公開日:2021/05/06
CPASSの視点から見た監査法人
公認会計士の就業場所と言えば、誰しもが思い浮かべるのが監査法人かと思います。正式な統計データではありませんが、会計士試験の論文式に合格した方の9割以上が監査法人に就職すると言っても過言ではありません。ちなみに、2021年3月31日現在では日本全国に存在する監査法人数は258法人となっています。ここでは誰もが知っている監査法人をCPASS独自の視点から見ていきたいと思います。
【大手監査法人】
言わずと知れたBig4と呼ばれる国際会計事務所のメンバーファームの監査法人です。具体的には、有限責任監査法人トーマツ(Deloitte)、EY新日本有限責任監査法人(EY)、有限責任あずさ監査法人(KPMG)、PwCあらた有限責任監査法人(PwC)となります。業界に詳しくない人からは、「公認会計士と言えば働いているのは4大監査法人だ」と思われている程に超メジャーな職場だと言えます。そして、4大監査法人に行きたくても行けなかった方にとっては憧れの職場とも言えます。
大手監査法人に新人として入社する為には、実年齢や前職の有無、コミュニケーション能力などが大きく関係してきます。基本的な方針として、雇用対策法では採用時に年齢制限をしてはいけないと定められていますが、法人内の組織バランスなどを考えると、どうしても年齢は無視できないポイントになってくると言えます。基本的に大手監査法人は20代から30代前半で論文式試験に合格した方をターゲットに定期採用活動を行いますので、年齢が高くなるにつれて選考ハードルは高まっていきます。そして、30歳半ばを超えたあたりから、新人として入社することのハードルが一気に高くなってくるのです。30代半ばを超えて採用される可能性があるとすれば、上場企業で経理業務に従事していた方や、コンサルティングファームで会計系業務に従事していた方、前職での経験がある方など、何かしら実務経験をお持ちの方に限られてくるのが実態です。そのため、大手監査法人に憧れて30代半ばを超えてから会計士試験に合格したものの、採用されなかったということも多くなってしまいます。
では、最初に大手監査法人に入れないと、その後絶対に大手監査法人に行くことができないのか?というと、そんなことはありません。準大手監査法人や中堅監査法人で数年の実務経験と共にインチャージなどの経験を積んだ方であれば、中途採用で大手監査法人へ入社することは可能です。但し、大手監査法人は一定期間が経過すると多くの方々が次のキャリアを目指して転職していく職場環境であり、年齢が高くなっても残っていられるのはパートナーになっていく一握りの人材になりますので、定年まで勤め上げる最後の就業場所として大手監査法人を選択するのは非常に危険だと思います。但し、大手監査法人での勤務経験は職務経歴上、プラス評価をされることが多いので、そういった観点からは公認会計士だったら一度は働いてみたい職場と言えるのかも知れません。まとめると、大手監査法人は一生働き続ける場所ではなく、目指しているキャリアを実現させる為に経由する職場として優れていると言えるでしょう。
なお、シニアマネージャーやパートナーになってから、大手監査法人から大手監査法人に転職をするパターンの人がたまにいらっしゃいます。その方は、他の監査法人が招きたいと思う位の人脈や実力がある方々なので、そのままパートナーとして大手監査法人のコアメンバーとして残ることが多いのも特徴です。用意されている席は非常に少ない、ある種、過酷な競争を強いられるキャリアになるとは思いますが、大手監査法人のパートナーに上り詰めることができれば、社会的地位や年収面でも非常に優れた立場であると言えますので、公認会計士の一つのキャリアとして念頭に置いておくのも良いと思います。
【準大手監査法人】
準大手監査法人の代表格が太陽有限責任監査法人(Grant Thornton)です。他にも、三優監査法人(BDO)、東陽監査法人(Crowe)、仰星監査法人(Nexia)、PwC京都監査法人(PwC)などもありますが、大手監査法人(Big4)と比較するとカテゴリーとしては多少曖昧かも知れません。なお、準大手監査法人もそれぞれに国際会計事務所のメンバーファームになっており、国内系の業務のみならず国際的な業務にも従事しています。また、超大手企業は多くありませんが、大手監査法人に遜色のないレベルの企業をクライアントに多数有していることも特徴です。また、業務品質も十分なレベルを保持しており、大手監査法人と比べると一人一人の守備範囲も良い意味で広く、幅広い経験を積むことができる点は大きな魅力だと言えます。また、大手監査法人と比べると、昇進・昇格のスピードもやや早い傾向にあり、能力の高い方は早期に出世することができる点も魅力的です。大手監査法人のネームバリューと比べると、正直、劣る点は否めませんが、だからと言って転職時に大きなネックになるようなこともなく、CPASSの観点からすると非常に良い職場ではないかと思います。また、準大手監査法人は定期採用で40歳を超えた方も採用対象にしている為、30代半ば位から公認会計士を目指し始めた方にとっても、現実的に就職ができる優れた職場としてお薦めです。
【中堅監査法人】
RSM清和監査法人(RSM)、監査法人A&Aパートナーズ(Plante&Moran、Morison KSi Limited)、ひびき監査法人(PKF)、アーク監査法人(Kreston)などが、中堅監査法人のカテゴリーになるかと思います。こちらも国際ネットワークに加盟していますが、準大手監査法人と比較すると、よりドメスティック色が強く国内系の業務がメインという印象です。また、準大手監査法人と比較するとよりアットホームなサイズ感で、パートナーやマネージャーとの距離感も近く、環境に馴染むことができると大変働き易い職場として監査法人の中でも就業期間が長い方々が多い印象があります。大手監査法人や準大手監査法人で働いていた方であれば、比較的容易に転職ができる環境でもある為、一度、監査法人の外に出た方々が出戻りをして、ゆくゆくはパートナーを目指すというキャリアプランを描く時にも良いフィールドと言えるかも知れません。また、定期採用で新人も採用しますので、こちらも年齢がやや高くて大手監査法人は難しいと感じられる方に最適な就職先と言えるのではないでしょうか。
【その他の監査法人】
他にも、監査法人アヴァンティア、八重洲監査法人(Kreston)、清陽監査法人(Baker Tilly)、UHY東京監査法人(UHY)、赤坂有限責任監査法人、監査法人日本橋事務所(Baker Tilly)、Moore至誠監査法人(Moore)などが監査法人の売上ランキングなどでは上位に位置する監査法人として、一定以上の知名度と存在感を出しています。こちらも人数は多くないものの定期採用も行っていますし、通年で中途採用も行っています。ここに属する監査法人はやはり、アットホームな職場環境であるようで、長年勤務しておられる方も少なくありません。それぞれの特徴や個性もありますので、興味がある方はしっかりと情報収集をして自身にマッチする職場を探し当てて欲しいと思います。
ここでは、公認会計士が働く職場として最もメジャーである監査法人に関して、まとめてみました。監査法人は公認会計士のキャリアのスタートの場所であり、また、他業界で働いた方々が戻る場所でもあると言えます。各監査法人にはそれぞれの特徴がありますので、興味がある人はそこで働いている方々の意見なども直接聞きながら、しっかりと情報収集をするようにして欲しいと思います。
CPASSでは、公認会計士が活躍する様々な職場について、独自の視点でご紹介させていただきます。他のカテゴリーのコラムも是非、ご覧になってみてください。
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この記事を書いた人
「人と繋がり、可能性を広げる場」CPASSを運営するスタッフ達です。CPASSメンバーは、20~40代まで幅広い年齢層の公認会計士達を中心に、キャリア支援のプロフェッショナルなど様々なバックグランドを持つメンバー達で構成されています。「絶対に会計人達の役に立つ情報発信する」、「CPASSにしか出せない価値を提供する」をミッションとして集まった熱いメンバー達です。CPASS独自の視点からの見解を是非、楽しんでください。
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