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公開日:2024/01/03

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【世界一周会計士】会計士の海外でのキャリアパスを考えるVol.3 前編

海外駐在と独立開業した方々のキャリア導入部分にフォーカス

太陽グラントソントン・アドバイザーズ様にて、これまで様々な会計士のインタビューの内容や世界一周中の経験を踏まえ、海外で働くイメージをするための講演の機会を頂きました。今回の記事はその講演の内容となっております。

自己紹介

(古作)こんにちは。古いに作ると書いて古作と申します。本日は山田さんと一緒に、南米メキシコから参加しております。先日までガラパゴス諸島でイグアナやアシカと戯れておりました。

私はあずさ監査法人のグローバル事業部に5年半在籍していました。その後、DX推進部署に転籍し、ビックデータ監査等の次世代監査に携わっていました。

監査法人を2022年の7月に退職し、翌月の8月から世界一周を始めました。現在10か月目、59カ国を訪問しています。今後は中米、北米に行く予定です。

どうぞよろしくお願いします。

(山田)世界一周会計士として活動しています、山田智博です。こちらの写真は先日、アマゾンにて小猿と共に撮った写真になります。

私もあずさ監査法人に入社後、2年3ヶ月を経て、世界一周を見据えて独立し、昨年8月から世界一周の旅に出ています。日本で働いていた頃は、ファンドやリクルートコンサル、上場支援をやったり、マルチに活動しておりました。

私は人との繋がりが広がっていくのがとても好きです。今回は、現地で活躍する会計士の方はもちろん、会計士関係なく世界各地で活躍している日本人の方にも触れられるので、そのお話をシェアできるのがとても楽しみです。

海外に興味のある皆さんが、今すぐにでも海外に行きたい、そんな風に思えるエピソードを共有できたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

海外現地採用/事業会社

(山田)早速ですが、前回グローバルファームの駐在で登場した蓑毛さんを紹介させてください。蓑毛さんは、タイ駐在後に帰任してから、実は、現地採用でタイへ出戻りしています。

なぜ、タイに戻ったのか(タイー蓑毛さん)

(山田)なぜ、タイに現地採用として戻りたくなったのか。気になる方も多いと思います。

蓑毛さんは、日本帰国後に、とある違和感を感じてしまったそうです。というのも、日本の雰囲気がなぜか自分には合わないと感じてしまい、タイよりもむしろ日本の方が無理に感じてしまったそうなんです。

タイの様にグングンと経済が伸びている国は、そこらを歩いている人が本当にニコニコして明るいし、優しいという印象だったものの、日本に帰ってみるとそれとは打って変わって、歩いている人は目を合わせない、そんな無機質な雰囲気に、停滞感を感じてしまったそうです。

また、蓑毛さんは元から海外志向が強いというのもありましたが、アドバイザーとしての仕事のやりがいをとった様にも感じました。

日本では、会計士は監査人としてクライアントと接しますが、それとは違って、タイでは、アドバイザーとして、接することになります。

つまり、難しい会計論点にどれだけ対応できるかではなく、いかに分かりやすく、会計や税務の話をできるかが大事になり、会計や税務の話を分かりやすく伝えて、感謝されるというのが、仕事のやりがいになっていたのだと思います。

蓑毛さんはご家族がいらっしゃいますが、奥さんが会計士で、タイでの仕事にも困らない状況であったことや、子供をフルタイムで家政婦さんに任せることができること、また、インターナショナルスクールに通わせて、英才教育ができることも魅力の一つに挙げていましたね。

今の話を聞いて、駐在経験無しで、いきなり海外現地採用を目指せるのか気になった方もいらっしゃるかと思います。

結論、駐在などのリレーションの構築なしに、急に現地のグローバルファームの門戸を叩いて採用してもらうというのは難しいそうです。というのも、給与などの条件面で折り合わないからです。

例えば、タイのグローバルファームはタイの会社であり、日本の資本が入っている訳ではないので、現地法人からすると、外国人が「自分は有能だから採用してほしい」と唐突に連絡するようなイメージです。それではすぐには信じられませんよね。ですので、日本の給与水準を度外視した現地基準の給与になってしまいます。

インドでいうと、新卒なら月給4万ルピー程。月給約7万円です。

世界一周会計士の所感(タイ)

(山田)実は、アジア周辺に駐在された方は、現地採用に切り替える方が多い、という話を知っていましたか。私はそれにすごく驚きました。

実際にベトナムやインドでも現地採用に切り替えている方とお会いしましたし、本当に多いのだなと実感しました。

将来、海外に移住して働きたいかもと思っている方は、ぜひ駐在の切符を手に入れて、赴任先の国を気に入ったのなら、現地採用に切り替えたいという話を、現地法人に切り出すのもありだと思います(笑)。

最後に、蓑毛さんは、失われた20年を感じて日本が無理になったといっても、日本が大好きな方です。日本が中国に抜かれて経済大国3位になったというのが、悔しくて悔しくてしょうがないと本気で思えるほど日本が大好きで、タイで働く際も常にジャパンプライドを燃やしているとのことでした。

そんな大好きな日本が停滞してほしくないからこそ、ビジネスマン人生を賭けて海外から日本の経済を支えたいと考えて、タイの現地法人にて日系企業向けのサービスに励む蓑毛さん。

日本が好きだからこそ、日本で働いて日系企業をサポートするのではなく、現地にいて、現地における日系企業をサポートして、タイ側から日本の成長に繋げるというスタイルは、新しい発見であり、格好いいなと感じました。

(古作)僕からも感想を一言。蓑毛さんの日本に対する雰囲気の話は、私も共感します。停滞感を無くしたいという気持ちは、日本の外から見ているからこそ、感じるモノだと思います。現地採用についても、門を叩けば結構いけると思っていましたが、意外と難しいのですね。駐在から現地採用というのは、東南アジアでは割とメジャーみたいですので、このようなキャリアの選択肢はありなのではないかな、と思いました。

(古作)田島さんは、会計士試験合格後、EY新日本監査法人で4年半監査業務に従事された後、コンサル会社に入社され、タイ・インドネシアと舞台を変えて活躍されています。

海外に出るきっかけ(タイ・インドネシアー田島さん)

(古作)では、なぜ田島さんがタイの現地法人へ就職することになったかというと、そのきっかけは、①東南アジアへの興味②環境をがらりと変えるためと仰っていました。

まず一つ目の理由ですが、田島さんは元々東南アジアに何度か旅行で訪れており、そこで感じた”カオス感”に興味があったとのことです。海外に対して少なからず不安を持たれる方は居ると思いますが、田島さんは実際に訪れてみれば、その不安のほとんどは解消されると仰っていました。

確かに、私も実際に多くの国を訪れましたが、特に海外のイメージに関しては、案ずるより生むがやすしと感じるシーンが多々あります。数日前に南米の元麻薬王の住むコロンビアのメデジンという街に行きました。「元麻薬王」というキーワードを聞くだけで、スラム街、超危険というイメージがありますが、実際に街にギャングが蔓延るとか、北斗の拳の世界とか、そのようなことはありませんでした。

現地の日本人愛好家のKellyさんに観光に連れて行って頂いただけでなく、家にまで招待して貰いました。こういう経験をすると、「自分のイメージや偏見がいかに浅はかか」ということを実感します。もちろん治安には普段から気を付けていますが、そのような予想を裏切ることが多々あります。

 

そして、田島さんが海外に踏み出した二つ目の理由は、環境をがらりと変えるためというものでした。これは田島さんが、当時職場で人間関係に悩んでいた際に、「どうせなら環境を変えてしまおう」ということで、国内ではなく海外に目を向けたとのことです。

海外では良い意味で自分のステータスをリセットできると考えています。我々が実際にやっている世界一周というのもそのリセット方法の一種だと思います。海外に居ても連絡を取り合っている方は、本当に大事な人だと再認識させられますし、沢山のしがらみがある日本から一歩離れるだけで、価値観などの様々なものをリセットできます。

田島さんは元々国際事業部などグローバルな部署に在籍していたわけでなく、なんとIPO事業部でドメスティックな案件ばかりを担当していたとのことでした。自分がドメスティックな経験しかないからといって、その後のキャリアを制限してしまうのは良くないことだと田島さんの話を聞いて感じます。

ちなみに、田島さんは海外経験なし、海外業務経験なしで海外に挑戦されています。当時のTOEICの点数は585点でしたが、受けた全ての会社から内定を貰うことができたとのことです。

もちろん、当時田島さんは20代で会計士ということもあり、ポテンシャル採用という点もありますが、特に「日本人の会計人材というのは供給不足」と独立会計士の方からよく聞く話です。というか、一人も「うちの会計事務所は人数が足りている」という話を聞いたことがありません(笑)。ここでも会計の汎用性、そして会計は世界の共通言語であることを認識させられますね。

ちなみに、どのように就職先を探したかというと、シンプルに『タイ・会計事務所』とググって応募したとのことです。社長がたまたま日本に居たので、そのまま日本で面接を受け、「早速タイに行こうか」と、気づいたらとんとん拍子に話が進み、そのまま入社が決まったらしいです。時には流れに身を任せることも大事ですね。

(山田)田島さん、結構大胆な方ですよね(笑)。”英語は出来ないし、国際業務経験はないけれど、環境を変えたいから海外”という選択は驚く方が多い気がしてます。また、海外に行くのに、Googleで調べて応募しただけ、というのも拍子抜けした人が多そうです(笑)。

まるで、アルバイトに応募するかのような動きで海外就職と移住が決まっているのが個人的に興味深いなと感じたポイントです。日本は島国なのもあって、海外というと身構える方が多いですが、意外とこれくらい距離が近くてもおかしくないのかもしれませんね。

海外における苦悩のひとつは「言語の習得」(タイ・インドネシアー田島さん)

(古作)まず、現地人と仲良くなるには、英語だけではなく、第一言語の習得が必須という点が印象に残りました。

インドネシアでは、一般的には第一言語がインドネシア語、第二言語が英語です。特に非英語圏では、第一言語で話したがるという傾向が顕著にあらわれるようです。

確かに、英語で意思疎通を行うことはできますが、本当の意味で彼らと仲良くなるには、第一言語で話した方が、一気に距離が近くなると田島さんは仰っていました。これは皆さんも肌感覚として何となく分かるかと思います。例えば、ひたすら英語で話しかけてくる外国人よりも、片言の日本語を頑張って話そうとする外国人の方のほうが好感が持てますよね。

では、「現地人と第一言語を使って仲良くなる」という課題に、田島さんはどのように立ち向かったかというと、シンプルに言語をめちゃくちゃ勉強したそうです。インドネシア語を習得するために、国内でもTOP3に入る大学である、インドネシア大学に留学し、もちろん働きながらも、平日は学生寮、週末は自宅でインドネシア語を勉強したとのことです。実はインドネシア語は世界で一番簡単な言語と言われていて、非常に習得しやすい言語です。そこにも目を付けられたのだと思います。

これが実際にどのようにビジネス活きたかというと、もちろん現地人の方とコミュニケーションが取りやすくなったというメリットもありますが、実は海外で働く上で、ビジネス的な観点で差別化要因になったそうです。どういうことかというと、非英語圏ではインドネシア語の様なローカル言語を話せる日本人が殆ど居ないということです。確かに私の周りでも、「インドネシア語を話せて、会計・税務のことが分かる人」というと、田島さんしか思いつきません。

そして、ここがミソなのですが、まず、海外に駐在してくる日系駐在員は、基本英語が分かっている方が多いものの、インドネシア語のようなマイナー言語を習得していないことが殆どな点です。

例えば、ローカル会社とのコミュニケーションや現地基準の参照など、現地語を理解していないと業務に支障をきたすことが多くなります。ですが、田島さんの様な方の場合は、インドネシア語を習得しているため、そこをサポートできちゃいます。これが非常に大きい差となるのです。実際、田島さん自身も、駐在員の痒いところに手が届くようなサービスを提供できると話していました。

一方で、英語圏では、日系駐在員もかなり英語を話せるから駐在している、ということもあり、そこまでそのような悩みも無いですよね。

また、その延長線上で、田島さんはインドネシア会計士協会(IAI)のインドネシア税務資格を取得し、インドネシアでのキャリア構築に拍車をかけています。そこで知り合った現地税理士及び会計士とのコネクションも作れたとのことで、凄く良い機会だったと話していました。

マイナー言語の習得はプロフェッショナルにとっては差別化戦略で、より輝けるな、と思いました。そして非英語圏への進出はかなり魅力的になりますよね。

(山田)一貫して、田島さんのストレートな感じが好きです。変に細工して言語を習得するのでもなく、ただただ直球で勉強しに行く。結果的に、「○○と言えば田島」のポジションを手に入れていて、淡々と目の前のことをやることの大切さが身に沁みるエピソードに感じます。

インドネシア特有の苦悩とは(タイ・インドネシアー田島さん)

(古作)その地域特有の苦悩としては、まず、その国の人たちの特性の理解です。

田島さんは現地人とのコミュニケーションが上手く行き、異例の出世をされた方です。タイで2年、インドネシアで3年既に働かれていますが、その田島さんの分析によれば、「タイでは社員=家族」と捉えていて、インドネシアでは「自身の家族やプライベートを重視する」らしいです。

田島さんは、タイ人とのコミュニケーションについてめちゃくちゃ学んだそうで、特に従業員の懐に入るために、仕事仲間は友達という意識を持つ努力をしたそうです。タイの職場にはキッチンがあったりするので、昼飯を一緒に作ったりしたり、土日も出社していて、ご飯を食べて一緒にYouTubeを観たりしたそうです。これはちょっと極端な例で、中々そこまではできないな、と個人的に思いますが(笑)、その甲斐もあり、異例の出世をされてます。

その国の文化に溶け込むという努力をする、という点が苦悩でしょうか。

あとは、生活面の話ですが、ジャカルタは渋滞が本当に酷いです(笑)。実際に我々もジャカルタに行った際には、かなり渋滞に悩まされました。人口1,000万人の大都市ですが、地下鉄などの公共交通機関がほとんど未発達で、その結果、とんでもない渋滞ができます。ちなみに渋滞のひどさや人口が急増したということもあり、今後インドネシアの首都がジャカルタから違う都市に移転するそうです。

いずれも人口の急増にインフラ整備がついていけなかった結果、渋滞地獄が発生しています。発展途上国で働く際には、このような生活におけるリスクもあるので、やはり事前に実際に訪れてみて、「そこで働くイメージが湧くか?」を考えることをお勧めします。

田島さんは金銭トラブルにも巻き込まれたと仰っていました。インドネシアの平均月収は3万円ですが、至る所でなぜか最新版のiphoneを持っている方がいるそうです。インドネシアでは金融リテラシーがそこまで高くなく、簡単にローンを組んでしまうそうで、iphoneもローンを組んで購入しているそうです。

また、日本よりも給与水準が低いこともあり、「お金がない」という人に同情してしまうシーンがあると言います。数万円しかもらっていなくて、かつ家族にも仕送りしている、と聞いてしまうと、お金を貸してあげたくなりますよね…。そのような価値観についても自分の中で調整する必要があると思います。

世界一周会計士の所感(タイ・インドネシアー田島さん)

(古作)インドネシアの田島さんのお話を聞くと、非英語圏でキャリアを築くことは凄くポジティブな事だと感じました。

繰り返しにはなってしまいますが、インドネシア語などの日本人にとってマイナーな言語の習得は、差別化戦略になります。インドネシアの将来性を考えると、2050年までに4位の日本を抜き、世界第4位の経済大国になると予測されています。ここでポジションを築ければ、間違いなく将来は明るいと思います。田島さんもめちゃくちゃ良いところに目を付けたな、と思います。

もう一つ、非英語圏で働くに当たっては、英語が完璧である必要が無いという点も注目したいです。「本当に?」と私も思いましたが、田島さんが、実際にタイで働き始めた時の職場としては、こんな感じだったそうです。

田島さんの務めているグループはタイからスタートした拠点なので、規模が大きく、クライアント300社、従業員数400人ほど。95%の割合でタイ人、日本人は20人もいなかったそうです。会計税務チーム・監査チームが居て、税務、法務・記帳・法廷監査が業務のほとんどを占めています。

その中でも日本人の会計士は4,5人。10人ほど日本人がコーディネーターという形で、タイ人の進捗管理をしています。日本の会計士がテクニカルな会計論点に対応するという形だったそうです。年齢層は30代後半〜40代前半。

英語が必要な業務、いわゆるフロント対応はその95%の現地人の方が行い、実際には英語をそこまで必要としなかったそうです。仕訳を英語で覚える必要はありますけどね(笑)。でもその程度です。田島さんも「英語をここまで使わなくていいのか」と拍子抜けしてしまったそうです。もし英語で悩まれている方がいらっしゃったら、非英語圏で働くことを検討されてみてはいかがでしょうか。

(山田)次は、ベンチャー企業CFOでベトナム赴任中の羽嶋さんを紹介します。

ご紹介した経歴の通り、いわゆる絵にかいた様な会計士のエリートキャリアを歩んでいます。

具体的には、監査法人、外資系証券会社、M&Aアドバイザリー、日系独立系PEファンドを経てから事業会社の取締役CFOといった感じです。

羽嶋さんは、系統で言うと天才タイプで、自宅が近いから京都大学を選んだり、京都大学入試では数学満点を取ってしまったり、と話を聞いていて、とんでもない人だなと思っていました(笑)。

そんな羽嶋さんがなぜ、ベトナムに行くことを決めたのか、ですが、かなり特殊な例になります。

悩んでいたとか、海外に挑戦するのではなく、「必要だから行った」というような感覚です。

皆さん、ベトナムは、IT発展が著しいという話を耳にしたことはありますか?

実は、優秀なエンジニアが多く、且つ日本より人件費の安いベトナムは、IT開発のオフショア拠点とされることが多く、羽嶋さんの勤める会社も例に漏れず、ベトナムをオフショア拠点としています。

具体的には、ベトナムが開発部隊で、日本が経営や営業部隊という位置づけです。

コロナ禍で2年間ベトナムと日本を行き来出来なくなってしまった結果、視点の違いに過ぎなかったはずのほんの小さな事象が、いつしか色々な壁となってしまって、ベトナム国内にて独自の文化が生まれてしまい、日本とベトナムが一枚岩ではなくなってしまったのだそうです。

そもそも日本国内でさえ、製造部門が考える会社像と販売部門が考える会社像は違うと思います。エンジニアと非エンジニアが考える会社像は当然相違しています。モノの見方が違うため、この差を埋めることは本当に難しいことですよね。

だからこそ、実際に現場に行き、彼らの考えを知り、日本とのすり合わせを見つけて、こちらの要望を押し付けるのではなく、全体最適に導いていくために現在ベトナムに駐在しているとのことでした。

ベトナムでの生活は快適か?(ベトナムー羽嶋さん)

(山田)羽嶋さん曰く、ベトナムでの生活は、もはやほぼ日本だということでした。

リモート環境も整っていて、ハノイやホーチミンについてはインフラも整っていることもあり、日本に住んでいるのと遜色ないそうです。

違いは、バイクの音が目立つのと、家がなんかとても豪華になった事くらいと言っていましたね(笑)。プールがついているので、子供が凄く喜んでいるらしいです。

世界一周会計士の所感(ベトナムー羽嶋さん)

(山田)まず、羽嶋さんのエピソードで感じたのは、場所によっては、海外が非常に身近であるということです。仕事で必要が生じたから九州に行ってくる。そんなノリで、ベトナムに行っています。

田島さんの話とも若干被りますが、生活面でも何不自由を感じておらず、日本だと”海外で仕事をする”と考えると身構えてしまう方も多いかもしれないですが、実際はベトナムなどの東南アジア等近い国であれば、そこまで身構えずに挑戦できるのではないでしょうか。

次に、私が感じたのは、ベトナム人が優秀だということです。IT関連の話だけにとどまらず、会計士も人によっては、「ベトナム人が日本人より優秀」と言われているそうです。

ベトナム人は、真面目で帰属意識の高さからか、「自分の回答=会社の回答」と考えてプロ意識を持って、仕事に取り組んでいます。

日本であれば、まずは自分の回答が会社の回答にならないように、持ち帰って用意しますよね。良し悪しはあると思いますが、ベトナム人はそれくらい、毎回「自分の回答が会社の回答になる」という責任感を持っているため、成長も早いのかもしれません。人件費もまだまだ日本より安く、そのような若手の優秀なベトナム人は英語を話せるケースが多いです。

こういった優秀な人材はもちろん、上澄みの話になるため、単純な日本人との比較にはなっていないですが、我々も日本が1番と考えて胡坐をかいていられませんね。

最後に、キャリアのかけ算を考えるのは面白いということです。

羽嶋さんの場合は、会計士×M&A×PEファンド×CFO×海外といった形で、多くの経験があるからこそ、1つの事象に対して、多角的な視点で物事を捉えられて、その結果、全体最適な結論を選べると仰っていました。

海外という経験がどの様な視点を与えてくれるかは定かではありません。ただ、私個人の感想としては、今後確実に、何か困難にでくわしても「あぁ、はいはい」と思えるような胆力がついたような気がしています(笑)。

(古作)丁度話に挙がった「ベトナム人が日本人より優秀」という言葉には驚きました。たしかに人件費も安くて英語もできて、しかも真面目となると、社長はベトナム人をグローバルな人材として雇いたくなりますよね。彼らが優秀である理由は、そのハングリー精神から来ている様です。月4万円貰いながら家族に1万円仕送りするような、そんな生活をしている方が多いようで、そのような心持ちで仕事をしている方は日本には少ないと思います。

(古作)そしてもう一人、大手の日系金融機関所属で、現在ブラジルに赴任されている山下さん(匿名)です。

山下さんは会計士試験合格後、新卒から大手日系金融機関に就職されています。大手自動車メーカー出向後、2022年よりサンパウロ駐在をされています。

大学3年次合格したものの、ちょうど就職氷河期で監査法人からの内定が出ず、4年次に一般就活を経て、大手日系金融機関に魅力を感じ就職されています。

ブラジル勤務することになったきっかけ(ブラジルー山下さん)

(古作)きっかけは自動車メーカーへの出向を経て、気になっていた海外勤務を希望したとのことです。実は金融機関では出向後に希望に沿った人事が与えられることが多いらしく、その機会を利用し海外赴任をされています。

大手日系金融機関ですので、海外駐在の希望を出せるものの、伝えられた地域を変更することは残念ながらできません。せっかく海外駐在のチャンスがあるならば、南米に行ったことがないので、経験として面白そうということで、「えいや」でブラジルに飛び込んだみたいです。

当時はTOEICは800点も無い状態で海外に来たそうですが、「意外と何とかなる」と仰っていました。

世界一周会計士の所感(ブラジルー山下さん)

(古作)ブラジルの山下さんは、海外は英語というよりも、「気合があるかどうか」「ストレス耐性があるか」と仰っていたのが印象的でした。どういうことかというと、業務で分からないときに「すみません、教えてください」と言える人かどうか、がカギだそうで、海外でやっていけるかどうかは、英語ではなく、ビビらず分からないモノを分からないと言える素直さがあるか、ということです。

私なりに解釈すると、英語力よりも「ストレス耐性」が必要と仰っていたのは、単純に理不尽なことに耐えられる力ではなく、自分の非力さを認め、素直に相手のアドバイスを受け入れられる「柔軟性」だと考えました。巷では「成長マインドセット」なんかとも呼ばれていますが、海外ではプライドを捨ててチャレンジすべきだなと、改めて実感しました。

そしてストレスに立ち向かうためには、“ケセラセラ(大丈夫)”の精神、ポルトガル語で「なんくるないさ」と思いながら仕事をしましょう、と仰っていました(笑)。

そして2つ目は、海外に行きたくない人も、是非海外に行ってほしいというメッセージです。海外に活動の場を移すことは、当然大きなストレスがかかりますが、本来常に変化を求めるべきです。人間の進化論的にも、変化は受け入れなければいけませんし、変化を拒むとその水槽の中でしか生きられなくなります。人間は他の水槽に移らないと大きくなれないので、海外に是非行ってほしい、と仰っていました。

あとは、海外という話題からは少し逸れますが、「金融機関で会計は重宝される」という点が個人的に印象に残りました。山下さんの銀行で一番地位の高い部署はどこだと思いますか?

営業でしょうか。

なんと実は経理らしいです。

銀行だと、例えば複雑なデリバティブ商品を作ろうとしたときに、いつも「この金融商品の会計処理は何?」という話から議論がスタートするので、銀行では会計を知っていることが非常に優位らしいです。そのため、実は経理は銀行の中だと地位が非常に高く、営業よりも経理の方が立場が良いとのことでした(山下さんの銀行の場合)。

一方で、山下さんが自動車業界に出向した時には、自動車メーカーは現場主義で、工場にいる職人の方々が100%偉い立ち位置だったそうです。ですので、山下さんは出向した時に銀行と立場が全然違うということに非常に驚いたそうです。

もちろん、会計が全く必要ではない会社はこの世には無いと思いますが、業界によっては「会計」に対する見方に濃淡があるようです。山下さんのケースでは、「金融」という専門性が、その地位を高めています。

自分が武器になるもの、例えば「会計」であれば、「会計」が重宝されている業界に身を置く。そのことは実は大事な生存戦略で、どの業界が経理や会計を大事にしているか?という視点でキャリアを決めるのも、一つ大事な観点ではないかな、と感じました。

(山田)山下さんもとても面白い方ですよね。自動車経理への出向と海外駐在の2つを経験したことで、どこでも働くことができる自信を持たれていて、将来的には地元でカフェでもやりたいと仰っていたのが印象的でした。

同じところにずっと留まるよりも、様々な変化を経験することで、羽嶋さんのかけ算の話ではないですが、やはり多角的な視点が持てるし、今の状況を他と比べることができるようになり、どこへ行っても自分には仕事があるという自信を持てるようになるのかなと感じました。

後編はこちら:https://cpass-net.jp/posts/WAO7itNh


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