世代のでも触ればその便利さが即座に理解できるようになった。今では、AIで何ができるんだ?という懐疑的な空気は消えて、会社全体が予算を投じてでも、使うべきというモードに突入しています。結局この『今やらなきゃ』という世の中の勢いに乗らないとダメなんですよ。」
テクノロジーに任せられる領域が格段に増えた、という事実は、山本氏も実際の現場で痛感していると言います。その反対に、AIでは難しい領域も見えてきました。
「最終的な提案をAIで送っても、スルーされたり動いてもらえなかったりする。でも、同じ内容でも『SoVaの山本さんが言うならやってみます』になる。現段階において、この『信頼』に基づいた『相手を理解させて行動させる力』は、やっぱりまだ人の領域で、 そこは無理にAIに取って代わる必要もないだろうと思っています。」
また、AIの精度はやはり100%ではないと言います。そして仮に98%正しくても2%が間違っている状況を会計や税務の世界では許容することは難しい、と。結論として、AIで会計業務が全てなくなる未来は来ないのだろうというのが、山本氏の見解でした。
第3部:AI時代に「人」がやるべき業務と磨くべきスキル
話は、AIと人の業務のバランスに移り、小澤氏は弁護士の仕事を一例として挙げました。
法務の現場ではすでにAIを『指針』として活用し、人間は『交渉』などのコミュニケーション業務に特化し始めていると解説します。個人の経験や知識に基づく意見はあくまで限定的な平均値に過ぎず、人間のキャパシティには限界があるため、AIを自身の『拡張機能』として使いこなすことが重要だという視点です。そして、会計業務も一緒だと語り、この時代の生き方について熱を込めて話します。
「この先『数字の処理が適切にできる』といったことは完全なるコモディティになっていきます。そうなったとき、最後の人間の役割として間違いなく必要になってくるのは人との接触力です。コミュニケーション力です。例えばわがままな社長に対して、その施策はやめましょう、とか、ここに投資をしましょう、といった説得ができるか。事業会社にいるならストラクチャーを作り上げられるか、経営陣や銀行を説得できるのか、はたまたお客様の対面に立って折衝ができるのか。そういったところがこれからの価値になってきます。逆に言うと、知識だとかノウハウといったようなものは、多少投げ出しても構わない。そろばんから電卓に変わった、あるいは紙からExcelに変わった時のように。それと同様なことが起きているだけで、それは悲しむべきことでも不安になるべきことでもありません。そういうものだ、と受け入れて、次に熱が発生する領域にアンテナを張りに行かなければならないんです。」
小澤氏の意見に頷きながらも、山本氏は別のスキルについて言及します。
「コミュニケーション力はもちろんですが、あえてもう一つ挙げるなら、構造化力だと思います。この1年徹底的にやってきて分かったんですが、一見複雑な業務も、実は対応パターンは4つかしかなかったり、5つしかなかったりする。たとえばSoVaを使わない理由は8個しかないし、融資のヒアリング項目も7個に集約される。だからこそ、感覚でやっていることを言語化し、整理する構造化力こそが、これからのプロフェッショナルにはめちゃめちゃ重要で、人間が鍛えるべき力だと思います」
その力を身につけるには現場を見まくるしかないのか?と更に踏み込んだ磯田氏へ、SoVaでは、ナレッジの抽出にあたって、常に「詳しい人」と「インタビューする人」のペアを作って動いていると話します。
「一緒にディスプレイに画面を映しながら、詳しい人が作業している光景を見て、横で「今なんでこのボタンを押したんですか?」「なんでこっち先に処理してからこっちに行ったんですか?」「今なんでこのExcelの数字を見たんですか?こっちじゃダメなんですか?」とひたすら質問してもらって、そのQ&Aをまとめていくと、「あ、自分はここを見ているんだ」というのがちょっとずつ見えてくる。地味ですけど、賢い人同士でそのやり取りの接触を何回やるか、みたいな話です。」
質疑応答でも同様の話題になった際、お二人はこれからの専門家のあり方について、次のように話しました。
山本氏は、AIによって業務が効率化された「その先」の会計ファイナンス人材の価値の出し方について語ります。
「僕は、空いた分のリソースによって、今は提供できていない次元のコンサルができるようになってほしいと思っています。たとえば、本来なら別のコンサルファームが数百万で応じているような提案が、当たり前に会計事務所からできるようになる。そうなれば、業界全体の給与水準だって必然的に上がっていくはずです。」
一方小澤氏は、専門家という枠に囚われないキャリアの広がりを指摘しました。
「『馬車が車に変わったから御者の価値が下がる』というのは、時代の流れとして仕方のない側面もありますが、車が出てきたときには、それ以上に新しい職業やリソースが大量に必要になりましたよね。皆さんはもともと高度人材なんですから、自分を『会計』だけにカテゴリー分けするのはもったいない。資格という強力な武器を持った上で、営業や経営をやればいい。一歩外のフィールドに出たら、皆さんは圧勝なんですから。」
おわりに
AIがどれほど賢くなっても、最後の一歩でお客さんを動かすのは、山本氏が語った「この人が言うなら」という信頼です。そしてその信頼の土台を作るのは、小澤氏が説いた「人間力」に他なりません。
最後に小澤氏は、今後を見据えた展望を語ります。
「今日私が話したことは、まだ10年先の話かもしれない。DXが今更騒がれている状況を見ても、変化はゆっくり進むでしょう。極端な話、20年後も今と同様の税務業務・会計業務でやっていても、その会社にとって致命的になることはおそらくないでしょう。でもね、例えば楽天だとかヤフーといった最先端の会社は、それを30年も前から当たり前のように使っているから成長するわけです。5年、10年と経つうちに、AIによるコスト構造や正確性の差はじわじわ広がっていきます。やがて『交渉力』や『人間力』がないと生き残れない時代が必ず来ます。だからこそ、今のうちからAIを実務に活用して勉強しておく。それが、10年後のご自身の価値を最大化する一番確実な方法だと私は思っています。」
***
すべてを一度に変えるのは難しいかもしれませんが、まずは目の前の実務をAIに少しだけ委ねて、空いた時間で昨日よりも目の前のお客さんと向き合ってみる。そんな小さな一歩の積み重ねが、数十年後の私たちが胸を張れる最強の武器になるのだと強く感じさせられるセッションでした。
アーカイブ動画はこちらから!
会後半の質疑応答では「山本さんへ)エクイティファイナンスをして後悔していることはありますか?」「小澤さんが投資先を選ぶときに意識していることは?」「(小澤さんのスタンスとして)バリュエーション(時価評価額)は交渉しない?」など、より踏み込んだお話をしています。ぜひ上記の動画も併せてご覧くださいね!
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