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公開日:2022/03/16

  • IFRS

はじめてのIFRS簡単解説!No.3 IFRSの特徴③「財務諸表の表示・注記」

岩橋宏幸さんの記事

    イントロダクション

    はじめてのIFRS簡単解説! 第3回目の今回は「財務諸表の表示・注記」です。

    皆さん、IFRSの財務諸表を読まれたことはありますか?

    本記事では、IFRS財務諸表の特徴について、日本基準と比較してポイントを解説していきます。なお、IFRSを任意適用している会社においても、単体財務諸表は日本基準での作成が要求されているため、ここでのIFRS財務諸表は連結財務諸表を意味します。

    ■    財務諸表の構成要素 

    財務諸表に含まれる構成要素は、IFRSと日本基準とでほぼ同じです。IFRS財務諸表の名称は、日本基準と一部異なりますが、既定の名称を使用することは強制されておらず、他の名称、例えば日本基準と同じ名称を使用することも認められています(IAS第1号第10項)。

    ■    財務諸表の表示・注記

    (1) 財政状態計算書 (以下、BS)

     IFRSでは、BSで表示すべき20弱の科目(強制表示科目)が決められています(IAS第1号第54項)。また、必要な場合には、追加科目の表示が認められています。

    IFRSの強制表示科目は、日本基準のひな型よりかなり少ないですが、強制表示科目の内訳や増減については注記での開示が要求されています。そのため、BS自体は比較的シンプルですが、注記は膨大になります。

    以下は、BSに表示される非流動資産(固定資産)のIFRSと日本基準での比較イメージです。流動資産や負債もこれと同じようにIFRSの方がシンプルな表示になります。

    (2) 包括利益計算書 

    IFRSの包括利益計算書の作成方法は、日本基準と同様に2つあります。IFRSを任意適用している日本企業の多くは、「包括利益」と「当期純利益」とを明確に区別する②を採用しています。

    また、BSと同じく、強制表示科目が決められており、必要な場合には、追加科目の表示が認められています(IAS第1号第81~85項)。IFRSの包括利益計算書で示される利益に関しては、日本基準と大きく違うので注意が必要です。

    以下は、2計算方式の損益計算書部分のIFRSと日本基準での比較イメージです。段階損益の違い、営業利益の範囲の違いについて確認してください。

    (3) 持分変動計算書、キャッシュ・フロー計算書 

    IFRSと日本基準でほぼ同じです。

     

    (4) 財務諸表の注記 

    注記は、通常、以下の順序で表示されます(IAS第1号114項)。IFRSを任意適用している日本企業の多くは、この順序で開示しています。

    これまで、IFRSは注記の量が膨大ということに触れてきましたが、2021年3月期にIFRSに移行した代表的な会社の「連結財務諸表注記」のページ増加数を調査しました。いずれの会社も以下の通り、大きく増加しています。

    主な増加要因としては、IFRSでは原則主義のため会社の会計方針について日本基準と比べより詳細な記載が求められること、これまで述べてきたように財務諸表の強制表示科目の内訳や増減について注記での開示が要求されることなどがあります。

    ■    筆者のコメント 

    IFRS財務諸表について、ざっくりとイメージできたでしょうか?

    あとは実際のIFRS財務諸表を見てみてください。財務諸表の表示はシンプル、注記は膨大というのが体感できると思います。

    補足として、はじめてIFRS財務諸表を見る読者に向けたプチ情報を1つ。日本基準では、「百万円」又は「千円」等の表示単位未満の端数について、ほとんどの会社が「切り捨て」を採用しています。一方、IFRSでは「四捨五入」を採用している会社もあるので、初めて開示チェック担当者になった際には注意してください。なお、注記にどちらの端数処理方法を採用しているかの記載が必ずあります。

    (ちなみに、日本基準でもIFRSでも、金額の端数処理に関する明確なルールはないので、どちらでもOKです。)


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    この記事を書いた人

    1990年生まれ、兵庫県尼崎市出身。 立命館大学卒業後、監査法人トーマツ(大阪事務所)に入社。
    トーマツではUSGAPP及びIFRSのスペシャリストとして、主にUS及びIFRS監査を担当。IFRS企業への出向も経験する。
    その後、30歳を機に独立。中小企業向け経営コンサル、大手化学メーカーの会計アドバイザー、CPASS運営など多岐にわたり活躍している。

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