公開日:2021/12/18
30代前半で監査法人パートナーとして活躍する宮城翔平(パートナーズSG監査法人代表社員、宮城綜合会計事務所代表)のキャリア!
今回のロールモデルは、パートナーズSG監査法人代表社員、宮城綜合会計事務所代表の宮城翔平さんです。BIG4に新卒で入社し、6年強でマネジャーに昇格、国内大手投資銀行へ出向を経験し、自身の事務所を開業。現在は監査法人で上場会社のサイナーを務め、CPAの講師も務められています。多彩なキャリアを歩む宮城さんが節々で何を考えていたのか、ぜひ参考にしてみてください!
宮城翔平さんのプロフィール
宮城 翔平
パートナーズSG監査法人代表社員
宮城綜合会計事務所代表
公認会計士・税理士
2010年、慶應義塾大学卒業後、監査法人トーマツのトータルサービス事業部に所属し、以降、法定監査業務、IPO関連業務、その他のアドバイザリー業務等に従事する。監査法人時代に日系大手証券会社に出向し、国内外M&Aやグループ内再編等に関する会計、税務、バリュエーション、ストラクチャリング等の相談対応業務を行い、帰任後は、全社的な相談対応業務を行うとともに、雑誌や書籍の執筆活動も行う。2019年に宮城綜合会計事務所を設立。主に、IPO支援業務、財務デューデリジェンス、企業価値算定、IFRS導入支援、IFRSに関する内部統制の構築業務等を提供。現在は、宮城綜合会計事務所の業務と並行してパートナーズSG監査法人の代表社員として、上場会社や上場準備会社の監査に携わる傍ら、品質管理責任者も担っている。
宮城翔平さんの略歴
2008年:公認会計士試験論文式試験合格。
2010年:監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)入所。
2017年:日系大手証券会社M&Aアドバイザリー部門に出向し、会計デスク業務に従事。
2018年:帰任後、本部テクニカルセンターを兼務し、連結会計、組織再編会計を担当。
2019年:有限責任監査法人トーマツを退社し、宮城綜合会計事務所を設立。
2020年:パートナーズSG監査法人入社。
2021年:パートナーズSG監査法人代表社員に就任。
01. キャリアの変遷、展望
――宮城さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。
昔からずっと音楽をやっていまして、高校はバンドの活動や、部活もオーケストラ部に所属していました。作曲もできたので、真剣に「音大に行きたい!」と考えていました。ですが、相談する人全員に音大に行くことを反対されました。そのため、将来音楽ができる環境を作りたい、そのような可能性を少しでも残したいと思い、ちょっと安直ですが、資格を取ることを決意しました(笑)。
(写真)ステージに立つ学生時代の宮城さん
――大学3年生で就職活動をしなかった理由とトーマツのTSに入社を決めた理由を教えてください。
もしかしたら一生いるかもしれない就職先を決めるにあたって、折角3年生で合格できたので、色々な方の話を聞いてみてから就職するのでも良いと思ったためです。1年間補習所に行く中で、同じ班の人たちにインタビューするなど、たくさん情報収集をしました。
「自分がやりたいことって何だろう」と改めて考えたときに、監査自体にそこまでの興味はありませんでした。ですが、公認会計士としてIPOに関与できるということを初めて知ったとき、非常に興味が湧いたのを覚えています。そこで、IPOをメインで担当しているトーマツの当時のTS(トータルサービス事業部)に入社を決めました。
もう1つ、監査法人の資産は人だと思っていて、どんな人と働くかが重要だと考えていました。当時色々な説明会に参加して、TSの方たちが一番自分たちの仕事を楽しそうに話してくれたのが印象的で、TSに行くことを決めました。
――監査法人ではどんなことをされていましたか?
前半6年強は、主に上場2社の監査、上場準備会社の監査、IPO支援業務を行っておりましたが、内部統制構築支援、人事コンサル等もやっていました。その後1年間少し投資銀行に出向し、もう1年程度働いて、合計9年ほど監査法人にいました。監査業務は一通り経験できて、すごく大きな規模の会社でなければ、主任として現場を回していましたし、IPO関係の業務についても、何社かクライアントが上場するという経験もできました。
IPO関係の業務は楽しいのですが、辛い場面もたくさんあります。内部統制の仕組みがしっかりしていない状態の監査となりますし、新しいことにチャレンジしている会社ですので、どうしてもバタバタすることが多かったですね。
――6年強という短さでマネジャーに昇格されたと伺いました。監査法人で高い評価を得られた理由を教えてください。
そうですね(笑)。テクニック的な話もあるかもしれませんが、軸としては主に二つあると考えています。
(1)仕事は約束の積み上げで構成されている
「今日メールを送ります」といった話から、契約で決まっているものまで、一つ一つの約束で積みあがっているのが仕事ですので、これを守ることが大事だと思います。状況によってはどうしても約束を守れないことが出てくる場面もありますが、前もって伝えて新しい約束を結ぶことで、約束の連鎖を繋いでいきました。口で言うとたやすく感じますが、やり切ることは中々難しいと感じています。
(2)相手の立場を考えて仕事をする
言葉でいうとこれもまた簡単そうに聞こえますが、究極的には、相手の立場を考えるということは本当に難しいと思います。監査を受ける側とする側では全く立場が違うので、それに気付いて実践することが大事です。例えば、減損の監査をする際、会計基準上、2期連続赤字ならば原則的に減損の兆候に該当します。しかし、単に「減損の兆候に該当します」と伝えるだけではなく、相手の立場、人生をかけた仕事をしている相手の気持ちを考えたうえで、コミュニケーションをとることができるかで、スムーズに監査ができるか否かが変わってきます。
――キャリアについて悩んでいたことはありましたか?投資銀行へ出向するきっかけは何だったのでしょうか?
転職に悩んだことは2回ほどありました。まず、3年目の時に、とあるベンチャー企業から経理部長になってほしいとオファーを頂いたことがあり、年収も1,000万円程貰えるということで悩んだのを覚えています。しかし、まだ監査法人で学べることもたくさんある中で、仮にベンチャー企業に行くとアウトプットが中心となるのではないかと考えました。また、若干25歳で会計の知識があるだけでは、部を纏めることができないのでは、と考えた結果、監査法人に残るという選択をしました。
その後、すごく大きな規模の会社でなければ、主任として監査業務を回せるようになり、6~7年目あたりで、戦略コンサルというハイキャリアへのチャレンジをするか、また、ベンチャー企業のCFO候補としてのお声がけもあり、転職を検討していました。
中々珍しいと思いますが、そのような転職話も当時の上司に包み隠さず相談していました。そういった相談をしていたこともあってか、法人の方から投資銀行への出向の話を頂き、出向することになりました。
――具体的に投資銀行では何をされていましたか?
投資銀行ではM&Aアドバイザリー部に出向しました。そこでは、いわゆるインハウスと呼ばれる、M&Aバンカーから相談を受ける役割を担っていました。弁護士の先生も同じようにデスクにいて、法律相談は弁護士の先生、会計の相談は私にきていました。主に会計やバリュエーションの相談、税理士法人への橋渡しを業務としていました。
――出向して良かったことを教えてください
監査法人以外の組織に行ってよかったことは2つあります。他の組織を知らなかったということもありますが、まず、こんなにも優秀で情熱を持った方々が、切磋琢磨をして1つの案件に取り組む姿を見られたことです。投資銀行は監査法人よりもアグレッシブな方が多い印象でした。もう1つは、良い意味でビジネスとしてお金を稼ぐということについて考えることができた点です。というのも、監査法人では営業責任を持つのはパートナーになってからですが、通常の会社では、営業部門に配属されれば1年目から自社のモノやサービスを売ることに真摯に向き合うことになりますし、投資銀行と監査法人とのギャップを強く感じました。
――出向から戻ってきてからの1年弱は何をされていましたか?
半分は上場企業の監査、もう半分は品質管理本部に所属し、複雑な会計論点の検討を行っていました。連結・組織再編・事業分離のスキームを現場で学んでいたので、様々な監査チームから複雑な案件の相談を受ける役割を担っていました。案件自体も難しいですし、M&Aの現場をここまで知っている経験者はいないので、重宝していただけて、ここのポジションは非常に楽しかったです。
――そこから独立をしようと思ったきっかけは何でしょうか?
監査法人を取り巻く環境も変化し、BIG4では大手企業の監査をしっかり行っていく方向性が窺え、法人としてもIPO案件を絞る方針に変化していきました。一方で自分のやりたいことはIPOに関連する業務でしたので、法人の方針と少しずつずれていったのがきっかけでした。自分のやりたいことをやるにはどうしたいいのだろうと考える中で、独立という道を初めて検討しました。
ありがたいことに、投資銀行やFASファームなどからもお声掛けをいただいていましたが、自分が本当にやりたいことを考えた際に、仮に転職しても2、3年で辞めてしまうのではないかと考え、そうなった場合誘っていただいた方達にも失礼ですので、最初から独立をしました。
――独立した後、どのような仕事をされていますか?
メインはIPOをしようとしている会社の中に入って、会社の仕組み作りをサポートすることです。内部統制作るといった話から、実際に仕訳入力を行うこともありました。
スポット案件ではM&Aまわりでいえば、財務デューデリジェンスやバリュエーション、その他連結を中心としたIFRS導入支援やIFRSの内部統制構築等もしています。
――パートナーズSG監査法人のパートナーとなったきっかけは何でしょうか?
独立してから1年程で同法人のパートナーに就任したのですが、トーマツの元上司が退職し、IPO監査をメインとする監査法人を立ち上げるために、第二創業のような形で同法人に参画をしたのがきっかけです。IPOを目指す企業は監査を受けないと上場できないという規制があるにもかかわらず、BIG4が案件を受けられないという状況に、社会的課題を感じていました。監査法人では上場会社のサインもしていますので責任の重みを感じております。
――今後のビジョンを教えてください。
考え切れていないというのが正直なところです。今はIPOを目指しているクライアントが多く、最低でも2年間の監査を経て上場するので、向こう数年は、当法人と契約してくれているクライアントの監査、サポートをしたいと考えています。あと、元々将来音楽をやりたいという気持ちで公認会計士になったので、そろそろ1曲書きたいなと思っています。いま、CPAで担当している修了考査講座や、今後はCPAラーニング内でも、今まで色々と経験してきたことを凝縮して、実務講座としてお届けできればと考えております。
02. 監査の魅力について
――監査の醍醐味について教えてください。
監査はつまらないって言って辞めてく人が多いけど、凄く面白いものだということを伝えたいです。
私は上場準備会社や上場会社では比較的規模が小さい会社での監査経験が多いので、そのような経験に基づく話とはなってしまいますが、まず1つあるのが、経営者とディスカッションできるチャンスがあるということです。公認会計士試験に受からないと、こんな経験をたくさんできる機会はないと思います。会計監査だと会計の側面から企業を見ることとなりますが、経営者はもちろん会社やビジネス、業界や今後の展望について色々考えて会社を経営していますので、その姿を生で見られるのが大変勉強になります。また、経営者のタイプも様々なので、オラオラ型の社長もいれば、調整型として役員や従業員の方に業務をお願いするような方もいるので、経営者のタイプを比較することもできて面白いです。また、皆さん夢をもって仕事をしているので、その姿に自分たちも勇気づけられます。
多種多様な業界を知ることができるのも強みです。例えば、私はインターネット広告企業や、特殊な例でいうとFX会社を担当しましたが、こういった会社がどのようなビジネスモデルで経営されているのか、消費者側のみならず、運営側の視点でも詳しくなることができます。監査をやらないと中々聞けないような社長の話もありますし、会社の内部資料も確認することになりますので、正直こんなに面白い仕事はないと思いますね。
――経営者とのコミュニケーション以外にも面白いところはありますか??
経営者の方と話ができないとつまらないのか、というと全くそんなことはなくて、考え方1つで視点を変えることができると思っています。例えば1年目で実施することの多い販管費の監査手続だとしたら、これを単なる作業だと捉えてしまうと、総勘定元帳を貰って、監査サンプリングをして、資料依頼をして、証憑突合するだけという、つまらない業務になってしまいます。
ただ、見方を変えれば、世の中にはどういうサービスを提供している会社があるのか、どのくらいの金額で取引しているのが分かるので、例えば、CM広告にいくらかかるのかといったことも知ることができます。これを意識できるかどうかで、学びが全然違うんですよね。なぜ、この会社がこのサービスにお金を払っているか、という意思決定や、どんな会社が存在しているのか。こういった、リアルなインプットが増えていく環境が揃っているのが監査の現場だと思っています。
コンサルティング会社でも同じことができるかというと、必ずしもそうでもないケースもあり、コンサルは何かの法律に基づいて実施しているわけではないので、クライアントに不都合な資料が提出されないこともありますが、監査ではそういう訳にはいきません。
――内部統制監査もスタッフの中では人気がない仕事だと思いますが、そこはどのように取り組んだら良いでしょうか?
監査では基本、経理担当者と話すことが多いですが、内部統制監査においては、会社の色々な部門の方にお話をお伺いできるチャンスです。例えば、人事給与関係の内部統制であれば人事担当者、営業まわりであれば営業担当者に話を聞いたり、工場に行けば生産管理の方にお話を聞いたりと、部門を横断的に見られる仕事も監査の特権だと思います。
また、内部統制の在り方も一様ではありません。がちがちに固めた統制を敷く会社もあれば、必要最小限の内部統制を構築している会社もあり、書籍では得られない知見もたくさん得られます。IPOを目指している会社は、内部統制を導入すると、その煩雑さに従業員の方々が困惑することもありますが、色々な内部統制の事例を知っていれば、「この内部統制が無いと、こういうミスや事件が発生しますよ」と説明することができます。こういった引き出しが多ければ、従業員の方々も納得して内部統制を受け入れやすくなります。
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