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公開日:2023/04/03

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【世界一周会計士】『中東のシリコンバレー』イスラエルで活躍するKPMG FAS 木村さんと世界一周会計士が、謎に包まれたイスラエルの今と海外勤務のリアルについて語る! 世界で活躍する会計士へインタビューVol.8

世界一周会計士の記事

こんにちは!世界一周会計士の古作祐真です。

第8弾は、急成長のイスラエルにて活躍されている木村和秀さんです。

日本人にとってはあまり馴染みのない国ですが、世界的には「中東のシリコンバレー」と呼ばれるほど、経済的な急成長を遂げています。今回はイスラエルの企業戦略に詳しい木村さんをお招きして、「イスラエルの驚きのビジネス文化」「現地勤務の方にしか聞けないイスラエルでのリアルな海外勤務」ついて深堀してきました!

    1.プロフィール

    木村和秀 (Kimura Kazuhide)
    KPMG Israel / Senior Manager

    2008年:早稲田大学政治経済学部 国際政治経済学科 卒業
    2008年:シカゴ大学 大学院 政治学 Ph.D課程   入学
    2010年:シカゴ大学 大学院 政治学 修士課程 修了
    2015年:KPMG FAS   入社
    2021年:KPMG Israel 赴任

    早稲田大学政治経済学部卒業。

    KPMGイスラエルにて、日本企業のイスラエルでの事業及び投資を支援するJapan Practiceを率い、イスラエル企業の日本市場参入支援業務に従事。

    日本では、ディールアドバイザリーの戦略チームに所属し、M&Aやオープンイノベーションなどの経営戦略や変革に係る施策の立案・実行を支援している。

    2.インタビュー本編

    ――まず始めに、木村さんの自己紹介をお願いします。

    小さい頃から海外生活が長く、3歳から10歳までアメリカに住んでいました。大学は日本の国際政治経済学部に進学、卒業後は5年間を再びアメリカのシカゴで過ごし、シカゴ大学院で博士号(以下、PhD)課程に進んでいます。最終的にPhDは取らずに大学院を辞め、ボストンキャリアフォーラムでKPMG FASのパートナーと出会い、企業戦略の道へ進むことを決意しました。

    シカゴ大学院の研究で給料は頂いていたものの、実際に社会に出てビジネスをしたのは、28歳にして初めてでした。KPMGではFAS戦略チームに在籍し、主に企業戦略策定支援やビジネスDD、CVC設立支援に従事していました。3年前にイスラエル赴任の話があり、2021年5月からイスラエルで働いています。

    ――大学卒業後、シカゴ大学院に進学されたのですね。そのきっかけを教えてください。

    高校生の頃から国際機関に興味があり、世界銀行や国連など、とにかく海外で働きたかったんです。日本での生活も長かったため、世界の橋渡しとして日本に貢献したいと考えていました。国連職員になるには、最低でも修士以上の学歴が必要ということを知り、個人的に研究も好きだったこともあり、ゼミの先輩にインタビューをするなどして準備をしました。

    2年間の大学院博士課程だとそれなりの資金が必要になりますが、大学の制度によると、PhDは授業料や生活費が免除されることを知りました。厳選して1学年10人しか通ることができない難関でしたが、出願して何とか合格することができたものの、この博士課程、実は最短が5年という非常に長い道のりになったのです。

    まとめると、大学院への進学は、狙い撃ちで決めたというよりは、準備して行く中で徐々に決めていったという感じですかね。

    ――そのような難しい関門を突破されたのが凄すぎます。なぜ研究を途中で辞めてしまったのか気になるのですが、お聞きしても宜しいでしょうか。

    大丈夫ですよ(笑)。

    そもそも、私が国際機関に興味を持っていた理由は、社会へ貢献したいという強い思いがあったからでしたが、研究を進めるうちに、この研究を突き詰めても実社会に対してダイレクトにインパクトを与えられないかもしれないと思ってしまったんです。

    大学院では「ゲーム理論」という考え方を基に、国際政治について考える学問を学んでいました。例えば、複数のプレイヤー(国)が居た時に、どの行動を選択することで戦争が起きるのか、政治的な選択を行うのか、そのメカニズムの解明を行います。

    研究自体は自分の知的好奇心を刺激する大変興味深いトピックで、非常に楽しかったのですが、この理論を仮に突き詰めたとしても、将来役に立つのか、とふと疑問に思ってしまいました。つまり、自分の研究がどう実社会に影響を与えられるのかが分からなくなってしまったことが、別の道に進もうと思ったきっかけです。

    その後に、大学院から就職するにあたって、自分の経験や研究を活かせないか、と就職先を探していたところ、KPMG FASと出会いました。

    実際、私が通っていたPhDコースも全員が全員卒業までいかず、10人中3〜4人は途中でアカデミア以外の道に進んでいます。

     

    ――大学院からFASという全く別の道に進んだ感想を教えてください。

    企業戦略という道に進んで気付いたことが、「大学院で学んだ内容との共通点の多さ」です。

    例えば、国が戦争を選択する理由と、企業がM&Aを選択する理由が実は似ているんですよね。政治家をCEOに置き換えた時に、なぜ企業のトップがそのような重要な意思決定をするのか、という点ですね。

     

    ――国と企業を同一視する観点は非常に興味深いですね。

    そうですね。経済学の基本原理は、利益の最大化です。国を合理的な存在であるという仮定をおけば、限られた資源で国益の最大化を狙うという点で同一視できます。専門的なことを言えば、「合理的選択論」という仮定を置くわけですけど、長くなってしまうので割愛しますね(笑)。

    実際にFASではCEOと直接話せるため、すぐに意思決定の答え合わせができるという点で、絶好の職場でした。

     

    ――ゲーム理論を勉強すると、企業の意思決定にとても活きそうですね。

    交渉(意思決定)が正にゲーム理論の使い所で、相手の目的やプライオリティが何かを見極めることが重要となり、ファクターを整理することが求められます。自分たちがやりたいことをただ推し進めるだけではNGです。

    ――交渉というキーワードが出ましたが、イスラエル人は何事も表現がストレートと聞きました。イスラエル人とどのようにビジネスを進めていくのか、非常に気になります!

    そうですね、イスラエルの方々は表現がかなりストレートです(笑)。何気ない会話も日本人からすれば荒々しく感じることがあります。

    印象的だったエピソードを紹介しますね。

    イスラエルに就任してすぐ、タクシーの助手席に座っていた時の話です。パートナーとアソシエイトがタクシーの後部座席で、何やら激しい口論を始めました。後で「タクシーで何を喧嘩してたの?」と聞いてみたところ、なんと「郊外に住むか都心に住むか」という、なんてことないただの世間話だったのです。これには拍子抜けしました(笑)。

    当時の私としては、声のボリュームも日本の方だと驚いてしまうくらい大きく、彼らの会話は罵詈雑言にしか聞こえなかったのですが、これがイスラエルの日常です。

    ――日本人が何も前提情報が無い中でイスラエル人と話そうとすると、驚いてしまいそうですね(笑)。

    驚いてしまうと思います。面白いマトリクス図があるのでお見せしますね。

    (木村さんよりご提供いただいたKPMGイスラエル slides article)

     これは各国の「議論に対する姿勢」を示しています。これを見ると日本人とイスラエル人は真逆であることが分かりますね。基本、イスラエル人は婉曲な表現や空気を読むことをしないのです。彼らも日本人に対して「日本人は結局何を考えているのかがわからない」という印象を持っているみたいですね。

    ――ここまで対照的だと面白いですね。なぜここまで違うのかが気になります。 

    なぜかというと、歴史的な背景が全く違うからだといえます。

    日本人は日本という島国で、何千年という歴史を共有していますよね。一方、イスラエルは建国70年という短い歴史で、世界各国のユダヤ人が集まって国を作った、という背景があります。アフリカ系ユダヤ・ヨーロッパ系ユダヤなどバックグラウンドが全く違う人たちが集まってます。

    そのため「普通こうだよね」という概念がないので、表現がストレートなのです。日本人からしてみるとやりづらいですよね(笑)。

    ――歴史的背景から紐解くと理解できますね。また、表現がストレートだと意思決定が早そうです。

    おっしゃる通り、コミュニケーションではスピードが重視されるためイスラエルにはスタートアップ業界が盛り上がる土壌があります。

    しかしながら、実はデメリットもあります。日本はミーティング前に根回しをすることが普通ですが、イスラエルではぶっつけ本番が一般的です。その結果、根回しという準備をしていないため、計画が十分に練られておらず、結局遠回りになってしまうケースがあります(笑)。

    ――日本ではミーティングが開催される時点で、参加者の全員が既に概ね合意していますもんね。

    そうですね。日本は最初の意思決定までの時間が長いという欠点がありますが、関係部署との合意も稟議で取れているため、決まってからは早いです。一方で、イスラエルやアメリカは決まるのが早いですが、その後は工数がかかるという欠点があります。何かと批判されがちな日本の稟議制度ですが、実は利点もあります。

    このような対極的な属性の方とビジネスをする場合、言語的な通訳だけでなく、文化的な通訳も必要になってきます。「基本スタンスに違いがある」ことを前提におかないと噛み合わない点に注意したいですね。

    ――なるほど。確かに、イスラエル的コミュニケーションだと、スモールビジネスは発展しそうですね。中東のシリコンバレーと呼ばれる所以が分かる気がします。

    彼らとビジネス上で接していて、彼ら自身には、自分の会社を大企業にしたいという発想を持つ人が少ないと感じています。0→1をやりたくて、そのビジネスが上手くいったらすぐに次の0→1に移りたがる習性があります。連続起業家が多い理由も頷けますね。つまり、大企業のマネジメントには興味がなく、イノベーションに興味があるのです。

    ――こう聞いてみると、外資企業はチャンスなのでは?と思います。イノベーションをイスラエル人が作って、例えば、日本企業がそれを拡大していくとかだと上手くマッチングする気がしました。

    そうですね。逆に言えば、イスラエルの弱みは日本人の強みでもあります。日本は1から100に向かって綺麗にして行くことに非常に長けているため、ぜひ日本企業にはイスラエルに来てほしいところです!

    また、イスラエルの企業を日本に呼び込むということも重要です。先日、とあるイスラエル人起業家の方とお話ししたのですが、「日本企業と組めるなら、家族ごと日本へ移住する」と仰っていました。このフットワークの軽さもイスラエル人の特徴です。イスラエルの方は複数のパスポートを持っている方が多く、住む環境を変えることへの抵抗が比較的少ないです。もちろん彼らにも愛国心はありますが、最終的には合理性で判断しています。

    ――日本とイスラエルではシナジーが生まれそうですね。にもかかわらず、日本企業が参入していないのはなぜでしょうか。

    近年まで、政治的な観点でアラブボイコット(※1)を意識していたからでしょう。イスラエルとその周りのアラブ諸国は、領土問題の影響で仲が悪かったのですが、最近は改善傾向にあります。アラブ諸国は石油などのエネルギー業界のメインプレイヤーになるため、日本の商社や多くの大企業と密接な関係だったこともあり、以前までは活動が限定的でした。

    また、2015年に安倍首相と経団連の経営層がイスラエルを訪問してから、国交が安定しています。政治の安定は経済の安定に直結するため、日本企業がそこから一気に増えました。

    ※1(アラブボイコットとは、イスラエル建国の歴史的背景から、アラブ諸国がイスラエルを承認していないため、イスラエルとの貿易やビジネスを拒否していることを指します。)

    ――アラブボイコットの話が出たので、率直に伺いたいのですが、イスラエルで働くことに不安はありませんでしたか。中東戦争の歴史やパレスチナ問題など宗教上・歴史上の様々な問題に直面していますが、この点不安はなかったのでしょうか。

    元々、長らく国際政治を専門にしていたこともあり、イスラエルで一部の地域を除けば、日常的には身の危険にまでは及ばないことを理解していました。日本では「イスラエル=なんとなく危ない」というイメージを持ちがちですが、しっかりと情報収集をすれば、危険性は意外にも低いことが分かります。

    とは言いながらも、着任早々、思いがけない事件に巻き込まれてしまいました。

    2021年5月にイスラエルに着任したタイミングで、ガザ地区から何千発というミサイルが全イスラエル地域をターゲットに飛んできたのです。首都のテルアビブも標的となり、サイレンが空襲警報のように街全体に響き渡りました。当時は生後2ヶ月の娘もいたため、急いで娘を抱えてシェルターに避難しました。衝撃的なイスラエル生活の幕開けでしたね。

    当時はどれくらいのスピード感で避難すれば良いのか、などの勝手も分からず、他の住民の方から「避難が遅い!」と怒られてしまいました…。避難は1分半以内が原則で、例えシャワーを浴びている間に警報がなってしまったら素っ裸でも時間内にシェルターに避難することを優先すべきみたいです。

    ――ええっ!とんでもない事件ですね…。

    着任早々に事件が起こりはしたものの、それ以降の紛争は特に無く、テルアビブでの死者が出る事件も全く起きていません。

    イスラエルの軍事力が凄いことは有名ですが、「アイアンドーム」という防衛システムについては、ご存知でしょうか。

    一定範囲において、ミサイルなどの飛翔物を全て撃ち落とすことができるイスラエル発の国産技術です。アラブ諸国から脅威に晒されてきた歴史があるため、安全保障という理由から軍用技術が急発展しました。

    この軍用技術が民間転用されているのが、イスラエルがテクノロジーで伸びている背景でもあります。

    ――なるほど!過酷な歴史の背景には、そのような技術の発展もあったのですね。

    イスラエルで働くことについては、紛争というリスクはどうしても拭えませんが、先進的なスタートアップが続々と登場して、経済が急発展している国があるというのに、リスクを気にして行かないのは勿体ないですよね(笑)。

    イスラエルはGDPの伸び具合も顕著です。

    (木村さんよりご提供いただいたKPMGイスラエル slides article)

     

    ――正に右肩上がりですね。意外にも日本と一人あたりGDPは大差ないことに驚きました。もっと大きな差をつけられていると勝手ながら予想していました。

    良いところに気がつきましたね。実はユダヤ教の宗教グループが関係しています。イスラエルの主に世俗派(リベラル派)と正統派(オーソドックス派)があります。正統派の中には超正統派と呼ばれる集団があり、人口の10%を占めています。

    実はその超正統派の方々は、国から生活費を受給して暮らしています。言い方が悪いかもしれませんが、彼らはGDPの数値には貢献していません。超正統派は聖書を読んで学ぶことが仕事で、国民の義務となっている兵役も免除されます。

    さらに、超正統派はユダヤ教の教えから、1家族で7、8人の子供を産みます。これが一人あたりGDPがそこまで伸びていない理由です。

    他にも様々な理由があるのですが、こうした背景から世俗派と正統派で対立が生まれています。世俗派が労働し、税金を納めている一方、超正統派は労働せずに世俗派の税金から生活費を受給しているという点で、日本の若者と年金を受給する高齢層との構図と似ていますよね。

    ――そんなに子供をたくさん産むんですか!ユダヤ教内でも様々なしがらみがあるのですね。大変勉強になります。
    ――気になっている方も多いと思うので、イスラエルの治安についても教えてください。

    治安は本当に良いですよ。女性1人で歩いても問題ないくらいの治安です。テルアビブでは夜に若者もたくさん遊んでいるのを目にします。実は、殺人事件の件数についても安全な留学先として知られるカナダやニュージーランドよりも低いです(※2)。

    ※2 国連HPより  https://www.unodc.org

    ――確かに街の中で機関銃を持った警察官をたくさん見かけました!夜間に歩いていてもすごく安全なのが意外でした。

    (エルサレム近辺の市街地。街中には警察車両が常時警戒体制を敷いている。)

    ――ちなみに、地政学リスクという観点ではどうでしょうか。

    2020年にイスラエルと多くのアラブ諸国の国交は正常化しており、地政学リスクが年々低くなっております。イランやシリアは未だに仲良くはないですが、他の国も同様の地政学リスクはありますよね。例えば、日本でいうと尖閣諸島問題や北方領土問題などです。

    最近でも、パレスチナ問題が原因で死傷者が出る事件もありますが、事件現場がエルサレムやパレスチナなどの特定のエリアで発生しているため、首都のテルアビブで自爆テロ事件が起きることはほぼ無いです。実際、ここ10、20年は事件が発生していません。

    ――話は変わりますが、会計人材がイスラエルで働くとするならばどんな能力が必要になりますか。また、どんな方がイスラエルで働くのに向いているのか、教えてください。

    まずは、英語がスタンダードなため、英語を扱えることが大前提です。また、コミュニケーション能力が高い人が望まれますね。イスラエルではサプライズや認識齟齬が日常茶飯事になるため、相互確認を粘り強くできる方であれば、非常にチャンスがあると思います。

    会計原則はイスラエルGAAPに基づいていますが、IFRSも認容されているため、活躍の場はたくさんあります。よくよく考えてみると、日本人の会計士はイスラエルに一人もいない気がしますね。

    なぜ居ないかというと、現状、イスラエル現地でオペレーションしている大企業が居ないからだと思います。製造拠点をイスラエルには持っておらず、あくまで販売拠点でしかないため、販売を現地のイスラエル人に任せて、日本人が絡んでいないケースが多いです。

    ただ、イスラエル南部のネゲブ地域、北部のガリラヤ地域、エルサレムに経済特区を作り、外国企業の誘致を進めています。今後、たくさんの日系企業が進出してくると思いますよ。

    (テルアビブ駅前からの写真。BIG4会計事務所の名前が入った高層ビルが立ち並んでいる)

    ――イスラエルでのプライベートについて聞かせてください。生活は快適でしょうか。

    非常に過ごしやすいですよ!

    まず、働き方は自由で、多くのイスラエル人は家族優先というスタンスです。また、子供に寛容な社会で、妻も「日本よりも住みやすいのでは?」と思ってるくらいです。アジア人の赤ちゃんも少ないため、写真を撮ったり、キスをしようとする人もいます(笑)。日本だと特に公共施設等だと赤ちゃんを煙たがる人も多いですが、イスラエルは暖かい空気感がありますね。おしゃれなレストランにも連れて行くことができて、本当に育てやすいです。

    朝は9時半に出社する人が多く、小さい子供がいる方は16時には帰ります。同僚との飲み文化がないため、家族と夜ご飯を食べて、その後に仕事を再開する人が多いですね。

    ――家族で過ごすにはもってこいの環境ですね!逆にイスラエルで大変だったことを教えてください。

    正直、本当に物価が高いです(笑)。日本の2〜3倍が当たり前で、例えば、マクドナルドに行くのにも2,000円はかかります。

    あと、何故かは分からないのですが、イスラエル人は運転が荒いです。日本のように鉄道などの交通機関がそこまで整っていないため、スーパーへ車で行く必要があるのですが、これが結構怖いですね。

    意外にも、こんなにGDPが高いのにインフラがそこまで整っていないんですよね。イスラエルはハイテク業界で急伸しているので、国の成長が追いつかず、インフラが疎かになりがちです。

    ――インフラというと日本が大得意の分野じゃないですか!今後のイスラエルの発展に期待ですね!

    ――今後のキャリアを考えている若手会計士、若手会計人材に一言お願いします!

    まさしく僕も大学院に行ってキャリアにとことん悩んでいましたが、振り返ってみて、その時にたくさんの方の話を聞きに行ったのが良かったと思います。特に畑や分野が違う人と話をすることが非常に大事です。

    大学院在籍中にMBAホルダーの方と話をして、ビジネスの面白さを知ることができたのがFASに入るきっかけでもありました。お二人のように海外を周るのでもいいです(笑)。

    イスラエルは失敗が奨励される文化で、「失敗=チャレンジ」と捉えられています。

    人生は一回きりです。ぜひチャレンジしましょう!

    ――本日はお忙しい中ありがとうございました!

    3.最後

    木村さんのお話、いかがだったでしょうか。謎に包まれたイスラエルという国を知る、大変貴重な経験となりました。

    今回のインタビューを通じて2つのことを学ぶことができました。

    1つは「イスラエルの治安」の良さです。皆さんは「イスラエル」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?アラブ・イスラエル紛争、パレスチナ問題など多くの宗教的・歴史的な問題を抱えている国だと考える方が多いと思います。

    しかしながら、実際には安全保障という観点で非常に安全な国ですし、国交正常化も進んでいます。また、家族や子供に寛容で温かい社会で、子持ちの方が非常に働きやすい環境でもあります。勝手な印象でイスラエルという国を決めつけていたのは、本当に勿体ないことだなと感じました。

    日本での中東に関するニュースは、特に紛争などのショッキングなニュースが多いため、マイナスイメージが勝手に付いて回ります。とある印象をありのままに捉えるのではなく、「本当に危ないのか?」「イメージで語っていないか?」と自問自答し、自分で考える必要があると改めて思いました。

    もう1つが「イスラエル人のコミュニケーション文化」です。改めてこのマトリクス図は非常に興味深いものがあります。

    異文化理解力というフィルターを持たずに接した場合、相手に対して余計な不快感や失礼さを感じてしまうことになります。しかしながら、上記のマトリクス図のような背景を理解していた場合、行動の裏側が分かるため、異なる文化的背景をもつ方々とも、良い円滑な関係を築くことができるようになります。

    真のグローバル人材になるために、異文化理解力というスキルがいかに必要不可欠であるかということを感じました。

    個人的にはこちらの本が大変勉強になったので、お勧めします。

    https://www.amazon.co.jp/異文化理解力――相手と自分の真意がわかる-ビジネスパーソン必須の教養-エリン・メイヤー/dp/4862762085

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    この記事を書いた人

    古作 佑真(こさく ゆうま) 

    山田 智博(やまだ ともひろ) 

    両者ともに、大学在学中に公認会計士論文式試験に合格後、KPMGあずさ監査法人グローバル事業部へ入社し、大手総合商社を主軸としてIFRS監査に従事。法人内の採用プロジェクトにも関与。

    古作は、同法人にて5年間、監査業務に従事し、各種主査を経験。また、DX部署にて監査SaaSツール開発や次世代監査(ドローン監査等)の業務にも従事。

    山田は、2年3ヶ月の同法人勤務後、2021年7月に独立。CPASSでのキャリア支援業務の他、フリーランスとして上場支援・キャピタリスト・リクルートコンサルなど複数社に従事。2022年7月には、会計コンサル会社を共同創業。

    会計は世界共通のビジネス言語。この言葉を証明するため、グローバルで活躍する会計士の情報や、自身の会計の知見を活かした各国でのコラムを執筆して参ります。

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