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公開日:2021/05/07

  • ソフトスキル

仕事ができる人に共通する特徴①

藤田耕司さんの記事

私はこれまで経営心理士、公認会計士として、心理と数字の両面から経営改善を行ってきました。
その中で人材育成の仕事をしてきましたが、それは仕事ができる人を増やす仕事でもありました。
そのため、仕事ができる人に共通する思考を分析し、その思考をクライアントの社員に共有することで人材育成の効果を高めてきました。
今回はその仕事ができる人に共通する思考の1つについてお話ししたいと思います。

    仕事ができる人の思考プロセス

    仕事ができる人は一度経験したことについて、素早くコツをつかみ、要領良く仕事をこなしていきます。
    その思考プロセスについて組織行動学者のデービット・コルブ氏は、人の成長のサイクルを表す「経験学習モデル」を提唱しました。

    この経験学習モデルは、人が学習し、成長していく過程を、①経験→②省察→③概念化→④試行の4つの要素からなるサイクルとして説明しています。
    以下、この4つの要素についてご説明します。

    1. 経験:何か具体的な経験をする。

    2. 省察:それがうまくいった場合はなぜうまくいったのか、失敗した場合はなぜ失敗したのかについて振り返り、その原因を分析する。

    3. 概念化:②の省察の結果から、うまくいくためのポイントやコツ、失敗しないためのポイントやコツを概念としてまとめ、次の機会に活かせるように整理する。

    4. 試行:③の概念化によって整理した内容を別の機会に試し、その内容が正しいかどうかを検証する。

    仕事ができる人は経験学習モデルを回す頻度が多い

    仕事ができる人は何かを経験した際に省察と概念化を行い、うまくいった場合は成功を再現することができ、失敗した場合は同じ失敗を二度としないようします。

    一方、仕事ができない人は何かを経験しても、それがなぜうまくいったのか、なぜ失敗したのかについて省察しない、あるいは省察しても次の機会に活かせるように概念化しないため、うまくいった場合でも次また同じことをやってもうまくいくとは限らず、また失敗した場合は次もまた同じ失敗を繰り返します。

    仕事を任された際、この省察、概念化をこまめにやるかどうかで、仕事ができるかどうかに大きな開きができていきます。
    この思考の違いが仕事ができるかどうかの違いとなっていきます。

    監査業務における経験学習モデルの回し方

    例えば、監査で初めての現場にアサインされ、往査期間は1週間。
    往査最終日に仕事が終わっておらず、先輩が仕事の一部を引き受けてくれ、何とか仕事を終わらせ、現場を引き上げたものの、先輩にご迷惑をかけてしまった。

    こういった経験をした場合、仕事ができる人はなぜ1週間以内に自分の仕事を自分一人で終わらせることができなかったのかについて省察をします。
    そしてその原因がクライアントに資料を依頼するのが遅れたことにあると判断したならば、なぜ資料依頼が遅れたのかの原因を省察。
    その結果、前期の監査調書を現場初日に初めて目を通し、理解に時間がかかってしまったこと、そして現場初日に資料依頼よりも先に急ぎではない別の仕事をやってしまったことが原因と分かる。

    その省察結果を受けて、現場に入る前に前期の監査調書に目を通し、実施する監査手続を予め理解しておくこと、現場初日は資料依頼を最優先し、他の仕事は資料依頼が終わった後に手を付けることを概念化する。
    そして、次の現場では概念化したこれらの内容を実行し、スムーズに監査を終えます。

    より仕事ができる人になるために

    このように仕事ができる人は省察、概念化をこまめに行うことで、成功を再現するとともに、失敗したら同じ失敗を二度と繰り返さないようにします。
    そして、この経験学習モデルを頭の中で回す頻度が多く、様々なことに対して素早く要領を掴んでいくと共に、さらなる省察と概念化を繰り返し、仕事の質とスピード、正確性をさらに高めていきます。

    この省察と概念化を様々な業務において継続して実施していくためには、「この仕事をもっと早く、もっと正確にするためにはどうすればいいのか?」「お客様の満足度を更に高めるためにはどうすればいいのか?」という問いを持ち続けることです。
    仕事ができる人はこの問いを常に持ち、そしてその解を探し続けます。
    そのため自ずと省察と概念化を行い、経験学習モデルを回していきます。

    もっと仕事ができるようになりたい。
    そう思っている人は、先程の問いを持ち、経験学習モデルを回す頻度を増やすことを意識してみて下さい。
    そして、様々な業務においてたくさんの概念化をしていくことで「仕事ができる人」になっていきます。
    この習慣は仕事以外の様々なことにも役立ちますので、ぜひ試してみてください。

    この記事を書いた人

    公認会計士、税理士、経営心理士、心理カウンセラー
    一般社団法人日本経営心理士協会 代表理事
    FSG税理士事務所 代表税理士
    FSGマネジメント株式会社 代表取締役
    著書:「リーダーのための経営心理学」、「経営参謀としての士業戦略」

     

    2004年有限責任監査法人トーマツに入社。監査部門にて7年間、監査業務に従事し、2011年に独立。FSG事務所を開設し、税務業務を行うと共に数字と心理の両面からコンサルティングを行うFSGマネジメント株式会社を設立。
    年商300億円超の企業から個人事業主まで、のべ1,200件以上の経営相談を受け、労務問題から営業、マーケティングなど、幅広い分野で人間心理と数字の両面から経営改善を行う。
    その経営相談事例を基に、ビジネスで成功を再現し、失敗を回避する手法を経営心理学として体系化することで経営指導の成果を大きく高める。
    2015年に一般社団法人日本経営心理士協会を設立し、経営心理学を体系的に学び、「経営心理士」の資格を取得するための経営心理士講座を実施。受講者の成果が口コミで広がり、日経新聞をはじめ複数のメディアから取材を受ける。また、金融庁や一般企業、税理士会等の士業団体などでの研修活動も行い、年間の講演回数は250回を超える。

     

    一般社団法人日本経営心理士協会

     

    https://keiei-shinri.or.jp/

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