公開日:2021/05/06
CPASS基準の会計事務所・税理士法人の分類
CPASS運営スタッフの記事
イントロダクション
公認会計士にとって、会計事務所・税理士法人は有力な就業場所の一つです。しかし、公認会計士は驚く程に会計事務所・税理士法人の業界に詳しくありません。「会計事務所・税理士法人」という言葉からは、やはり、税務中心の税理士が主役の業界だという印象が強く残るからだと思います。また、この業界は業務領域は非常に広いものの、標準化された業務分類などはありませんので、何をやっているのかがどうしても分かり難くなりがちで、そのことも公認会計士が会計事務所・税理士法人に対して興味を持つことを阻害しているのではないでしょうか。
しかしながら、実際のところ、会計事務所・税理士法人はコンサルティング会社やその他士業事務所を併設していることも多く、グループ全体でワンストップサービスを提供しており、その中には財務・会計系のアドバイザリー業務やコンサルティング業務も多く含まれる為、多くの公認会計士が活躍している業界の一つとなっています。2021年3月末時点で、主たる事務所として届出されている税理士法人数は日本全国で4356法人で(日本税理士会連合会ホームページより)、個人会計事務所と合わせると世の中には約3万2~3000事務所程度が存在すると言われています。
これだけ多くの事務所があると何が何だか分からなくなってしまいそうですが、ほとんどの会計事務所は町の個人事務所的な業務を行っているのが実態ですので、公認会計士が活躍する場という観点で会計事務所・税理士法人を捉える場合は、上位の一握りの事務所を知ることができれば概ね把握できると考えて良いのではないかと思います。ここではCPASSでは独自の観点から会計事務所・税理士法人の分類をし、そこで公認会計士がどのように活躍しているかについて触れていきます。
【Big4系税理士法人】
公認会計士であれば、最もお馴染みなのがBig4(Deloitte、EY、KPMG、PwC)系列の税理士法人です。ベンチャー企業や非上場オーナー企業などもクライアントに持っていますが、やはり、大手グローバル企業、外資系企業、金融系といったクライアントが多いことが特徴です。提供している業務も、税務申告書作成といったコンプライアンス系のスタンダード業務はもちろんですが、連結納税、組織再編、M&Aに係るトランザクションタックス、国際税務アドバイザリー、移転価格や関税等に関するアドバイザリー等といった高度な知識・ノウハウ・国際性が問われるものを多く扱っているのが特徴となっています。対外資系クライアント向けには、管理部門業務のアウトソーシングや日本に滞在している外国人向けの所得税関連業務なども行っており、Big4らしい独自の立ち位置を築いています。Big4系税理士法人の特徴としては、公認会計士が比較的多く所属していることもその特徴の一つと言えます。税理士法人ではありますが、パートナーには公認会計士も多く、また公認会計士試験の論文式試験に合格してそのまま入社してくる人もいる位に、公認会計士にとって親和性の高い就業先となっています。年収水準も大手監査法人と同等、もしくはシニアマネージャー以上だとBig4系税理士法人の方が高いケースも少なくありません。その分、高い専門知識やリスクマネジメント能力だけでなく、高い英語力等が求められる場面も多くなってきますので、それ相応のスペックを求められる環境だと言えます。また、大きなクライアントが多く、業務は基本的にチーム制で対応することも多い為、Big4系税理士法人で経験を積んだとしても、即独立には繋がり難い点は注意が必要です。ですが、大手監査法人からキャリアチェンジで転職し易い職場の一つであることは間違いありませんので、公認会計士が税務をスタートする場としてはお薦めの選択肢の一つです。
【Big6系税理士法人】
Big4に次ぐ国際会計事務所と言えば、BDO InternationalとGrant Thornton Internationalです。BDO系の税理士法人がその名の通りBDO税理士法人、Grant Thornton系の税理士法人が太陽グラントソントン税理士法人と税理士法人山田&パートナーズです。但し、税理士法人山田&パートナーズは日系の最大手税理士法人の一つという側面が強いので、ここでは割愛し後述させていただきます。BDO税理士法人、太陽グラントソントン税理士法人のいずれも、Big4系税理士法人と比較すると規模感は小さく、アットホームな職場環境という印象です。また、国際ネットワークからの案件も入って来ますが、ドメスティック色も強く感じられます。なお、公認会計士も働いていますがそこまで数は多くない印象です。但し、通年採用で公認会計士を対象に募集はしていますので、Big4系のように国際色は強くなくて良いけど、大手国際会計事務所ネットワーク系の税理士法人で働いてみたいという方には良い環境だと言えるのではないでしょうか。
【日系大手税理士法人】
国内の2大巨塔と言えばこちら、辻・本郷税理士法人と税理士法人山田&パートナーズです。それぞれ多数のグループ法人を抱えており、グループ合計でいずれも1500名以上と、圧倒的なスケール感を誇ります。また、山田&パートナーズはグループに東証一部上場の山田コンサルティンググループ株式会社があったり、前述のGrant Thornton Internationalのメンバーファームになっていたり、非常にアグレッシブな印象を受けます。また、辻・本郷は積極的なM&Aで日本全国に隈なく事務所拠点を配置するなど、こちらも独自のダイナミックな戦略を展開しています。いずれも、日本を代表する公認会計士が立ち上げた歴史と品格のある最大手税理士法人と言えますが、ここまで規模が拡大し過ぎると、実態を把握することは非常に難しいと言えます。また、各拠点事務所や部門で大きく風土や方針も異なるという話も耳にしますので、就業を希望する際は入念な情報収集をしないとミスマッチとなるリスクも感じます。公認会計士も在籍していますが、どちらかというと純粋な税理士や税理士科目合格者といったスタンダードな会計事務所・税理士法人寄りの人員構成となっている印象も強いので、その点も注意をしておいた方が良い点ではないかと思います。但し、提供しているサービスは税務・会計のあらゆるサービスを網羅していると言っても過言ではありませんし、士業として独立開業を目指す上で非常に良い経験が積める職場ではないかと思います。
【準大手税理士法人】
概ね100~400名超のサイズ感で展開している税理士法人グループになります。公認会計士がトップを務める法人が多いのも特徴で、主に税務会計サービスと各種コンサルティング(事業承継、組織再編、M&A、IPO等)を提供しており、中にはグループの監査法人が併設されていたりすることもあります。更には、社会保険労務士法人なども併設しており、組織・人事コンサルティングなどと提供しているファームもあります。実質的に、税務・会計を主体としたコンサルティングファームの括りとして良いような組織体と言えます。このタイプの組織で働く人達は、公認会計士、税理士、税理士科目合格者等が入り乱れており、その中での公認会計士が一定以上の存在感を出している点が特徴的です。言い方を変えると、公認会計士が活躍できる仕事とフィールドが用意されており、また年収面でも公認会計士がそれなりに満足できる水準が確保されいる職場環境だと言うことができます。公認会計士が得意としている会計・財務系の業務を提供することで価値を出し、反対にやや弱いとされている税務を勉強できるという点においても非常にバランスの良い職場と言うことができるでしょう。比較的、人材の定着性も高い傾向にあり、ここを経由する方は他のファームに転職していくよりも、自身で独立開業をするパターンの方が多いように感じます。年齢層としても、20~50代と幅広い方々が活躍しているので、老若男女問わず、是非、チャレンジして欲しいフィールドです。
【金融特化型大手】
J-REIT、不動産証券化、債権流動化等のストラクチャードファイナンスを中心に、金融マーケットに対して大きなインパクトを持っているのがこのグループです。日系・外資問わず、不動産会社、エネルギー会社、銀行、証券会社、ファンド等のクライアントがメインで、SPCの税務会計をはじめ、関連するバックオフィス業務全般を行っています。また、高度なコンサルティング業務やアドバイザリー業務も行っており、金融分野に特化したニッチで深いキャリア構築ができる点が魅力です。ニッチマーケットで独自のポジションを築き上げたファームで、他からの参入障壁は高く、非常に安定した存在感を保っています。公認会計士も多く働いており、金融マーケットに興味がある公認会計士にはお薦めのフィールドです。
以上、今回のコラムではざっくりとですが、会計事務所・税理士法人の業界についてまとめてみました。次のコラムでも、他の分野を担う会計事務所・税理士法人について、CPASS独自の視点でまとめていきたいと思います。公認会計士にとって会計事務所・税理士法人が魅力的な職場であるということが少しでも伝われば嬉しく思います。
この記事を書いた人
「人と繋がり、可能性を広げる場」CPASSを運営するスタッフ達です。CPASSメンバーは、20~40代まで幅広い年齢層の公認会計士達を中心に、キャリア支援のプロフェッショナルなど様々なバックグランドを持つメンバー達で構成されています。「絶対に会計人達の役に立つ情報発信する」、「CPASSにしか出せない価値を提供する」をミッションとして集まった熱いメンバー達です。CPASS独自の視点からの見解を是非、楽しんでください。
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