【イベントレポート】時価総額数千億を支えるCFOが問い直す、真のプロフェッショナルとしての覚悟 第2期 Next-CFO ― 第8回講義の内容を大公開!
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第2期 Next-CFO イベント概要
第2期 Next-CFO イベントレポート第1回(2025年7月13日)
第2期 Next-CFO イベントレポート第2回(2025年8月3日)
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第2期 Next-CFO イベントレポート第5回(2025年10月5日)
イベント概要 – Next-CFO
| イベントプログラム | 第2期 Next-CFO 第8回 |
| 開催日 | 2026年1月18日 14:00-17:00 |
| 開催場所 | CPASS LOUNGE(シーパスラウンジ) 〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目14−20 新宿テアトルビル 6F |
| 概要 | 次世代のCFOを目指す方に、CFOとして必要なマインドセットと、マネジメントの経験を提供すべく、最前線で活躍している豪華20名のゲストから彼らの知見とノウハウを学べる場を提供します。それが『Next-CFO』です。全10回開催 |
| 講師 | 橋本 宗之 様(Sansan株式会社 取締役執行役員CFO) 釣井 慎也 様(ANYCOLOR株式会社 取締役CFO) |
過去の事実を正確に編み上げ、適切な財務報告を行う。それはCFOをはじめ財務のプロフェッショナルが担うべき代表的な使命だ。しかし、経営の現場で直面する課題は、既存の会計理論や教科書通りの知識だけでは突破できない。だからこそ、次世代のCFOにとって、修羅場を潜り抜けてきた先駆者たちの経験から学べることは多い。
2026年1月18日、CPAエクセレントパートナーズ株式会社が主催する次世代CFOコミュニティ『Next-CFO』の第8回イベントが開催された。
登壇者は、Sansan株式会社(以下、Sansan)の取締役執行役員CFO・橋本宗之氏。そして、ANYCOLOR株式会社(以下、ANYCOLOR)の取締役CFO・釣井慎也氏。モデレーターは、会計ファイナンス人材の可能性を広げることをミッションに掲げるCPAエクセレントパートナーズ代表・国見健介が務めた。
外資系証券会社の投資銀行部門という金融の最前線でキャリアを積んできた二人が、なぜスタートアップという未知の領域に挑む決断をしたのか。高度なファイナンスの知見を土台にしながら、経営の命運を担う真のCFOへと進化した転換点はどこにあったのか。90分にわたる議論を凝縮してレポートする。

【登壇者プロフィール(写真右から順番に)】
橋本宗之 氏 Sansan株式会社 取締役 執行役員 CFO
大学を卒業後、リーマン・ブラザーズ証券に入社。投資銀行部門にてM&Aや資金調達のアドバイザリー業務に従事。その後、バークレイズ証券株式会社を経て、日本政策投資銀行のプライベート・エクイティ投資チームにてPE投資を担当。2017年にSansan株式会社へ入社し、2018年よりCFOを務める。2019年の東証マザーズ(現グロース)上場、その後の東証プライム市場への区分変更を牽引。日本を代表するSaaS企業である同社の財務戦略を統括している。
釣井慎也 氏 ANYCOLOR株式会社 取締役 CFO 公認会計士
2010年に公認会計士試験合格後、2012年にPwC税理士法人に入社し、法人税や国際税務のアドバイザリー業務に従事。その後、モルガン・スタンレーMUFG証券 投資銀行部門にて国内外のM&AやIPOを含む資金調達の助言を数多く手掛ける。2019年、ANYCOLOR株式会社(旧いちから)へ入社。取締役CFOとして2022年の東証グロース市場上場、翌年の東証プライム市場への区分変更を牽引。VTuberという新領域のビジネスをファイナンスの側面から支えている。
国見健介 CPAエクセレントパートナーズ株式会社 代表取締役 公認会計士
1999年、慶應義塾大学在学中に公認会計士試験に合格。監査法人を経て、2001年9月にCPAエクセレントパートナーズ株式会社を設立。公認会計士試験の専門校「CPA会計学院」を日本トップクラスの合格実績へと成長させる。現在は「会計ファイナンス人材の可能性を広げる」をミッションに、人材紹介やコミュニティ運営など多角的な支援を展開している。
組織の看板を脱ぎ捨てて現場に飛び込む覚悟が、当事者意識を育てる
まず焦点が当てられたのは、橋本氏と釣井氏が時価総額数千億という重責を担うCFOに至るまでの転機だ。
橋本氏のターニングポイントは、リーマン・ブラザーズ証券入社4年目頃のニューヨーク本社転籍。そのわずか1年後に起きたのが、リーマン・ショックという歴史的な金融危機だった。
「倒産が決まった日曜日に、従業員が自分の荷物を段ボールで持ち出すんです。破産申請をすると、荷物が取り出せなくなるという噂が流れて。オフィスを出ると150人ほどのマスコミに詰め寄られ、テレビ局から『モザイク入れるから大丈夫です』とインタビューされたり。まさに混迷を極める現場にいました。結果、会社がなくなれば何もできないことに気づかされて……。その危機感から、指示を待つのではなく、自分からアグレッシブに仕事を獲りに行こうとマインドチェンジした記憶があります」

[リーマン・ショック後に芽生えた危機感を振り返り、「このままでは日本に帰れないと思い、必死に働きました」と語る橋本氏]
一方、公認会計士であり、税理士法人や証券会社で研鑽を積んできた釣井氏を突き動かしたのは、理屈を超えた直感だった。2019年、創業間もなく社長がまだ学生だったANYCOLORのCEO・田角氏と出会い、その場で参画を決めたという。
「田角と会った時、直感的に『この人は伸びる』と感じました。公認会計士として冷静に数字を見れば当時のビジネススケールはまだ小さかったのですが、目の前で物事が決まっていく意思決定のスピードが圧倒的だったんです。理屈で考える前に『じゃあ、やってみようかな』とノリで返事をしていました。あの時、リスクばかりに目を向けて石橋を叩きすぎていたら、今の自分はありません」
専門知識を蓄えるだけでなく、ビジネスのリスクを共に背負う。その一歩を踏み出して、初めてCFOはCEOと肩を並べる真のパートナーになれる。
二人のエピソードを受け、数多くの公認会計士のキャリアを見守ってきた国見は、専門家がキャリアの過程で陥りがちな状況を指摘した。
「公認会計士は資格という箱の中に安住してしまいがちです。しかし、お二人の話に共通しているのは、一度その箱から外へ出て、裸の自分でビジネスの荒波に揉まれていること。その個人としての危機感こそが、経営に関わるキャリアを切り拓く原動力になるのです」
理屈で動かない人の感情に向き合い、信頼を構築する力が組織を動かす
一般的にCFOの役割といえば、資金調達やIPO準備といった対外的な交渉を連想しがちだ。しかし急成長の渦中においては、急拡大に追いつかない組織の歪みや、現場の不満といった人の感情に起因する問題が次々と噴出する。
橋本氏がSansanで上場直後に直面したのは、管理部門の崩壊だった。
「上場という大きな目標を達成した直後、経理メンバー全員から『辞めます』と言われました。急拡大する組織の中で業務が細分化され、現場のモチベーションが低下していることに気づけていなかったんです。結果として、CFOに着任した直後の決算が締まらないかもしれないという最悪の危機に陥ってしまった。そこで私はプライドを捨て、メンバーを一人ずつ食事に誘い、『助けてほしい』と頭を下げて協力を仰ぎました」
理屈や正論だけでは人は動かない。CFOには、泥臭い人間関係の修復や、メンバーの感情に寄り添う力が不可欠であることを、橋本氏は身をもって知ることになったのだ。
釣井氏もまた、ANYCOLORの急成長期に人間関係のトラブルを経験した。
「投資銀行部門時代には、ロジックさえ通れば物事は動くと信じていました。しかし、創業間もないスタートアップの現場では、人間のドロドロした感情のぶつかり合いが平気で経営をストップさせる。ビジネスの課題は理屈で解決できても、感情や人間関係の問題は一筋縄ではいきません。スキル以上に相性と信頼が、経営の土台であるという事実を学びました」

[ロジックだけでは動かない経営の現場。その土台にあるのは『相性と信頼』だと釣井氏は強調する]
精緻な財務モデルも、市場を揺るがすような成長戦略も、それを実行する人という土台が揺らげば事業は前に進まない。CFOに求められるのは、数字の整合性を追求することはもちろん、組織に流れる不協和音を察知し、再び信頼を積み上げるための人間力なのだ。
この過酷な経験こそがCFOの真価を問う場であると、国見は語る。
「多くの会計士は、数字やロジックで全てを解決しようとします。しかし、経営の現場では理屈では動かない感情の壁が必ず立ちはだかる。お二人はその修羅場から逃げずに、一人ひとりと向き合い、信頼を再構築した。その泥臭い当事者意識こそが、与えられた役割を全うするだけの管理職と、組織の命運を背負う経営者を分かつ、決定的な境界線なのです」
CEOのビジョンを規律へと昇華させる「攻めの守護神」を目指せ
事業の多角化と、複雑な利害関係。難易度の増す経営環境においては、CEOとCFOの強固な連携が生命線となる。CFOは創業者の突破力を支えるだけでなく、あえてNOを突きつけるべき瞬間もある。この信頼と緊張が同居する関係をいかに築くのか。
Sansanの橋本氏は、CEOの寺田氏との関係を、経営判断の前提となる視座が同期している状態であると語る。
「寺田は誰よりも先見の明があり、非常にフェアでロジカルな人でもあります。だからイエスマンである必要はなく、お互いに言いたいことを言う関係が良いと思っています。そのために、月1、2回ゴルフに行ったり、海外の投資家回りで1週間ずっと一緒にいたり、あえて長い時間を共に過ごすようにしています。同じ景色を見て、同じ文脈を共有しているという確信があるからこそ、いざという時に経営の根幹に関わる直言ができるのです」
それは決して馴れ合いの関係ではない。経営の中枢に立つ二人が、互いの思考の癖を理解し、不確実な未来に対して一枚岩で立ち向かうための実戦的なプロセスなのだ。
一方、ANYCOLORの釣井氏は、CEOの田角氏との間に、プロフェッショナルとしての絶対的な領域を確立することで信頼を築いている。
「田角は若く、会社の顔のような存在です。彼は事業の成長、所属タレントの活躍機会、ファンの方への楽しさ提供など、どれか一つに偏らないバランスを非常に重視しています。私はコーポレート寄りの意見を出し、田角はタレントとの信頼関係を担う。お互いの専門領域をリスペクトし、数値面に関しては彼から意見が出ることはほぼなく、信頼して任せてもらっています」

CEOが安心してアクセルを踏み抜けるよう、経営の規律を整えることこそがCFOの役割だ。その一歩踏み込んだパートナーシップのあり方について、国見が提言した。
「単に『ダメです』とブレーキを踏むだけなら、AIでも、あるいは外部のアドバイザーでも可能です。CEOがフルスロットルでアクセルを踏んでいる時に、CFOがすべきなのは単純な制止ではありません。そのリスクをどうコントロールし、どうすればビジョンを崩さずに数字として着地させられるか。CEOが背中を預けられる攻めの守護神であって初めて、真の経営パートナーと言えるのです」
誰にでも胸を張れる「誠実さ」が価値を創る
セッションが終盤に差し掛かるなか、議論のテーマはCFOというポジションが背負うべき倫理観へと移った。数千億という時価総額、そして刻一刻と変動する株価。市場からの強烈なプレッシャーに晒されるなかで、プロフェッショナルとして守り抜くべき最後の一線はどこにあるのか。
橋本氏が自身の判断基準として挙げたのは、意外なほどシンプルな言葉だった。
「自分のやっていることを、おばあちゃんに胸を張って説明できるか。これが私の究極の基準です。短期的な数字を繕って投資家を欺くようなことは、長期的には必ず自分たちの首を絞めることになります。投資家を損させてはいけない、誰に対しても堂々と説明ができる、その誠実さが中長期的な信頼=時価総額を積み上げる唯一の道なのです」
その誠実さは、具体的な経営判断の局面でも貫かれている。国見から投げかけられた「上場バリュエーションを上げるために、実現可能性の低い強気すぎる事業計画を求められたらどうするか」という問いに対し、橋本氏は現実的な解を提示した。
「もしその意図が、単に上場時の時価総額を吊り上げたいだけなら、『そんなのやめましょう』と一蹴します。実現できない計画は意味がないですから。ただし、社内のメンバーの視座を下げたくないという意図があるなら、外部向けの計画と、高い目標を掲げる社内KPIを切り分ける提案をします。いずれにせよ、市場に対しては常に誠実であることがCFOの生命線です」
釣井氏もまた、投資家というステークホルダーに対する信頼の重みを説く。
「投資家からの信頼は、一度損なうとリカバリーが極めて困難な資産です。上場した瞬間の株価がどれほど高くても、その後に信頼を失えば意味がありません。目先の利益や数字のために信頼を壊すようなことは、長期的にはマイナスでしかありません。それぞれのステークホルダーに対して、常に説明がつく経営をしていくことが誠実さだと思っています」
投資家が抱く期待値と、会社が持つ実力。その間に乖離があっても、事実を誠実に伝え、約束した成果を地道に積み上げていく姿勢こそが、信頼を築く道なのだ。
国見は、この精神性こそが、会計ファイナンスにルーツを持つ者がビジネスの主役となるための武器であると確信を込めて総括した。
「現場の熱量に押され、『今はコンプライアンスよりも突破力を優先しよう』という議論が生まれるフェーズも確かに存在します。しかし、中長期で理想を追い求めるなら、隠し事をせず、自らのロジックを自信を持って説明できることが、経営の根幹です。これこそが、社会から信頼を託される公認会計士が、最もCFOというポジションでバリューを発揮できる部分であると私は考えます」

[会計ファイナンスの専門家がCFOを務める意義を伝える国見健介]
質疑応答 ロジックを超えた人間力が経営を動かす
後半の質疑応答では、橋本氏と釣井氏が自身の経験を惜しみなく披露した。
Q:社長や現場にガバナンスを根付かせる際、CFOとしてどう立ち回りましたか?
橋本氏: ガバナンスが最高の会社を目指す必要はありません 。自社のカルチャーにそぐわない形式的なルールに忠実になる必要はなく、やるべき最低限を見極めることが大切です 。問題があった際は、担当者一人ひとりと向き合う草の根の対話を重視しました 。
釣井氏: ANYCOLORではプロセスが全くない状態からスタートしたので、ルールを守らない人の評価を定量的に下げるといった人事評価への反映で統制を効かせました 。
国見: ガバナンスの本質は不正の排除です 。ルールを緩めることでメンバーに魔が差して犯罪者にならないよう守るためのものだというロジックを伝え、納得感を持ってもらうことが重要です 。
Q:急速な組織拡大における失敗談を教えてください。
橋本氏: バックオフィスで「変化を厭わないこと」を基準に採用してきましたが、失敗したのは人への向き合い方です 。相手がどんなモチベーションで働いているかという心の機微に疎かったのは、大きな反省点です 。
釣井氏: 2019年、数だけの目標を立てて半年で100人を採用した際、面接プロセスが崩壊し、誰も会っていない人が入社していたり、雇用契約書がなかったりとハチャメチャな状態になりました 。急拡大期こそ相性とプロセスが不可欠であることを学びました 。
国見: スキルベースでの採用はミスマッチを招きます 。カルチャーフィットと「何でもやる」というチャレンジ精神を持つ人を採るほうが、結果的に組織は強く育ちます 。
専門性をビジネスを勝たせる武器に変え、修羅場の打席に立とう
「伸びない会社に入ると、やはりそれはうまくいった転職とは思えない」
橋本氏が放ったこの言葉は、高みを目指そうとする参加者たちの胸に、深く刻み込まれた。この日、登壇者の両氏が証明したのは、会計ファイナンスの専門性が、経営を支える盾にに留まらないということだ。それはビジネスの爆発的な成長を支え、時価総額数千億円という巨大な価値を社会に定着させるための、強力な攻めの装置になり得る。
CEOのビジョンを信じ抜き、誠実さを武器にマーケットと対峙する。次世代CFOコミュニティ『Next-CFO』は、そんな経営の熱狂の渦中へ、勇気を持って飛び込もうとする者たちのための場所だ。
あなたの持つ専門性を、誰かの、そして社会の価値に変えるために。
Next-CFO 登壇者紹介
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| 橋本 宗之 Hashimoto Muneyuki Sansan株式会社 取締役 執行役員 CFO |
| <プロフィール> 2004年に慶應義塾大学 総合政策学部を卒業後、リーマンブラザーズ証券に入社。 東京およびニューヨークで約9年間勤務し、 M&Aや資金調達のアドバイザリー業務に従事。 その後、日本政策投資銀行のグループ企業でプライベート・ エクイティ投資に携わり、2017年にSansan株式会社へ入社。 現在は、取締役CFOとして財務戦略を担当。 |
![]() |
| 釣井 慎也 Tsurui Shinya ANYCOLOR株式会社 取締役CFO |
| <プロフィール> 2010年に公認会計士試験合格後、2012年よりPwC税理士法人にて国内外の税務アドバイザリー業務を担当した後に、2014年より三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社にてM&Aアドバイザリー業務に従事。 2019年にANYCOLOR株式会社に入社し、企業財務および経営管理領域を統括。 上場前は経営管理機能の立ち上げ、資金調達、IPO準備などを行い、上場後も引き続き事業計画や資本政策の策定をはじめとする経営企画やIR活動を統括。 |
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代表 国見健介からのメッセージ(動画)
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