公開日:2023/05/30
内定獲得に向けての事前準備(面接対策編)
古川拳土さんの記事
こんにちは。
前回の記事では、内定獲得に向けての事前準備について記載させていただきましたが、今回はその中でも面接対策について、手厚くお話できればと思います。
前回もお話させていただきましたが、面接にて聞かれる内容は、下記5点に整理されると考えています。
志望動機
面接の最初に、自己紹介と志望動機を求められる場合が殆どですので、こちらは必ず準備が必要になります。志望動機が面接官にしっかり刺さるかにより、今後の明暗が分かれると言っても過言ではありません。
一方で漠然とFASでの業務に興味を持ってはいるものの、明確な志望動機がない方も中にはいらっしゃるかと思います。そのような方は、あくまで私の一例にはなりますが、下記の内容を参考にされると良いかと思います。
DD部門・バリュエーション部門・FA部門を志望する場合には、下記①M&Aに興味を持った背景⇒②M&A関連業務の中でも、志望部門に興味を持った背景の順に整理すると良いかもしれません。
① M&Aに興味を持った背景
私の例となりますが、下記のように考えていました。
「会社の大きな成長戦略(会社の意思決定に関与できる)の一つであるM&Aに携わることで、クライアントの成長に貢献したいと考えたからです。
会社が実施する成長戦略にはM&A以外にも様々なものが想定されますが、M&A領域は会計知識が求められる場面も多いため、会計士である私が活躍できる機会も多いと考えられます。
かつ今後M&Aはインバウンド、アウトバウンド、国内案件において増加していくことが想定され、M&A業務の経験を積むことは、クライアントに対してプロフェッショナルとして貢献できる機会を増やすことになると考えられるため、よりクライアントの成長に寄り添うことができる専門家になるためにも、貴社を志望させていただきました。」
② M&A関連業務の中でも、志望部門に興味を持った背景
例えばDD部門なら、
「監査業務との親和性が高く、いち早く業務に貢献できると考えたため」
バリュエーション部門なら、
「プライシングという会社の財務諸表にも大きなインパクトを与える業務に魅力を感じたため」
FA部門なら、
「M&Aの上流(オリジネーション)から下流(クロージング)まで関与し、M&A全般でクライアントを支えることができる業務でありやりがいを感じたため」
といった形で考えるのは一つの案かもしれません。
DD部門・バリュエーション部門・FA部門以外で人気な部門として、事業再生部門が挙げられますが、事業再生部門の場合ですと、私は当時下記のように志望動機を整理していました。
「私は現在、航空会社の監査に従事していますが、航空業界の動向について自己学習を進めている際に、JALが過去に経営破綻を経験しており、その後企業再生機構によって様々な再生措置が施された結果、業績のV字回復に成功していた事実を知りました。その後事業再生について調べていくうちに、公認会計士が事業再生に携わる場合も多々ある旨を知り、元々クライアントに貢献したいという気持ちで公認会計士を目指した私は是非事業再生に携わってみたいと考え今回志望させていただきました。
また、事業再生においては、コンサル的な能力だけでなく、監査、会計、税務、法務、ITなど総合的な能力が求められます。ハードルはかなり高いとは考えられますが、プロフェッショナルとして会計に限らず様々な分野の知識を総動員してクライアントを助ける機会の多い、事業再生という業務に興味を持ちましたので志望させて頂きました。
また、事業再生は一人ではなしえず、特に社会に大きなインパクトがあるような案件の場合、より多様なバックグランドをもった人財を束ねていく必要があると思いますが、そういったリソースが貴社にはあり、案件をリードできるプロフェッショナルが多いことも志望する理由です。」
上記のように、事業再生に興味を持ったきっかけに、ご自身の監査経験の話や実際の事例を絡めるのも一つのやり方かもしれません。
少しでも参考になれば幸いです。
以下、志望動機に付随する質問として想定されるものを、紹介できればと思います。
~全部門共通~
・入社したらどのような案件を手掛けたいか
こちらはかなりの確率でされる質問となりますので、回答を用意しておくことをおすすめします。
例えばFA部門や事業再生部門の場合ですと、実際の事例を調べた上で、興味を持った事例についてお話するのは一つの方法かもしれません。
一方でバリュエーション部門やDD部門の場合には、実際の事例を探すのは困難かと思いますので、ご自身が知識のインプットを進めていくにあたって興味を持った業務について話されると良いかなと思います。
私の場合、バリュエーション業務においては下記のような回答を用意していました。
「近年ベンチャー企業の台頭が目まぐるしいため、そのような会社のバリュエーションにチャレンジしていきたいです。ベンチャー企業の中には、売上すら立っていない創生期の会社も多いので、そのような会社に対しDCF法を採用する場合には事業計画の妥当性について活発な議論がなされると考えられます。また、類似会社比準法を採用する際にも、マルチプルを算定する際の類似会社の選定が難しくなることが想定されます。このような難易度の高そうな論点にも、持ち前のタフさで積極的に挑戦できたらと考えています。」
~DD部門以外の場合~
・監査法人出身会計士が親和性の高い業務はDD業務だと思うが、なぜDD部門以外の部門を志望するのか
こちらも質問される可能性の高い質問となっていますので、回答を準備しておく必要があるかと思います。
例えばFA部門を志望される場合には、
「監査を通じて、クライアントコミュニケーションの難しさだけでなく、やりがいも経験できたので、DDよりも更にクライアントに向き合うことになるFA業務にやりがいを感じたため」、
バリュエーション部門を志望される場合には、
「DDとバリュエーション双方の専門書を読みましたが、より興味を持ったのがバリュエーション業務でした。また、公認会計士試験の勉強の一環でファイナンスの基礎は既に学習済ですので、バリュエーション業務へのキャッチアップは出来ると考えています。」
等の回答が考えられます。
~事業再生部門の場合~
・なぜ戦略コンサルではなく事業再生を志望するのか
こちらは質問される可能性があるものの、意外と回答が難しかったりしますので、事業再生部門を志望される方は一度整理されると良いかと思います。
私の場合は、下記の通り整理していましたので、参考になれば幸いです。
「事業再生を必要とするクライアントは、複合的に問題を抱えているケースが多く、その際には会計や税務だけでなく、法務やITなど様々な知識が必要となってきます。
そのため、会計士の得意領域である会計や税務だけでなく、様々な分野の専門家と協力して一つの課題を解決する、総合格闘技のような経験を培いたいと考え、事業再生を志望させていただきました。
また、会社の業績をV字回復させるなど、会社が窮地に立たされている状態から会社を救う経験は想像を絶するほど大変な場面もあるかと存じますが、事業再生でしか味わえない非常にやりがいを感じることができる経験なのではないかと思い、事業再生を志望させて頂きました。戦略コンサルの場合、PL改善、運転資本への関与が多いと理解していますが、事業再生はBSにもタッチできることも大きな理由の一つであり、その点監査経験にてBS関連の知識を身に付けているので、チームに貢献できると考えています。」
以上が、志望動機についてとなります。
諸々具体例も記載させていただきましたので、何かしら参考になれば幸いです。
これまでの経験(職務経歴書の掘り下げ)
自己紹介と志望動機を聞かれた後は、基本的に職務経歴書の内容を掘り下げた質問をいただくことになります。
そのため事前に、一度ご自身の提出された職務経歴書を読み返してみて、掘り下げられそうな箇所を洗い出し、当該箇所に対する想定問答を作成されることをおすすめします。
例えば私の場合ですと、職務経歴書に、とある監査チームにてサブインチャージを務めていたことについて記載していたのですが、この点掘り下げられると予想し、具体的にどのような点を意識し、チームマネジメントに取り組んでいたかについて事前に準備していました。
これまでの経験がFASでの業務にどのように生かせるか
こちらも必ず合否のポイントになってきますので、回答を準備しておく必要があるかと思います。例えば、クライアントとのコミュニケーションを通じて論点を整理した経験や、プロジェクトのタイムライン管理の経験、重要な虚偽表示に関する修正伝達の経験などはFASでの業務に生かせる内容になると思いますので回答できるようにしておくと良いでしょう。
ご自身の強み・弱み
こちらも言わずもがな、大事な内容になってくるのですが、前回の記事でも記載させていただきました通り、弱みについては、強みとも捉えられるような内容にすると良いかと思います。そして、弱みをどう克服していくかについても、回答を用意しておくと良いです。
また、強み・弱みそれぞれに、業務に関連するエピソードを補足しておくと良いかと思います。
私の場合は当時、下記のように整理していました。
強み:忍耐力がある点、コミュニケーション力がある点
監査クライアントに金額的重要性のある虚偽表示を修正いただく際に、管理部長から最初は修正を拒まれていましたが、丁寧な説明を続けた結果、古川さんが言うのなら、ということで修正いただくことができました。その一件を機に、管理部長との関係は深まり、先日は個人的にゴルフのお誘いをいただき、楽しい時間を過ごすことができました。現在、その管理部長とは監査チーム内では一番コミュニケーションが取れる関係を築けています。
また、大規模企業の初年度監査という、部署でも有名な大変なプロジェクトのメンバーに抜擢され、スタッフとしてその責務を全うし、監査後にはチームのマネージャーから感謝されました。(大変なチームであったため、自主的にチームを去ってしまうメンバーも散見される状況でした。)
弱み:世話焼きすぎる点
チームに新人が入ってきた際には、丁寧で熱血な指導をしすぎたあまり、想定より多くの時間を費やしてしまい、当日の自分の進捗に遅れが生じてしまうこともありました。そのため、当日は残業をすることで遅れを取り戻していくこととなってしまっていました。
自身の進捗の遅れを防ぐための対策として、新人への指導の際には事前準備をしっかり実施し、指導時には効果的かつ効率的な指導が出来るよう努力をするようにした結果、上記弱みについて徐々に克服できるようになっていきました。
FAS業務に関する基礎知識の確認
FAS業務に関する基礎知識の有無について確認するための質問もされる可能性が高くなっています。そのため、例えば志望部門での業務に関するキーワードについては、知識がない方にも上手く説明できるくらいには理解を深めておくと良いかと思います。
(例)バリュエーション業務の場合、DCF法、類似会社比準法、類似会社の選定、PPA、CAPMなど
なお、上記知識のインプットの際には、私の執筆した記事にてピックアップしております書籍を読まれると良いかと思いますのでご参考にされてください。
まとめ
上記以外のイレギュラーな質問も勿論ありますが、基本的には上記5点についてしっかり対策をしておけば、ご自身の自信にも繋がりますし、おのずと結果もついてくるかと思います。
皆様が無事内定を勝ち取れることを、心より祈っています。
最後までお読み下さりありがとうございました。
この記事を書いた人
慶應義塾大学経済学部卒業。公認会計士試験に合格後、2017年2月より有限責任監査法人トーマツへ入所し、会計監査業務、内部統制監査業務、定期採用関連業務に従事。その後2020年7月より、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社にて企業価値評価業務や会計監査支援業務、財務分析業務等に従事。
2022年4月より株式会社Clearにて経営企画業務、その他コーポレート業務全般(経理、労務、財務、法務)に従事。
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