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公開日:2023/04/25

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FAS部門及び関連書籍の紹介(その1)

古川拳土さんの記事

    イントロダクション

    こんにちは。
    FASの選考を受ける際に、業務内容関連のインプットは必須となってきますが、一方で書店に向かってみると、専門書籍は沢山ありますので、まずどの書籍から手を付ければ良いか悩んでしまう方も多いかと思います。
    (少しだけ脱線しますが、専門書籍を探す場合、品揃えの多さを考えると、ジュンク堂や紀伊國屋書店など大型書店を絶対におすすめします。)

    例えば都内ですと、
    ・丸善 丸の内本店
    ・ジュンク堂書店 池袋本店
    ・紀伊國屋書店 新宿本店
    あたり(特に丸善 丸の内本店)は非常におすすめです。

    そのため、今回は、FAS業務のインプットに適したオススメ書籍について、何冊か紹介できればと思います。

    FASにおける主要な部門として、
    ・ストラテジー部門
    ・ファイナンシャル・アドバイザリー(FA)部門
    ・財務デューデリジェンス(FDD)部門
    ・バリュエーション部門
    ・事業再生部門
    ・フォレンジック部門

    が挙げられますが、其々の部門についての説明にも触れつつ、関連書籍を紹介できればと考えています。

    はじめに~M&A全体像の把握~

    FASにおける部門のうち、その殆どがM&A関連の部門となっているため、M&Aの全体像を把握するのは必須かと思います。そのため、まずはM&A全体像の把握に適した、入門書籍を紹介できればと思います。

    ●ストーリーでわかる初めてのM&A 会社、法務、財務はどう動くか

    ストーリーでわかる初めてのM&A 会社、法務、財務はどう動くか | 横張 清威 |本 | 通販 | Amazon

    ・読みやすさ★★★★★

    ・情報量 ★★★☆☆

    ・おすすめ度★★★★★

    著者の方は、弁護士兼公認会計士の方ですので、法務関連・財務関連共に手厚く記載されています。また、物語形式になっているので、非常に読みやすく、M&Aについて学びたい方の1冊目として非常におすすめです。また、臨場感もある物語となっていますので、読みごたえもあり面白いです。

    そして、章ごとに内容が区切られており、当該内容に関連するストーリーが各章の冒頭に記載されています。其々のストーリーの後には、詳細な解説もついているため、情報量も一定水準を満たしています。

    ●企業買収

    企業買収 | 木俣貴光 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon

    ・読みやすさ★★★★☆

    ・情報量 ★★★★☆

    ・おすすめ度★★★★★

    こちらも物語形式の書籍でして、著者はファイナンシャル・アドバイザー(FA)として有名で、当著以外でも複数のM&A関連書籍を執筆している方です。

    なお、M&Aに登場するアドバイザーは、大きくFAとDDを実施する専門家に分かれます。

    FAは、M&Aにおけるスキーム策定、交渉、契約締結などなど、M&A全体に対する総合的なアドバイスを実施していき、基本的に買い手もしくは売り手のどちらかの立場に立つ形となります。後ほど説明するファイナンシャル・アドバイザリー部門では、当該FAに関する業務を実施することとなります。

    一方で、DDを実施する専門家は、FAとは別で存在しており、財務的観点(財務DD)や法律的観点(法務DD)に特化して対象会社を調査する形となります。

    一つ前の書籍は、財務DD・法務DDの専門家が執筆した書籍ですが、こちらはFAが執筆した書籍ですので、また違ったテイストを楽しめるかと思います。

    こちらの書籍は、FAS時代、FA業務に従事されていた上司からおすすめされた書籍ですので、将来的にFA業務に従事したい方にも十分役立つ内容となっています。

    一つ前の書籍よりも、こちらの方がやや本格派な印象です。

    FASにおける主要な部門の説明と関連書籍

    次に、FASにおける主要な部門の説明と関連書籍をご紹介させていただきます。

    ①  ストラテジー部門

    ストラテジー部門では、M&A戦略策定支援、投資先選定支援、ビジネスデューデリジェンス(BDD)、投資基準策定、モニタリング支援等を手掛けています。

    メイン業務は、BDD業務となってくるイメージでして、戦略コンサルティングファームが得意とする領域と重なってくる印象です。

    正直、会計士でストラテジー部門へ転職された方は、私の知り合いでは1人もいない状況です。理由としては、M&Aといえば、FDD、バリュエーション、FAなど、M&A実行フェーズ(エグゼキューション)に関連する部門が人気なので、M&A実行前の、より上流部分に関する戦略を策定するストラテジー部門の存在を認識している方がそもそも少ないことが考えられます。戦略コンサルティングファーム、Big4コンサルティング部門出身者が多い印象です。

    M&A戦略策定関連で、1冊ご紹介します。

    ●M&A戦略の立案プロセス

    M&A戦略の立案プロセス | 木俣 貴光 |本 | 通販 | Amazon

    ・読みやすさ★★★★☆

    ・情報量    ★★★★★

    ・おすすめ度★★☆☆☆

    上記で紹介させていただいた、「企業買収」の著者である、木俣さんの書籍となっています。

    M&A戦略を、市場浸透型M&A戦略、製品開発型M&A戦略、市場開拓型M&A戦略、垂直統合型M&A戦略、多角化型M&A戦略に分類し、其々について詳細に説明がされています。

    M&Aに興味がある方には非常におすすめですが、会計士でストラテジー部門を目指される方が少ない点を鑑みると、FAS業務の理解という観点では、優先順位は低くなる書籍となっています。

    ②  ファイナンシャル・アドバイザリー(FA)部門

    FA部門は、主にM&Aの実行フェーズ(エグゼキューション)において各種アドバイザーや利害関係者の調整、価格交渉等を行い、案件全体を進める役割を担います。M&Aアドバイザリー業務と言った場合、通常はこのFA業務を指すことになります。

    会計・税務・法務・ファイナンス等、幅広い知識をインプットしておく必要があり、まさに総合格闘技と称される業務となっています。業務内容は金融機関の投資銀行部門と重なりますが、投資銀行と比べると案件サイズは小さい印象ですので、投資銀行とそこまで競合することはないのかもしれません。

    会計士は、2~3割くらいの印象です。会計士以外ですと、証券会社など金融機関出身者が多いかと思います。

    Big4ですと、KPMG FASのCorporate Finance部門のみバリュエーション部門とFA部門が一体となっていますので、バリュエーションもFAも両方経験してみたい方は、是非選考を受けられると良いかもしれません。

    おすすめ書籍としては、まずは先程紹介いたしました、木俣さんの「企業買収」が挙げられますが、より詳細にM&Aプロセス全体を把握されたい場合には、下記の2冊がおすすめです。

    ●改訂5版 M&A実務のすべて

    改訂5版 M&A実務のすべて | 北地 達明, 北爪 雅彦, 松下 欣親, 伊藤 憲次 |本 | 通販 | Amazon

    ・読みやすさ★★★★☆

    ・情報量    ★★★★★

    ・おすすめ度★★★☆☆

    ●企業買収の実務プロセス(第3版)

    企業買収の実務プロセス(第3版) | 木俣貴光 |本 | 通販 | Amazon

    ・読みやすさ★★★★☆

    ・情報量    ★★★★★

    ・おすすめ度★★★☆☆

    上記2冊については、私も書店で立ち読みした程度で、実際に購入には至っていないのですが、実際にFA業務に従事している友人に聞いてみても、FA業務の関連書籍としてはメジャーなようです。

    FA業務に興味のある方は、上記2冊のうち気に入ったほうを購入されてみても良いのかもしれません。

    ③  財務デューデリジェンス(財務DD)部門

    財務DD部門は、数あるFASの部門の中でも、監査法人勤務の転職先として最も人気の部門となっています。あくまで肌感覚ですが、FASに転職する会計士の6~7割くらいは、この財務DD部門に転職していく印象です。理由としては、財務DD業務自体が監査と類似した業務となっており、FAS業務の中でも最も監査法人での経験を活かしやすい業務となっているからです。そのため、財務DD部門に所属している方の殆どが、監査法人出身者となっています。

    財務DDは、一般的には買収監査と呼ばれており、企業を買収・売却する際に対象会社の財務的なリスクや検討すべき論点を網羅的に洗い出す作業を指しています。

    財務DDを実施する趣旨は、とある企業を買収・売却しようとしている企業が、M&Aのプロセスの中で早期に財務のリスクや収益力、財政状態(運転資本や有利子負債の状況)等を把握することにより、効果的なM&Aを実施するためでして、企業価値評価や契約書交渉での主要な論点・リスクを事前に洗い出す作業となります。

    実施する作業自体は、監査と共通する部分も多いのですが、目的は監査と異なるため、「監査脳」からの頭の切り替えは、一定程度必要となってきます。

    財務DDに関する専門書籍と言えば、圧倒的に下記がメジャーとなっています。

    ●M&Aを成功に導く 財務デューデリジェンスの実務〈第4版〉

    M&Aを成功に導く 財務デューデリジェンスの実務〈第4版〉 | プライスウォーターハウスクーパース株式会社 |本 | 通販 | Amazon

    ・読みやすさ★★★☆☆

    ・情報量    ★★★★★

    ・おすすめ度★★★★★

    私自身、財務DDに携わったことはないのですが、こちらの書籍は持っていますし、財務DDと言えばこの書籍一強な印象です。

    一方で、全688ページと、非常に分厚い書籍となっていますので、何も考えず頭から読み始めるというよりは、しっかり目次に目を通し、全体像を把握した上で、総論的な箇所を読み、具体的な説明箇所については強弱をつけて読む、など効率的に読まれることを推奨します。

    加えて、FASで財務DD業務に携わっている友人に聞いてみたところ、下記の2冊を薦められました。

    其々絶版になっているため、購入しようとすると定価では買えないかもしれませんが、将来的に財務DDに携わる確度の高い方で、上記の「M&Aを成功に導く 財務デューデリジェンスの実務」以外でチャレンジされてみたい方は、是非読まれてみてはいかがでしょうか(私が読んだことのない書籍ですので、大変恐縮ですが、読みやすさ・情報量・おすすめ度の評価はしていません)。

    ●戦略的デューデリジェンスの実務―M&Aによる成長を実現する

    戦略的デューデリジェンスの実務―M&Aによる成長を実現する | KPMG FAS |本 | 通販 | Amazon

    ●M&A統合型財務デューデリジェンス

    M&A統合型財務デユーデリジェンス | デロイトトーマツFAS |本 | 通販 | Amazon

    まとめ

    今回は、

    ・M&A全体像の把握
    ・ストラテジー部門
    ・ファイナンシャル・アドバイザリー(FA)部門
    ・財務デューデリジェンス(FDD)部門

    の4点について、業務内容の紹介をしつつ、関連書籍を紹介させていただきました。
    次回は、主にバリュエーション部門及び事業再生部門について、業務内容及び関連書籍の紹介を出来ればと思います。
    最後までお読み下さりありがとうございました。

    この記事を書いた人

    慶應義塾大学経済学部卒業。公認会計士試験に合格後、2017年2月より有限責任監査法人トーマツへ入所し、会計監査業務、内部統制監査業務、定期採用関連業務に従事。その後2020年7月より、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社にて企業価値評価業務や会計監査支援業務、財務分析業務等に従事。
    2022年4月より株式会社Clearにて経営企画業務、その他コーポレート業務全般(経理、労務、財務、法務)に従事。

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