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公開日:2025/07/01

  • イベントレポート

【カンファレンス2025イベントレポート】CEOとしてのキャリアの魅力と可能性

ファシリテーター

国見 健介(CPAエクセレントパートナーズ株式会社 代表取締役)

 

スピーカー

荒井 邦彦(株式会社ストライク 代表取締役社長)

坂本 壽男(株式会社串カツ田中ホールディングス 代表取締役社長)

柴田 裕亮(株式会社エアトリ 代表取締役社長 兼 CFO)

山田 雄一郎(株式会社トリプルアイズ 代表取締役)

 

なぜCEOなのか

国見氏の「本日はご参加ありがとうございます」という温かな一言から、会場は熱気と期待感に包まれていました。「CEOとしてのキャリアの魅力と可能性」をテーマに、経営者志望の若手だけでなく、実務家や学生も多く集まっていました。

「会計士をしながら上場企業のCEOという珍しいキャリア」――そんな経歴を持つ4名を前に、ファシリテーターの国見氏は「今日は素敵なお話をたくさん引き出したい」と宣言。会場全体のワクワク感が伝わるスタートとなりました。

 

それぞれのキャリアパス

「大学在学中に会計士に合格し、取得後は30年以上になります」と荒井氏。「最初は監査法人に6年勤め、その後ストライクを創業。最初は上場するつもりはなかった」と率直に振り返ります。「でも、思うところがあって2014年から準備を始め、2016年に上場しました。中小企業のM&A仲介をメインにやっています」と語りました。

「今日来てくださった皆さんに、起業や上場に少しでも関心を持ってもらえたら」と語るその目には、力強さがにじんでいました。

 

「もともとは日本酸素という会社に入りましたが、サラリーマンが合わず…」と坂本氏。友人の影響で会計士を目指し、「2年半で取得し、EY新日本監査法人に10年勤めました」。串カツ田中との出会いは「たまたま店で会長に会い、誘われたことがきっかけ」――そんな偶然と好奇心が、そのまま坂本氏のキャリアを物語っています。

「行き当たりばったりで、運任せなところもある」と謙遜しつつ、「皆さんの参考になるかはわかりませんが」と会場を和ませました。

 

「社会人になって20年、前半10年はトーマツで会計士、後半10年はエアトリ」と語る柴田氏。CFOとして参画し、上場やM&A、子会社の上場投資も経験。「あるタイミングで社長をバトンタッチされた」という経緯からは、経営のリアルが伝わってきます。

「当初は創業者が会長として全体を見ていて、自分は代表という役割。そのあたりの分担についても今日は話せたら」と、多様な経営スタイルにも触れていました。

 

山田氏は、EYの国際部で5年、その後パブリックセクターでコンサルを経験。15年の監査法人勤務を経てベンチャーへ。「三島旅行についていった縁で創業者・福原さんと出会い、熱い想いに共鳴して入社。急逝により、最年少でかつ最も新しいメンバーの自分が社長に」と、まさに“運命に導かれた”ようなエピソード。

「株も持たずに債務保証。大変なことも多かったけれど挑み続け、5年で上場。売上も3倍に」と語る姿は、苦難と達成の物語そのものでした。

 

“やりがい”はどこにあるか

荒井氏は「もともと会社をやりたくて会計士になった」と明かし、数字に強くなることがビジネスに活きると考えてきたと言います。実際、日々一筋縄ではいかない課題が降りかかってくる中で、それを乗り越えていくことにこそやりがいがあると語りました。上場を経験した今では、投資家の財産を預かるという責任も加わり、「それを自分の手でクリアしていくこと自体が、まさにやりがい」だと話します。

坂本氏は、CFO時代に培ったスキルを世の中の役に立てられているという手応えがやりがいだったと振り返ります。CEOとなった今は、「まだこれから結果を出していかなければ」としながらも、子ども手当やベースアップ、社内イベントの復活といった施策を通じて従業員がイキイキ働くようになり、離職率が下がったことに喜びを感じていると話しました。

柴田氏は、CFOもやりがいのある仕事だとしつつ、CEOは「意思決定の重み」がまったく違うと強調します。自分の判断ひとつで会社の将来が左右される――そんなプレッシャーの中でも、グループ化やM&Aによって仲間が増え、育てた人材が新しいCEOとして羽ばたいていくことに、深い喜びがあると語りました。「挑戦する仲間と一緒に成長していくのは、何にも代えがたい」と微笑みながら、コロナ禍で社長に就任した当時を「本当に潰れてもおかしくない状況だった」と振り返り、「あの極限のタイミングが、自分が経営に本気で向き合う覚悟を持った瞬間だった」と真剣な表情で語りました。

山田氏は、会計士試験にギリギリで合格して以来、ここまでのキャリアを「すべての出会いに感謝している」とし、今この立場に自分がいること自体が嬉しいと語ります。毎年変わる会社のフェーズ、新しい挑戦や知恵が求められる中で、「経営という仕事には、やりがいしか感じません」と力強く話し、そのエネルギッシュな姿に会場からは大きな拍手が送られました。

 

どうすればCEOになれるのか? “信頼”と“当事者意識”のリアル

坂本氏は、自身がCFOとして働いていた頃を振り返り、「全社的な目線で物事に向き合う姿勢、当事者意識と全体最適のバランスが大切だった」と語ります。「自分の部署だけでなく、会社全体を見て相談や判断をしていたことが、自然と周囲に評価されていたのかもしれません」と静かに分析し、「会長や同僚からの信頼があったことが、CEOとして抜擢された背景だったのでは」と続けました。

柴田氏は、「もともとCEOを目指していたわけではない」と前置きしつつ、「すべてを受け止めるという当事者意識を持ち続けていたら、いつの間にか今の立場にたどり着いていた」と話します。カリスマ創業者の背中を間近で見ながら経営を学んできたことが、大きな糧になったと振り返り、「本当に近道なのは、小さくても経営に関わること。スタートアップでも、個人の会計事務所でもいい。とにかく身近な経営に触れ続けることが大事」と断言しました。ナンバー2として支えてきた立場からバトンを託された理由については、「徹底的に会社を支える覚悟があったからこそ信頼されたのだと思う」と語り、「経営はチームワークです」と力を込めました。

山田氏は「突然社長に就任したが、立場が人をつくるというのは本当だった」と、自身の変化を語ります。週明けの経営メッセージひとつを発信することから、自分が徐々に変わっていった経験を紹介し、「創業者のカリスマ性と常に比較される中で、自分にできることをひとつひとつ積み上げるしかなかった」と、静かに語りました。

そして、荒井氏が語った「誰でも起業すれば社長にはなれる。でも“選ばれるCEO”になるには、人格やビジョン、人望、そして信頼がなければ務まらない」という言葉には、会場全体が深く頷いていました。

 

会計ファイナンス人材の強みとは

「数字に強いことは、経営者としての差別化につながるのか?」という問いに、登壇者たちは揃って大きく頷きました。

坂本氏は、「数字が読めることは、経営において精神安定剤のようなもの。ビジネスモデルを瞬時に把握できることが、トラブル時の支えになる」と明快に語ります。さらに、「騙されにくい」「リスクに敏感になれる」といった共通の強みも挙げられました。

一方で、「数字が見えすぎるがゆえに、リスクを気にしすぎて挑戦をためらう面もある」と、冷静な自己分析も。創業者の“アニマルスピリット”のような大胆さとは異なる視点を持つ会計士型の経営者だからこそ、「両方の視座が必要だ」と、バランスの重要性が共有されました。

山田氏は、「M&Aや企業価値の評価において、数字だけでなく、技術や人の力を含めて総合的に判断できるのが会計士の強み」と語り、ファイナンス人材としての幅広い視野と応用力を印象づけていました。

 

経営者に至るキャリア、どう作る?

「今から経営を目指す人には、どんな道を薦めますか?」という国見氏の問いかけに、登壇者たちはそれぞれの経験からリアルなアドバイスを送りました。

荒井氏は、「まずは起業してみること。社長には誰でもなれます。その上で、型を学び、最終的には“型破り”を目指すことが大切」と、挑戦を第一に挙げました。

山田氏は、「自分が燃えられるテーマ、情熱を持てる仕事を見つけることが大事。スタートの形は人それぞれだけど、その熱量が経営への道を切り開いてくれる」と語り、「自分も創業者の情熱に引っ張られて今がある」と、実感のこもった言葉を続けました。

柴田氏は、「スキルセットももちろん大事だけど、経営マインドのセットも欠かせない。プロ経営者型でも創業者型でも、正解はひとつじゃない」と、多様なキャリアのあり方を認めたうえで、「どの道にも“まず一歩踏み出す”勇気が必要」と、力強くエールを送りました。

 

参加者へのメッセージ

国見氏が「登壇者の方にネットワーキングでぜひ話しかけて」と場を和ませた後、登壇者からのひと言をリレー。

荒井氏「最終的には自分の能力を世の中で活かす。そのための挑戦を皆さんもぜひ。」

坂本氏「公認会計士になって本当に良かった。私も平凡だったけど、一歩踏み出せば未来は開ける。皆さんもどうか挑戦を恐れず進んでください。」

柴田氏「“やってみなくちゃ分からない”という気持ちが大事。ぜひ近くにいる経営者の背中から、経営を感じてください。」

山田氏「自分が熱くなれること、やってみたいことに勇気を持って飛び込んでほしい。立場や経験は後からついてくる。今動く、その一歩が全部を変えるんです。」

 

セッションを終えて

このセッションは、「会計士×経営」の現場で語られるリアルな体験、CEOという役割のやりがいと大変さ、そして何より“わくわく”と“勇気”が詰まった時間となりました。

会場全体には、「自分にもできるかもしれない」という前向きな空気が広がり、登壇者たちの言葉が確かな熱をもって届いていたのが印象的でした。

CEOを目指す道に、決まった正解や型通りのルートはありません。

大切なのは、

・日々信頼を積み重ねていくこと

・当事者意識を持ち続けること

・そして何より、自分の“情熱”に正直であること

 

こうした一歩一歩の積み重ねが、未来の誰かをCEOへと導いていく――そのことを強く実感させてくれるセッションでした。

 

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