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公開日:2024/03/22

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【世界一周会計士】アジアに3度駐在。フィリピンを支えるジャパンデスク大橋さんのキャリア 世界で活躍する会計人材へインタビューVol.14

プロフィール

CIA(公認内部監査人)
日系会計コンサルティング会社にて2016年より6年間フィリピン・ベトナムに駐在し、ASEAN責任者を歴任。東南アジアを中心に法人設立・会計税務・人事労務のワンストップサービスを提供し、外部セミナー講師や書籍執筆に従事。2021年より太陽グラントソントンにて、外資企業への日本法人の管理体制構築、海外子会社のシェアードサービス支援などを経験した後、2022年10月よりP&A Grant Thornton へ出向。主に日系企業のフィリピン設立・撤退や税務調査・移転価格など税務アドバイザリー支援を担当。

1. 駐在までのキャリア

――始めに大橋さんの自己紹介をお願いします。

現在フィリピンの首都マニラに駐在している大橋です。グラントソントンアドバイザーズ(以下GTA)には2021年10月に入社しました。それ以前は、独立系の日本の会計コンサル会社で新卒から約10年間勤め、海外駐在を経て、GTAに入社しました。

前職では主に中小企業をターゲットに、最初の5年は国内事業、残りの5年は海外事業に携わっていました。国内事業では中小企業の経理部門に常駐し、本社へ戻った後、初期メンバーとして中小企業向けの経営コンサル事業の新規立ち上げに携わりました。

その後、会社が海外事業に力を入れる動きがあり、2016年から約4年間フィリピン、ベトナムにも1年半ほど駐在しました。その後、GTAに転職することになりました。

――2か国の駐在を経験されたのですね。GTA入社後から現在まで担当している業務について教えてください。

GTA入社当初はビジネスリスクサービス部門に所属し、海外子会社の管理体制構築やシェアードサービスチームに関わっていました。2022年10月にフィリピンへの駐在が決まり、こうしてマニラに来ております。

現在は、グラントソントンフィリピンのジャパンデスクとして、日系企業への新規営業や、既存顧客へのサービス提供を行っています。主な業務としては会社設立サポートや会計記帳・税務申告などのアウトソーシング業務、税務調査対応や移転価格などの税務に関する全般的なサポートも行っています。

――新卒で独立系コンサルファームに入社されたという話ですが、きっかけや、興味を持ったエピソードについて教えてください。

大学3年生の後半から簿記の3級、2級を取り、その後税理士の資格に興味を持ち始め、近くの予備校に通って勉強していました。働きながら実務経験を積み、資格の勉強もできる場所を探していたのですが、その会社は人材育成に力を入れていて、「実務経験を積みながら資格の支援も受けられる」ということで入社しました。

最初の1年で税理士2科目は合格しましたが、実際に始めてみると、勉強と仕事の並行が難しく、資格の勉強に中々時間を割けなくなっていきました。また、その会社はプロフェッショナルとしてのマインドセットやマネジメント思考を重視していて、社内の推薦図書含め経営書を100冊近く読み感想文の提出や、毎朝1時間の朝礼でスピーチをしたり、都度代表から直接厳しいフィードバックをもらうなど、会計事務所として特殊な会社でした(笑)。

ただ、個人的には結果として、大勢の前で自分の意見を伝える場が多くあり、とても貴重な経験だったと思います。

――面白いですね。日本では自分の意見を発する機会が少ないですけど、特に海外では自分の意見をはっきり言う場面が多いと思います。そのようなグローバルなマインドセットを学べたのは大事ですよね。

振り返ってみて、初めての赴任当時は27歳という若輩者でしたが、そのような経験が各国のナショナルスタッフを含めASEAN海外拠点の管理者の考え方、またクライアントへのコンサルティングをする土台となりました。発信力という意味では言語は異なるも、海外でも通用するスキルが身につきましたし、その意味ではスムーズに海外に適応できたなと思います。

――コンサルタント時代にフィリピンに4年間駐在されていますが、そのきっかけについて教えてください。

駐在を決めた理由は主に3つの環境です。1つ目は、自分が置かれた環境です。前職では海外事業に力を入れており、先輩や上司が次々と発展途上国の東南アジアや南米に駐在していきました。その先輩たちの話をランチや職場で聞いて、海外を身近に感じることができました。自分の周りの環境が、海外駐在への関心を高めていったのだと、振り返ってみて思います。

2つ目の理由は、当時メインのお客様であった中小企業や中堅企業の置かれた環境です。日本電産創業者の永守重信さんの「日本企業が生き残る方法は3つ」という記事を読んだときの話です。その内容は、1つ目が日本国内のニッチな市場で生き残る、2つ目はグローバルに展開していく、3つ目は座して死を待つ(笑)というものでした。

少し尖った内容でしたが、「中小企業も海外に進出する必要があるのでは」と強く感じ、海外進出をする企業をサポートできるようになりたいと思いました。

3つ目の理由は、私たちが働いている会計・税務業界の環境です。特に、記帳代行や税務申告を行う業務は、AIに少しずつ代替され、顧問報酬も下がってきています。これまでの経理業務の経験だけでは食われてしまうと思い、偶然にもこの3つの環境が同じタイミングで重なり、自然と「海外に行かなければ!」というマインドになりました。

その時に会社の代表がオフィスにふらっと来て「海外に行きたい人はいるか」と聞いたときに、咄嗟に手を挙げることができ、海外赴任のチャンスを掴みとることができました。

――将来のキャリアについて常日頃考えていたから、チャンスが転がってきたときに飛び込めたのですね。

そうですね。当時本社のオフィスには60人いて、代表が来て誰を送るかという話が出たときに、我こそはとアピールして手を挙げました。実は、当初はベトナムに行く予定だったのですが、家族や友人にもそのことを話した翌週にフィリピン行きになりました(笑)。

ただ、ベトナムに行きたいというよりは、海外でチャレンジしたいという気持ちが強かったため、特に自分にとっては全くサプライズでは無かったです。結局4年間の駐在の後に、ベトナムにも1年半行きましたけどね。

そして、重要なことは、海外で働くことではなく、海外で何をするかという目的・ミッションを自覚し行動することだと思います。私の場合は、当時中小企業向けの経営コンサルという新規事業の立上げを担当していたこともあり、日本だけでなくフィリピンから全世界へサービス展開したいというミッションを持っていました。

――海外駐在を経て、GTAに転職されていますが、そのきっかけについて教えてください。

転職の理由は主に2つありました。まず、前職で国内業務とフィリピン、ベトナム両国での海外業務を一通り経験し、自分の中で多少なりとも「やりきった」という感覚があったんです。相応のポジションも与えてもらいましたが、その中で自分自身の限界を感じてしまいました。

一つ目に感じた限界は「専門性」です。前職の会社はベンチャーで20代がメインで、幅広く業務を行っていました。人事から会計、企業設立といったバックオフィス全般から経営会議のファシリテーションや経営理念作成までサポートしていましたが、社内には各分野に特化した専門的知識やスキルを持っている人も少なく、良くも悪くも幅広いが故に自分の強みや専門性を伸ばせる範囲が限られていたんです。

二つ目の限界は「自分の成長」で、若い組織の中で自分が上の立場になり、教育・マネジメントするという役割が大半の仕事になった時、組織成長と個人成長のベクトルにズレを感じることもあり、新しい環境で新しい人たちと働くことで、自分の可能性を引き上げるのではないかと感じたんです。入社して10年が経ち、節目ということもあったため、次の10年・20年を見据えて環境を変える決断をしました。

(写真:GTフィリピンでGreat place to workの記念撮影)

2.フィリピン駐在の実態

――次に、フィリピンでの駐在についてお話を伺っていきます。

――まず、大橋さんは前職の会計コンサル会社でフィリピン駐在に手を挙げた際、行くことに対する不安は無かったでしょうか。

特に無かったです。駐在員の方が一時帰国してきた時に、日常的に現地の話を直接聞くことができていたのが大きかったです。赴任前はTOEIC300点以下だった海外駐在を経験した先輩方から「海外に行ってみなよ、本気でやれば何とかなるから」と声をかけられたことが、一つ大きな励みになりました。

――身近に駐在経験者がいると、海外に行きたくなりますよね。

そうですね。駐在の方が一時帰国した時には、積極的に声をかけたり、ランチに誘ったりして、フランクに話を聞いたりしました。普段の業務とは全く異なる情報を得ることができるからこそ、能動的に情報を得に行くことが大切だと思います。

――英語に対する不安はいかがでしたか。

英語に対する不安はかなりありました。

客先で常駐型の経理業務をしていた時に初めて実務を経験したのですが、ベテラン経理部長の姿を見て正直20年、30年同じルーティーン業務を続けることはしたくないと直感的に感じてしまいました。そこで海外に目を向け、「やらなきゃいけない!」という焦燥感と共に英語を勉強し始めました(笑)。海外駐在やアサインメントのためには、最低限の英語力が必要だったからです。

そして客先での常駐業務が終わった後、思い切って6ヶ月間休職してセブ島に約4ヶ月語学留学に行き、韓国系の学校で、朝8時から夜10時までのスパルタコースを受講しました。その頃はセブ島に日本人向けの学校が少なく、学生と社会人が半々で、韓国人が約5割、残りが台湾人と日本人で25%ずつの割合でした。日本人が多いと結局日本語ばかり話してしまうので、意図的に日本人が少ないところを選んだのはとても良かったと思います。

4ヶ月の留学で英語がペラペラになれた訳ではないですが、自分の気持ちを伝えたり、相手の言っていることを何となく理解できるくらいにはなりました。そもそも海外業務でも英語が完璧である必要はありませんしね。

――海外業務は「単語さえ覚えちゃえば意外とできる」みたいな話を、実際に東南アジアで開業された会計士の方から聞いたことがあります。

そうですね。実際に自分が手を動かすことは少なく、現地のフィリピン人会計士や弁護士が実際に業務を行ってくれます。日本人に対するお客様への説明や業務のクオリティコントロールが主な業務になりますが、英語の勉強よりもどちらかというと、日本での実務経験はもちろん現地法令と実務の違いや異文化コミュニケーションの理解がとても役に立ちました。

まず、フィリピン人はとても楽観的で、仕事中におしゃべりが多いです(笑)。オフィスが常にうるさいほどで、仕事の話のみならずプライベート話もたくさんしているため、雰囲気は日本とは大きく違います。PCで仕事していると思って画面を覗いてみると、facebookを見ている、なんてこともたまにあります。一方でベトナムに行った時は、物静かで業務を淡々とこなすベトナム人が多く、オフィスがとても静かで対照的でした。

――国民性が現れていて面白いですね。世界一周中にベトナムで開業された会計士の方も、ベトナム人は凄く真面目だと話していました。英語も話せるし責任感があるし、グローバルでみれば日本人よりも仕事ができるのでは、という話もされていたのを思い出しました。

最初はフィリピンで働いていたため、これが普通だと思っていましたが、ベトナムに行った時に文化の違いに驚きましたね(笑)。

フィリピン人は基本的にテンションが高く楽観的ですが、彼らの興味関心の範囲を仕事と上手く結びつけることができればパフォーマンスが一気に上がりますし、特に新しいことにはリスクを恐れず積極的に取り組んでくれる傾向があります。

一方でベトナム人は、提案に対してロジカルな説明が必要で、自分たちが納得しないと責任やリスク回避する傾向が強く、新しい取組みを一緒に進めるのが難しいと感じることもありました。理解してもらうまでに時間がかかることもありますが、やると決まったらとても頑張ってくれますけどね。

――ベトナム人は日本人に似ているような気もしますね。現地でマネジメントとしてフィリピン人と接する上で、していた仕事上の工夫を教えてください。

2つポイントがあります。1つはタイムマネジメントです。フィリピンでは基本的にスケジュールが遅れがちなため、予定より2、3日、場合によっては1週間前倒しでスケジュールを設定しています。また、報連相の文化もないため、こちらから積極的に進捗を確認できる仕組みや関係性作りを意識しています。

もう1つ重要なのは、コミットメントの取り方です。フィリピン人はホスピタリティが高いともいわれますが、一方で赤の他人には全く興味を持たないという性格も持ち合わせていることから、相手との関係性がとても重要になります。

そのため仕事の話だけでなく、プライベートな話題を日常のコミュニケーションに取り入れることを心がけています。例えば、facebokで友達になり、週末に家族と何をしたかなどを知り、それを職場で話題にします。そうすると、レスポンスが劇的に早くなったりと仕事の進行がとてもスムーズになるんですよね。

――SNSを活用して親しくなる方法はとても良いですね。日本では、上司から急に友達申請が来ると躊躇するかもしれませんが、フィリピンではオープンに受け入れてくれるんですね。

フィリピンではfacebookはもちろんのこと、クリスマスパーティーやスポーツイベントなどを通じて関係を築いています。例えば、ある週にクレームでトラブルがあったとしても、翌週にはバドミントンで仲良くなることもあります。その態度の切り替えの速さや柔軟さは、日本人も見習うべき点ですね。

(写真:クリスマスパーティーでの一枚)

――フィリピンは島が7,000以上もあり、更に島によって文化が異なるという話を聞いたことがあります。そういった背景はビジネスにも影響があったりするのでしょうか。

首都のマニラやセブなどの日系企業の進出が多い地域でビジネスをすることがほとんどになるため、島の多さがビジネスの支障になることはありません。ただフィリピン人同士では、地域によって性格の違いなどが話題になることが度々あります。日本の関東と関西みたいなイメージですね。例えば、マニラの人はセブの人を「のんびりした人たちだ」と話します。私はマニラの人ものんびりしているように見えますけどね(笑)。

一方、ベトナムでは、ハノイとホーチミンがビジネスの中心ですが、制度や実務慣行が全然違っていて、例えば、ホーチミンにいるベトナム人弁護士がハノイの事案について聞くと「ハノイのことは知らん」とバッサリ断られることがあります。フィリピンではそういったエピソードはなく、マニラの弁護士にセブのことを尋ねても、しっかり対応してくれるため、フィリピンでは地域間の違いをそれほど感じないです。

――フィリピンでは地理的に地域間の文化差があると思っていましたが、意外とそうではないのですね。逆にベトナムは陸続きなのに、不思議ですね。

ベトナムの場合は、歴史的な背景、ベトナム南北戦争などが影響していると思います。対して、フィリピンでは、歴史的な背景や政治的な問題で大きな違いを生んでいるわけではないため、地域間の文化差がないのだと思います。

――なるほど。世界一周をした際に、カンボジアのポルポト政権やベトナム戦争など学びましたが、現地の歴史を知っているからこそ、色々と分かるものもありますね。

ベトナムやカンボジアのような国々は、歴史的な戦争や出来事が、それが現代の政治の在り方にも影響を及ぼしていますしね。そういった歴史の背景を知ることは、特に新興国現地での理解を深めるのに必要不可欠だと感じます。

――フィリピン駐在に行くことで得られる強みやスキルを教えてください。

クライアントの方々に話す際に、「何を言うか」だけでなく、「誰が言うか」という要素も大事だと思います。海外駐在の経験があることが、海外子会社のアドバイスをする際に自分が言う正当性が高まることで説得力が格段に上がります。

また、ジャパンデスクでは単に業務をこなすだけでなく、色々な企画やセミナーの開催などを通じてマーケティングや営業活動なども経験することが多く、様々な場面での柔軟性や適応力も身につきますね。

また、クライアントの方々の問題を直接聞く機会が増えます。会計税務に関係のない、例えば生活面から人事問題や不正などの相談を受けることで、お客様が抱える実際の悩みを聞く機会があり、専門家としての視点だけでなく、拠点のマネジメントの視点を理解する能力が高まります。このような経験は、他の会計士や税理士と差別化できるポイントになると思います。

――日本で働いていると、大企業の担当者としての会話が中心となる一方、海外では拠点の代表者としての会話が中心になるため、一気に視座が高まりそうです。

まさにそうです。より顧客志向になれます。以前は依頼されたこと目の前の業務を正確に行うことを是としてましたが、海外駐在を経験したことによって、お客様が何を求めているのか、潜在的に抱えてる課題は何かといったクライアントの「身近な相談役」としての立ち回りの方が重要だという考えになりました。

――フィリピン駐在における仕事のやりがいや、楽しいと感じるエピソードを教えてください。

1つは、自分で何かを考え、企画し、実行に移せる環境があることがやりがいになっています。社内の品質問題に対する提案や新規顧客の獲得、セミナーの企画など、自分のアイデアをどんどん実現できることが楽しいです。

また、フィリピン進出を目指し、新しいことをやりたいという意欲がある企業との付き合いが多いため、自然とチャレンジングな案件が多くなっています。そういうお客様と一緒にやっていく過程で、成長や解決策を一緒に見つけることができている実感があります。

――フィリピンに進出してくる企業の業種を教えてください。

コロナ前は製造業やIT業のBPOが主流でした。フィリピンで安く豊富な人材を活用した製造・設計したものを海外に輸出する輸出製造型モデルが多かったですが、最近は、フィリピンの増え続ける人口や政府の規制緩和により、国内市場向けの地産地消型モデルとして小売や金融などのサービス業が増えています。

――コロナ前とコロナ後でビジネスの変化があるのですね。

政策の方針転換が要因です。従来の製造業やIT業種への税務インセンティブが縮小されましたが、代わりに、法人税率引き下げや小売業など外資規制が緩和されました。これにより地産地消型モデルへの投資に興味を示しつつも、現状日系企業も政府や他社動向など様子見をしているような状況です。

――特に発展途上国では制度が頻繁に変わるのもあり、新規開拓のチャンスが次々生まれてくるのも面白いですよね。

確かに、制度の変化によって注目される業種が変わりますし、投資規模も変化しています。日本にはない、ある意味激動の毎日を過ごせるのが、新興国の特徴ですね。

現在は、製造業のように工場を建てるなど大規模な投資を必要とする業種から、国内市場向けに小規模から始める企業が増えています。大きな投資を必要としないビジネスモデルが注目されるようになってきていて、それに伴い投資額も変わってきます。

――今後、フィリピンで挑戦したい仕事や実現したい目標について教えてください。

GTフィリピンのジャパンデスクは、私たちが三代目になります。今後の目標としては、これまでの成果を受け継ぎながら、第二次成長期としてさらに組織を安定成長させることです。

一方で海外拠点の成長は「駐在員の能力に左右される」という側面もあります。駐在員が継続的に交代していく前提で、短期的な予算目標のみを追求するのではなく、長期的な視点で業務の標準化を進めることで組織の持続的成長を促していくことが私の挑戦したい目標です。

――仰る通り、拠点が少人数だと、どうしても属人的になってしまいがちですよね。

その通りです。組織が成長していく中で、担当者が変わるタイミングでクオリティーが低下し最悪クライアントをロストすることで停滞・後退していく、他の同業他社含め各国で同様の課題にぶつかる姿を、3回の駐在を経て沢山見てきました。我々GTAも人が変わる度に品質が落ちる、みたいな状況は必ず避けなければなりません。

解決するためには、個々のパフォーマンスに依存しない仕組みを作ることが必要だと考えています。仕組みを整えていくことで、次に来る人もすぐに一定レベルのパフォーマンスを提供できるようになると思いますし、そうすれば、組織も持続的に成長できるはずです。

――最後に、駐在したいと考えている方々に向けて、大橋さんからのメッセージをお願いします。

私が好きな経済学の話の一つに「水とダイヤモンドのパラドックス」があります。水は必要不可欠だけど価値(値段)が低いですが、ダイヤモンドは必要不可欠ではないものの価値が高いですよね。これはダイアモンドに希少性があるからです。

私たちの業界に当てはめると、会計や税務は必要なサービスですけど、IT化が進むにつれここで言う水のように価値は下がっていきます。そこでグローバル化という要素が、我々の仕事にダイアモンドのような希少性を生み出すことにつながると考えています。

単に必要とされているものだけでなく、希少価値のあるスキルを身につけること、有用性だけでなく、自分自身をダイヤモンドのように価値あるものにすることを心がけてほしいです。

そして、海外分野で活躍することは、まさに希少性を身に着ける方法のひとつで、有用性と希少性を兼ね備えた高度な人材になることができると考えています。

海外駐在のチャンスは全ての会社にあるわけではありませんが、特にグラントソントンのような環境では、そのチャンスが沢山転がっているため、ぜひそれを利用してほしいと願っています!

――本日はお忙しい中ありがとうございました!

(写真:Grant Thorntonフィリピンオフィス前にて)

3.まとめ

いかがだったでしょうか。

フィリピン拠点のジャパンデスク三代目として、組織を第二次成長期と位置づけて伸ばしていくという目標を持ち、そして3度の駐在を経験したからこそ分かる、海外拠点の属人性の問題に着目して標準化を至上命題とする、大橋さんの熱い気持ち、視座の高さを感じることができました。

海外に行くにあたっては、周りの環境が超重要であることを再認識させられます。大橋さんの場合であれば、海外駐在に行く方が周りに多く「海外に行かないといけない」というマインドを持つことができ、駐在について気軽に聞ける環境が周りにありましたね。そして、実際に英語を身に着ける際には、語学学校に行きスパルタカリキュラムを受けて環境をガッチリ固めていました。

個人的に面白かったのはフィリピン人の特性で、プライベートなことを知って初めて仲良くなれるという点です。今はSNSという便利なツールがあるため、意識して彼らの情報をキャッチアップすれば、比較的容易に仲良くなれそうですが、日本人とは正反対のコミュニケーションですね。こういうのが好きな方は特に向いてそうです。

同じ東南アジアでも、ベトナム人の特性とまるっきり異なるのも興味深いですし、その地域に特化した理解が必要なのだと改めて実感しました。「ハノイとホーチミンで制度や実務慣行が全く異なる」という話にも合った通り、その国の歴史の勉強も非常に大事ですね。

ご清覧ありがとうございました!


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