人と繋がり、可能性を広げる場

公開日:2023/10/26

  • キャリア
  • グローバル
  • 独立
  • 監査法人
  • 経営者インタビュー
  • 駐在

【世界一周会計士】会計士の海外でのキャリアパスを考えるVol.2 前編 ~海外駐在と独立開業した方々のキャリア導入部分にフォーカス~

世界一周会計士の記事

太陽グラントソントン・アドバイザーズ様にて、これまで様々な会計士のインタビューの内容や世界一周中の経験を踏まえ、海外で働くイメージをするための講演の機会を頂きました。今回の記事はその講演の内容となっております。

    (司会)本日はよろしくお願いします。まずは簡単にお二方の自己紹介からお願いします。

    (古作)簡単に自己紹介をします。古いに作ると書いて古作と申します。本日は山田さんと一緒に、南米ペルーの首都リマから参加しております。数日前にマチュピチュを観てきて、明日からアマゾンに向かう予定です。

    私はあずさ監査法人のグローバル事業部に5年半在籍していました。途中、監査法人のDXを推進する部署に転籍し、統計分析による監査や、次世代監査、例えばドローン監査の導入などに携わっていました。

    監査法人を去年の7月に辞めて、同年の8月から世界一周を始めました。今後は中米、北米を訪問する予定です。

    今日は世界一周中に海外で起業した独立会計士や、海外のファンドマネジャーや経営者など沢山の方にインタビューをしてきましたので、その内容を織り交ぜてお話しできればと思います。

    どうぞよろしくお願いします。

    (山田)世界一周会計士として活動しています、山田智博です。私もあずさ監査法人に入社後、2年3ヶ月を経て、世界一周を見据えて独立し、昨年8月から世界一周の旅に出ています。

    監査法人退職後は、ファンドやリクルートコンサル、上場支援をやったり、マルチに活動しておりました。

    私は人との繋がりが広がっていくのがとても好きです。前職での繋がりや独立後の繋がりの中から、世界一周中も各国で色々な方にお会いする機会を頂き、旅をしながら勉強もさせてもらっていて、この環境にとても感謝しています。

    今日は、そこで伺うことができた発見や身になる話、面白かった話などを最大限皆さんにもシェアできたらなと思っております。どうぞよろしくお願いします。

    海外での働くスタイルを4つに分類

    (山田)今回の次回の研修では、会計士や会計人材の皆さんが海外で働く3つのケースについてお話したいと考えています。

    具体的には次の通りです。

    ①グローバルファームによる駐在

    ②海外で独立開業

    ③海外現地就職や事業会社等

    また、これら3つに加えて、④会計士・会計人材以外の視点も加えてみました。

    何故かというと、世界一周をしている中で、会計士や会計人材以外の方とも触れ合うケースが多く、「海外で働くキャリア」というテーマの中で会計士・会計人材の視点と比較できるのも良いと考えたからです。例えば、大手日系企業の駐在員や起業家、投資家、青年海外協力隊などです。

    区分けとしては、今回の研修では「駐在&独立開業」、次回の研修では「現地就職・事業会社&会計士以外の視点」にフォーカスして話そうと考えています。

    これらの形態に対して、該当する方のキャリアについて紹介するとともに、次の3つの視点をベースにお話できればと考えています。

    ・海外に出たきっかけ、その選択をした最後の一押し

    ・海外で感じた苦悩

    ・我々の感想

    それでは、本日もどうぞよろしくお願いします。

    グローバルファームによる駐在

    (古作)まず、グローバルファーム駐在員の方とは、タイ、カンボジア、イスラエル、ブラジルにてお話を聞きました。お話を伺った皆さんについて、それぞれ国別に具体的な駐在員の方の特徴、きっかけ、動機の3つの視点についてお話していきたいと思います。

    きっかけや動機、ターニングポイント

    発展途上国への強い好奇心からカンボジア赴任を決めた在原さん

    (古作)私からは、カンボジアに赴任された在原さん、イスラエルに赴任された木村さんの2名についてお話しさせていただきます。

    カンボジアでお会いした在原さんは、あずさ監査法人からKPMG Cambodiaへ駐在しています。

    在原さんは冒険心のある方で「欧米などの何もかもが整った国に行ったとしても、面白味が無い」と感じていて、むしろ、「次に何が飛び出してくるか分からないカオスな経験」をしたかったそうです。そこで、発展途上国を中心に監査法人の海外駐在のプログラムに申し込むことにしました。

    実際、僕らの経験を振り返ってみると、トラブルや思い出が多かったのが、先進国よりも発展途上国でした。インドのニューデリーでは何度も詐欺に遭ったり、カンボジアではそもそもハサミすらない床屋でめちゃくちゃな髪型にされたりと、とにかく今までの常識が通用しないシーンが多くカオスな体験ができるのが発展途上国です。ですが、裏を返せばそれが魅力でもあるとも感じます。皆さんも機会があれば、是非行ったことのない発展途上国に行ってみてください。

    ちなみに、在原さんは赴任当時、奥さんや子供もいらっしゃって、コロナの関係から、先に1年だけ在原さんが単身赴任をし、1年遅れて合流したとのことですが、奥さんの了承を得るために、かなり説得したようです(笑)。

    在原さんは、実は最初はカンボジア行きを家族から反対されていたそうです。家族のカンボジアへの評価は「地雷じゃないの?」だったそうです。ちなみに、地雷というのは本物の地雷のことです。

    カンボジアに行ったことが無い方にとっては、戦争と内戦のイメージを持つ方が多いと思います。これは私も現地で知ったのですが、1975年のポルポト政権時代、共産主義化を進めるために、組織的に知識人を殺害し、約150万人から200万人が犠牲となった凄惨な虐殺がありました。犠牲者は当時の人口の約1/4に相当するそうです。世界史を勉強された方はそのイメージを持たれているのだと思います。

    最終的には、「行ってみたい!」という在原さんの強い好奇心が勝ち、家族をひたすら説得して押し切ったそうです(笑)。コロナの影響もありますが、先に在原さんが1年赴任し、カンボジアでの生活が意外にも快適だということで、家族の方々も移住してきたとのことです。実際に移った後も、奥さんからのカンボジアの評価も非常に良かったそうです。

    私も実際に行ってみて、こんなにカンボジアが過ごしやすいとは思いませんでした。首都のプノンペンには実はイオンモールがあります。日本食は勿論のこと、中にマックスバリューも併設されているので、食には基本困らないと思います。

    学生時代の強烈なバックパッカー経験が糧となり、タイ駐在を掴み取った蓑毛さん

    (山田)私がご紹介するのはタイに駐在経験のある蓑毛さんです。まずは、蓑毛さんがどんな方なのか、そしてどんな家族構成なのかをお話できればと思います。

    蓑毛さんはとてもユニークな方で、そもそも公認会計士を目指したきっかけが、就職活動に失敗したからでした。というのも、学生時代にASEANをバックパッカー周遊した結果、強烈な熱気を感じ、将来は必ず海外で働きたいと考えていたからです。理系学部でしたが、理系の進路を辞め、海外に行き易い商社に絞り就活をしたものの、上手くいかず、「じゃあどうやったら海外で働けるだろう?」と考えた結果、”海外で働くため”の手段として会計士の資格を目指したのでした。

    その後、見事に会計士試験に合格した蓑毛さん。経歴はあずさ監査法人に入所し、タイ駐在プログラムの話を聞いて飛びついたそうです。願いが叶ってタイへ4年間の駐在へ。

    その後、日本に帰任するものの2年後にはタイへ現地採用で戻る形になりました。現在はKPMGタイのディレクターとして活躍されています。

    蓑毛さんのご家庭は、奥様も会計士でお子さんもいらっしゃいます。タイの良い所として、日本に比べて低コストで家政婦さんを雇うことができる所と仰っており、共働きでも育児に困ることなく過ごせているとのことでした。また、お子さんをインターナショナルスクールに通わせることができている点も、子育てという観点で非常に有意義だと仰っていました。

    蓑毛さんの駐在に踏み切った最後の一押しは、バックパッカー旅での強烈な体験が身体に刻みこまれていたからでした。ASEANを初めて訪れた際に、汚くて臭い国だけれども、現在進行形で国が成長しているということを肌で感じたそうです。

    人々が熱気や活気に溢れていて、街のみんながニコニコして明るく、優しくて、誰もが豊かになるために必死に努力している姿に胸を打たれ、蓑毛さんはそんな所で働きたいと強く決意されています。

    だからこそ、就活に失敗してもめげず、会計士の資格を目指し、合格後もタイへのプログラムがあると耳にしては、迷うことなく飛びついたのだと思います。

    イスラエルのスタートアップに魅せられて中東のシリコンバレーに駐在

    (古作)私達がイスラエルでお会いしたFASに勤められている木村さんについても紹介させてください。

    まずイスラエルはどこにあるか?をおさらいすると、エジプトとヨルダンに挟まれた国で、「中東とアフリカが丁度くっついている間のエリア」といった方が分かりやすいでしょうか。

    そして、木村さんは経歴が非常にエリートです。幼少期からアメリカで約7年生活しており、大学卒業後はシカゴ大学院で博士号課程に進んだ後、企業戦略に興味が湧き、KPMG FASへ就職し、その後KPMG Israelに赴任しています。

    イスラエルへ赴任する理由は、イスラエルのスタートアップ界隈が非常に魅力的だったからだそうです。実はイスラエルは「中東のシリコンバレー」と呼ばれているのをご存じでしょうか。人口ひとり当たりのスタートアップ数は世界最多です。

    ちなみに、木村さんには奥様とお子さんがいらっしゃって、家族全員でイスラエルへ赴任することになったそうです。赴任当時は相当な目に遭ったらしいですが、このエピソードも後ほど話したいと思います。

    木村さんが赴任する決意をした最後の一押しは何かというと、「スタートアップ界隈に興味があった」という木村さんの強い好奇心だったのですが、同時に「ブルーオーシャンな場所だったから」という理由も挙げていました。

    皆さんは「イスラエル」というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。自爆テロ、ガザ地区での爆撃、パレスチナ問題、中東戦争など、どちらかというと負のイメージをお持ちかと思います。

    しかしながら、木村さんは逆にそこに目を付け、イスラエル赴任を決意したそうです。メディアで報道されている負のイメージから、日本人はイスラエルを少なからず敬遠していますが、そこを木村さんはブルーオーシャンと捉えたのだと思います。実際、木村さんは国際政治を大学院で専攻されていたので、イスラエルの情勢に関しては熟知していたと仰っていました。

    もちろん、紛争というリスクはどうしてもゼロにはできませんが、先進的なスタートアップが続々と登場して、経済が急発展している国があるというのに、「小さいリスクを気にして行かないのは勿体ない!」と考えていたそうです。

    監査だけではなく営業の経験が欲しくて、南米ブラジルへ

    (山田)次に、ブラジルのMさん(匿名)がどんな方なのか、そして家族構成についてお話できればと思います。

    まず、私事で恐縮ですが、Mさんは私の初めての上司です。つまり、入社してからメインで配属された1社目の直属の上司でした。Mさんも大学卒業後に会計士試験の勉強を始め、合格されてからあずさ監査法人に入所しています。

    ブラジルへの駐在は、コロナが一旦落ち着いた2021年から始めており、残りの駐在期間は約1年とのことでした。Mさん自身は、元々は海外に全く興味がなかったものの、ひょんな事がきっかけで商社チームに配属され、次第に海外に目を向けるようになりました。

    今後監査をやり続けるかどうか、キャリアに悩んでいた際に、商社チームで仲の良かったシニアマネージャーから、「国によっては海外に駐在すれば監査以外のことができる。俺なんてマレーシアで、営業しかしていなかったぞ。」というアドバイスを受け、海外駐在に本格的に挑戦しようと志したそうです。

    これは、完全に余談ですが、その話を受けて本格的に「海外駐在へ行きたい!」と考えたMさんはTOEICをとりあえず勉強しまくったそうで、社内でTOEICの点数の伸び率が異常だと話題になっていました(笑)。

    シニアマネージャーから受けていたアドバイスにより、当初はベトナムやタイへの駐在を希望し、監査ではなく営業をやりたいと考え海外駐在のプログラムに申し込んでいたものの、ブラジルにて営業ポジションの打診が来た際に、迷わず飛び込んだとのことでした。

    なぜなら、①第一に営業をやりたいがために、ベトナムやタイを希望していたので、ブラジルでもそれができるのであれば、問題無くやりたいことができると考えたから。②こういった機会でないと南米に行く機会はそうそう無い、ましてや一定期間、数年住むという経験はできないと考えたからだそうです。

    それはそうですよね。英語も全然通じない、日本の裏側に急に住もうなんて考えませんよね(笑)。実際、ブラジルに来て本当に楽しそうでしたし、南米のダイバーシティで寛容な雰囲気が彼とマッチしているように感じました。

    最後の一押しと言えるかどうかは微妙ですが、監査から離れて営業をやりたいという強い想いがあり、その願いが叶うため、ということでブラジル駐在の道へ踏み切りました。

    海外生活における苦悩とは

    (古作)まず、共通して言えることは、イスラエルのような「物価が異常に高い国はつらい」ということです。海外に出て思うのは、日本は予想以上に物価が安いことを肌で実感します。例を挙げればキリがありませんが、たとえば、特に欧州では現在エネルギー価格が高騰しています。イギリスに行った際に、駐在員の友達が「電気代1か月で6万円という請求が来た」と嘆いていました(笑)。

    多くの国、特にインフレ率の高い国は、レストランのメニュー価格がすぐに上がります。よくGoogle Mapでレストランを検索するのですが、1年前のメニューの写真を見つけても「どうせ値段変わってるし…」と諦めてしまいます。つい一昨日行ったペルーのサウナも、3年前のメニュー価格は22ソル(880円)でしたが、55ソル(2,200円)になっていました。

    (山田)共通の苦悩ですが、やはり「言語の壁」ですね。ただ、念頭に置いていただきたいのが、言語の壁によって仕事で苦悩を強いられているという訳ではありません。タイもカンボジアもブラジルも、仕事仲間はグローバルファームのメンバーですので、勿論、英語が話せるそうです。

    では、どこで言語の苦悩を感じるかというと、生活で現地の方と触れ合う場面です。ローカルの皆さんは英語が話せないケースがほとんどのため、日常会話レベルのタイ語やポルトガル語、スペイン語があった方が住みやすくなるとのことでした。

    実際、我々が各国を訪れた際に、こうも英語が通じないものかと驚きました。例えば、タイでタクシーに乗った時の話です。流しのタクシーを捕まえて、目的の有名な観光地を伝えても場所が分からず、僕らがグーグルマップを見ながら指示することになりました。

    ところが、”Go straight”も通じないし、”Turn Right”も”Left”も通じないし、全く道案内が出来なかったんです(笑)。道を間違え、メーターの数値は上がっていくばかり…。しかしながら、これはワザとではなく、本当に英語がわからなかったみたいで、蓑毛さんにこの話をしたら、タイでタクシーに乗る時は、「サイ(左)・クワ(右)・トロンパイ(真っ直ぐ)」は覚えておかなければいけないと教えて貰いました。

    この3単語を覚えてから、道を間違えられることもなくなり、タイでのタクシー移動が本当に楽になりました(笑)。

    スペインや南米に来て、ヒシヒシと感じているのですが、街行く皆さんには英語が全然通じません。英語で話しかけても全てスペイン語かポルトガル語で返されます。

    皆さん、陽気で優しい方が多いので、全くもって意地悪ではないです。本当に英語を知らないのです。どの程度かというと、”How much”も通じませんし、会計で値段を聞いた際に”one, two, three” も言えないレベルです。数字も全てスペイン語で返されてしまいます(笑)。

    生活する上では、最低限の現地語が必要なのだなと旅行者の私ですら感じたので、そこで駐在して働いている皆さんはより強く感じたのでしょう。

    蓑毛さんもMさんも現地語を日常会話レベルには話せるようになっていました。また、現地の方もすごく喜んでくれるみたいで、グッと距離が近くなるとのことでした。

    次に治安の問題です。やはり、日本と比較するとどうしても治安には不安があります。タイは比較的良いのですが、カンボジアやブラジルはしっかり気をつけなければいけないと、私自身もその国を訪れて感じました。

    特にカンボジアもブラジルも銃社会ですし、在原さんはトゥクトゥクに乗っている際に2回も携帯電話をスラれたことがあると仰っていました(笑)。

    ブラジルのサンパウロも治安が非常に悪い、という話を耳にしたことがある方も多いと思いますが、まさしくです。サンパウロの日本人駐在員のコミュニティには、1〜2週間に1回は何かしらの事件の連絡が来るそうです。

    お話を伺ったMさん自身は、強盗の被害にはあっていないそうでしたが、首都ブラジリアに車で旅行した際、博物館やら美術館の路中できるところに車を停めて、戻ってきた時には、車の後部座席のガラスが割られてしまっていたそうです。

    バックを見える所に置いてしまった自分のミスだとおっしゃっていました。日本だと通常は、窓ガラス割った人に怒りが向きそうなものの、「後部座席になんでバックを置いたままにしてしまったんだろう」と自分を責めるようになっている所が、海外の文化を経て逞しくなった感性だなと個人的に感じました(笑)。

    ブラジルでお会いした全ての駐在員の方が、全員口を揃えて治安は本当に悪いとおっしゃっていたので、本当に気を付けた方が良い街でした。特に辺りが暗くなったら数百メートルも歩かない。モノは極力持ち歩かない。等を徹底していました。

    とはいえ、ブラジル人は陽気だし面倒みが良いし、良い人が多い印象です。ブラジル在住の方曰く、ブラジル人の99%は良い人たちですが、1%が強烈すぎるみたいです(笑)。

    地域特有の苦悩とは

    (古作)地域特有の苦労する話としては、FAS木村さんのイスラエルの話が衝撃的だったので共有します。2021年5月にイスラエルに着任したタイミングで、ガザ地区から何千発というミサイルが、木村さんの住んでいるテルアビブに飛んできたそうです。首都のテルアビブも標的となったそうで、当時は生後2ヶ月の娘もいたため、木村さんは急いで娘を抱えてシェルターに避難したそうです。

    こんな事件もあることは事実です。ですが、イスラエルの軍事力はすさまじく、この事件があってもテルアビブは安全でした。実はイスラエルはミサイルの迎撃態勢が常に整っているようで、巷では「アイアンドーム」とも呼ばれています。

    実際に我々もテルアビブに行きましたが、治安は本当に良く、夜間に女性が一人で歩いても問題無いです。街の中には機関銃を持った警察官が沢山いるので、何か事件があればすぐに鎮圧できるような雰囲気でした。

    殺人事件の件数は、実は安全な留学先として知られているカナダやニュージーランドよりも少ないです。驚きですよね。

    仕事という観点でも、地域特有の苦しさについてお話しできればと思います。カンボジアで在原さんがお話ししていた内容が興味深かったです。

    よく会計処理や税務処理で困っているときは、まず基準と実例を参照しに行くと思いますが、カンボジアでは、発展途上国であるが故に「法律があるけど、実例が無い」というケースが多々あるそうです。

    法律や基準は先に作ってしまうが、そのような前例がないそうで、例えば、税務においては、担当官によって発言内容が異なるケースが度々発生しているそうです。このパターンは本当に苦労するらしいです(笑)。

    パブリックコメントを募集せずにいきなり法律が施行されることもあるらしく、対応を強いられるらしいのですが、在原さんは「そのカオス感が何よりも刺激的で楽しい」と仰っていました。

    (山田)私が、地域特有の苦悩として、取り上げたいのは、ブラジル人の感性についての所です。結論から言うと、何か仕事を任せて上手くできていなかった時、ましてや何もしていなかった時も「ブラジル人を𠮟ってはいけない」というのが最初の内は難しかったそうです。

    ブラジル人は、とても真面目なため、例え任せた仕事ができていなかったり、言っていたことと違ったりしても、サボろうとかズルしようとかそんな気持ちを持っている訳ではないそうです。

    つまり、彼らは彼ら自身の中で本気で物事に取り組んでおり、出来なかったり、言っていたことと違っていたりしても、それは彼らの見積りが甘かったり、楽観視によるものだそうです。

    だからこそ「何でやらなかったのか?」や「言っていたことと違うのは何で?」という叱り方をしてしまうと、驚くくらい凹んでしまうそうです。陽気で元気でずっと踊っているようなラテン系のイメージを持ちがちなブラジル人ですが、実はかなり繊細で、データによってはうつ病患者の割合が世界一とも言われている様です。

    また、一度そういう叱りをしてブラジル人を凹ませてしまうと、その後、その人の言うことは絶対に聞いてくれなくなってしまうのだそうです。だからこそ、注意をするのではなく教えてあげるように接する、絶対に叱らない・怒らないという所を気を付けているという点が印象的でした。

    世界一周会計士の感じたこと

    (古作)私が感じたのは、まず「その国をイメージだけで語っていないか?」という点です。

    ここまで何度か話題に挙げていますが、イスラエルは安全保障が数段進んだ国です。そして、イスラエルはユダヤ教の国ですが、ユダヤ教では家族との繋がりを大事にするので、家族や子供に温かく、子持ちの方が非常に働きやすい環境なのだそうです。レストランで子供が泣くと日本では白い目で見られるシチュエーションでも、イスラエルでは皆温かい目で見守ってくれるらしく、木村さんの奥様も「日本より子供を育てやすい」と仰っていたそうです。

    このように、イメージだけでその国を語るのは、本当に勿体ないことだと思いますし、日頃そう判断していることが自分でもよくあるな、と反省しました。そして、そのような着眼点を持っていれば、ビジネスとして圧倒的優位性を築けるとも思いました。

    また、カンボジアの在原さんのお話では、会計士という資格の希少価値がさらに増すと仰っていました。本日は会計士の方もいらっしゃっていると伺っています。日本では会計士資格をとって会計事務所に勤めるのが通常だと思いますが、海外では実はそのようなことはありません。

    例えば、カンボジアKPMGでは会計士資格を持っている方が3人しかおらず、資格を持っている人が求められる機会と活躍するステージが非常に多いと聞きます。

    在原さんは、監査法人の一マネージャではなく、会計事務所のカンボジアの日本代表として、業務に取り組むことができると仰っていました。実際、日本商工会の委員会活動に参加したり、カンボジアの関係当局と制度について民間からの意見を代表として言う機会があったりと、政府との距離が近く、カンボジアの経済を支える一員という実感があるそうです。凄くやりがいに繋がりそうですよね。 そんな海外特有のやりがいも、海外赴任では感じることができるみたいです。

    (山田)

    1.生活が素晴らしい

    まず、駐在員の方に会えば会うほど感じるのが、駐在員の生活は素晴らしいということです。駐在員の生活に憧れることが多く、私も駐在したいなってよく思います(笑)。

    例えばオーソドックスですが、僻地手当(危険手当)や車の手配、家賃補助で泊ることのできる家のクオリティが非常に高いことがまず良いですよね。あとは、クライアントである日系企業のお客さんとの付き合いがほぼ必ず生じてくるのですが、駐在で来ている彼らは日系企業のそれなりのポジションの方達であり、そんな皆さんと楽しく交流ができていることが羨ましいなと感じました。日系大手食品メーカーの支社長だったり、大手総合商社の支社長だったり。

    また、私は勝手ながら都市伝説というか昔話と捉えていたのですが、そういった日系企業の方達は皆さん本当にゴルフが大好きなんですよ(笑)。

    週末は必ずゴルフという生活をされていて、商談がある時も、まずはゴルフに行きましょうとなります。ゴルフをして飲み会で交流して、帰宅したら家は日本では考えられない広さの綺麗なレジデンス。そんな生活、楽しいに決まっているよなと見ていて思いました。

    2.タイムリミットが決まっているのでアクティブになれる

    次に、「駐在の期間が決まっている」というのが、良い方向に作用する事も多いのだなと感じました。まず、タイ等の人気な国で日本に帰りやすい国ならまだしも、南米やカンボジアに急にずっと住めと言われたらちょっと迷ってしまいますよね(笑)?

    しかし、3年間の駐在という、これまた絶妙な期間が設けられていることで、それならカンボジアや南米に3年だけ住んでみて、カオスな体験をしてみたい、という形で挑戦のハードルを下げられているし、何よりその他のことについてもチャレンジの幅を広げているのだなと感じました。

    例えば観光です。ブラジルに来たのなら、せっかくだから連休ができたら、アルゼンチンに行こうだとか、ボリビアのウユニ塩湖へ行こうだとか、ブラジル国内でも日本では知られていないけどローカルだと人気な観光地へ行こうだとか。

    駐在で来てみると、行きたいところに行ききれない方が多く、3年があっという間に過ぎてしまいそうと仰っている方が多い印象でした。

    また、人付き合いにも言えると思います。日本にいた頃には、特段クライアントの人と絡もうとは思わなかったでしょうが、海外に来たならば、日本という同郷の方と話したくなるだろうし、そうすると自然とクライアントの方との付き合いが多くなっている様に見受けられました。

    他にも地域への貢献のためなど、何かしらの活動に参加する方も多い印象を受けました。

    3.日本での仕事と役割が変わる

    駐在によって役割が変わるというのも非常に印象的でした。

    国によっては、もちろん監査の補助として行く形もあるかと思います。例えば、ニューヨーク等はそのケースが多いと聞きました。

    一方で、私たちが話を伺ってきた、タイの蓑毛さん、カンボジアの在原さん、ブラジルのMさんは監査だけが求められるわけではなく、ブラジルのMさんは営業ですし、ASEANで活躍する蓑毛さん、在原さんは監査人ではなく、むしろアドバイザーであることが求められているとのことでした。

    会計のスペシャリストである、ということよりも会計のゼネラリストとして、それぞれの国で、1つの論点を突き詰めるのではなく、経理経験のないような方たちにも易しく伝わりやすいように会計・税務を説明してあげることが重要になるんです。

    というのも、日系企業の駐在で来ている方は、経理出身の方だけではなく、営業や製造出身の、本当に経理の「け」の字も知らないような方たちが多いからです。

    そんな方たちが、駐在中は、自分の専門分野外、それこそ経理業務のこともカバーしながら現地のオペレーションを回すために会計事務所とコミュニケーションを取ったり、監査対応等をしています。だからこそ、難しい会計論点にどれだけ対応できるかではなく、いかに分かりやすく、会計や税務の話をできるか、 が求められるのだそうです。

    皆さんと話をしていて、日本で監査をしていた時よりもクライアントに感謝されていると肌で感じて、駐在先の方が楽しくやりがいを持って働いていそうだな、という感想を持ちました。

    4.熱い思いがあるということ

    駐在員には熱い想いがあったこともかなり印象的でした。その国で活躍しているからこそ、後発で熱い想いが芽生えた可能性もあります。

    例えば、タイの蓑毛さんは、日本が大好きだからこそ、日本経済の発展を海外から支援するために自分のビジネスマンとしての人生を捧げたいと語っていました。

    それこそ、グローバル化が進んでいる昨今にもかかわらず、日本が海外に不慣れで語学力や海外との交渉といった海外対応が弱いことが原因で、日系企業が弱体化してしまっていると蓑毛さんは考えておりました。

    日本人は真面目で期限は守るし、成果物のクオリティは高い、にもかかわらず、海外対応が弱いというつまらない点だけで不利な立場に追いやられてしまうのが悔しいとのことでした。だからこそ、蓑毛さんのような方に現地でサポートしていき、願わくば日本が盛り上がって経済大国3位以上をキープし続ける様な状況を実現するというのが、蓑毛さんの熱い想いです。

    カンボジアの在原さんも数いる会計士の1人ではなく、数少ない日本会計士としてカンボジア政府の助けになり、願わくばカンボジア経済に良い循環を作りたいと奮闘されていましたし、ブラジルのMさんも南米の日系企業をどんどん繋いで、日本企業が南米内でより活躍しやすいような土台を作りたいと張り切っていました。

    そういった熱い思いを持てるというのは非常に格好いいなと感じましたね。

    →次号に続く…


    YouTubeのアカウントはこちら。https://www.youtube.com/channel/UC2pMYpNJfaWKu_76c3ef94Q

    Xのアカウントはこちら
    古作:https://x.com/yuma_kosaku

    山田:https://x.com/tmhr_yamada

    Instagramのアカウントはこちら。
    https://www.instagram.com/accountant_traveler/?r=nametag

    新着記事

    LBOとは

    2023/01/10

    LBOとは
    モヤカチ

    2021/07/05

    モヤカチ
    問題解決

    2021/07/05

    問題解決
    PEとVCの違い

    2021/05/10

    PEとVCの違い

    新着記事をもっと見る