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公開日:2021/11/22

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会計事務所を独立し、自由な働き方で活躍する福田彩和佳(Iroae税理士事務所代表)のキャリア!

今回のロールモデルは、Iroae税理士事務所代表の福田彩和佳さんです。監査法人勤務後、税理士事務所とレンタル着物屋を同時に開業されています。働く場所を選ばず、ワークライフバランスを充実させている福田さんに、女性会計士のキャリアについて語っていただきました。ぜひ参考にしてみてください!

    福田彩和佳さんのプロフィール

    福田 彩和佳(ふくだ さやか)
    Iroae税理士事務所代表社員
    公認会計士・税理士

     慶應大学経済学部卒業後、有限責任監査法人トーマツで会計監査、上場準備会社のコンサルティング業務、四半期決算、期末決算、有価証券報告書の作成に携わる。

    事業構想大学院大学へ転職。自治体との地方創生企画立案、大学広報、経営者・首長取材を実施。

    Iroae税理士事務所を独立開業。税理士事務所の傍らで、着物のレンタルサービス事業を開始する。

    現在はIPOコンサルティング、内部監査体制の構築、JーSOX整備、税理申告書の作成、資金調達支援等のサービスを提供。出張CFOサービスでは、法人のバックオフィス体制を構築。

    福田彩和佳さんの略歴

    2012年:公認会計士試験論文式試験合格。
    2014年:有限責任監査法人トーマツに入社。
    2017年:事業構想大学院大学に転職。
    2019年:Iroae税理士事務所開業。着物レンタルサービス事業を開始。

    01. キャリアの変遷、展望

    ――福田さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。

    正直、将来の夢みたいなものは、学生時代にはありませんでしたね(笑)。大学入学当時、リーマンショックが起こって、経済情勢が不安定だったこともあり、何か強みを身につけなければという漠然とした不安があったのを覚えています。その時にたまたまCPAのパンフレットを貰ったことが、会計士を志したきっかけです。

    ――論文式試験合格後、トーマツに入社されたのですよね。

    論文式試験に合格した後、有限責任監査法人トーマツに入社しました。「基準に従った会計処理を正確に処理できる人ではなく、基準を使いこなせる人になりなさい」という採用担当パートナーの言葉が響いて、TS(トータルサービス)という部署に入社しました。合格時は全く明確な目標も無く、とりあえず監査法人で基礎を積んで一人前になろう、という気持ちでした。

    ――転職することになったきっかけはなんでしょうか?

    トーマツでは合計3年間働きました。仕事をしていく過程で、「監査とはどういう位置付けなのだろう」と考えた時に、経営者の意思決定から財務諸表まで反映されるプロセスの中で、最後の結果の側面しか見られていないのではないか、ということにふと気が付きました。そのため、源流である意思決定の部分に携わりたいと思い、数値を作る事業側に興味が出てきたことがきっかけでした。

    ――事業構想大学院大学ではどんなことをされていたのでしょうか?

    事業構想大学院大学は、経営者や新規事業担当、二代目社長等が通う事業計画の作成を支援する大学です。私は、その付属機関の雑誌出版部に所属して、経営者や自治体長に取材した記事を掲載する月刊誌の編集を任されました。

    メインで担当したのは、当時、ふるさと納税が賛否両論言われていた時代だったので、「健全な制度にするにはどうすれば良いか」ということをテーマに、特定の自治体に直接インタビューをしたり、全自治体にアンケートを取ったりして集計したものを、雑誌として纏めて自治体にお届けしていました。また、企業と自治体と大学院で協働し、町プロモーションをする研究会の運営企画をしました。出張も新潟から稚内などに赴くなどと、幅広いエリアで仕事をすることができました。

    ――そこから開業を始めたきっかけはなんでしょうか?

    事業構想大学院大学では合計2年間働いたのですが、自分の思った結果、期待されていた成果を中々出すことができませんでした。営業や企画、編集で、頑張り方を誤ってしまったと反省しました。そこで、ひとまず小さくてもいいので自分でビジネスをやろう、ということで思い切って開業しました。会計士ということもあり、自分の軸は会計だったので、まずは会計事務所を設立しました。

    ――会計事務所のほかにも着物レンタル屋を開業されたと伺いました。

    着物レンタル屋も同時並行で開業しました。たまたまネットサーフィンをしていた時に、「廃業してしまった京都の着物レンタル屋を買い取ってほしい」という公募が出ており、思い切って貯金をはたいて一式を譲っていただきました。

    着物は好きでしたが、着物に関する知識は何も持ち合わせがなかったので、最低限、着付けができるように勉強しました。元々トーマツ時代から地域経済に興味がありましたが、一回お金を回すことをしてみたいと思い、「何の事業でもいいからやってみよう!」という心持ちで始めました。

    (写真)着物を着た観光客の方々と福田さん

    ――その当時、拠点を東京から九州に移したということでしたが、その理由を教えてください。

    着物レンタル屋をやろうとしたときに住んでいたのが東京だったのですが、「東京圏から離れたらどんな変化があるのか?」と思い立ち、一旦すべての制約を取り払ってゼロベースで考えた結果、縁も所縁もない新天地の九州福岡に住んでみることにしました。当時、市が創業支援にも積極的に取り組んでいたということもありましたし、ド新天地だからこそ心機一転で取り組めるという気持ちもありました。

    現在は拠点を東京に戻していますが、開業時からネット集客をメインにしていましたので、地方のお客様もいらっしゃいます。コロナ前からリモート体制が整っていたので、コロナ対応もすんなりといきました。住所に対するこだわりが全くなくなったことと、コロナの環境が相まってお客様にもリモート環境でご対応できるようになったので、どこでも仕事ができる環境になりました。今なら海外でもいける気がします(笑)。

    ――独立した後、どのように軌道に乗せていったのでしょうか?

    知り合いも誰もいないし、売上も当然ゼロなので、まずは自分のことを知ってもらう必要がありました。

    会計事務所の方では、お客さんを探す方法として、まず「開業したての法人の方に会える環境とは何か?」を熟考しました。そこで、開業したての方が参加するイベントに参加して営業をしたり、SEO対策をしたりしてWeb集客に力を入れました。

    着物レンタル屋についても、「外国人はどういう日本サイトを見るのだろう?」という視点から逆算して考えました。お客様には韓国の方が多いので、着物のパンフレットを置いていただくように福岡市中のホテル中にお願いしたり、日本語学校にも情報発信をしたりしました。お客様とどこで出会えるのだろうという発想は、事業構想大学院大学で学んだことだったので、その発想を活用できたのが大きかったです。

    ――今後のビジョンを教えてください。

    税務やコンサル業も、お陰様でお客さんも順調に増え、ノウハウも自分の中で溜まってきています。今は全部私個人で手を動かしているので、ナレッジを紙面に落とし込んで、業務の標準化をし、組織化をしていきたいと考えています。

    また、着物もコロナから一時休業していますので、コロナが落ち着いたら復帰していきたいと思っています。もはや仕事とプライベートの境界線が若干曖昧ですが、自分が能動的にできているので、ストレスフリーで仕事ができていますね。

    02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)

    ――仕事する上で大事にしていることについて3つ教えてください。

    (1)お客様視点で考える

    この大切さに気付かせてくれたのが、税務申告を担当している若い美容師のお客様でした。美容院業界はコロナの影響が大きく、そのお客様の売上も40%減になってしまったのですが、助成金制度の対象が売上50%減でしたので、適用の対象外となってしまいました。資金繰りも苦しかったこともあり、休業という提案をさせていただいたのですが、そのお客様からは即答でNoと回答されました。理由は「リピーターのお客さんが多いので、予約できない環境を作り出すのはよくない」という熱い想いからでした。そこから、“お客さん目線”の姿勢を学び、自分の仕事を内省し、全ての業務を“お客さん目線”で組み立てようと常に考えながら仕事をしています。

    (2)自分の出せる価値は“判断”ということ

    プロフェッショナルとして心得ておくべきことですが、私の仕事は、実は知識自体はそこまで重要ではなく、「この状況であればこういう手段が一番良い」という“判断”が自分の価値だと考えています。基準を知った上で、お客さんの状況や環境を考えてどう適用されるか、という“判断”をいかにバリューとして出していくかが重要です。

    具体的な話としては、上場準備していたお客様が、ルールとして稟議規定を定めることになったときに、きめ細かく小回りの利いた顧客サービスを行うことを売りにしていた会社だったので、どこまでであればリスクのない範囲で事後稟議がOKなのか、というライン決めが重要な論点となりました。営業目線と運営目線を考慮に入れる必要があり、その結果、事後稟議を禁止するのではなく、一定程度のライン決めを双方の目線からリスクを勘案し“判断”をしました。稟議制度という知識よりも、ライン決めをするという”判断”が、私が出せる価値なのだということを再認識した経験でした。

    (3)相手と自分の認識ギャップをなくすこと

    “判断”の過程で気づいたことは、相手とのコミュニケーションを大切にすることです。自分のニュアンスと相手のニュアンスが全く違うことがあるので、相手との同意を絶対に省略しないということに重きを置いています。決め打ちしないでコミュニケーションをするということは、どこの仕事でも必要なスキルだと思います。大体揉める原因になるのはミスコミュニケーションですので、目指す姿のお互いのギャップを、具体的な言葉にすることが大事です。それも一番最初に挙げた仕事論の部分に戻りますが、お客さん目線があったからできたことだと思います。判断もコミュニケーションも、すべてはお客さん目線から始まることだと思います。

    03. 会計士という資格を取って良かったこと

    ――福田さんがさまざまな経験をされてきた中で、公認会計士で良かったなと感じることを教えてください。

    (1)ストレスフリーな働き方を選べる

    開業して何年も経ちますが、本当にストレスなく働けていると思います。やはり会計士は体系的な知識があるので、裁量を持って働くことができるのが大きいです。専門職として新卒からスタートしたので、労働時間よりも成果にコミットしていることが仕事の起点になっているおかげで、やらされている仕事や、無駄に仕事をやることが少なくなったように感じています。私が思う、ストレスの溜まる働き方のパターンは二つあって、一つは作業を「やらされている」ときと、もう一つは作業が溜まっているときです。今自分は事業主で、作業が誰かのためになっていますし、考える作業は歩きながらやることが多く、机に座る前に構想が終わっている状況ですので、ストレスフリーに働けています。

    裁量がある一方で、“判断”することのストレスももちろんありますが、お客様からの「ありがとう」の方が、苦労やストレスよりも大きく勝ると思います。

    (2)資格の強さ

    新天地の福岡で開業したての時に思いましたが、通常であれば、「営業に来た20代の若手女性」と思われてしまいますが、「公認会計士」とひとこと名刺に書いてあれば、一定の能力を示すことができるので、利点として大きいと思います。現に新天地の福岡でも公認会計士の資格が非常に活きました。単に資格に甘えることは良くないですが、資格に合わせに行くというマインドが根底にありますので、基準のアップデートを当たり前のようにやるマインドを最初から持てたのは大きいです。

    04. 福田彩和佳さんから若手会計士に伝えたいこと

    ――女性会計士に一言お願いします。

    女性だから、という問題に直面することが色々とあると思います。これは私の持論ですが、求人サイトに掲載されている女性会計士の求人には、経理補助や開示サポート等、簡単な作業が多い傾向にあると思います。女性会計士が”判断”する力や専門領域を伸ばすことは、逆張り戦略として、特に女性は差別化要因となるかと思います。悪い言い方だと時間の切り売りをする作業という名の仕事に溺れず、判断力を伸ばせるような仕事に就けるように戦略的に学んでいくことが大事です。時短で働くからこそ、時間に捕らわれない専門性を身に着けることで、成果や価値にコミットすることができると思います。現在は自営で育児休暇もないので、時間で判断されない環境にいますが、求められている期待値を超えていれば、時間の融通は幾らでも利くと思います。時間で判断されない環境を事前に作っておくことが大事です。

    ――キャリア相談、一歩踏み出せない人へ

    キャリア形成において、転職など、大きく環境を変える時が来ると思います。不安や怖いと感じるときは誰しもありますし、その時に単にやる気を絞り出すだけでは難しいと思います。ですので、私は知識や情報を集めることが大事だと思います。因数分解をしながら調べ進めると、大体8割位の不安は無くなると思います。調べると安心するし、ぼやっとした考えがより明確になると思います。

    私も着物屋を開業した当初は不安ばっかりでした。ですが、情報収集をして、沢山の不安要素を解消することができました。例えば、動いても着付けができるスキルを身に着けよう、キャッシュショートも固定費が掛からなければある程度回るので、固定費は最低限やろう、運営も周りを見てみようなど、調べることで問題は解決していくことができました。


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