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公開日:2022/04/02

  • IFRS

はじめてのIFRS簡単解説!No.4 IFRS財務諸表の作成方法2パターン

岩橋宏幸さんの記事

    イントロダクション

    はじめてのIFRS簡単解説! 第4回目の今回は、IFRS財務諸表の作成方法について解説します。

    IFRSを任意適用している日本企業は、単体財務諸表(以下、単体FS)は日本基準で、連結財務諸表(以下、連結FS)はIFRSで作成します。

    IFRSで連結FSを作成する場合、親会社及び全ての子会社がIFRSに基づく統一された会計処理を採用することが求められます。つまり、現地基準で作成された親会社及び全ての子会社の単体FSをIFRS化した上で、連結FSを作成する必要があります。

    ※日本基準では、海外子会社を連結する場合、一部の項目を除き、現地基準で作成された単体FSをそのまま合算することが当面の間は認められていますが(実務対応報告18号)、IFRSではこのような規定はありません。

    一連の決算業務の流れのうち、どの時点で現地基準の単体FSをIFRS化するかについては、次の2パターンがあります。

    パターン① 連結決算(親会社が一括で各社の単体FSをIFRSに組替える方法)

    パターン② 単体決算(各社が現地基準とIFRSの単体FSをそれぞれ作成する方法)

    詳細は後述しますが、簡単なイメージは下図のとおりです。

    ■ パターン① 連結決算(親会社が一括で各社の単体FSをIFRSに組替える方法)

    この方法では、連結決算において、親会社が一括で各社の単体FSをIFRSに組替えます。もちろん、組替えを行うための基礎情報は必要となるので、各社から必要な情報を入手した上で組替えを行うことになります。

    ■    パターン② 単体決算(各社が現地基準とIFRSの単体FSをそれぞれ作成する方法)

    この方法では、単体決算において、各社が現地基準とIFRSの単体FSを2つ作成します。各社での作成方法は様々ですが、例えば下図のように、会計システム上は従来通り現地基準で決算を行い、別途親会社に報告するためにIFRS組替仕訳を行う方法があります。

    ■    IFRS組替仕訳

    これまで見てきたように、パターン①②いずれの場合でも、現地基準の数値をIFRS化するためには、IFRS組替仕訳が必要です。(逆にIFRS組替仕訳以外は、日本基準の連結決算と同じです。)

    つまり、IFRS財務諸表を作成するためには、IFRS組替仕訳を攻略することが重要になります。

    あたりまえの話ですが、IFRS組替仕訳は、現地基準の数値とIFRSの数値の差異です。

    日本の場合は、現地基準は日本基準ですので、日本基準とIFRSの差異を学習していくことが、IFRS財務諸表を作成する上でとても大切になります。

    そのため、次回以降は数回にわたり、日本基準とIFRSの主な差異について解説していきます。

    ■    筆者のコメント 

    IFRS財務諸表の作成方法について、理解できましたでしょうか?ポイントをまとめると次の3点です。

    (1)  日本基準の連結決算の流れにIFRS組替仕訳がプラスされるだけ!

    (2)  IFRS組替仕訳は、連結決算パターンと単体決算パターンの2つがある!

    (3) IFRS組替仕訳(日本基準とIFRSの差異)を理解することが大切!

    筆者は、監査法人での監査やアドバイザリー、事業会社(親会社の連結チーム)での経理業務を通じて、パターン①②のいずれも経験したことがあります。

    パターン①の場合は、親会社の経理部門が、ただでさえ忙しい決算期間中に、全社のIFRS組替仕訳の対応をしなければならないのでとても大変です。時間もかかります。

    一方、パターン②の場合は、各社でIFRSの単体FSを作成するため、親会社の経理部門の決算期間中の負荷は少し減ります。ただし、すべての会社の経理部員にIFRSに関する知識が必要となるので、決算前には、勉強会や基準アップデートセミナー等を複数言語で何度も実施する必要があります。ちなみに私自身、この準備に苦労した記憶がありますが、勉強会等を通じて、各社の経理部員と深い交流を持つことができ良い思い出となりました。


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    この記事を書いた人

    1990年生まれ、兵庫県尼崎市出身。 立命館大学卒業後、監査法人トーマツ(大阪事務所)に入社。
    トーマツではUSGAPP及びIFRSのスペシャリストとして、主にUS及びIFRS監査を担当。IFRS企業への出向も経験する。
    その後、30歳を機に独立。中小企業向け経営コンサル、大手化学メーカーの会計アドバイザー、CPASS運営など多岐にわたり活躍している。

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