公開日:2021/05/10
Knowing-Doing Gap (KDG)
株式会社Assatteの記事
Knowing-Doing Gapとは
Knowing-Doing Gap(以下KDG)とは、「知識(Knowing)」と「行動(Doing)」の「不一致(Gap)」のことです。スタンフォード大学のJ・フェファーとR・I・サットンが提唱した概念で「ほとんどの組織において、誰もが必要な知識を手に入れ、何をすべきかを理解しているのに、まったく行動に表れていない。業績に対してもマイナスの影響を及ぼしている」という実態の背景と考えられています。
Knowingとは「情報をインプット(input)すること」です。自社の理念や経営方針を理解する。顧客や競合、業界の動向などの情報を収集し分析する。マネジメントやリーダーシップついての理論やセオリー、ハイパフォーマーのノウハウやスキルを学ぶなど、様々な媒体や方法を利用し、多くの情報を収集し、自らに取り入れること。それがKnowingです。
Doingとは「インプットをもとに行動をアウトプット(output)すること」です。理念をお客様との接し方にしっかりと反映する。ビジョンや戦略を日々の行動に落とし込む。コミュニケーションのセオリーを職場のメンバーとの接し方に生かす、宣言したことを必ず実行に移すなど、やるべきこと、やると決めたこと、そして学んだことを現実の具体的な行動へ転換する。それがDoingです。
Knowing-Doing Gapのタイプ
高い成果を継続的に生み出し続けるためにはKnowingとDoingの双方をバランスよく実現することが大切です。しかし、現実にはKnowingとDoingはアンバランスになりがちです。以下に、ビジネスパーソンによく見られるKDGが大きい4タイプをご紹介します。
頭でっかちタイプ
勉強が得意で、向上心が高い人が陥りやすいタイプです。最新の業界動向やビジネスセオリーはもちろん、自社の経営状況にもしっかりとアンテナを張っていて、情報のインプットに熱心です。また情報の整理や資料化などの作業にこだわり、膨大な時間とエネルギーを注ぎ込みます。会議やミーティングには周到な準備でのぞみ、活発な持論を展開します。ただし、現実の場面で自分の行動を変える、知識やスキルを高めるためのルーティンを愚直に続ける、関係者に公言したことをやりきることなどは不得意で、机上の空論に陥りやすいと言えます。KDGが問題視される代表的なタイプです。ビジネスと趣味の違いは世界に与える影響の大きさです。趣味の世界では知的好奇心にもとづいて知識や情報をインプットすれば、日々の生活を楽しいものにすることはできるでしょう。しかしビジネスの世界では、自分だけでなく仕事、人、お金、社会に影響を与えなくてはいけません。Knowingだけに熱心で、Doingがおろそかになっていてはビジネスの世界で生きて行くことはできないのです。
がむしゃらタイプ
Doingだけに注力してKnowingがおろそかになってしまうタイプです。責任感が強く、周囲の期待や要求になんとか応えようと頑張る人が陥りやすいと言えます。このタイプの人は、人との約束を守り、スケジュール通りに仕事をこなし、目の前の問題を解決することに全力を尽くします。ただし、新しい知識や情報の収集をする時間的余裕がなく、余暇を楽しむ心の余裕もありません。また、自分が行ったことの振り返りも十分に行われないため、経験から得られるはずの実践的な知識も蓄積されません。短期的な成果は出せるかもしれませんが、新しい課題の発見や仕事のプロセスや技術の向上、大きな変革は生まれないため、仕事がワンパターンになり、どこかで行き詰まってしまいます。
過去の栄光タイプ
Doingの中にKnowingが含まれるタイプです。営業や折衝などタフな対人関係の現場経験が長い人、心構えや技能の伝承が重んじられる仕事に従事する人などが陥りやすいと言えます。このタイプの人はDoingからのKnowing、つまり情報のインプットが自分の経験知だけに限られます。確かに経験はKnowingの宝庫です。しかし、経験はあくまで過去のものであり、変わり続ける環境への有効性は日々減少していきます。また個人的な経験による情報には、主観的な要素が大きく、他の人や異なる状況で適用できるかは疑問が残ります。自分の成功や失敗の経験から得られた情報を過信することなく、広い視点で様々な情報をインプットしていかなければ、変化する時代についていけなくなってしまうでしょう。
未来に臆病タイプ
Knowingの中にDoingが含まれるタイプです。仕事上の大きな失敗や困難の経験、なんらかの後悔を引きずっている人によく見られます。このタイプの人は過去のネガティブな知識や情報(Knowing)によって、未来の行動(Doing)のリスクを過大評価する傾向があります。自発的な行動や、新しい試みに躊躇しやすく、アイデアを思い付いたとしても、行動には至らないケースが多いと言えます。ネガティブな記憶を未来に投影して不安が生じるのは自然なことですが、「同じ失敗をするからやめておこう」と決めつけてしまうと、そこで成長は止まります。不安な時こそ新しい経験知を得るチャンスととらえやってみる。挑戦することで、初めて一回り成長した自分と出会うことができるのです。
Knowing-Doing Gapを埋めるには
KnowingとDoingのバランスを取るためには、Knowing for Doing、つまり「アウトプットするためにインプットする」習慣を身につけることが重要です。そのためには何事にも常に以下の順番で進めると良いでしょう。
① アウトプットを決める
② アウトプットから逆算して必要なインプットを考える
③ インプットする
④ アウトプットする
⑤ アウトプットから新たなインプットを得る(①に戻る)
上記のサイクルを回し続けることで、KDGが埋まっていきます。着実にDoingのレベルを上げ、常にKnowingをアップデートしていきましょう。
この記事を書いた人
株式会社Assatte(アサッテ)です。「未来に進む勇気をすべての人に」を理念に、個人と組織が少し先の未来(明後日)に歩みを進めるご支援をさせて頂いております。心理学の専門家(Ph.D)や、組織コンサルティングの重鎮、大学教員などのメンバーが「アリストテレスに勝つ」ことを目指し、日々、人間理解への探求と実践を続けています。
すべての人が過去や現在に囚われることなく、未来に進むことができる。そして目の前の人だけでなく、その人が影響を与える次の世代の人のことまで考える。そんな社会は、より明るく、きっと面白いものであるに違いありません。その実現に向けて、CPASSでは「仕事」や「人間関係」、そして「未来」につながる情報や機会を提供したいと考えております。
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