公開日:2021/09/25
王道の監査に多様な経験をプラス、池山允浩のキャリア!
大手監査法人で活躍するとともに、プロボノとしてソーシャルセクターの支援もしている池山さんに、今までのキャリアの歩みや仕事観、公認会計士になって良かったと思っていることをお話しいただきました。BIG4の中でキャリアを広げていく一つの形としてぜひ参考にしてみてください。
池山允浩さんのプロフィール
池山 允浩(Ikeyama Mitsuhiro)
EY新日本有限責任監査法人勤務
NPO法人Accountability for Change代表理事
公認会計士
慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。公認会計士の社会的地位向上を使命に、一貫して監査業務に従事。幅広く社会課題に興味を持ち、子どもからシニアまで幸せに暮らせる社会づくりに貢献することを人生の目標とし、積極的にプロボノを行っている。
池山允浩さんの略歴
2009年:公認会計士試験論文式試験合格。
2010年:新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)に入所。
2021年:NPO法人Accountability for Changeの代表理事に就任。
01. キャリアの変遷、展望
――池山さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。
もともとは医者になろうと思って医学部を志望していたのですが、自分の進むべき道を改めて考えていた時、親のすすめもありCPAで勉強を始めたのがきっかけです。CPAの先生方の支援もあり諦めずに勉強をやりきることができたおかげで、3回目の受験で無事に合格でき会計士という道に進むことができました。
――大学時代体育会に所属していたとのことですが、勉強との両立についてはどうでしたか?
大学入学当初から勉強はスタートしていたのですが、その一方で水泳部にも所属していました。寮生活で、毎日4時半ごろ起きて、早朝に練習をして予備校と学校にいくという生活でした。そのような生活でしたので答練中に居眠りをしてしまい、答案用紙がヨダレまみれになったこともありましたね(笑)。
振り返ると大学時代の思い出は水泳と会計士の勉強ばかりでした。
――EYを選んだ理由は何ですか?
本音でお話しすると、一番初めに内定をくださったのがEYだったというところはあります。ただ、面接官の方とコミュニケーションを取っていく中で自分の雰囲気に合ったファームであるという感触を受けましたので、迷わずにEYに行くことに決めました。
――EYに入った時に、会計士のキャリアプランやイメージはありましたか?
私は特にありませんでした。「今できることを徹底的に頑張ろう。そしてやるなら一番険しい道を進んでいこう」という心持ちでした。入社時に配属先の希望を書く機会があったのですが、配属希望の欄に全て○をして、「一番厳しい部署で仕事をさせてください」と書きました(笑)。
――実際どういった部署に配属されることになったのですか?
当時米国会計基準を適用してSECに上場していた大手製造業メーカーを担当させていただくことになりました。IFRS適用会社の増加に伴い米国会計基準を適用している日本企業は少なくなってしまいましたので、とても良い経験をさせていただきました。
――期待通り大変な業務だったのでしょうか?
留学経験もなく特別英語ができるわけでもありませんでしたし、秀でた成績で会計士試験を通過したわけでもありませんでしたので、ものすごく大変でした。
それに加え、監査クライアントは何兆円もの売上規模の大企業でしたので、一朝一夕に会社のことを理解することはもちろんできず、日々ひたすら①監査、②会計、③クライアントとそのビジネスについての勉強、④英語の積み重ねでした。
――入社してから3年ほど働いてみたときに何か感じたことはありますか?
スタッフの時は諸先輩方の指導やクライアントを通じて、監査の基礎を教えていただきました。一つ一つの基準の理解や監査上の判断、監査人としてクライアントとの接し方を徹底的に叩き込んでいただきました。
辛いことも多かったですが、新しいことを毎日学ぶことができたため、面白みや楽しみ、やりがいが辛さを少しだけ上回っている状況だったと思います。
――修了考査合格のタイミングで監査法人から外に出る人も多いですが、池山さんは当時そのような検討をしたのですか?
修了考査合格後には一人前の会計士を名乗ることができるようになるため、私もどういうキャリアがあるのか検討しました。具体的には自分の所属している監査法人の中にも税務やアドバイザリーなど色々なラインがあるので、一通り聞いて周りました。
加えて法人外でもどんな活躍ができるのか情報を仕入れていく中で、NPO支援といったソーシャルセクターでの活動に興味を持ち、プロボノという形で携わり始めました。そのような検討を重ねた結果、自分が力を注ぐところはやはり監査法人が良いと思い、引き続き監査法人で働くという道を選びました。
――その判断の背景には監査の奥深さをもっと学びたいという気持ちがあったのですか?
監査業務は、クライアントと一番身近な距離で仕事ができる、立ち位置として稀な職種であると思っています。この立ち位置に居ると、クライアントのことを知れば知るほど分からないことが逆に出てくるので、そこが非常に面白いなと感じています。
――シニアスタッフでの業務を教えてください。
主査という形でその会社の担当窓口として仕事をさせていただき、クライアントの方と話す機会がとても増えました。財務部門の方だけではなく、購買部門の方、IT部門の方、税務部門の方など、本当に色々な方とお話をする機会がありました。
主査を経験する中で「一つの会社の中で、本当に色々な方が色々な業務を担って運営しているのだな」と機関設計の意義を感じるようになり、会社への理解が増して監査に対する面白みがさらに広がりました。
――チームマネジメントの業務が増えていく中で、大変な事はありましたか?
自分がチームリーダーとなって、上司への報告や部下の指導、教育をするということは面白くもあり辛いことでもありました。
自分の中で思い描いているシナリオ、スケジュールや、クライアントからの要望に対して思うように検討が進まなかったり、予期せぬ突発事象が生じたときにリソースがなかったりすることもありました。自分が動かなければ物事が進まないため、その時にどうプランを立てて解決すれば上手く収まるか、判断を下すのに常に頭を悩ましていました。
――上手く回り始めた秘訣は何でしょうか?
チームメンバーと良くコミュニケーションを取るという事に尽きると思います。忙しさを言い訳にせず、お互いの状態の把握やどんな仕事をお願いするかなど、作業前だけでなく、作業中、作業後とコミュニケーションを取ったことにより、結果的にチームとして上手く回り始めたと思います。密にコミュニケーションを取ることが良い仕事をする一番大事な要素だと思っています。
――4年目でチームマネジメント業務を経験できたのは大きいことですよね。
早いうちからチームを率いるという経験は、他の仕事ではなかなかできないことだと思うので、監査法人でのその経験は、その後どのようなキャリアを歩むとしても役に立つものだと思います。
――マネージャーになって仕事の幅はどのように広がっていったのでしょうか?
より大規模でグローバルに活躍する上場会社の中心メンバーとして業務をするようになりました。海外に子会社を多数展開しており、提携している海外のネットワークファームと連絡を取り合ったりすることが一気に増えました。
実際にイタリア、アメリカ、アジアでいうと中国、シンガポール、マレーシアなど、10カ国以上の方と常に連絡を取っていました。それぞれタイムゾーンが異なるので早朝から深夜とコミュニケーションを取る時間帯の相違に苦労するのは当然ですが、それ以上に各国の文化が異なることに起因した物事の考え方の違いに苦戦をしました。同じネットワークファームで監査をしていても、監査に対する考え方や仕事の進め方が国ごとに大きく異なり、例えばある国では、正式な報告が重要視され、ドラフトステータスでの進捗状況をなかなか教えてくれなかったりしました。そのような環境下でも、上手くやるコツは丁寧なコミュニケーションだと胆に銘じながら信頼関係の構築を図っていきました。
――海外赴任もご経験されたとのことですが、どのような経緯で海外赴任が決まったのでしょうか?
会社の役員の方々とお話をすると、私の担当クライアントは外国籍の役員の方がいらっしゃったこともあり、グローバルな話題が多く挙がりました。私は海外での業務経験がなかったので、日本国内でしか働いたことがないという状況が、今後会社と対等に会話をしていく上で弱みとなってしまうのではないかと思うようになりました。
そこで手を挙げたところ、短期の赴任プログラムとしてタイのバンコクへ3か月赴任する機会をいただきました。現地では監査以外にも税務やアドバイザリーの領域で日系企業の現地マネジメントの方とコミュニケーションを行いました。その中で、海外で事業を展開することの難しさを肌で感じ、グローバルビジネスのより深い理解をすることができたと思います。
――最近EYで新しい仕事にも関与していると伺いましたが、それについて教えてください。
はい。去年から、アシュアランスイノベーション本部という部署を兼務しています。その名の通り保証(アシュアランス)業務を改革する業務を行っています。具体的には、監査の領域で、監査の時間と空間の概念を根本から変えるべく、次世代の監査の戦略の策定、自動化の推進、デジタル監査ツールの開発、デジタルに対応した監査基準の作成など、監査を次のステージに進めるため法人全体で力を入れて取り組んでいます。私はその中でも、アシュアランスイノベーションを起こす人材の育成制度設計と現場への推進を担当しています。
――通常の監査業務とアシュアランスイノベーション本部の業務はどれくらいの比率で行っているのでしょうか?
人により異なりますが、私の場合はちょうど半々くらいの割合で携わっております。一つの組織の中での研修制度をどうするか、どうしたら構成員1人1人のデジタルリテラシーが上がるのかなどについて考えており、監査法人に所属しながらも自組織の人材マネジメントを考えるとても貴重な経験を頂いております。また、本部での業務に勤しむことが結果として組織を超えて会計士の価値向上につながるよう奮闘しています。
――今後AIやブロックチェーン、仮想通貨など色々なものが出てくる中で、他の専門家とも協力して、監査の最前線を作っていくのですね。
“監査は監査人だけが取り組むもの”というスタイルが今まで主流でしたが、税務やITのみならず、多様な専門家が一緒に力を合わせて監査をする時代に変わってきています。例えば、デジタル監査ツールの開発をエンジニアの方と一緒にし、戦略をよく伝えるためにはどういう見せ方が良いかという場面ではデザイナーの方と協働しています。多様な専門家の視点が入ることで自分自身も監査への理解がより深まり、とてもやりがいと面白みを感じています。
――財務諸表監査の効率化が進み、会計士が新しい保証業務にも取り組めるようになると良いですよね。
監査の効率化が進むことで時間に余裕ができるようになると、近年注目されつつある非財務情報に関する新たな保証業務を提供できるようになると思います。例えば、環境問題について、CO2の排出量をどのように測定し保証をしていくかなど、会計監査のプロフェッショナルが担う業務は今後広がっていくと思います。
――話は変わりますが、池山さんは監査法人以外にも別の場所でご活躍されていますよね。
はい、修了考査に合格し次のキャリアを模索していた時に、NPOや非営利団体といったソーシャルセクターに力を入れている会計士の仲間と出会いました。2013年頃から活動を開始し、2016年にNPO法人Accountability for Changeという組織を立ち上げて、2021年7月より、その団体の代表を務めております。
そこでは、プロボノ(※)やボランティア活動を通じて会計と監査の専門知識を活かしてNPO等の非営利団体を支援するとともに、社会貢献活動を通じた会計プロフェッショナルの育成を行っています。
(※)各分野の専門家が、職業上持っている知識やスキルを無償提供して社会貢献するボランティア活動全般。また、それに参加する専門家自身。
――AFC(Accountability for Change)では具体的にどのような活動をされてきたのでしょうか?
私が行った初めてのプロボノは、AFCメンバーが監事(※)を務めるNPOの決算書類のレビューで、数日間行いました。その後、かものはしプロジェクトというNPOに対して、約半年かけて予算策定プロセスの改善やアカウンティングポリシーの策定に関与しました。
このかものはしプロジェクトは「子どもがだまされて売られてしまう問題」を根本的になくすためにインドで現地の弁護士や警察を巻き込んで活動をしている日本を代表するNPOでして、学ぶべきところがたくさんありました。
(※)法人の財産や理事の業務執行の状況を監査する機関。株式会社の監査役にあたる。
――今はAFCでどのようなことをしていますか?
私自身、社会人になってから寄付をすることはありましたが、ボランティアやプロボノを行ったことがなく、自分にもできるかなと不安が大きかったのを覚えています。
初めから飛び込んでくる人もやはり少ないので、若手会計士の方を中心に鼓舞しプロボノを促すとともに、プロボノやソーシャルセクター、ソーシャルビジネスがどういったものかという研修や啓蒙活動を行っています。
――AFCのほかにも監事をされているとのことですが、どういう活動をしている団体のサポートをしているのですか?
AFCのほか、3つのNPOを含む非営利団体の監事を務めています。
私の中ではソーシャルセクターというのを1つ主眼におき、AFCの活動を通じて、会計士のできること、可能性を知っていただき、会計士の社会的信頼性をより高めていきたいと思っています。
まず、「ぷるすあるは」という、絵本やウェブサイトなどのコンテンツ制作、普及啓発活動を通して精神障がいやこころの不調、発達障がいをかかえた親とその子どもを応援する団体です。
2つ目は、「サービスグラント」という、“社会参加先進国へ”というスローガンを掲げているNPOの中間支援をする団体です。プロボノをしてみたいと思っている一般企業に勤めている方々を集めて、NPOや地域団体等にプロジェクトとして派遣しています。
3つ目は、「SDGs in Sports」という団体です。日本ではジェンダー格差が1つの社会問題としてあり世界的にも遅れを取っているような状況にありますが、当団体では、スポーツ界におけるジェンダー平等推進、ダイバーシティ&インクルージョンの推進と、あらゆる差別やハラスメントの根絶に向けた環境の整備を目的とし活動をしています。
――私も実は2団体ほど監事をしているのですが、世界観が広がりますよね。
そうですね。当たり前のことですが、自分たちが暮らしている中で知っている世界というのは、本当に限られた世界だということを、身を持って知る機会になりますよね。
――8年ほどプロボノ活動を行ってきて、得られたことを教えて下さい。
普段、本業の中では出会えない方々に出会うことができたことは貴重に感じています。別にプロボノに限らずどういった活動でもそういう場はありますが、プロボノでは自分の専門性を活かすことができるという点でより充実感が増し、また出会った方とのつながりが強固になると肌で感じています。
またプロボノやボランティアは相手のためにというイメージが強く、もちろん支援先のためになる活動なのですが、自分自身が得るものや学ぶものは非常に大きいです。
――監査とプロボノのキャリアをこれまで意図せず並行してきたかと思いますが、最近はそれが繋がりはじめていると伺いました。実際のところどうでしょうか?
本業のほかにプロボノなどを行うことをパラレルキャリアと称したりしますが、私の場合は近年、2つのキャリアが融合を始めております。
今、いわゆる一般の事業会社、ビジネスセクターの方でもコロナの影響もあり短期的な価値だけではなく長期的な価値も追求していこうとの潮流になってきております。
私の所属するEYでも、世界中で行っていたCorporate Responsibility(CR)活動をまとめインパクトを出そうというEY Ripplesがあり、“2030年までに10億人の人々にポジティブな影響をもたらす”というスローガンを打ち出しています。その活動の一環として、NPOとの協働も加速しています。例えば、Teach For Japanやチャンス・フォー・チルドレンといったNPOとのコラボレーションを行っています。
意図していませんでしたが、会社の外で歩んできたキャリアとEYの中での活動が融合してきた形になってきたと思います。
――BIG4のネットワークやナレッジ、社会に与えるインパクトはすごいですよね。
グローバルファームの勢いは凄いものがあると感じます。例えばEY Tech MBAというコーポレートMBAがあります。社内にいながら無料でMBAを取得できるという画期的な制度で、私も取得に向け取り組んでいます。
また、すでにMBAプログラムを修了したメンバーに話を聞きたいとチャットを入れると、会ったことも話したこともないのにすぐ反応を示してくれ、日本のメンバー向けにセッションを開催しました。それ以外にも前述したCR活動の一環として、日本以外の国で行っている活動、例えばイギリスでの環境保護活動に参加することができました。社内のチャットも多くの方が投稿をしており、EYの約31万人のメンバーとのつながりを実感できています。
――最近は監査法人の働き方も変わっていますか?
EYではフレックス&リモートワークを進めています。私は現在9割ほどが在宅勤務ですが、家族と一緒に過ごす時間が増え、子どもの成長をより感じられるようになりました。
ほか、地方移住の働き方にも取り組んでいます。例えば、ご両親と一緒に実家で暮らしながら仕事をしたり、配偶者の方の転勤に同伴し赴任先でリモートワークをしたりと、一人ひとりに合った働き方ができるように柔軟性のある制度を整えています。
――今後のビジョンを教えてください。
実は、私は明確にこうしたいという具体的なビジョンは持っていません。その代わり、出会った方と一緒に良い仕事ができるように、その中でも会計士として何を提供できるかということを常に考えています。
02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)
――仕事をする上で大事にしていることについて3つ教えてください。
(1)ご縁を大切にすること
“ご縁”をとても大切にしています。
自分に何ができるのか、会計士・監査人として何が提供できるのかを常に考えて仕事をしています。その結果かわかりませんが、相手に価値を認めてもらえたことで、思わぬ機会を頂けることがありました。
実際に、アシュアランスイノベーション本部の兼務も直接の上司ではなく、他の活動で知り合った方からお声掛けいただいたものでありましたし、サービスグラントやSDGs in Sportsの監事についても先方よりお声を掛けていただいたものです。本当にご縁というものは大切だなと実感しております。
(2)物事を俯瞰的に見ること
少し高いところから、大きく仕事を見るということを大切にしています。
世の中の仕事は、品質や効率性を重視し分業が進むと考えています。分業が進むと、どうしても割り当てられた業務に集中してしまい、部分最適、すなわち前後に仕事をしている方や全体をまとめている方との間でコンフリクトが生じるというデメリットがあります。
ですので、物事を俯瞰的に捉え全体最適を意識することを大切にしています。そのために、わからないことについては周りに聞く、そして協働相手から学ぶという姿勢がとても重要だと考えています。
(3)「監査人は企業の担当医」という自覚をもって携わること
この言葉は、入所して間もないときに先輩から教えていただいたものです。毎年健康診断を受けたとき、医者はおかしそうなところについて質問をしたり、話をしてくれたりすると思います。企業も一緒で、直すべきことや、将来大きな問題になりそうなことは納得してもらえるまで伝える責任が、監査人にはあります。監査人が、緊急手術的に批判的機能を発揮し処置することもありますが、多くの場合は中長期な視点で指導的機能を発揮し会社に直していただかないといけない問題なので、なぜ直すべきか、どのように取り組んでいくべきか、根気強く言い続ける必要があると思います。
監査人については市場の番人など、様々なたとえがありますが、もともと医者を目指していたこともあって、私には企業の担当医という言葉が一番しっくりきて、この言葉があったからこそ、監査に誇りや使命感を持って仕事ができています。
03. 会計士という資格を取って良かったこと
――会計士という資格を取って良かったことを教えてください。
(1)「公認会計士」という資格である程度自分を証明できること
自分の経歴を伝える際、「公認会計士」という言葉でどのような専門性を有しているかを簡潔に語ることができます、これはすごいことです。ただし、諸先輩方がこれまで社会に対して公認会計士の価値を提供してきてくださったからこそ成り立っているものですので、私も本業の監査業務やソーシャルセクターの支援を通じて様々な方に会計士の魅力を伝え、社会的信頼性の向上をしていきたいと思っています。
(2)監査法人のネットワーク
私の所属しているEYには約31万人のメンバーがいます。情報発信やコミュニケーションが社内SNSやチャットで気軽に行われています。これは、監査法人がメンバーファームという協力体制のもとフラットな関係性で結びついていることが一因と考えています。親子関係ではないこの関係性は、他の業界ではあまりない良さで、お互いに専門家としての信頼関係でつながっているからこそ成り立つものと考えています。例えばコロナが流行した際は各国での状況について逐一連絡をとって最善の策を模索し、安全を保ちながら監査をスムーズに進めることができました。こういったやり取りに、グローバルファームの凄さというのを感じています。
(3)Professional skepticism(職業的懐疑心)を磨けること
監査人をやっていて一番磨かれているものであり、そして、大切なスキルが”職業的懐疑心”だと思っています。
世の中の仕事は、当然ですがクライアントの利益になるように行動をするものが多いです。この点監査は、クライアントの価値を追い求めつつも、市場経済の健全な発展に寄与していかなければいけません。クライアントに寄り過ぎてもいけないし、批判し過ぎてもいけない、ニュートラルな心の状態が必要になってきますが、そのようなスタンスに立つ仕事はあまり多くないので、この能力は他の仕事では磨きづらいものと考えています。監査法人で監査業務を行っているからこそ、一時の利益や部分最適にはならない価値を追い求めることができると考えます。
最近は監査法人の中でも、社会的な動向としても、長期的な価値を追い求めるようになっていますが、“公益性も重視する”という監査人の姿勢は、長期的な価値を追い求めることに合っているように思いますし、今後より社会に対してバリューを発揮していける存在になると考えています。
04. 池山允浩さんが若手会計士に伝えたいこと
――若手会計士へのメッセージをお願いします。
監査法人の可能性は今後より広がっていきます。これまで培ってきた公認会計士としての社会的な信頼、監査法人のネットワークの広さ、職業的懐疑心という監査人の武器も合い合わさって、可能性が無限です。
若手会計士の皆さんが思っている以上に、監査というのは奥深い世界です。そして社会全体をリードできる可能性を秘めています。私は10数年監査の業界におりますが、まだまだ深みにたどり着けておりません。皆さんにも、監査という仕事を通じ、その魅力や可能性を感じてもらえたらと思います。
NPO法人Accountability for ChangeさんのWEBサイトはこちら
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