人と繋がり、可能性を広げる場

公開日:2021/05/14

  • 100人のロールモデル
  • CFO
  • IPO
  • VC・ファンド

上場ITベンチャーCFO、土谷祐三郎のキャリア!

戦略コンサル、PEファンド、上場ベンチャーCFO、会計士であれば一度は夢見るキャリアの数々を歩まれてきた土谷さん。国見健介氏の同級生でもある土谷さんに、輝かしいキャリアの変遷を語っていただきました!

    土谷祐三郎さんのプロフィール

    土谷 祐三郎
    Retty株式会社 コーポレート部門 担当執行役員 CFO

    2000年に公認会計士試験に合格後、監査法人トーマツに入社、約7年間、国内の事業会社の監査業務に従事。マネジャーに昇格し2008年に退職後、戦略コンサルティングファームCDI(コーポレイトディレクション)にて、組織再編、M&A、事業再生等を経験。2011年にバイアウトファンド ACAに転職し、ハンズオン業務に従事。2016年にRetty CFOに就任し、2020年同社マザーズ上場に貢献。

    土谷祐三郎さんの略歴

    2001年:監査法人トーマツにおいて、国内監査部門の監査担当として従事
    2008年:経営戦略コンサルティングファームCDI(コーポレイトディレクション)にてコンサルタントとして従事
    2011年: PEファンドACA株式会社にて、「築地銀だこ」などを手掛けるホットランドへ出向し、同社のIPOや海外展開に貢献
    2016年:Retty株式会社 CFOに就任

    01. キャリアの変遷、展望

    ーー監査法人時代はどのように過ごされていたのでしょうか?

    当時は学生合格ということもあり、先輩から色々と可愛がってもらいました。国内監査部配属でしたが、国内の優良企業の他にも、有名アパレル外資系子会社や金融機関の監査や大手企業の初度監査等、様々なことを経験させていただきました。

    また、トーマツ1年目でリクルーターの代表としてプレゼンをしたり、東京事務所同期130名程度の同期会幹事も率先してやりました。折角の同期なので辞めていく人も含めて強い繋がりを持ち続けられたらと思って始めましたが、今思うと、そういった繋がりを持てたのは大きな財産になっていますね。

    ーーかなりアクティブに活動されていたのですね。土谷さんが思う監査の良さを教えてください。

    外に出てまず思うのは、「どんな情報にもフリーアクセスできた」ことは非常に大きかったということです。極端に言えば、限られた人しか触れることのできない取締役会議事録という機密情報に、社会人1年目からアクセスできるのは貴重な経験だと思います。
    また、クライアントに対して会計数値や社内体制などの事実に基づいたコンサル的(指導的機能)なアドバイスができるのも大きいと思います。

    同期の中でもすぐに辞めそうだと思われていましたが、早々にチームリーダーとしてチームマネジメントや監査報酬の交渉などクライアントコミュニケーションも経験できましたし、コンサル的な動きをしてクライアントの業績改善に関われたりするなど楽しく仕事をすることができたため、結局7年弱在籍して、最終的にはマネジャーまで経験させてもらいました。

    ーーそこから戦略コンサルに移った理由は何だったのでしょうか?

    一番の理由は、監査法人では指導的機能としてコンサルはできるものの、あくまでも主な仕事は監査であり、第一義的ではないことから、限界を感じたことですかね。専業でやっている戦略コンサルと比較したときに、監査法人でいくら経験しても敵わないと感じたので、心機一転チャレンジしたいと考えました。

    正直最初の1年は全く役立たずで、打ち合わせで何を議論しているかもわからず、自信喪失する日々でした。(笑)

    ただ、全く違うキャリアであるため、非常に辛い思いをすることも、給料が3割減することも覚悟した転職だったので、3年という期限を自分の中で設けて、どんなに辛いことがあっても逃げ出さないということを決めていました。
    その後は徐々に順応してきて、1年程経ってからようやく「少しは付加価値を出せているな」と感じるようになりました。それからは監査法人の経験を活かして、会計や財務も絡めた自分ならでは付加価値が出せるようになりました。

    ーー具体的にどんなジャンルの戦略コンサルをされたのでしょうか?

    ジャンルとしても上流から下流まで様々な戦略に携わりました。戦略策定、組織再編、営業効率化、M&A、売却戦略、当時はリーマンショックの渦中だったので事業再生など、多岐にわたり経験させていただきました。元々「戦略コンサルは1年で3年分の経験を積める」という話を聞いていましたが、単純に3倍働いたという感じでしょうか。(笑) とても肉体的にきつかったのを覚えています。

    ーーその後PEファンドへ転職した転機を教えてください。

    コンサルはプロジェクト単位で受注するのですが、高額な報酬を貰う関係もあって大体のプロジェクトは戦略の策定で終わってしまい、その後の戦略実行フェーズに関われず、最終的な結果を見届けられないのが難点でした。そのため、より長期にわたって関与し続けられ、結果まで見届けられる職に就きたいと考えました。当初は事業再生や商社でハンズオンするということも考えましたが、アジアを拠点にPEファンドを展開していたACAという選択肢は、PEファンドという新たな経験に加えて、更に海外という軸も増える為、非常にチャレンジングだと思い、入社を決意しました。

    入社後2か月で、「築地銀だこ」を運営しているホットランドという会社に投資したのですが、そのタイミングでいきなり財務管理担当としてハンズオンする形になりました。

    ーー入社して2か月で投資先に送り込まれるとなると、信頼を得るのは大変だったのではないでしょうか?

    突然、CFOのような立場でジョインしたので、ホットランドからもACAからも当初は大きな期待と共にどこまでやれるのかという懐疑的な目で見られていたと思います。

    一つの大きなターニングポイントは、当時、出店を加速していた時期でその出店費用の為の資金繰りに困っていた中で、シンジケートローンという大きなファイナンスを実行し、上場を想定していた3年後まで資金繰りに困らない状況を作ることに成功したことでした。また、金額だけでなく、構成としてもジョイントアレンジやコ・アレンジャーを設定するなど相互の牽制機能を組みこむことで、その後の銀行からのバックアップ体制を引き出すことができ、その結果、ホットランドからもACAからも大きな信頼を得ることができました。

    ーーIPOに向けてどのようなことをファンドで行っていましたか?

    IPOをするためには、例えていうと「外科手術」と「内科手術」が必要だと考えています。「外科手術」は、安定的な利益確保のために赤字子会社などの不採算事業を切っていくことや関連当事者取引をなくすなどばっさりと切っていく作業、「内科手術」はガバナンス向上や内部統制整備など、それこそ会計士の得意分野である、上場会社になるための内部管理体制を強化していく作業です。

    IPOは「煌びやかなもの」とイメージして上場を目指す社長も多いと思いますが、実際は個人経営から組織的な経営に変えていく、つまりそれまで自分の思い通りにできたものがそうできなくなる、ある意味、「自分に制約を課していくもの」だと認識することが重要だと考えています。

    そのため、当初、まだその認識がなかった社長から夜中に電話がかかってきて、「お前のせいで○○だ」とか、「明日から来ないでくれ」みたいなことも言われたりしました。(笑)

    ーーIPOを果たしたときの感想はどうでしたか?

    非常に苦しくて厳しい状況の中、証券会社、監査法人など色々な関係者を何とかうまく巻き込んで達成したという状況でしたので、一緒にやってきたホットランド社長や証券会社の引受担当はIPO当日に感動して大泣きされていましたが、自分は何とか自分の責任を果たせたという安心感が先で、また、最後の最後まで気が張っていたというのもあって泣けなかったです。ようやく肩の荷が下りたという感じでしょうか。(笑) 1か月くらいしてから、ようやく実感が湧いてきました。

    ーーファンドからRettyに移ったきっかけは?

    ホットランドでは3年半の期間、常駐で関わりましたが、あくまでもファンドからの出向者であり、「第三者」という思いが自分の中にありました。また、それまでのキャリアは監査法人、戦略コンサル、PEファンドとアウトサイドの立場ということもあったので、次は「第三者」ではなく全て「自分事」として体感できるよう事業会社にインサイドの立場で関わりたいと思うようになりました。

    同時に、それまでは「何をするか」を重視して転職をしてきましたが、この頃は「誰とするか」ということが非常に重要だと思うようになっていたため、一緒に働いてみたいと思うメンバーが多かったRettyにジョインすることを決意しました。

    なお、当時、人材エージェントの知り合いに相談したところ、全員からACAにいた方が様々な会社の経営に携われる経験ができることから今後のキャリアとして良いと反対されましたが、それであればむしろ行こう、と思いました。多くの人に賛同される様なキャリア選択は一般化され過ぎて独自性がなく、敢えて人がやらないことをチャレンジするスタイルは大事だと思っています。

    ーー輝かしいキャリアをお持ちですが、今後の展望はありますか?

    周りからよく聞かれるのですが、実は全く無いんですよね。(笑)

    今の生活や業務自体に非常に満足しているのもありますし、一経営者として今後もRettyの成長を支えていきたいと思っています。その意味では、自分の中で経営者としての感覚が芽生えているのかもしれません。創業者が転職しない、という感情に近いのだと思います。

    02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)

    ーー仕事をするうえで大事にしていることを3つ教えてください。

    1       誰に対しても誠実に対応すべき

    これまでの経験上、悪いことをすると必ず何か悪い形で自分に返ってくるが、人に良いことをすると自分にも良いことが起きる正の循環が回るものだと考えています。そして、これは人に対しても同じだと思っています。人に何か悪い印象を持たれた場合、次に会ったときはそれが必ずマイナスに働きますし、その人の周囲の人にまで評判として波及してしまい、その結果、業務を進めづらくなるなど自分にとって悪い結果が返ってくるものだと思います。逆に、誰に対しても誠実な対応をすることで良い印象や評判が広がっていくと非常に業務を進めやすくなるなど良い結果が返ってくるものと思います。
    実際、ホットランドの出向時やRettyにおいても監査法人の後輩が転職して自分を支えてくれたり、コンサル時代やファンド時代の同僚や上司に今でも色々なアドバイスを頂くなどの関係が続いております。

    2       辛くても決して逃げない

    人間って辛くなると逃げ出したくなるものだと思います。ですが、その辛いことを歯を食いしばって乗り越えたときに、その辛さが大きければ大きいほど、大きな喜びに代わる「喜びのスパイス」みたいなものになると思っています。登山みたいなもので、高ければ高い山ほど登頂するのは辛いものだが、登頂した喜びは大きくなるイメージと同じだと思います。
    ホットランドに出向していた当初、社長から「明日から来ないでくれ」と言われたり、自分を排除するための裏の取締役会が開かれたりなど非常に辛い時期もありましたが、IPOを目指す中でいつしかお互いを信頼するようになって、上場時には泣いて自分がいたために上場できたと喜んでくれたことを経験すると、その最初の辛さがあったからこそ、最後の喜びは大きくなったんだと感じるようになりました。いわゆるドM理論ですね。(笑) 世の中にハードシングスは沢山ありますが、その様に考えると常に前向きに捉えることができると思います。

    3       キャリアは掛け算

    唯一の人材になるために、公認会計士という資格に加えて、「何を掛け算するか」が重要だと思っています。例えば会計士は約4万人居ますが、その中で1位になるのは難しいと思います。そこに、戦略コンサルなど別の軸の経験がある人で絞ると、母集団は小さくなります。また、更にそこからファンド経験者に絞ると、会計士の中では唯一、自分だけになるのではないかと思っています。その軸がニッチであればニッチであるほど、より唯一の存在になれるものと思います。
    例えば、英語を勉強する会計士は非常に多いと思いますが、皆が目指しているために競争が激しくなってしまうと思います。そこで、スワヒリ語など周りがやらないニッチな言語を選択して学ぶことで、それができるのは自分だけという世界が作れるのではないかと思います。その軸を選択するためには「自分の中で何が好きか?」を自問自答することが大事だと思います。折角、会計士という大きな保険を得ているので、よりニッチな世界にチャレンジしてみるべきだと思います。

    03. 会計士という資格を取って良かったこと

    ーー今までキャリアを歩んできて会計士になって良かったと感じることを教えてください。

    1       会計士のネットワークの強さ

    監査法人出身者の人は強く感じていている人も多いかと思いますが、色々な世界で活躍する会計士のネットワークに入れたことは非常に大きいと思っています。
    別の国家資格でも、例えば弁護士は弁護士事務所に留まることが多いですが、会計士は独立したり事業会社で活躍するなどキャリアが非常に多岐にわたるので、業務上で何かしら関わったり、相談できる機会が多いと思います。実際、監査法人同期とは今でも仲良くさせていただいていますが、監査法人、証券会社、弁護士事務所、事業会社のCFOなど多彩なメンバーがいて、仕事上でもクロスオーバーすることもあり、ネットワークの重要さを感じています。また、会計士同士だと同じ大学の先輩後輩みたいなイメージで、比較的容易に打ち解けられるため、ネットワークが大きく広がっていきます。

    2       プロフェッショナルとしての意識

    監査法人での経験として、プロフェッショナリズムを鍛えられたのは大きいです。会計の「最後の砦」という立場は重要で、責任感を持って最後まで仕事をやり切る経験は貴重だと思います。
    自分は学生時代から監査法人でバイトをしていたのですが、クライアントからは一会計士として見られながら仕事をしていたので、その点を若い時から意識付けられたのは大きな財産となっています。Rettyでいう”All DONE”という言葉で表現されますが、業務に対する責任感や品質水準の高さは評価していただいています。

    3       汎用性の高さ

    会計士試験では様々な科目を勉強しますが、それぞれがベースとなって活きてくると思います。会計という学問を学ぶことで定量的に物事を考える素養が身に付くことや、会社法や財務諸表論で論理的な思考力が身に付くことは非常に重要だと思います。
    監査法人にいると、定量的に物事を考えたり、論理的に思考することは当たり前のように感じますが、外に出てみると、改めてその能力は非常に重要な能力であると同時に、会計士の強みであると感じます。
    また、会計士の試験では会計だけでなく、会社法や経営学などといった幅広い勉強をしているということも非常に重要だと思います。一度でも勉強しているだけでその耐性ができるため、飲み込みが早くなると思います。例えば、会計士であれば、会社法を学んでいるため、他の法律であっても直ぐに理解をして対応することができると思います。その意味で、本当に会計士は汎用性が高いと感じています。


    新着記事

    LBOとは

    2023/01/10

    LBOとは
    モヤカチ

    2021/07/05

    モヤカチ
    問題解決

    2021/07/05

    問題解決
    PEとVCの違い

    2021/05/10

    PEとVCの違い

    新着記事をもっと見る