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公開日:2025/07/29

  • イベントレポート

【カンファレンス2025イベントレポート】社外役員・常勤監査役としてのキャリア

ファシリテーター

黒坂 卓司(一般社団法人ベンチャー監査役協会 代表理事)

 

スピーカー

桂 真理子(KMTパートナーズ株式会社 代表取締役)

國立 英治(株式会社Grand Central 常勤監査役)

田上 沙織(株式会社クラダシ 常勤監査役)

福島 史之(株式会社kubell 取締役(監査等委員))

 

偶然から始まるキャリアの“きっかけ”

「ママ会計士友達から『常勤監査役やらない?』って声をかけていただいて。『はい、やります!』って即答したんです」。 セッションの口火を切ったのは、桂氏の意外なキャリアのきっかけでした。ファシリテーターの黒坂氏が「軽い感じでお誘いされたんですね」と笑うと、会場も和やかな雰囲気に。「すぐに飛び込んだあとで後悔もありましたけど、でも結果的に飛び込んで本当に良かったです」と続けます。

國立氏のキャリアもまた、“とりあえず登録”という小さな一歩から動き出します。「人材紹介会社に登録したら、今の会社を紹介してもらいました」。

田上氏は、大学時代の先輩からの誘いがきっかけだったと振り返ります。「最初は『監査はもういいかな』と思い、1〜2年くらい断り続けていたんです。でも、帰国のタイミングが重なり、“ここまで誘ってもらえるなら”と決断しました。今は本当にやって良かったなと思っています」。

福島氏のキャリアは、まさに“ご縁”が原動力でした。「監査法人時代の同い年の会計士仲間と飲んでいたら、『スタートアップで常勤監査役やってみないか?』と。その会社が、当時まだ社員30名、売上ゼロだったメルカリです。周囲からは『お前、正気か?』と言われましたね」。

登壇者たちの“きっかけ”は、誰かとの何気ない交流や、予期せぬ出会いの場から生まれていました。自分をオープンにしているだけで、思いもしなかった道が自然と拓けることがある──そんな希望に満ちた空気が、会場全体にじわじわと広がっていきます。

 

【キャリアのポイント】飛躍の裏にあった「決断」と「経験」

「やはり監査法人をスパッと辞めたこと、これが大きかったと思います」と桂氏は語気を強めます。「子育てがきっかけでしたが、安定した職場を辞めて“ゼロ”に戻ることは、すごく大きなリセットでした。でも、その“何もない状態”から新しいものが始まったんです」。

國立氏は、キャリアの選択基準についてこう語ります。「実は“常勤監査役になろう!”と強く思って登録したわけではなかったんです。たまたま紹介された会社のHPを見たとき、若手がぐんぐん成長している姿に惹かれました。熱量ある現場で、監査役としてだけでなく役員として何か役に立てるかもしれない。そう思い、今の一歩を選びました」。

経営側を経験したことが自分の視野を広げた」と語るのは田上氏です。「母が経営する会計事務所で制度設計や現場運用に携わったのですが、その時に培われた“経営目線”が、今の役職にものすごく役立っています」。

そして福島氏は、キャリアのポイントとして「やはりメルカリに参画したこと」を挙げます。「スタートアップ業界の生き字引のような方に背中を押していただきジョインしました。様々なインシデントもありましたが、視座が格段に上がったのは非常に大きかったです」とリアルな想いを吐露。「本当に、当時はスマホケースと保護フィルムしか売れてないアプリでしたから」と付け加え、会場を笑わせました。

セッションの熱量は、ここからさらに上昇。一人ひとりの「歩み」の細部には、“単なる偶然”だけではない、地に足のついた直感と努力の軌跡が確かに流れていることが伺えます。

 

「常勤監査役」「社外役員」だからこそ見える景色とは

「ママになったら、常勤監査役は本当にオススメです」と桂氏はきっぱり。「家庭とのバランスを大切にしながらキャリアを磨きたい女性にとって、最高の選択肢の一つ。限られた時間でも力を発揮でき、しっかり“経営目線”が鍛えられます。何より、会社の中からすべてを“面”で見渡す感覚は、他では得られない貴重な経験です」。

國立氏も、その魅力に目を輝かせます。「私は上場準備会社の常勤監査役として、会社の中にグッと入り込んでいます。経営陣に非常に近いところで、会社の“ど真ん中”から全てを見渡せる。経営陣の悩みに寄り添い、役に立てた経験は、私の視座を大きく引き上げてくれました」。

社外役員としての役割を問われた田上氏は、力強く語ります。「社会全体が女性役員を増やそうと“本気”になっている今、その議論の場に当事者がいないことも多い。私は、経営層に“本質的な課題”を伝える役割があると思っています。それは、やりがいというより“使命感”に近いかもしれません」。

一方、桂氏は「正直、今はラッキーです。女性枠を埋めるという“下駄”を履かせてもらって社外役員になれた。だからこそ、“女性が入って良かった”と思われる実績を積み重ねたい。結果を出し続けることにこだわっています」と、率直な気持ちを打ち明けます。

6社の社外役員を兼任する福島氏は、「色々な会社や事業を同時に体験できるのが、本当に楽しい。18もの事業を同時に見ていくのは常に勉強が必要で楽ではありませんが、その分やりがいがすごく大きいですね」と、笑顔でその醍醐味を語りました。

中でも印象的だったのは、桂氏の失敗談です。「初めての取締役会で思ったことをずばり言ったら、経理部長にガツンと怒られ、自転車で泣きながら家に帰りました。でも、その時『会社は人でできている』と学び、外から正論をぶつけるのではなく、根回しや仕込みの大切さを実感したんです。挑戦を恐れないでほしいです」。

 

【How to】憧れのポジションを掴むために。求められる“もう一つの武器”

セッションは佳境へ。黒坂氏から「國立さん、どうやったら常勤監査役や社外役員になれるんですか?」と、会場の誰もが聞きたいであろう、まっすぐな質問が投げかけられます。

「私のキャリアは全然お手本になりませんが…」と前置きしつつ、國立氏は丁寧に答えます。「思い返せば全てが“縁”でした。ただ、ファンドやコンサル、M&Aなど多様な経験は、どれも本当に役に立ちます。また、会社法を知っておくことは、監査役に求められる差別化された役割を果たす上で重要です」。

田上氏は「役員の仕事は“人となり”もすごく大事」と補足します。「求人に出回らないポジションも多いからこそ、人脈や信頼が大切になる。知識や資格はもちろん強いですが、“自分だけのもう一つの武器”、何かプラスアルファがあると道が拓けやすいです」。

 

プロフェッショナルたちが見据える“次の景色”

最後に、黒坂氏が「みなさんの“これから”についてお伺いします」とマイクを向けます。

福島氏「AIが社会に与えるインパクトは大きいでしょう。でも結局は、その時その時でベストを尽くすだけ。その積み重ねが今の自分を作ったし、これからも目の前の仕事に全力投球していきたいです」。

桂氏「私の目標は“関西で一番有名な女性会計士”になること。そして、心から応援したい会社のIPOを常勤監査役として再び支えたい。それと、やっぱり“ママになったら常勤監査役”、これは絶対オススメです!」

國立氏「まずは目の前の上場に全力を。その後は、業務執行や若手の育成にも携わりたい。これまでの経験を、次の世代に繋いでいきたいです」。

田上氏「今は目の前のことを一生懸命やり、子育てが落ち着いたら、また業務執行側にチャレンジしたい。そう思えるのも、会計士資格が道を広げてくれたおかげ。今になって、その価値を実感しています」。

 

【おわりに】偶然をチャンスに変える、自分だけの一歩を踏み出す勇気

「チャンスが偶然転がり込んできた」と登壇者たちは肩肘張らずに語ります。しかしその背後には、「自分の選択に責任を持ち、その場でベストを尽くす」というプロフェッショナルの矜持が一貫してありました。

社外役員や常勤監査役というキャリアは、計画通りに進むものではないのかもしれません。むしろ、自分だけの“もうひとつの武器”や、出会い、人脈、そして一歩踏み出す勇気。それらが混ざり合い、想像もしていなかった景色へと繋がっていく──。

「最初は失敗するし、怖い。でも、必ず学んで成長できる」 「気がつけば、自分だけの“強み”が蓄積している」 「誰にでもチャンスはある。勇気を持って、明日から一歩踏み出してほしい」

そんな力強いエールが、会場の空気の中にいつまでも残るような、希望に満ちたセッションとなりました。

 

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