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公開日:2023/11/16

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CPASSの視点から見た監査法人 2023年版

以前、CPASSでご紹介させていただきました「CPASSの視点から見た監査法人」が監査法人への就職活動をしている論文式試験受験生の方々の参考になっているという声が寄せられましたので、最新の2023年版を執筆させていただくことになりました。前回の記事と重複する部分もあるかと思いますが、ぜひ、ご参考にしていただければと思います。

公認会計士の就業場所と言えば、誰しもが思い浮かべるのが監査法人です。変動要素もあるので正式な統計データを明示はしませんが、日本全国の全ての会計士の3~4割は監査法人で働いていると言われています。会計士試験の論文式試験に合格した方の9割以上がまず監査法人に就職すると言っても過言ではなく、8割程度は大手監査法人に就職する傾向にあります。ちなみに、2021年3月31日時点では日本全国に存在する監査法人数は258法人でしたが、2023年10月31日現在、監査法人数は286法人となっています。実にこの2年半で監査法人が28法人も増加(110.9%)しているということは業界を語る上で無視できない大きなトレンドとなっており、今一度、CPASS独自の視点から監査法人をある程度、整理していきたいと考えました。

【大手監査法人】

言わずと知れたBig4と呼ばれる国際会計事務所のメンバーファームの監査法人です。具体的には、有限責任監査法人トーマツ(Deloitte)、EY新日本有限責任監査法人(EY)、有限責任あずさ監査法人(KPMG)、PwCあらた有限責任監査法人(PwC)となります。但し、PwCあらた有限責任監査法人はPwC京都監査法人と統合され2023年12月1日より「PwC Japan有限責任監査法人」となる予定です。

業界に詳しくない人からは、「公認会計士と言えば働いているのは4大監査法人だ」と思われている程に超メジャーな職場であり、そのクライアントは日本を代表する企業群で、日本経済の中枢を担う企業の監査業務はまさに公認会計士が「市場の番人」と言われる所以を体験することができるでしょう。かなり規模の大きな企業の対応をするため、法人の人数規模も極めて大きく、パートナーまで昇格することは容易ではありません。しかし、そこに至る過程において、会計専門家としての能力はもちろん、クライアントとの関係構築力、案件コントロール力、法人内調整力など、様々な能力を磨くことができるのではないかと思います。公認会計士を志す多くの受験生にとって、4大監査法人はまさに憧れの職場とも言えるのではないでしょうか。

大手監査法人に新人として入社するためには、実年齢や前職の有無、コミュニケーション能力などが大きく関係してきます。雇用対策法では採用時に年齢制限をしてはいけないと定められていますが、法人内の組織バランスなどを考えると、どうしても年齢は無視できないポイントになっていると言えます。基本的に大手監査法人は20代から30代前半で論文式試験に合格した方をターゲットに定期採用活動を行いますので、年齢が高くなるにつれて選考ハードルは高まっていきます。そして、30歳半ばを超えたあたりから、新人として入社することのハードルが一気に高くなってきます。30代半ばを超えて採用される可能性があるとすれば、上場企業で経理業務に従事していた方や、コンサルティングファームで会計系業務に従事していた方、または、金融機関や公務員として働いていた方など、何かしら評価に値する実務経験をお持ちの方に限られてくるのが実態です。そのため、大手監査法人に憧れて30代半ばを超えてから会計士試験に合格したものの、採用されなかったということは珍しいことではありません。

では、最初に大手監査法人に入れないと、その後は絶対に大手監査法人に行くことができないのか?というと、そんなことはありません。準大手監査法人や中堅監査法人で数年の実務経験と共にインチャージなどの経験を積んだ方であれば、中途採用で大手監査法人へ入社することは可能です。大手監査法人での勤務経験は職務経歴上、プラス評価をされることが多い(反対に言うとマイナス評価をされることがない)ので、公認会計士だったら一度は働いてみたい職場と言えるのかも知れません。しかし、大手監査法人は一定の期間を経過すると多くの方々が次のキャリアを目指して転職していく職場環境であり、年齢が高くなっても残っていられるのはパートナーになっていく一握りの人材になりますので、パートナーを目指さないなら中途で大手監査法人を選択することは十分に検討する必要があるかも知れません。まとめると、大手監査法人はパートナーを目指し働き続ける職場としても、目指しているキャリアを実現させるために経由する職場としても優れていると言えるでしょう。

なお、シニアマネージャーやパートナーになってから、大手監査法人から同様に大手監査法人に転職をするパターンの方がたまにいらっしゃいます。それらの方は、他の監査法人が招きたいと思う位の人脈や実力がある方々なので、そのままパートナーとして転職先の大手監査法人のコアメンバーになることが多いのも特徴です。用意されている席は非常に少ない、ある種、過酷な競争を強いられるキャリアになるとは思いますが、大手監査法人のパートナーに上り詰めることができれば、社会的地位や年収面でも非常に優れた立場であると言えますので、公認会計士の一つのキャリアとして念頭に置いておくのも良いと思います。

【準大手監査法人】

準大手監査法人の代表格が太陽有限責任監査法人(Grant Thornton)です。他にも、三優監査法人(BDO)、東陽監査法人(Crowe)、仰星監査法人(Nexia)、PwC京都監査法人(PwC)などもありますが、前述の通り、PwC京都監査法人はPwCあらた有限責任監査法人と合併して「PwC Japan有限責任監査法人」となる予定です。更に、東陽監査法人と仰星監査法人が合併に向けて協議をしていることが他メディアでも報じられており(https://diamond.jp/articles/-/326540)、準大手監査法人は規模を拡大する戦略を取るところが増えていく可能性があります。

なお、準大手監査法人もそれぞれに国際会計事務所のメンバーファームになっており、一部、国際的な業務にも従事しています。また、超大手企業は多くありませんが、大手監査法人に遜色のないレベルの企業をクライアントに有していることも特徴です。また、業務品質も一定水準以上のレベルを保持しており、大手監査法人と比べると一人一人の守備範囲も良い意味で広く、幅広い経験を積むことができる点は大きな魅力だと言えます。また、大手監査法人と比べると、昇進・昇格のスピードもやや早い傾向にあり、能力の高い方は早期に出世することができる点も魅力の一つです。大手監査法人のネームバリューと比べると、正直、劣る点は否めませんが、だからと言って転職時に大きなネックになるようなこともなく、CPASSの観点からすると非常に良い職場ではないかと思います。また、準大手監査法人は定期採用で40歳を超えた方も採用対象にしているため、30代半ば位から公認会計士を目指し始めた方にとっても、現実的に就職ができる優れた職場としてお薦めです。

【中堅監査法人】

アーク有限責任監査法人(Kreston)、ひびき監査法人(PKF)、監査法人A&Aパートナーズ(Plante&Moran、Morison KSi Limited)、UHY東京監査法人(UHY International)などが、中堅監査法人のカテゴリーになるかと思います。こちらも国際ネットワークに加盟していますが、準大手監査法人と比較すると、よりドメスティック色が強く国内系の業務がメインという印象です。また、準大手監査法人と比較するとよりアットホームなサイズ感で、パートナーやマネージャーとの距離感も近く、環境に馴染むことができると大変働き易い職場と言えます。監査法人業界の中でも就業期間が長い方々が多い印象です。大手監査法人や準大手監査法人で働いていた方であれば、比較的容易に転職ができる環境でもあるため、一度、監査法人の外に出た方々が出戻りをして、ゆくゆくはパートナーを目指すというキャリアプランを描く時にも良いフィールドと言えるかも知れません。また、定期採用で新人も採用しますので、こちらも年齢がやや高くて大手監査法人は難しいと感じられる方に最適な就職先と言えるのではないでしょうか。

【ベンチャー・IPO特化型監査法人】

監査法人アヴァンティア、ESネクスト有限責任監査法人、有限責任パートナーズ綜合監査法人、監査法人Growthといった、ベンチャー・スタートアップの支援に強みを持っている監査法人も注目されています。特に、ESネクスト有限責任監査法人や2023年8月に設立されたばかりの監査法人GrowthといったIPOに特化した監査法人の登場は、近年の監査法人のトレンドの中でも印象深いものです。大手監査法人はあれだけ多くの人員を抱えていながらも、IPOに関する業務は多大な工数と労力がかかる関係で想像以上にIPOに関する業務が少ないと言われており、確実にIPO監査等の経験を積みたいという方はIPO特化型監査法人に行くのが一つのトレンドにもなっていると言えます。

【その他の監査法人】

他にも、RSM清和監査法人(RSM)、監査法人日本橋事務所(Baker Tilly)、八重洲監査法人(Kreston)、清陽監査法人(Baker Tilly)、新創監査法人、井上監査法人、Mazars有限責任監査法人(Mazars)、Mooreみらい監査法人(Moore)などが監査法人の売上ランキングでは上位に位置する監査法人として、一定以上の知名度と存在感を出しています。こちらも採用人数は多くないものの定期採用活動も行っていますし、通年で中途採用も行っています。上記のような監査法人はやはり、アットホームな職場環境であるようで、長年勤務しておられる方も少なくありません。それぞれの特徴や個性もありますので、興味がある方はしっかりと情報収集をして自身にマッチする職場を探し当てて欲しいと思います。

【注目の新設監査法人】

最後に、CPASSが注目している新しい監査法人について触れたいと思います。史彩監査法人、ゼロス有限責任監査法人、監査法人FRIQ、かなで監査法人、ななつぼし監査法人など、新しい監査法人が続々と登場しています。大手監査法人のパートナー達が新たに立ち上げた監査法人、比較的、若い公認会計士が集って立ち上げた監査法人、暗号資産交換業者に対する監査に強みを持つ監査法人など様々です。どの監査法人も様々な想いが込められて設立されていますので、単純に規模感だけに注目するのではなく、どのような特徴がある監査法人なのかをご自身の目でも確かめてみると、新たな発見があるかも知れません。

以上、公認会計士が働く職場として最もメジャーである監査法人に関して、最新情報をまとめてみました。監査法人は公認会計士のキャリアのスタートの場所であると同時に、監査が公認会計士の独占業務であることからも最終的に戻ってくる場所という考え方もできるかも知れません。準大手事務所の合併に見られる監査法人の巨大化傾向もありますが、新設監査法人が多数登場しているのもまた注目すべきトレンドです。しっかりと業界の動向にも注目しながら、ご自身にとって最適な監査法人を就業場所として選択できることができたら嬉しく思います。

CPASSでは、今後も業界全体のトレンドをしっかりと意識しながら、皆様にとって有益な情報をご提供していきたいと思いますので、ぜひ、楽しみにしていてください。

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この記事を書いた人

「人と繋がり、可能性を広げる場」CPASSを運営するスタッフ達です。CPASSメンバーは、20~40代まで幅広い年齢層の公認会計士達を中心に、キャリア支援のプロフェッショナルなど様々なバックグランドを持つメンバー達で構成されています。「絶対に会計人達の役に立つ情報発信する」、「CPASSにしか出せない価値を提供する」をミッションとして集まった熱いメンバー達です。CPASS独自の視点からの見解を是非、楽しんでください。

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