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公開日:2021/08/12

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CFOとして上場を実現し、若手やスタートアップの支援を手掛ける 楢木毅(株式会社OAK 代表取締役)のキャリア!

元トゥエンティーフォーセブンのCFOとして上場を果たし、現在はIPO支援やM&A仲介、公認会計士コミュニティを運営されている楢木毅さんにお話しいただきました。

監査法人 ⇒ スタートアップCFO ⇒ 独立というキャリアの変遷をぜひ参考にしてみてください!

    楢木毅さんのプロフィール

    楢木 毅
    株式会社OAK 代表取締役
    株式会社Baton 代表取締役
    公認会計士

    1980年生まれ、早稲田大学大学院修了。
    新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)に入所後、IT/メディアエンターテイメント業界・外食産業・清涼飲料水メーカー・製造業・卸売小売業、ヘルスケア企業をはじめとするクライアントを担当するとともに、グローバル企業の会計監査に従事。また、複数のIPO業務を経験。
    2015年株式会社トゥエンティーフォーセブンに入社し取締役CFO兼経営管理本部長、上場準備プロジェクト責任者に就任。2019年東証マザーズ上場へ導く。
    2020年、同社取締役を退任後、現在はIPO支援、M&A仲介、公認会計士コミュニティ運営(2021年6月末730名)など。

    楢木毅さんの略歴

    2008年:早稲田大学大学院修了
    2008年:新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)に入所
    2015年:同法人を退職
    2015年:株式会社トゥエンティーフォーセブンに入社し、取締役CFO・上場準備責任者に就任
    2019年:同社東証マザーズ上場
    2020年:同社取締役を退任、株式会社OAK 代表取締役に就任
    2021年:株式会社Baton 代表取締役に就任

    01. キャリアの変遷、展望

    ――楢木さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。

    元々人と話すことが好きだったので、なんとなく営業をやろうと思っていました。しかし、不景気に左右されやすい業界やサービスは個人の力に関わらず不振になることもあることから、それ以外の業界・サービスはないかと考えたところ、“病気・怪我、犯罪、税金”はいつの時代も無くなっていないということに気がつきました。そこでまず病気・怪我から医者を考えましたが大学だけでも6年かかるので候補から外れ、また犯罪から弁護士を考えましたが試験が難しそうなので候補から外れました。その点、税金については私自身が数字が好きだったことと、税務はお客様への貢献度が高く、やればやっただけお互いが喜ぶwin-winなサービスだと考え、税理士を目指すことに決めました。まず簿記の勉強を始めたのですが、簿記を教えてくれたのがたまたま公認会計士の方で、そこで初めて公認会計士という職業を知りました。税理士に比べ、公認会計士の方が幅広く企業を見ることができるということもあり、方向転換をして、公認会計士を目指すことにしました。

    ――EYでの7年間と、転職した経緯について教えてください。

    監査法人では有名企業やIPOを目指すベンチャーの監査責任者、またアドバイザリー業務なども行っていました。入社した当初はベンチャーにはそこまで興味がなく、アドバイザリー業務などに興味がありましたが、上場支援のエンゲージメントに関わっていくうちに、“成長したい”という強いマインドを持った方々にたくさん触れることができ、やりがいを感じていました。

    トゥエンティーフォーセブンにジョインすることになったのは、社長が小中学校の先輩で、以前より飲みに行ったりしていたのがきっかけです。ある日、IPOの話になりEYとしてショートレビューの依頼を受けました。その後実際にショートレビューを行い、160ページにもなるショートレビュー報告書を報告会で渡したのですが、その後、別のタイミングで「楢木君がショートレビューして上場準備の課題を見つけたんだから、楢木君が課題を潰すのが早いんじゃないか?」という話を頂きました。元々EYを辞める気は全くなかったのですが、事業会社サイドとして経営者としてやってみたいという思いもあり、悩んだ末に最終的に事業会社に行くことを決意しました。

    ――辞める時の葛藤はなかったのでしょうか?

    元々監査法人を辞めるつもりはありませんでしたし、既に活躍できるフィールドを用意してくれていた上司に、辞めることを伝えるのは非常に辛かったのを覚えています。お世話になっていた上司が海外出張中だったのですが、悩みを打ち明けると、国際電話で話をして引き留めてくれました。最終的には「EYにいるよりももっと活躍することを約束してくれたら、応援するよ」と仰ってくださったので、活躍とEYに恩返しすることを約束して辞めることを決意しました。

    ――ベンチャーに入って感じたギャップは何でしょうか?

    一番感じたのはメンバーの“ばらつき”です。監査法人では全員が会計士を目指したということもあり、一定の知識や考え方もあるので、そういう意味でいわゆる“標準偏差が小さい”傾向にあると思うのですが、事業会社は考え方や経歴も全てバラバラで、カルチャーショックを受けました。

    また、マネジメントにも最初は苦労しました。監査のプロジェクトマネジメントは、メンバーの目標が“監査意見”に向かっているという点では明確なので、そういう意味では比較的楽でした。一方、事業会社は何も無いところから作りあげ、目標を決めたり、そのプロセスも決めていかなくてはいけないのが最初は大変でした。

    ――最終的に上場を果たしたと思いますが、当時はどのように過ごされていたのでしょうか?

    上場準備前、入社して一番初めに力を入れたのが採用活動でした。人事は全くの未経験だったので、苦労したのを覚えています。トゥエンティ―フォーセブンは、パーソナルトレーニングを成長事業としていたのですが、当時は“2か月で10キロ痩せる”というようなキャッチフレーズが、当時は胡散臭いと思われてしまうようなビジネスだったので、ベンチャー採用と相まって、非常に大変でした。そのような中で特に採用が難しいとされる経理部長を探していたのですが、EY時代の部下に声をかけたところ、ジョインしてくれることになりました。その際に、「楢木さんから話をいただいたら動くつもりでした」と部下に言ってもらったのはとても嬉しかったですし、改めて監査法人での縁を感じました。

    監査法人での経験は意外とCFOに活きました。もちろんどれもやったことのない仕事なのですが、なぜか“やったことがある”ように感じました。例えば上場準備における審査は、監査法人内での審査とかなり近いです。具体的には、審査担当者はクライアントのことを知らないという前提のもと、全体からロジカルに分かりやすくシンプルに説明するという点や、相手の質問に対して端的に論点ズレすることなく、スムーズに回答することなどです。

    ――CFOを退任された後、現在はどのような活動をされているのでしょうか?

    現在は、IPOやM&A支援、事業承継に携わっておりまして、成長したい・チャレンジしたい、という方々の思いに共感し、自分ができることならボランティアでもなんでもやりたいという気持ちで仕事をしています。

    また、会計士業界を盛り上げたいと考えております。株式会社エアトリCEO兼CFOの柴田さん、株式会社Kudan CFOの飯塚さんとご飯を食べているとき、「会計士業界に恩返しをしたい、会計士の活躍できる場を増やしていきたい」という話になりました。当時は会計士CFOやCFOに興味のある会計士たちと少人数で焼肉会をして情報交換会を開催していたのですが、コミュニティを作った方が多くの人と関れるということで実際にネットワークを作り、現在はコミュニティが700人を超えるまでになりました。

    02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)

    ――仕事をするうえで大事にしていることについて3つ教えてください。

    まず、1つ目は「自分の主張に強弱をつけること」です。

    どの案件・論点に対しても、自分の意見は持つ一方で、絶対に自分が正しいと思わない限り、相手の意見をなるべく尊重することを意識しています。ビジネスでは正解が1つではなく、必ず白黒があるというわけではないので、“絶対に自分が正しい”と思わなければ、相手の意見を尊重するようにしています。以前はなるべく自分の意見を通すように働きかけていたのですが、その後に多くの失敗を経験し、今のスタイルを確立しました。それからは物事がスムーズにいくようになりました(ちなみに、どのような案件・論点であっても、もちろんプロコンは一緒に出し合いますし、議論します。自分の意見とは違う意見で進んだ場合でも当然責任は持ちますよ!)。

    次に、2つ目は、「新しいことを始めるときに“リスク”だけでなく、必ず“機会損失”を考えること」です。

    新しいこと・事業をやる際には、“リスクやできない理由”を考えるだけでなく、“やれば得られることのできる利益(やらないことによる機会損失)”も考えるべきです。そしてリスクがあっても始めることが重要です。個人的には、監査をメインとしていた会計士が事業サイドへ移った場合には180度変えないといけないマインドがこれだと思います。私自身、元々監査法人の中ではリスクを取れる方だと思っていましたが、事業会社に入ると、1勝9敗くらいの確率でも突き進むようなリスクテイカー(事業会社だとリスクテイカーとは言わないかも)ばかりで、非常に驚いたのを覚えています。

    最後に、3つ目は「感謝の気持ちを持つこと」です。

    今まで酸いも甘いもさまざまな経験をしてきましたが、助けられてばかりで、感謝の気持ちを忘れないようにしています。人生・仕事において、数ある地雷をほぼ全て踏んできており人の100倍は失敗していると自負していますが、その都度助けていただきました。助けていただいた方には感謝してもしきれません。

    03. 会計士という資格を取って良かったこと

    ――楢木さんがさまざまな経験をされてきた中で、公認会計士で良かったなと感じることを教えてください。

    まずは、信頼できる仲間と出会えたことです。監査法人は“ばらつきが少ない”というマイナス面がある一方、共通項が多いので、より深い話ができますし、すぐに打ち解けられる点が大きいと思います。IPO支援、M&A、CFO、監査法人パートナーなど、活躍するフィールドやベクトルが近いので、親近感が湧きますし、話も合う方が多いです。会計士業界の方々は損得勘定だけで動かないような“良い方”が多いので、そのような方々と出会えて本当に良かったと思います。

    また、監査法人時代に基礎スキルを身につけられたことも良かったと思います。監査法人、事業会社CFO、IPO・M&A支援とキャリアを歩んでいますが、ここまで来ることができたのも、全ては会計士資格を取ったことから始まっていると思います。私自身、会計士の独占業務にこだわらない生き方をしていますが、監査法人で学んだビジネススキルや知識、経験が全部活きていると感じています。

    ――最後にスタートアップに興味のある会計士に一言をお願いします!

    転職やビジネスなど、何か新しいことを始めるときは、リスクがよぎると思います。しかし、やってみなければ何も始まりません。私は事業会社に行って何度も失敗してきましたが、周りの会計士の方々がいつも助けてくれました。今では先人の会計士も増えてきたので、協力してくれる方もたくさんいらっしゃると思います。ぜひチャレンジしてみてください!私たちが皆さんを支えます!

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