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DeNA×SHIFTに学ぶAI採用革命。効率化の先にある「人事の真価」とは【人事交流会イベントレポート】

※本記事の内容は、2026年2月4日時点の情報です。

AIが採用実務のあり方を大きく変えようとしている今、人事はその進化とどう向き合うべきか。2026年2月4日、組織の成長を担う人事リーダーや実務担当者が一堂に会した会場で、熱い議論が幕を上げた。テーマは「AIとプロセス設計による採用革命」。

登壇したのは、エンターテインメントから社会インフラまで多角的な事業を展開する株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の風早亮氏。そして、ソフトウェアテストの常識を塗り替え、爆発的な成長を続ける株式会社SHIFTの菅原要介氏だ。 

毎年、数千人から十数万人という膨大な数のエントリーに向き合う両社が、なぜ今、AIを単なる効率化の道具ではなく戦略の核と位置づけるのか。現場の生々しい葛藤と、AI導入の先に見据える人間ならではの価値について、熱い議論が交わされた。

 

     

     

    左/風早亮氏 中央/菅原要介氏 右/飯塚祐司(モデレーター/CPAエクセレントパートナーズ株式会社 執行役員)

    【登壇者プロフィール】 

    風早亮氏 株式会社ディー・エヌ・エー CEO室室長 兼 ヒューマンリソース本部 副本部長

    2008年に第二新卒でDeNAに入社。
    広告営業や企画を経たのち、ゲーム事業のアライアンスやマネジメントを経験し、 2018年にHRに異動。新卒採用・育成の責任者を経て、2019年に全社の採用及び人材育成を統括。
    2020年からはHR本部副本部長に就任し、2022年からは同社のグループエグゼクティブに就任。
    2023年からCEO室の室長も兼任。

    菅原要介氏 株式会社SHIFT 上席執行役員 HR・AI本部長

    株式会社インクスにて製造業コンサルティングを経験後、2008年SHIFTに参画。
    品質保証事業を本格化する折、大手Web制作会社QA部隊の組織化コンサルを手がける。
    新規事業の立ち上げを経て、事業本部全体の統轄に加え、採用・人事施策・人材マネジメントなど、SHIFTグループ全体の人事領域を管掌。
    また、「AIネイティブなSIカンパニー」としての躍進をリードすべくAI統括室を新設。
    内外に向けたブランディング、技術革新などを推し進める。

    第1章:人事を再定義するためのテコとしてAIを握る

    「採用の量と質を両立するAIの活用法とは」。トークセッションの冒頭、まずは具体的なAI活用の実践知が共有された。DeNAの風早氏は、膨大な母集団と向き合う新卒採用における「見極め」の自動化について語った 

    「新卒採用は母集団が非常に大きく、第一段階である書類選考だけでも膨大な工数がかかります。そこでまず、過去の書類選考の結果と現在の候補者データをAIで読み合わせる仕組みを導入しました。その結果、『明らかに自社に合う層』と『合わない層』を瞬時に分類できるようになり、見極めにかける工数を大幅に削減することができました。

    また、AI面接の本格的な導入を見据え、私自身が複数のサービスを受けて検証しましたが、短期間で驚くほど精度が上がっているのを実感しました。特に、AIが自然言語処理によって面接内容を整理する力は非常に精度が高い。採用の質を上げるためのツールとして使わない手はないのではないかと、確かな手応えを感じています」

    一方、年間十数万件ものエントリーが寄せられるSHIFTの菅原氏は、AIが真価を発揮するための土台となるプロセスについて言及した。同社では、選考過程を徹底的にパターン化し、データを戦略に還元する仕組みを構築している。

    「SHIFTでは、候補者の属性や選考過程で得られる魅力に対し、非常に細かな選考パターンを設計しています。採用担当メンバーが、設計されたルートに沿って確実に選考を遂行できる体制を整えています。

    そして、『ヒトログ』という自社開発の人材マネジメントシステムを活用し、入社後に活躍する人材の状況を可視化し、人事内で分析を行っています。その分析結果は採用チームに共有されており、活躍可能性の高い人材に合わせた採用ルートやパターンの最適化に活用し続けています。AIなどのテクノロジーを活用する土台として、こうした現場のデータと連動したオペレーションを徹底し、選考の精度を安定させることが、事業成長に貢献する人事の役割だと考えています」

    第2章:効率の裏側に潜む「感情」と人間の価値

    続いて議論は核心である「AI活用を通して見えた、人が担うべき業務とは何か」というテーマに移った。AIが作業を肩代わりするほど、逆に浮き彫りになるのは人間ならではの役割だ。風早氏は、自身の経験から「体験を共有すること」の重要性を強調した。

    「ルーティンワークなどの業務はAIが得意とする領域ですが、候補者を惹きつけるアトラクトや熱量の伝播は、やはり人間にしかできない仕事です。コロナ禍でリモート面接が普及しましたが、画面越しではどうしても義理や恩といった人間らしい感情が希薄になりがちで、内定承諾後の辞退が増えたような感覚もありました。

    例えば、私たちは候補者と一緒に横浜スタジアムへ行き、負けそうな試合を大逆転する瞬間を共に味わうことがあります。こうした強烈な体験を共有した相手とは、忘れられない縁が生まれます。生身の人間だからこそ、相手の心をぐっと掴み、記憶に刻まれることができる。これは今後も変わらない、人間の最大の武器です」

    この意見に、SHIFTの菅原氏も深く同意した。同氏は、リクルーターの業務を「AIが担う前半」と「人間が担う後半」に分けて考えるべきだと指摘する。

    「母集団の形成や情報の仕分け、プロセス管理といった前半の業務はAIに集約できます。一方で、候補者が何を求めているのかを探り、あらゆる情報を集めて口説きの角度を上げていく後半のフェーズ、つまり魅力づけの仕事こそが、人間が100%の力を注ぐべき領域です。 AIによって前半のプロセスを圧縮し、浮いた時間をすべて候補者との対面での対話やアトラクトに充てる。これこそが、これからの時代の人事の働き方になるはずです」

    モデレーターの飯塚が「テクノロジーが進んでも、対面での面接は残り続けるか」と問いかけると、両氏は「人だからこそ印象に刻まれることの価値は、むしろ高まっていく」と力強く頷いた。

    第3章:テクノロジーで「基準のブレ」を排し、個のスキルを底上げする

    話題はさらに踏み込み、仕組みを現場に浸透させ、属人性を排除するための面接官のトレーニング手法へと及んだ。菅原氏は、AIによる客観的な評価の導入について明かした。

    「かつては、面接官が実際に面接している動画をすべてチェックし、一つひとつ改善点をフィードバックしていました。しかし最近では、このプロセスにもAIを導入しています。

    面接官の表情や話し方の印象、候補者への接し方などをAIが解析し、点数化する。その客観的なデータをもとにフィードバックを行う形に進化しています。テクノロジーを活用することで、多忙な現場でも高いクオリティを維持しながら、効率的に面接官のスキルを底上げできるようになりました」

    一方、DeNAの風早氏は、人の目による伴走とデータ分析を組み合わせたハイブリッドな手法を紹介した。

    「初めて面接にアサインされるメンバーには、必ずシニアメンバーが同席して学ばせる仕組みをHRが中心となって運用しています。また、すべての面接を動画で記録しており、特定のフェーズで通過率が低下している場合には、即座に動画を確認しに行きます。

    そこで何が起きているのかをピンポイントで特定し、『この基準はもっとこう調整すべきだ』とチューニングを行う。人の目による育成と、動画データに基づいた客観的な軌道修正。この両輪を回すことで、選考基準のブレを最小限に抑えています」

    属人化しがちな見極めのプロセスを、テクノロジーによる客観性とベテランの知見を掛け合わせることで、再現性を高める。この徹底した仕組み化こそ、採用の質を均一に保つための要諦と言える。

    第4章:採用を経営戦略に直結させる手綱の引き方

    セッションを締めくくったのは、「採用をいかに経営戦略に直結させるか」という、人事の最上位概念ともいえるテーマだ。DeNAの風早氏は、AIがもたらす生産性向上の実感を語りつつ、人員計画における過渡期の難しさというリアルな現状を共有した。

    「正直なところ、まだ試行錯誤の最中です。来期の事業計画を各本部と確認すると、現場からは『もっと人を増やしたい』という要望が次々と出てきます。HRとしては『そこをAIで効率化して、増員を抑えられないか』と考えますが、実態としてはまだ過渡期です。

    ただ、生産性の向上は肌感覚として確実にあります。例えば現在の人事組織は約60名ですが、振り返れば68人分くらいの仕事はこなせている実感がある。しかし、それを即座に『50人で回せるか』と言われると、まだそこまでの代替には至っていません。現在は、AIによってやれることを増やしている段階であり、それをいかに人員計画の適正化へ繋げていくかが、これからの大きな課題です」(風早氏)

    これを受け、SHIFTの菅原氏は、人事がオーダーを待つ側から戦略を共に描く側へ転換することの重要性を説いた。同社では経営と現場を連動させた、緻密なコントロールを行っている。

    「以前は事業側から『こういう人が欲しい』というオーダーを受けて動くだけの関係でした。しかし現在は、各事業部の戦略会議に必ず人事が入り、そもそも組織課題がどこにあるのかを話し合う『HRBP』としての動きを強めています。AIによって事業環境の変化が激しくなる中、必要な人材要件も即座に変わります。現場に深く入り込むことで、その変化に即応した組織づくりが可能になり、結果として採用が経営のスピードを加速させていると感じています。採用した人材が100%の利益を生むまでのリードタイムを数値化し、稼働状況を見ながら採用スピードを微調整する。利益を確保しつつ、事業を伸ばすための攻めの手綱を緩めない。この連動が経営直結の採用につながります」 

    風早氏もかつてのモバゲー時代の急成長と、その後の構造変化から得た教訓を語り、「経営とHRが月次で密に連携し、現場に裁量は渡しつつも、経営のアクセルとブレーキに責任を持つHRが状況をモニタリングし続けることが、変化に強い組織を作るためには大事だと思います」と締めくくった。

    第5章:AIという武器の先に、人事が残すべきもの

    ここからは、限られた時間内では語り尽くせなかった論点を補完すべく、舞台裏で改めてお二人に話を伺った内容をお届けする。

    Q1:AI活用が進む中で、人事として「これだけは譲れない」価値観は何ですか?

    風早(DeNA): 「ナラティブ(物語)と熱狂の共有」です。テクノロジーで人をデータ分析できるようになったとしても、その裏にある『なぜこれをやりたいのか』という個人の物語は、人間同士の対話でしか深く理解し合えません。効率化が進む今だからこそ、あとに残る感情の共有を、人事が守るべき価値として大切にしたいと考えています。

    菅原(SHIFT): 「事業を伸ばすための戦略部門であること」です。人事は単なる管理部門ではなく、会社を成長させるために必要な機能を最大化させる存在であるべきです。たとえAIによって手法や役割が変化したとしても、事業を勝たせるために、人にまつわる何ができるかという視点だけは、人事として絶対に外せない生命線だと思っています。

    Q2:AIに「代替される領域」と「人間が担うべき領域」の境界線はどこにあると考えていますか?

    菅原(SHIFT): 母集団の形成や情報の仕分けは、AIが得意とする領域です。一方で、候補者が何を求めているのかを探り、自社で働く意義を誠実に伝えて口説き落とす魅力づけのフェーズは、人間にしかできません。AIによって前半の業務を極限まで圧縮し、この後半の対話に注ぎ込むこと。それがこれからの人事の働き方です。

    風早(DeNA): 「耳の痛いフィードバック」は人間に残る役割だと考えています。AIは基本的に受容的で肯定的な情報を提供しますが、人間は相手の将来を思い、あえて課題を突きつけたり、高い壁を提示したりすることができます。『うちに入ることがゴールではない。あなたはどうしたいんだ』と、相手の人生に真摯に向き合い、変化を促す関わり。これは人間だからこそ価値が出せる領域ではないでしょうか。

    Q3:次世代の人事プロフェッショナルには、どのようなスキルが求められますか?

    菅原(SHIFT): 経営者と同じマインドで、テクノロジーを使いこなす力です。人事を戦略部門と捉え直し、事業を伸ばすために車でいう車輪のような不可欠な機能として、AIをふんだんに活用して生産性を最大化させる。AIに取って代わられるのを恐れるのではなく、経営の視点で道具として使いこなす姿勢が求められます。

    風早(DeNA): 未来を構想し、ワクワクさせる力です。最新技術をフットワーク軽く触り、『これを使えばどんな面白い組織ができるか』と未来を描くこと。そして、そのビジョンを実現するためにやるべきことを分解し、周囲を巻き込んで道のりに変えていく。AIという強力なパートナーがいるからこそ、人事の仕事はよりクリエイティブで、未来志向なものになっていくはずです。

    おわりに:人の可能性を広げ、人生を豊かにする応援者として

    「人事は単なるオペレーション部門ではなく、事業成長を最大化させるための攻めの装置であるべきだ」。 菅原氏のこの言葉は、事業を勝たせる当事者としての人事の誇りを象徴しています。AIは人事を単純作業から解放し、本来あるべき「人の可能性を最大化し、組織の熱狂へ変える」という創造的な領域へ立ち返らせるための、大きな転換点となります。

    私たちCPAエクセレントパートナーズ株式会社は、「人の可能性を広げ、人生を豊かにする応援をする」というミッションを掲げています。

    今回両氏が示したのは、テクノロジーで効率を極めた先に、目の前の候補者が持つ可能性に光を当て、その人生に伴走する「血の通った対話」を創り出す姿でした。それはまさに、私たちのミッションを体現するプロセスそのものです。

    管理というルーティンをAIに委ねた今、人事には「事業を勝たせるために何ができるか」という本質的な問いへの向き合いが求められています。磨き上げた専門性にAIという武器を掛け合わせ、一人ひとりの可能性を組織の成果へと確実に繋げていく。人事が真に経営を支える未来を、共に創り出していきましょう。


    CPAエクセレントパートナーズ株式会社では、採用支援・育成支援を手掛けています。
    以下の領域で皆さまへ貢献することができます。

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    -キャリア採用支援-

    公認会計士・USCPAホルダー、CFO、経理、財務、税務、管理会計、経営企画、内部監査などのポジションの採用支援を手掛けています。公認会計士のOBOGのアルムナイ、多くの会計ファイナンス人材との独自ネットワークが強みです。

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    https://cpa-career.jp/lp/grow/

    イベント概要 – CFOセミナー

    イベントプログラム【DeNA風早氏×SHIFT菅原氏 登壇!】人事向け勉強会&交流会
    開催日2026年2月4日 19:00-21:30
    開催場所CPASS LOUNGE(シーパスラウンジ)
    〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目14−20 新宿テアトルビル 6F
    / オンライン配信

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