
公開日:2021/06/07
レジリエンス
株式会社Assatteの記事
レジリエンスとは
水泳の池江璃花子選手はアジア大会史上初の6冠を果たすなど、目覚ましい活躍を見せる若手アスリートです。2019年2月、彼女は白血病という難病を発症し、長期の療養生活を余儀なくされてしまいます。しかし、驚異的な回復力を見せ406日後に水泳に復帰、それから1年半も経たないうちに東京オリンピック代表の内定獲得まで成し遂げてしまいました。彼女の偉業は、驚異的な身体能力があったから実現できたのでしょうか。もちろん、それもあるでしょう。しかしそれ以上に、彼女の物語からは「レジリエンス」の大切さをうかがうことができるのです。
レジリエンスとは「困難あるいは危機的な状況において、うまく適応する過程・能力・結果」のことです。わかりやすく言い換えると、逆境に直面した際の「再起力」、「心のしなやかさ」です。池江選手の復帰も、白血病という逆境にうまく適応し、乗り越えられるだけのレジリエンスがあったからこそ可能だったのです。レジリエンスは心の「弱さ」ではなく、「しなやかさ」に目を向けたポジティブな概念であり、近年では学校を始め民間企業や軍隊など、様々な分野での応用・研究が行われています。
レジリエンスの効用
レジリエンスの効用は、ゴム製のボールとガラス製のボールの例を考えると分かりやすいかもしれません。この2つのボールを地面に投げつけると、ゴムの方は跳ね返って元の形に戻りますが、ガラスの方は粉々に砕け散ってしまいます。つまりレジリエンスの高い人(ゴム製のボール)は、逆境に直面する(地面に投げつけられる)と、一度はへこむもののすぐに元通りになります。一方で、レジリエンスの低い人(ガラス製のボール)は、逆境に直面する(地面に投げつけられる)と壊れてしまい、修復するまでに膨大な時間がかかってしまう、あるいは二度と元に戻らなくなってしまうのです。
高いレジリエンスを持つことは、精神的なダメージを受けにくくするだけでなく、いずれ訪れる逆境にうまく適応し、乗り越えることにつながります。その結果として、仕事あるいはプライベートにおいて、優れたパフォーマンスを発揮することができるのです。強い力が加わったボールが、より高く空に跳ね返るように。高いレジリエンスを持つ人は、逆境を糧にして、さらなる飛躍を遂げることでしょう。
レジリエンスを測る
様々な点で有効な働きを持つレジリエンスですが、その高低の判断は、他の心理的要素よりも判断が難しいかもしれません。なぜなら逆境に陥ってからでないと「再起力」はわからないからです。そのため成功している人が全員、レジリエンスが高いとは限りません。大きな逆境を経験しないまま成功したが、ある時、大きな挫折を味わい、表舞台から消える人も多くいます。ただし自分、あるいは他者のレジリエンスの高さを推測することができる魔法の質問があります。それが以下の質問です。

あなたは、どの要素の割合が一番大きかったでしょうか?
この質問は、心理学者のワイナー博士が提唱した「原因帰属理論」に関するものです。人は自分の成功や失敗の原因を「自分に関するものか」、「自分以外のものか」、そして「変わりやすいものか」、「変わりにくいものか」という二つの軸で判断する傾向があり、これを掛け合わせた4象限の強度を用いることで、その人のマインドセット(考え方、解釈の癖)を知ることができるのです。

上記4象限のうち、レジリエンスが高い人は「自分に関する、変わりやすいもの」、すなわち「努力」に原因を帰属する傾向があると考えられています。なぜなら成功しても、あるいは失敗したとしても「自分の努力によって結果は変えられる」と信じているからです。
なお「才能」に帰属する人は、自信家かもしれませんが「生まれ持ったものは変えられない」と信じているため、挫折をすると自尊心が下がり、再起が難しくなります。「難易度」と「運」に帰属する人は「成功や失敗は環境や他者の影響が大きい」と考えるため、そもそも自分の行動で世界が変えようとしません。
常に努力を続けることができる人は一握りです。嫌なことがあったら誰かのせいにしたほうが楽ですし、自分は才能があると考えるほうが気分は良いのです。しかし、その考え方そのもの(マインドセット)が、自分の人生の豊かさに多大な影響を与えていることに、気づいている人は多くありません。あなたが誰かにアドバイスをする機会があれば、上記の「魔法の質問」をしてあげてください。
レジリエンスを高める
レジリエンスが高ければパフォーマンスは向上し、失敗しても素早く回復する。その結果、多くの人の成功に貢献することは間違いありません。この万能とも言えるレジリエンスを高める(鍛える)方法は、検索すれば、多くの情報を入手できます。しかし残念ながら、そのほとんどは有効とは言えません。
心理技術は、その本質を理解していなければ効力を発揮できません。簡単に入手できるレジリエンスに関する情報は、文献や書籍から転載されたものが多く、決定的に重要な要素が抜けているのです。それは「逆境に陥ったときに、人がどのような思考過程を辿るか」です。この背景を考慮していない、小手先の心理技術だけではレジリエンスを高めることは難しいでしょう。
「レジリエンスを高める方法」は、ここでは収まりそうもありません。そのため大変申し訳ありませんが、また別の機会に記事にさせて頂きたいと思います。まずは自分のマインドセットを振り返り「努力」への原因帰属を心がけてみましょう。
この記事を書いた人
株式会社Assatte(アサッテ)です。「未来に進む勇気をすべての人に」を理念に、個人と組織が少し先の未来(明後日)に歩みを進めるご支援をさせて頂いております。心理学の専門家(Ph.D)や、組織コンサルティングの重鎮、大学教員などのメンバーが「アリストテレスに勝つ」ことを目指し、日々、人間理解への探求と実践を続けています。
すべての人が過去や現在に囚われることなく、未来に進むことができる。そして目の前の人だけでなく、その人が影響を与える次の世代の人のことまで考える。そんな社会は、より明るく、きっと面白いものであるに違いありません。その実現に向けて、CPASSでは「仕事」や「人間関係」、そして「未来」につながる情報や機会を提供したいと考えております。
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