公開日:2022/08/26
CEOとして、テクノロジーとおもてなしで、世界を変えていく 加茂雄一(株式会社CaSy代表取締役CEO)のキャリア!
今回のロールモデルは、株式会社CaSy代表取締役CEO、加茂雄一さんです。加茂さんは、監査法人でキャリアをスタートさせた後、経営大学院を経て、家事代行サービスを行う株式会社CaSyを設立されました。株式会社CaSyは2022年に上場も果たしています。今回加茂さんには、監査法人時代の思い出や起業のきっかけ、上場前の困難などを語っていただきましたので、ぜひご覧ください。
加茂雄一さんのプロフィール
加茂 雄一
株式会社CaSy
代表取締役 CEO
加茂雄一さんの略歴
2005年 早稲田大学商学部卒業。
2005年 中央青山監査法人入所。
2007年 太陽ASG有限責任監査法人入所。
2014年 株式会社CaSy設立・代表取締役就任。
01. キャリアの変遷
――加茂さんが会計士の勉強を始めたのはなぜですか?
私が会計士を始めた理由は主に2つあります。1つは安定した収入を得られそうだから、もう1つはチャレンジングさに魅力を感じたからです。私は大学時代商学部に在籍しており、学部に会計士の勉強をしている友人が数名いたため、そこで会計士という資格の存在を知りました。大学3年になって将来のことを考え始めた時に、資格を獲得すれば安定して高い給与がいただけるという収入面の良さと、最難関の国家資格であるというチャレンジングさに魅力を感じ、会計士試験の受験を決意しました。
大学3年の初めに勉強を開始し、大学4年の8月に2次試験に合格しました。
――試験合格後は監査法人に入所されましたが、監査法人ではどのような業務を行っていたのですか?
新卒で入所した中央青山監査法人では、主にグローバル企業の監査を行っていました。大きな会社のあるべき姿を若いうちに学ぶことができたのは非常に良い経験になりました。また、法人でもクライアント先でも人間関係に恵まれ、当時はこのまま会計士の仕事をずっと続けていこうと考えていました。
ただ、大企業の監査を続けていくうちに、会社の全体像を見てみたいという思いも芽生えてきました。そして会社の全体像を見渡すには規模の小さい会社を担当するのが良いと考え、そのような会社を多くクライアントとして抱える太陽ASG監査法人に移籍しました。太陽ASGでは、小規模クライアントの監査にとどまらず、IPOアドバイザリー業務やM&A業務、税理士事務所への出向など、様々なことを経験することができました。「この業務をやりたい!」と声を上げるとすぐにやらせてもらえるという風土が非常によかったと思います。様々な業務を体験しましたが、IPOアドバイザリー業務に特に興味を持ったため、最終的にはその業務の比重を大きくしていきました。
――その後はグロービス経営大学院に進学されました。なぜグロービス経営大学院に進まれたのですか?
グロービスに進んだ理由は2つあります。
1つ目は、会計士として働く上で自分ならではの強みを持ちたかったからです。私はIPOアドバイザリー業務やM&A業務に従事していたこともあり、ビジネス知識をある程度有していました。そこで、ビジネスに関する強みをより一層大きくしたいと考え、経営大学院でビジネスについて学ぶことを決意しました。
2つ目は、ベンチャー企業の社長方の志を学びたかったからです。IPOアドバイザリー業務ではベンチャーの社長方とコミュニケーションを取る機会が多かったのですが、彼らについて印象的だったのは、常に自分の志を熱く語っていたことです。彼らと日々接する中で、なぜ彼らはそのような志を持つようになったのだろう、自分の志とはなんだろうと考えるようになりました。そして経営者の志について一層理解したいとの考えから、志を大切にしているグロービスへの進学を決めました。
――グロービスでビジネスを学んだ後起業されましたが、どのようなきっかけで起業に至ったのでしょうか?
起業のきっかけも2つあります。
1つ目は、ビジネスを行う上での志が見つかったことです。グロービスで私が受講した授業のひとつに、3か月でビジネスプランを作成するというものがありました。その授業で、私は会計士の経験を活かしてプランを100個ほど考えたのですが、授業の担当講師からは高い評価を得られませんでした。これらのビジネスには志が見えないと指摘されたのです。そこで、ビジネスを行う上での志とは何か、すなわち自分のビジネスを通じてどういう人たちを救いたいのかを改めて考え直すことになりました。志を考える中で頭に浮かんだのは、一番身近な家族の存在です。当時妻が妊娠中だったのですが、どうしたら妻の役に立つビジネスができるだろうと考え続けていました。そんなさなか、偶然家事代行というサービスを目にしました。試しに利用してみたところ、家事に関する妻のストレスが解消されたためか、妻に笑顔が増えるようになりました。私はこのサービスの利用を通じて、家庭内の作業を家庭外の専門家に依頼することで、家庭の笑顔を増やすことができるのではないかと考えるようになりました。そして、「従来は家庭内で行うのが当たり前とされてきた作業を家庭外の専門家に委託することで家庭に笑顔を増やす」という、CaSyの根底にある志を掲げるに至りました。
2つ目は、共に起業したいと思える仲間に出会えたことです。CaSyはたまたま授業で同じテーブルに座った3人で設立したのですが、偶然にも私たちは同じ志を持っていたり、チャレンジングな精神を持っていたりと共通点が多くありました。時には言い合いをすることもありましたが、根底にある考えが3人とも一緒だったからこそ、3人での起業にまでこぎつけることができたのだと思います。
02. 上場に至るまでの苦労
――実際に会社を興してみて、どのような困難がありましたか?
1つ目は、資金ショートしかけたことです。起業して2年ほど経った時、資金繰りが大変厳しくなったことがありました。原因は、ビジネス的に伸び切れていなかったり、資金管理が少し甘かったりといったことが重なったためです。当時は役員報酬を数か月ストップしたり、クライアントに支払いを待っていただいたりして、なんとかやりくりしていました。最終的には資金調達を行うことができて危機を脱したのですが、会社が好調であっても油断しないようにするというような危機感が醸成される経験となりました。
2つ目は、社員の3分の1が辞めていったことです。原因は様々あったのですが、当時上場を目指すタイミングだったため社内の規則をしっかり整備したことや、組織の規模が拡大していく中で私が社員ひとりひとりに時間を割けていなかったことなどが大きな原因だったのではないかと思います。この経験を通じて、社員ひとりひとりを愛していくことの大切さを再認識しました。今では社員との交流には時間を割くようにしていて、1週間に社員1人ずつ程度のペースで、彼らと様々な意見を交換する機会を設けています。
3つ目は、新型コロナウイルスです。特に1回目の緊急事態宣言の際にはかなり影響を受け、売上が前月比4割減ほどまで落ち込みました。流行がいつまで続くかわからないという危機感もあったため、コストカットのためにパート社員の方の契約を更新しないというような判断を下しました。この決断をする際は大変心苦しかったですし、経営者としての悔しさも感じました。
――上記のような困難を乗り越えてIPOを達成されましたが、IPOはどういった意図で行ったのでしょうか?
IPOの目的は、お客様やスタッフが私たちの法人をより信頼してもらえるようにすることです。私たちのビジネスは、スタッフをお客様の自宅に入れていただくサービスですので、信頼を得ることは非常に大事になってきます。IPOを達成しているということは、上場審査を通過したということですので、社内のスタッフ管理や個人情報管理がしっかり行われているということの証拠になると思います。私たちのサービスを信頼して利用していただくために、IPOを行いました。
03. 今後の展望
――今後の展望を教えてください。
中長期的な展望としては、お客様の人生をより一層豊かなものにするために、家事代行サービスにとどまらず、ベビーシッターや訪問介護などの領域にもチャレンジしたいと考えています。そしてその道筋として、短期的には家事代行サービスの中で1番お客様を抱える会社にしていきたいと思っています。私たちはITの分野に強みを持っているため、それを活かして家事代行業界を盛り上げていきます。具体的には、現在実証実験中のMoNiCaというサービスを活用していく予定です。MoNiCaは家事代行クラウドサービスで、お客様とスタッフのマッチングやスタッフ管理などをオンライン上で行えるというものです。このようなIT技術を活用して、家事代行サービスの利用者を増やしていきたいと考えています。
04. 加茂雄一さんから起業を目指す会計士へのメッセージ
――将来的に起業を目指す会計士に向けてメッセージをお願いします。
監査法人で経験を積んだ会計士が経営に携わる上で、プラスになるポイントは3つあると思います。
1つ目は、たくさんの経営者の志を知ることができる点です。監査を行う中で様々な経営者の方と触れ合うことになると思いますが、彼らはそれぞれ異なった素晴らしい志を持っています。たくさんの志を目の当たりにすることで、自分自身の志も醸成されていくと思います。
2つ目は、会社の課題解決の過程を目の前で見ることができる点です。起業後たくさんの課題に直面しましたが、監査法人時代にクライアントの課題解決事例をたくさん見ることができていたため、その経験を活かして自社の課題を比較的スムーズに解決することができたように思います。クライアントの困難に立ち会った際には、クライアントがどのような対策を講じていくのか、その背景にある経営者の心情も踏まえて理解するのが良いと思います。
3つ目は資金調達が容易になる点です。会計士であれば事業戦略などを数字的な説得力を持って説明することができるので、投資家や銀行からの信頼を得やすいと思います。IPOを達成した際にも、会計士としての知見をかなり活かすことができました。
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