公開日:2024/06/05
TOEIC300点台から、グローバルファームのキャリアを堪能! ~フィリピン開拓会計士が語る海外駐在の魅力~ Vol.16
こんにちは!世界一周会計士の山田智博です。
会計士資格を携えて世界一周をするからには、“グローバルで活躍されている会計士の情報をぜひ日本に届けたい”、“海外で活躍している会計士の様々なロールモデルを皆さんにお伝えしたい”そんな思いから、『世界で活躍する会計士へインタビュー』というコラムの連載をCPASSさんの力をお借りしながら、寄稿いたします。
第16弾は、TOEIC300点台で国内での独立志向もあったものの、フィリピン駐在を経て、キャリア感が変わり、現在もグラントソントングループにてパートナーを務める伏見将一さんです。
伏見さんは太陽監査法人入所後、イギリスへの語学留学やフィリピン駐在を経て、グラントソントン・アドバイザーズに転籍され、現在はパートナーとしてビジネスリスク部門の部門長を務められています。
そんな伏見さんから“キャリア感の転換点”や“海外駐在の魅力”、“海外で必要になる能力”などを深堀してきました!
1. プロフィール
伏見 将一(Fushimi Shoichi)
太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社
パートナー
公認会計士
2005年 太陽有限責任監査法人(旧 ASG監査法人) 入所
2013年 P&Aグラントソントン(フィリピン) ジャパンデスク責任者
2020年 太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社 パートナー就任
MUFG BizBuddy(三菱UFJグループ海外情報ウェブサイト)、SMBC海外情報ポータル(三井住友グループ海外情報ウェブサイト)、国際税務研究会等における海外子会社管理や国際税務に関する執筆・セミナー多数、日本公認会計士協会東京会 海外在留会員ネットワークPT委員
2.インタビュー本編
――早速ですが、伏見さんの簡単な自己紹介をお願いします。
はい、伏見と申します。現在、太陽グラントソントンアドバイザーズ(以下、GTA)でビジネスリスクサービス部門(BRS)の部門長を務めています。
私は、2005年にASG監査法人(以下、ASG)入社後、太陽監査法人(以下、太陽)との合併を経験しつつ、8年間監査業務を続けました。当時はマネージャーでしたね。
その間、イギリス語学研修やフィリピン研修を経験し、それがきっかけで2013年より4年程フィリピンに駐在しました。フィリピン駐在後は、GTAでパートナーに就任し、BRSの部門長を務めているという流れです。
――伏見さんの経歴だけでも深ぼりしたいところが多いですね。まずは、海外駐在までの流れを簡単に教えてください。
私のキャリアは2005年に会計士試験合格後、ASGに入所したところから始まります。ASGは当時まだ60人ぐらいの規模で、その後2006年に太陽と合併して大きくなりました。
太陽で監査業務を8年ほど経験し、上場会社の監査の他、IPO支援や海外のリファーラルなど様々な業務に携わらせてもらいました。その中でも個人的には、四半期監査の導入やJ-SOXの導入をインチャージで経験させてもらったことに非常に感謝しています。
2012年頃に転機が訪れました。それは、グラントソントン(以下、GT)米国に駐在していたマネージャーが日本に帰任して、私の直属の上司に就いたことです。
その上司は、非常に仕事に対して厳しく、かなりきつかったですが、鍛えられました。その上司が他の上司と協力して部下を育てるためにグローバル業務の教育プログラムを企画してくれ、その第一弾が英国への1か月の語学研修でした。これはチャンスだと直観し、応募基準よりも英語力が足りませんでしたが、「将来、この会社のグローバル業務をリードする人材になります!」とアピールしたら、研修に行かせてくれました (笑)
――ずっとドメスティックに監査をされていましたよね。そんな中、急な語学研修となった訳ですが、当時の英語力について教えてください。
TOEICでいうと350点位でした(笑)。英国に着いたはいいものの、切符すら買えなくて初日の授業から遅刻したというのが語学研修のスタートとなり、地獄でしたね…。
地獄だったイギリス語学研修を経た後、梶川さん(太陽グラントソントングループ代表)が、経済産業省の企画で東南アジアに若手人材を送り出す企画を持ってきてくれて、何のご縁かまたまた3か月の海外研修をさせてもらうことになりました。それがフィリピンだったんです。このことがきっかけで2013年に正式にGTフィリピン駐在が決まりました。
(GTフィリピンにて社内表彰を受賞された時のご様子。)
――フィリピン駐在時の役割と実際にされた活動を教えてください。
フィリピンでは、ジャパンデスクの業務開発担当として営業活動を中心にやっていました。具体的には、セミナーや執筆・個別営業です。活動の甲斐あって、当初のクライアント数80社から最終的に200社ぐらいまで増やすことができました。
この駐在経験のおかげで、海外で困っている日系企業が非常に多いことを痛感し、20代の会計士でもそんな日系企業の力になれることを知ることができたのですが、これは今の私の原体験になっています。
――帰任後の活動についても教えてください。
実は、2017年の日本へ帰任のタイミングで帰国せず、フィリピンでの更なる事業拡大に注力することも考えました。しかし、梶川さんから「フィリピンの経験を活かして東南アジアにも広げて欲しい」と説得され、帰国することを選び、帰国後は、東南アジア全体の営業支援をやりつつ、海外子会社の管理支援などをしていました。
なぜ帰国後に海外子会社の管理支援を始めたのかというと、現地子会社の支援をフィリピン駐在時にやっていた中で、“海外子会社の管理がうまくいかないのは、親会社のコーポレート部門にノウハウが足りなのでは?親会社のコーポレート部門のノウハウ不足を支援すれば、海外子会社の管理の改善に繋がるのではないか?”という仮説を持ったからです。
梶川さんも同じ仮説を持っていました。そこで、親会社のコーポレート部門の支援サービスを2017年に帰国してすぐに始めました。
――親会社のコーポレート部門のノウハウが足りていない、という仮説を持ったきっかけを教えてください。
経理は連結決算をやる中で、連結親会社は海外子会社を自ずと見ることになりますよね?
一方で、人事労務は経理の連結決算のように海外子会社をマストで見る必要がなかったり、法務も少しは見るけれど詳細まで見ていなかったり、ITに関しては海外子会社の中身を見ている人が全く居なかったり、ということが顕著で、現地に駐在したからこそ知れたところでもあります。
これら人事労務法務などのコーポレート部門について、海外子会社では上手く組織化できていないという単純な問題もあるけれど、親会社側のコーポレート部門のノウハウ不足も関係しているだろうと考えたんです。そこで、親会社のコーポレート部門を支援すべくアプローチした結果、この仮説がかなり当たりました。
売上が何兆円もあるような企業は、全世界の子会社を管理する体制やシステムが整っているケースが多いのですが、GTAがターゲットにしている売上数百億から数千億前半の会社ではそのようなシステムを入れられる程の規模ではありません。とはいえ、その規模の会社で海外拠点が10社20社ある場合に、管理の仕方が分からず悩んでいるケースが多いです。そこで、このようなクライアントのリソースの限界を踏まえつつ、海外子会社のリスクを見える化してあげながら、クライアント自らが出来る最適な海外子会社管理のルール作りなどを支援し始めました。
コロナ前まではこの海外子会社の管理支援と東南アジア全体の営業支援を両立していましたが、2019年のコロナ後は、海外に出づらくなったこともあり、海外子会社の管理支援から派生した日本側のビジネスリスクサービス(以下、BRS)に特化し、GTAのマネジメントにも関与し出しました。
――2005年から2019年まで太陽に在籍し、そのうちの2013年から2017年まではフィリピン駐在、2017年から2019年までは東南アジアの営業支援、そしてコロナをきっかけに2019年からはGTAのマネジメントとしてジョインされたのですね。
GTAでの活動や部門長を務められているBRSについて教えてください。
GTAではBRSのビジネスを大きく拡大させ、日本の親会社向けにコーポレート部門のルール作り、リスクマネジメントをメインのサービスとしています。その他、GTAからマネジメント人材を派遣してクライアントに半分常駐する経営管理支援や、内部統制構築・内部監査支援も行っています。
経営管理支援については、コーポレート部門のルールを作ったとしても、それらを取りまとめられる人材が社内にいないケースが多いため、適する人材を派遣して欲しいというニーズが多いんです。
内部統制構築・内部監査については、JSOXの構築支援や評価代行、内部監査などを国内の親会社と海外子会社双方に展開しています。
グループガバナンスでコーポレート部門のルール作りをサポートして、経営管理支援で実行フェーズをサポートし、内部統制と内部監査でモニタリングもサポートする、という一気通貫のサービスができるのがBRSのサービスの概要ですね。
――伏見さんの経歴の深堀もさせてください。会計士試験合格後、ASGを選んだ理由を教えてください。
元々、経営に関心が高かったため、若いうちに顧客の経営支援に携われるような仕事がしたい、幅広い業務を経験してみたい、と思っており会計士試験合格後は、5年程度で独立しようと考えていました。
会計士合格者向けの説明会などの就活を通して、ASGが1番、1年目・2年目・3年目から任せてくれる仕事が多そうに感じられたことが印象的でした。加えて、既にグラントソントンと提携していたため、60人ぐらいの規模でグローバル水準の監査をしていると知り、興味が湧きました。
実際に若手メンバーにお会いしてみて、説明会で聞いた通り、業務を任されていたことが分かり、ASGを選びましたね。
入社してみて、3年目で上場会社のインチャージを3社担当でき、就活当初の目的を達成できました。
――太陽との合併がありましたが、環境の変化はありましたか。
若手にどんどん任せようという風土は太陽も同じでしたし、むしろクライアントベースが広がり、IPOについてもお互いの力を合わせることで基盤が広がったため、プラスに働いたと感じています。
――そんな中でGT米国からマネージャーの方が戻って来られて、英国の語学研修へ参加されたとのことでしたね。それまで国内業務が多かった中で、急に海外となると戸惑いや不安もあったのではないでしょうか。
グローバルファームの一員である太陽にいるからこそできることは何か?と考えた際に、やはり組織力を生かした仕事と、海外での仕事だと考えました。ありがたいことに2012年5月に英国留学、2012年9月にフィリピンへ海外研修で行けることになりました。しかし、英国に留学したはいいものの、1ヶ月で英語は向いていないと痛感し、海外キャリアを諦めようと考えました(笑)。
(イギリス留学時のお写真)
――海外を諦めようとした心持ちにも関わらず、フィリピンへの海外研修に行かれた理由を教えてください。
英国で心が折れてはいたんですが、東南アジアへ3ヵ月行くチャンスも捨てがたく、勢いのあるASEANに行けるのなら、海外への挑戦はラストだと考えて行くことを決断したんです。
その結果、GTフィリピンの当時のCEOから、「あなたは海外に向いている」とお墨付きをいただきました。さらに、「あなたのように動き回ってお客さんと話すことが好きな人がGTフィリピンの求めている会計士だ」と言ってくれて、自信を持つことができました。
当時の日本の監査は金融庁対応などが厳しくなり、動き回って人と話すよりも、パソコンに向かっている時間が多くなってしまった時期でした。そんな中で、GTフィリピンのCEOが私みたいな会計士を必要としてくれるのなら、海外駐在に挑戦したい気持ちになり、その勢いのまま申し込んだ結果、2013年からフィリピン駐在が決まりました。
――英国での心折れた経験を凌駕して、海外駐在へ行きたくなった要因を教えてください。
海外駐在で失敗してもいざとなったら独立できる、という気持ちがあったからです。正直、今もこの想いがあるからこそ様々なチャレンジができています。これは会社への愛着が無いのとは違います。具体的には、今のポジションを捨てて、他の場所に行ったとしてもやっていける、という根拠のない自信があるおかげで、やるだけやってみようといつも思えるんです。
海外研修でフィリピンにいった際に、日本と比べると経済規模が小さく、現地メンバーの給料が本当に安いなと感じました。その一方で、日本には無い勢いも感じました。その勢いに魅せられたというか、この勢いに乗っかった方が自分にとっても成長できそうだと思わされた部分もあり、フィリピンに行きたい気持ちが勝ちました。
――フィリピンでは、セミナーや執筆活動など営業活動に力を入れていたとのことですが、そういった挑戦の動機は何でしょうか。
独立するために準備していた事業承継の勉強を通して、ターゲットが売上数億円から数十億円の会社の場合、会計だけでなく、税務や労務、法務、マネジメント、その会社の事業のことなど全てを勉強する必要があるという学びを得ていました。
実際にフィリピンに行ってみると、在フィリピンの日系企業の子会社は、超大手の子会社でさえ、売上数十億程の規模が多く、その規模の社長は会計士の私に対して、会計だけでなく、税務や労務、法務、マネジメントまで何から何まで相談したいというケースが多かったです。
つまり、私が日本で勉強したこと、日本でやろうとしていたことと、フィリピンで日系企業のマネジメント陣に求められたことが一致したことが純粋に楽しかったです。
そして、そんなことをやれる人が他にいなかったため、営業をすると次々に案件を獲得できました。最初は、案件が取れると嬉しいという気持ちで営業していましたが、途中からはフィリピンに進出して困っている日系企業を助けなければならないし、情報格差を埋めなければならない、という社会的意義を感じて行動していました。
(GTフィリピンでのセミナー活動が新聞に!)
――日本で学んでいたことがフィリピンで繋がったというのは、素敵なことですね。共通点を見つけて、実際にサービスの提供までできるというのは、伏見さんの機転の良さや対応力によるものだったのだと感じます。
その他に海外駐在で得られた経験について教えてください。
事業部責任者の立場で動くことができたのが良い経験になりました。例えば、日系企業から監査業務を受嘱した場合、監査業務の提供責任はGTフィリピンのローカルの監査パートナーになりますが、クライアント目線だと、日系企業向けの業務は全部私が見ているから安心して契約してくれているという事情があります。こういう状況ですから、日系企業に対応する全ての責任が自分にある、というマインドで動けたことは非常に勉強になりました。日本では一マネージャーではあっても、フィリピンでは業務執行社員のようにお客さんと接する必要があったため、コミュニケーション能力が一段上にあがりました。
また、「数字に責任を持つ」経験は重要でした。
もう一つ良い経験になったのは、ジャパンデスクのビジネスをどうすべきかをGTフィリピンのCEOとたくさんディスカッションできたことです。
最初のうちは、私個人がどのように頑張っていくかという話が中心でしたが、途中から「ジャパンデスクとしてどうしたい?」と問われるようになりました。駐在でフィリピンにいた私は、いずれいなくなるからこそ、自分がいなくてもジャパンデスクが組織として生き残り続けるために必要なことを考える重要さを学びました。また、GTにしかできないこと、GTだから頼みたくなるようなことを常に考える差別化の意識を持つ癖もつきました。
最後に、自分のマインドセットにも強い影響を受けましたね。「コンサバティブな計画は持ってくるな、チャレンジをする計画を持ってこい、チャレンジして失敗しても評価してやる」とGTフィリピンのCEOに耳にタコができるくらい言われたんです。
数字に責任を持ちつつ、成果よりも過程のチャレンジを評価するというのは、今現在も自分が大切にしている価値観です。
――そういったマインドを鍛えられ、やりぬいた過去の経験こそ伏見さんがフィリピンのレジェンドたる所以ですね。
話は変わりますが、フィリピンで感じた1番のカルチャーショックを教えてください。
たくさんありますが・・・
まず、現地に着くと感じるのは、とにかく若い人が多いですね。
それから、時間感覚が違うこと、急に強い雨が降ること、ある日突然ルールが変わったりすること。
ネガティブ面では、やはり都市部の空気汚染と渋滞ですね。これはフィリピン人も困っています。
衛生面で言えば、新しく開発されたグローバル都市は、多くの日本人のイメージと違って、非常に清潔で、綺麗なんです。第二のシンガポールと言われるくらい。でも、気候が違うので衛生面はやはり要注意で。家族がカットフルーツを食べたらすぐにお腹を壊してしまったり、日本の感覚で食べものを2,3日保管してから食べるとお腹を壊してしまったり、ということがありましたね。。
――違いを知ってから、帰国して日本の良さを味わえるのは良い経験ですよね。
そうですね。
海外在住経験自体も振り返ってみてプラスの方が多かったです。何より海外から日本を見ることができましたし、日本人コミュニティが小さいのでアットホームな感じでした。生活面では、昔に比べると賃金も物価もずいぶん上がったけれど、お手伝いさんを雇えたり、オフィスの近くの広くて綺麗な家に住めたり。それから、街全体が子供におおらかです。粗相を叱ると「子供がかわいそう」という顔をされるくらいです。
余談ですが、私が駐在に行った時期は、ちょうど半沢直樹のドラマが流行っていて、大阪支店長がマニラに飛ばされた回の数ヵ月後に私がフィリピン駐在にいったため、よくネタにされました(笑)。
他にも、当時私が監査を担当していた上場会社の取締役が「最近俺の買った推理小説にフィリピンが出てきた」と話を振ってきたため、内容を聞いてみると、「臓器売買で出てきたよ」と回答され、フィリピンに対するイメージが酷いなと思いましたね(笑)。
そんなイメージを持たれるフィリピンですが、”駐在妻は二度泣く”と言われています。一回目は、旦那がフィリピン駐在した時に「なんでフィリピンなの…」と泣き、二回目は、日本帰国後に「フィリピンのようにお手伝いを雇えず、広い家に住めない…」と泣くという意味だそうです(笑)。
駐在妻は行くときもイヤだし、帰る時もイヤで二度泣く国、それがフィリピンなんです。
――面白いです(笑)。フィリピンと日本での働き方の違いについても教えてください。
フィリピン人は日本人に比べて働く時間の波が凄いのが違いですね。
繁忙期は本当によく働きます。まず、オフィスにシャワーがあることが驚きなんですが、繁忙期になると1週間分の着替えを持ってきて、オフィスに泊まり込みで働きます。土日になったら洋服を替えに家に帰って月曜からまた泊まり込みで働くみたいな感じです。
一方で、繁忙期じゃない時は本当に働きませんし、タイムラインを守らないのは日本との決定的な違いですね。南国だからか時間感覚がゆるっとしていて、ASEANの中でも、フィリピンとインドネシアは絶対リマインドが必要になります。実際、私の仕事の3割はリマインドでした(笑)。
どうすればリマインドがうまくなるかは勉強しましたね。最初はメール、ダメだったら電話、それでもダメだったら会いに行く、というリマインドの仕方を1週間前、3日前、前日とやっていました(笑)。
これが難しくて、リマインドをしすぎて喧嘩になったこともあります。そんな時は、その作業によって売上アップに繋がり、ひいては彼らの仕事が楽になることに繋がるし、自分は味方であり、向いている方向が同じであることを親身に伝えていました。
――一緒の方向を向いていることを伝えたくても、言語の違いで伝わりきらないことがあるからこそ、いかに具体化して落とし込めるかが海外の難しさですね。
そういう意味では、1年目にフィリピンの歌を覚えることから始めました。半分趣味にもなりますが、彼らと一緒に飲んでダンスをよくしました。
他にも、会社のイベントでパートナー陣とバスケットボールしたり、バトミントンしたり、一緒に海で泳いだりとかそういうのが大事だったなと感じています。
忙しくなってそれらをやらなくなると、みんな協力してくれなくなるんですよ…。逆にそれが難しいところでもありますね。
――仕事の内容に話を戻しますが、BRSでのやりがいを教えてください。
BRSで1番フォーカスしているのは海外事業のビジネスリスクです。
やりがいという意味では、困っているお客様を助けることですね。BRSがターゲットにしている売上数百億から数千億前半の中堅企業はお金もマンパワーも制限されているけれど、海外に出ていく必要のある立ち位置なケースが多いです。既に海外に子会社を数十社持っているようなケースも多いです。しかし、海外事業を管理できる人材が採用できず、社内で育てることもできない状況になってしまっており、そのような規模の企業だと、私の肌感で約8割が海外子会社の管理に課題を持っているといっても過言ではないです。
一方で、それをサポートできるコンサルやプレイヤーも全くいないんです。Big4は売上が兆を超える企業や予算がある企業に集中していますし、他の会社のほとんどはシステムでどうにかしようとするSAP等のコンサルが多いのが現状です。海外現地のコンサルも日本の拠点がないケースが多いため、どうしても属人的なケアになってしまって、どちらかというと現地を手伝っているだけで、親会社の支援に繋がっていないんです。
このように、困っている中堅企業をサポートする人がいない状況をフィリピン駐在時から課題に感じていて、帰任後はなおさら感じるようになりました。
中堅企業の海外子会社管理に関するガバナンス支援は、日本のマーケットは非常に大きいのにプレイヤーが少なく、正直私たちくらいしかいないんですよ。対抗馬がいないことに加え、お客さんが喜んでくれること、社会的インフラを自分たちで作らなればならないという社会的意義があること、これらが強いやりがいになっています。
(BRSメンバーとの一枚♪伏見さんはリモート参加!)
――伏見さん個人や部門長として考えている今後の展望を教えてください。
海外事業を展開していて、困っている中堅企業を1社でも多く救えるようなインフラ作りをすることが目標です。もう一つは、そういうことを引っ張れるリーダーを育成することですね。
――最後に、若手会計士に向けての一言お願いします。
チャレンジしたい気持ちを大切にして、ぜひ一歩踏み出して欲しいです。
私自身、グループ内でのキャリアで色々と成長させてもらいました。特に挑戦をした上での失敗を経験しておくというのは、大事な要素なのではないでしょうか。たとえ失敗しても、グループ内のメンバー同士で助け合えるというのが、組織の強みです。これは助ける側にとっても非常に良い経験になります。だからこそ、グループ内で失敗するのは良いことで、すぐ戻れる場所があるということに私自身も救われています。
――伏見さんはまさしくグループ内でのキャリアを堪能しまくっていますもんね。
結局、独立するよりもBRSで働いている方が楽しくなっている訳だから堪能していますよね(笑)。チャレンジを大事にして、失敗したとしても許してもらえる環境があるというのは、非常に貴重なことです。
このように組織にいる中でチャレンジしないのは、正直、勿体ないです。一度、チャレンジをするとチャレンジ癖がつくため、どんどんチャレンジする人としない人で差が付いていっちゃいます。
それを理解しているからこそ、過去にチャレンジした人として、チャレンジすることを組織内でリズム化させるような環境作りをすることが私の使命です。チャレンジする人を全力で応援します!
――素敵な想いですね。ありがとうございました。
3.最後に
皆さん、いかがだったでしょうか。
私が、伏見さんとのインタビューの中で印象的だったのは、視座の高さと熱い思いです。
フィリピンに駐在した原体験から、海外事業の管理で困っている中堅企業をサポートすることに社会的意義を見出し、救うためのインフラ作りをどのようにすべきかを本気で考え、実際に行動に移し、結果も残されています。加えて、トップマネジメントとして、組織としてどこにフォーカスすべきかの戦略を持ちつつ、”チャレンジ”をキーワードに組織メンバーの教育にも奔走されている姿はとても素敵でした。
伏見さんは就職の時、5年のリミットを設けて独立するつもりでした。しかし、海外駐在中に支援した在フィリピン日系企業の皆様との関わりの中で、解決したいと思える課題に出会うことができ、また、GT フィリピンCEOとの関わりの中で、組織をマネジメントし、より広い視野でビジネスをしていくことの楽しさを学び、結果、独立するよりもGTAでより大きな課題を解決するために楽しく働かれています。
人との出会いが人生を変える、とよく耳にします。
伏見さんのケースも、まずは、GT 米国から帰任された当時の上司との出会いから海外へ視野を向けるようになり、梶川さんとの出会いから、フィリピン研修に行くことになり、そして、GT フィリピンCEOとの出会いから諦めかけていた海外駐在に挑戦されています。その結果、様々な経験に巡りあうことができ、挑戦の機会も与えられ、それらを吸収していったからこそ今の伏見さんがいらっしゃるのではないでしょうか。
私は、旅に出ること、人と出会うこと、そして、挑戦すること、この3つは循環していると考えています。旅に出るからこそ、人と出会うことができ、人と出会えたからこそ何かに挑戦できる。逆も然りで、挑戦をするからこそ、たくさんの人と出会い、新しい人と出会いたいから旅に出る。そして、伏見さんの話ではないですが、挑戦する人こそ成長し、成功を掴んでいくのだと思います。
もし、この記事を読んでいるあなたが海外に興味を持っているのならば、もう挑戦しない手はないですね!ぜひ、駐在の募集に手を挙げるなりで積極的に行動してみてください。
ご清覧ありがとうございました。
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