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公開日:2021/07/05

  • ソフトスキル

モヤカチ

株式会社Assatteの記事

今回は仕事、あるいはコミュニケーションで活用できる情報伝達のスキルである「モヤカチ」をご紹介します。

「モヤカチ」は“モヤっと”、“カチっと”という二つの対になる言葉を合わせたものです。“モヤっと”の意味は、情報が曖昧で、はっきりとしない状態のことです。文字通り、聞くとモヤっとした気持ちになります。一方、“カチっと”は、情報が明確で、はっきりしています。表現だけではなく、言葉の定義がしっかりしていたり、文章が論理的に構成されている場合などが含まれます。
私たちはスキルの名称として「モヤカチ」と呼んでいますが、“モヤっと”と“カチっと”の組合せは以下の4パターンがあります。

例として、ビジネスの現場でよくある「モヤカチ」の例を4つのパターンに分けてご紹介したいと思います。あなたにも思い当たることがあるはずです。

(モヤカチ)

・顧客の問題意識がはっきりしなかったので、気付きを促すような問いかけをする。
・上司の指示が十分に理解できなかったので、文章に落としたものを確認してもらう
・社員の考えを知るために、アンケートを取って集計する

(モヤモヤ)

・同じチームに配属された年齢や社歴を知らないメンバーに、あえてこれらを聞かない
・上司が内容を十分に理解していない仕事について、詳しい説明をしないままにする
・部下からのはっきりしない質問に対し、答えずに、あえて質問で返す

(カチモヤ)

・交渉の際、既に回答は出ているにもかかわらず「いったん持ち帰ります」と伝える
・不採用の文章を、「不採用です」から「ご希望に添えない結果」と濁して書き直す
・就業規則に「その他」や「例外規定」を追加する

(カチカチ)

・契約内容を文章にした後、複数人で読み上げて確認する
・組織に存在する規定やルールに、多様な解釈ができないように細目を設ける
・辞書に記載されている言葉の意味を、組織内で理解がしやすい形に再定義する

 いかがでしょうか。このように整理すると、モヤカチが職場で頻繁に使われている方法、そして考え方だと理解できると思います。しかし情報を「モヤっとさせる」、「カチっとさせる」のように意図的に使っている人はほとんどいません。なぜなら意識化ができていないからです。

今、自分が接している「情報の性質」がモヤなのか、カチなのかを意識してみてください。さらに、その情報に自分がどのような対応をしているのか(情報の扱い)を知ることも重要です。

 モヤカチには、この「情報の扱い」も含まれており、前述したモヤカチの4パターンも、情報の扱い方で分けられています。原則として、情報の受取り手の情緒的側面を考慮する必要がある、あるいは伝える側にとって受取り手の理解が進むと都合が悪い場合にはモヤっとさせます(モヤモヤ&カチモヤ)。また情報の受取り手にとってわかりやすくしたい、または解釈の余地(幅)を与えたくない場合にはカチっとさせます(モヤカチ&カチカチ)。情報をモヤっとさせる、カチっとさせる、それぞれのメリットとデメリットを整理したものが次の表です。

 ビジネスにおける情報伝達の場面では“モヤっと”を避け、“カチっと”を使うことが好まれます。これは伝達ミスを防ぎ、情報をスムーズに伝えることが求められるためです。あなたも趣旨がわからない、要点を得ない話をされたら、“モヤっと”してるから、整理して欲しい(“カチっと”しろ)と伝えることでしょう。

 しかし、すべての状況において“カチッと”した情報、表現が適しているわけではありません。なぜなら上記の表にもあるように“カチっと”した情報は、多用な解釈ができず、自由度が低い性質を持ちます。これにより人の創造性を閉ざし、柔軟な変化も奪ってしまう可能性があるのです。現在のビジネス場面では、特に変化が求められます。既存の価値観を捨て、新しい発想を生み出し続けなくてはいけません。しかし、あまりに“カチッと”し過ぎた情報ばかりを扱っていると、変化する余白がほとんどなくなってしまうのです。

さらに“カチッと”した情報は、堅い印象を持たれやすいと言えます。そして遊びのない表現は、鋭く、冷徹に感じる人も多いのです。論理的に考えることが得意な人は、相手に伝わりやすいように無駄をそぎ落とし、明確な表現を使ったのにコミュニケーションがうまくいかなかった経験があるはずです。この原因は、“カチッと”した本来ならば入りやすいはずの情報が、相手にとっては冷たく硬い凶器のように感じられてしまったからです。その凶器から身を守るため、情報を侵入する入口を閉ざしてしまった相手には、何を言っても理解して貰えることはありません。

人間は情報を「感情が付帯したもの」として自分に取り入れます。そのため、あまりに無機質な情報は、逆に受け入れにくい場合があることを覚えておくと良いでしょう。頭脳明晰で論理的に考えられる人ほど、陥りやすい失敗と言えます。

ここまでお読み頂いた方は「モヤカチ」が情報の抽象度を扱っていることをご理解されていると思います。しかし我々はあえて「モヤカチ」というオノマトペによる表現を用いました。なぜなら情報の抽象度は、数値やレベルで判定が難しい“モヤっと”した概念だからです。あなたも自分が扱っている情報の抽象度を意識し、“モヤっと”している、“カチっと”していると言葉にしてみてください。きっと明日から、口癖のように使えるようになるはずです。

※本記事はAssatteメンバーの著書「引継ぎ」(プレジデント社)から該当部分を抜粋して引用し、一部を加筆・修正したものです。

この記事を書いた人

株式会社Assatte(アサッテ)です。「未来に進む勇気をすべての人に」を理念に、個人と組織が少し先の未来(明後日)に歩みを進めるご支援をさせて頂いております。心理学の専門家(Ph.D)や、組織コンサルティングの重鎮、大学教員などのメンバーが「アリストテレスに勝つ」ことを目指し、日々、人間理解への探求と実践を続けています。
すべての人が過去や現在に囚われることなく、未来に進むことができる。そして目の前の人だけでなく、その人が影響を与える次の世代の人のことまで考える。そんな社会は、より明るく、きっと面白いものであるに違いありません。その実現に向けて、CPASSでは「仕事」や「人間関係」、そして「未来」につながる情報や機会を提供したいと考えております。

https://sites.google.com/assatte.jp/web

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