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公開日:2022/09/30

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CFOとして開発系ベンチャーを支える、富取祐香(株式会社Xenoma)のキャリア!

今回のロールモデルは、株式会社Xenomaの富取祐香さんです。PwCあらた監査法人、中小企業のバックオフィス支援業務を経て、最先端技術を有する開発系ベンチャーのXenomaへ。開発系ベンチャーに興味がある方やCFOを目指す女性の方にはとてもおすすめの記事となっておりますので、ぜひご覧ください。

    富取祐香さんのプロフィール

    富取 祐香

    株式会社Xenoma
    取締役CFO
    公認会計士

    富取祐香さんの略歴

    2010年 公認会計士論文式試験合格
    2012年 あらた監査法人(現・PwCあらた有限責任監査法人) 入社
    2014年 株式会社ネクストイノベーション 入社
    2015年 株式会社Xenoma 取締役就任(現任)

    01. 会計士を目指したきっかけ

    ――富取さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。

    小さい頃から負けず嫌いで、古い常識だとは思いますが、女性だからといってお茶汲みばかりではなく、やりがいのある仕事がしたいなと思ったのが出発点でした。

    そこで、資格があるとやりがいのある仕事をしやすいという話を親から聞き、せっかく挑戦するならば難しい資格に挑戦しようと思いました。

    医者、弁護士、税理士は知っていましたが、税理士と似た資格で公認会計士という資格があることを知りました。当時はあまりよくわかっていなかったのですが、税理士よりも上らしいと聞き「じゃあ、それ目指そう」と思って会計士を目指すことを決めました(笑)。

    高校3年の春休みまで特に勉強をしてはいませんでしたが、 ちょうどその頃にCPAから「体験に来てみませんか」というハガキが来て、受けてみたら、国見先生の講義がとてもわかりやすくてCPAに入ることを決めました(笑)。

    02. 合格後から監査法人を退所するまで

    ――3年生で受かった後、CPAのチューターを経てPwCあらた監査法人に入社されましたが、 当時、入社後のキャリアプランについて考えはありましたか?

    明確には考えていなかったのですが、「きっと監査を一生やっていくわけではないんだろうな」とはなんとなく思っていました。監査が嫌いだとも思っていなかったのでやってみて決めればいいやぐらいの感じでした。

    ――他にも監査法人がある中でPwCを選んだ理由はなんですか?

    面接に行くまでは「ここが良い」といった考えは無かったです。
    ただ、当時のPwCは「さあ、可能性の海へ」という採用コンセプトを掲げていて、面接で使用した部屋が船を漕ぎ出す姿をモチーフにデザインされていました。その部屋のデザインにとても感動してPwCに行くことを決めました。

    ――入社してから2年3か月で監査法人を退所されていますが、退所しようと思った理由について教えてください。

    すごくラッキーなことに2回目の期末監査をするタイミングから、とある上場企業のクライアントの監査をインチャージと私の2人だけで回すというジョブがありました。そこで現場の仕事を一通りやらせてもらったことが大きな理由です。

    このまま監査法人で頑張ればインチャージを経験できるかもという期待はありましたが、インチャージを経験するために監査法人で待つか、新しい経験を求めて外に出るかというところで考えて、最終的には監査法人を出るという決断をしました。

    ――当時だと、2年3か月で法人から出るとなると同期では圧倒的に早い方だと思いますが同期の中でも一番早かったですか?

    そうですね、早い方でした。でも、意外と1番ではなくて、2番目か3番目ぐらいでした。

    03. 監査法人退所後からCFOになるまで

    ――監査法人退所後に勤めていた中小企業支援業務の具体的な内容について教えてください。

    私が入った時点で、既にいくつか走っていたプロジェクトがあったので、経理業務や給与計算をやりつつ、助成金の申請書を代行して書くといった業務を行っていました。

    あとは、スタートアップのバックオフィス系の業務を、週2、3日、他の社員と同じように勤務して行っていました。経理で入るのかと思いきや、法務が中心だったので契約書のレビューや利用規約の見直しを行っていました。

    ――様々な経験を積んでいく中でXenomaさんに関わっていくわけですが、XenomaさんのCFOに就任することとなった経緯について教えてください。

    Xenomaは東大発ベンチャーですが、東大の教授に事業化を任されたXenomaの社長と会社設立前からご縁があり、バックオフィス系の人材を探していたので、「そろそろ会社化するぞ」となった時に声をかけてもらいました。

    Xenomaを設立した直後は週2で関わっていました。ただ、研究開発型のベンチャーなので、資金調達をしなくてはならず、調達系の業務をメインに行っていました。その後、資金調達が決まった時に、投資家の人から「CFOはフルタイムでいてもらわないと困る」という話をいただきました。

    実際、監査法人にいた時も1社だけでなく、当然いろんなクライアントを順番に担当していましたし、 その会社にいる間もいろいろな仕事を受けていたので、「1社のために仕事をしてみるという経験もいいかな」と思いました。

    また、事業内容も世界でここしかないようなもので、Xenomaの社長も、中小企業支援でお世話になった社長とはまた別の意味で個性的で優秀な方だったので、フルタイムで入り込むということを決めて、 会社設立からちょうど半年後のタイミングで移行しました。

    04. Xenomaが提供している製品について

    ――Xenomaさんは東大発ベンチャーということで、高い技術力を用いて今まで世の中になかった商品を送り出していると思いますが、どのような製品を作っているか教えてください。

    Xenomaはスマートアパレルと呼んでいるプロダクトを「e-skin」というブランドで展開していて、それを使った医療ヘルスケアのサービスを提供している会社になります。

    スマートアパレルは「伸び縮みする回路を布の上に搭載することができる」という点が最大の特徴です。その技術の元になっているのが、 東京大学の電気工学系の染谷隆夫先生という教授の研究室で開発を進めている伸縮性のエレクトロニクスです。

    電気を通すものとして、充電ケーブルなどを思い浮かべてもらうとご理解いただける通り、曲がるものは非常に多いですが、 それ自体が伸び縮みするものはかなり少ないのですし、伸びないものを無理やり伸ばすと当然、ブチッと切れてしまいます。着る時や洗濯機に入れて絞る時に伸ばす力がすごくかかります。電気を通すものを服に入れるとなると、洗濯して水で壊れるというよりかは、伸ばす力で壊れるという要素が実は大きいので、伸縮性があるというのは非常に重要です。

     Xenomaだと、モーションキャプチャーをするための服や、心電図を長時間測り続けることができる服、体に電気を流しながらトレーニングできる服など、いろいろなものを製品として出しています。

    ――服を着るだけで、歩く際の動きやゴルフスイングなどを分析できるということですね。また、心電図を測定できる製品は、地方にいる高齢者の方が病院に行かなくても、服を送れば心電図を測定して、病院にデータを送ることも可能になるといった点でもすごくニーズがあると感じました。

    可能性はまだまだあるとは思いますが、プロダクトを増やしすぎても実行することが大変なので、今は新たな製品を増やすというより、今まで出してきた製品で、しっかり事業化していこうというフェーズに入ってきたところです。

    05. XenomaのCFOとして行ってきた具体的な業務について

    ――CFOとして資金調達を何度も経験されてきたと思いますが、今まで実際にどういったことをやってきたかについて教えてください。

    初期の頃は、バックオフィスの人員が私とアシスタントの方しかおらず、 契約書のチェック、給与計算などの経理業務をはじめとしたバックオフィス業務全てを2人で回してきたので、本当に日常業務で手いっぱいだった時期もありました。ただ、2018年の秋ぐらいにバックオフィス系で新たなメンバーが加わってくれて、そこからは少しずつ他の業務もできるようになってきました。なんでそうなったのかっていう感じではありますが、海外営業のチームリーダーみたいなことをやったりとか、今でも続けている広報だったりとかも担当していました(笑)。

    ――7年間とてもお忙しい日々を過ごされてきたと思うのですが、ここまで頑張ってこられたのには何か理由があるのですか?

    難しいですね(笑)。常に必死でやってきたという印象でしたが、すごく活き活きと開発をしている社員の姿や、「何々ができた」みたいなことを言っていたりする瞬間に立ち会ったときにやりがいを感じます。

    ――メンバーは総勢何名ぐらいになりますか?

    今は40人ぐらいで、技術系の方が多いです。スマートアパレルという謎の業種をやっているので(笑)、アパレルのデザイナーや、 エレクトロニクスのエンジニアもいます。それだけでなく、材料系やソフトウェア系のエンジニアも必要です。あとは、デバイスを服に付け外しする際にメカ筐体の設計も必要なので、メカのエンジニアも必要です。

    開発にも種類がこれだけありつつ、生産とか、 品質保証とかそういうのも必要になってきて、それに当然営業も入れば、バックオフィスもいれば、といった感じになるので、 非常に多岐にわたる人材がいて、それはそれで非常に面白いです。Xenomaが掲げている“Diversity & Weird”というスローガンの通り、非常に多様性があり、とても魅力的に感じています。

    ――これからIPOを目指して行くにあたって乗り越えていかないといけない課題はありますか?

    道筋がようやくクリアに見え始めてきた感じがしているので、あとは、そこをいかに着実に進んでいけるかという感じなのかなと思っています。

    ――IPOを達成した女性CFOとなれば相当注目されると思いますが、IPOを達成した先のことについて何か考えていますか?

    とりあえずIPOまで走りきらないと、その先について言う資格も無いとは思っています。ただ、優遇される側だったとしても、男女差別的な話はあまり好きじゃないのですが、女性の役員比率を上げなければならず、「女性の役員を探しています」といった話も結構見かけるので、「そういうのもできるようになるのかな?」みたいなことは考えています。

    ――「創業からIPOまでやりきりました。」となったら、経験値としてはすごいと思います。女性起業家は最近それなりに増えていますが、女性CFOはなかなか僕もまだ聞かないので、1人出れば続く人も出てくると思います。なので、あと数年、走らなきゃいけないのかもしれないですね(笑)。

    頑張ります(笑)

    06. 富取祐香さんがCFOを目指す若手会計士に伝えたいこと

    ――スタートアップ系やCFOに興味ある若い方は、多くいらっしゃると思うので、そういった方々に対して、「いざ飛び込むならこういうことを大事にした方がいい。」といったアドバイスをいただけますか?

    若くて怖いもの知らずの時にCFOの話が来たので、そのまま乗っかっちゃったんですけど、 本当だったらCFOの直下で経験を積んだり、投資家側を経験してみたり、ファイナンスの話って、会計監査の領域と全く話が違うので、その辺もうちょっと勉強してからでもよかったかなと思っています。

    CFOの集まりに行くと、会計士の人、証券や外銀系のキャリアから来てる人、 投資家をやっていた人もいたりしますが、傾向的に色が違っているように感じます。やはり会計士の方は調達をしてくるCFOというよりも、管理部長系の方が得意な人が多いと思います。

    最終的にIPOに向けてチームを組んでいく中で、調達が得意な人を雇って補完し合いながらできたら良いだろうなと思いつつも、初期の頃は贅沢に人材を抱えられないと思うので、会計士で調達もやるとなったら、経験のある人に話を聞くなど、意識的に行動できたら良かったなと今なら思います。

    ――CFOとして7年間、頑張られてきてたと思うので、IPOを達成することを非常に楽しみにしています!

    まだまだ道半ばなので頑張ります!

    本日は貴重なお話ありがとうございました!


    株式会社Xenoma様のHPはこちら!

    この記事を書いた人

    「人と繋がり、可能性を広げる場」CPASSを運営するスタッフ達です。CPASSメンバーは、20~40代まで幅広い年齢層の公認会計士達を中心に、キャリア支援のプロフェッショナルなど様々なバックグランドを持つメンバー達で構成されています。「絶対に会計人達の役に立つ情報発信する」、「CPASSにしか出せない価値を提供する」をミッションとして集まった熱いメンバー達です。CPASS独自の視点からの見解を是非、楽しんでください。

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