公開日:2021/07/05
問題解決
株式会社Assatteの記事
問題とは
問題という言葉にはいくつかの意味があります。試験問題という場合には、解答を要する問いのことです。これに対して、問題意識という場合には、解決を要する事柄のこと、つまり「困り事」です。
売上が目標に届かない、利益がでない、スケジュール通りに仕事が進まない。体調が悪い、貯金がたまらない、体重が減らない。などなど困りごとは極めて多様で、どこにでもある存在です。しかし、そこには共通の心理的メカニズムが働いています。
「問題」とは、“あるべき姿と現状のギャップ”を意味します。人は常に対象となる事柄や相手に、望ましいと思われる状態(あるべき姿)を想定しています。その“あるべき姿”と、実際の姿(現状)の間にギャップがなければ「問題はない」、ギャップが大きいほど「問題がある」と感じます。例えば、職場で「仕事で成果が出ていない部下」(現状)を見つけた上司は、「仕事で成果が出ている状態」(あるべき姿)とのギャップを感じるので、その部下を問題視し、指導を行うのです。
問題とは、それ単独で存在するものではありません。あくまで人の認識ギャップによって生み出される存在なのです。このことを知ると、人によって問題意識の有無、危機感の程度などに違いがあることが理解できるでしょう。また問題には、現在すでにギャップが生じている発生型問題と、現時点でギャップは生じていないが未来により高いあるべき姿を意識的に設定してギャップを創り出す創造型問題があります。本稿では問題解決の基本である発生型問題に焦点をあてて基本的な考え方を紹介していきます。
問題解決のポイント
問題が“あるべき姿と現状のギャップ”なのであれば、問題解決とは“あるべき姿と現状のギャップをなくすこと”です。当たり前のことのように聞こえますが、実はビジネス場面ですら、“ギャップをなくす”という考え方ができていない人は多く存在します。この点を踏まえ、本稿では問題解決のポイントを要約してお伝えします。
“あるべき姿”を安易に引き下げない
人間は、「あるべき姿と現状が一致していない」と認識すると不快な心理状態(心理学の用語では認知的不協和と呼びます)に陥り、解消の方向へ動機づけがなされます。この最も簡単な方法は“あるべき姿”を引き下げることです。つまり、こうあって欲しいと考えている状態をあきらめ、現状に近い形で自分を妥協させることでギャップをなくすのです。高望みをせずに妥協をすれば、確かに一時的には気持ちが落ち着きます。しかし、これを繰り返すと、自分の基準がどんどん下がっていくため、いつしか全く成長できなくなってしまいます。“あるべき姿”を安易に引き下げることは、よほど精神的に追い詰められた状態でなければ、実行すべきではないでしょう。
大きな問題は感度の高い切り口で分解する
あるコンビニエンスストアの月間売上目標が100万円だとします。しかし現状は70万円であり、30万円足りません。この場合の問題解決は「30万円の売上を作ってギャップを埋めること」です。しかし、やみくもにやっても、うまくはいかないでしょう。そこで重要となるのが問題の分解です。
例えば売上構成比を「男女別」と「時間帯別」という二つの切り口で分解してみます。男女別でみると、目標は各50万円、実績は男性35万円(▲15万円)、女性35万円(▲15万円)で男女差はありませんでした。一方、時間帯別でみると、午前30万円(▲20万円)、午後40万円(▲10万円)と異なっていたとして考えてみてください。もし、あなたが経営者なら、どこに手を打つでしょうか?
この場合「男女別」よりも「時間帯別」で問題を分解した方が有効と言えます。つまり「男女差」を考慮して商品ラインナップを工夫するよりも、午前の売上を上げるために、朝食となる食品を増やす、コーヒー飲料のバリエーションを変えるなどの試みのほうが効果的かもしれないと仮説を立てるのです。
問題、つまりギャップを埋めようとしても、対象となる物事が漠然としていたり、表面しか見えていないと、有効な打ち手につなげることができません。今回の例の場合は「男女別」よりも「時間帯別」の方が、問題の真因となっている可能性が高く、打ち手として“感度が高い”と考えられるのです。
「犯人捜し」をしない
「犯人捜し」とは、問題が生じている原因を「誰のせい?」と発想し、その人を特定しようとすることです。仕事や生活の場面で「犯人捜し」をしてしまうことはよくあります。しかし仮に犯人が見つかったとしても、問題の根本的な解決にはつながらないことが多いです。なぜなら犯人を排除しても、ギャップは埋まらないからです。
人間の発言や行動は、その人の性格や特性などより、置かれている環境の影響が大きいことが明らかとなっています。個人が問題行動を起こす裏には、必ず環境の影響が存在するため、たとえ一人の犯人を排除したとしても、環境が変わっていなければ、また次の犯人が生まれます。「いたちごっこ」を続けていても問題は永久に解決しませんし、人を断罪するやり方は組織や人間関係を壊します。
「犯人捜し」のように、表面に出ている問題だけを取り上げて、手を打つ方法を“処置”と言います。もちろん当座の問題を悪化させないために、これが必要な場合もあります。しかし、そもそも犯人が生まれる環境自体がまずいのですから、再発予防に取り組むことのほうが重要です。このような本質的な原因(真因)に手を打つことを“対策”と呼び、“処置”よりもギャップを埋める効果が大きいと言えます。
問題解決のステップ
上記した問題解決のポイントを踏まえ、効果的に問題を解決していくための基本的なステップを紹介します。
ステップ1:問題の明確化
取り上げた事柄について「あるべき姿」を具体的にとらえ、事実をもとに「現状」を把握して、“あるべき姿と現状のギャップ”をクリアに認識します
ステップ2:問題の分解
切り口を考え、問題を細分化し、取り組むべき優先順位を決めます
ステップ3:原因の究明
分解した問題が「なぜ」起きたのか原因を洗い出し、因果関係をさかのぼり、問題を引き起こした本質的原因(真因)を探ります
ステップ4:対策の立案
真因をつぶしこむための打ち手を考え、実施計画を立案します
ステップ5:対策の実施
実施計画にそって対策を実行します
ステップ6:評価
対策の結果と実施プロセスを振り返り、対策の有効性を判断します
ステップ7:展開
評価結果をもとに、対策を他の部分(問題)にも適用します
問題解決は問題の発見から
トヨタ自動車では「問題解決は仕事の仕方そのものである」と言われています。トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一氏は「困らん奴ほど困った奴はいない」との言葉を遺しています。現場には、必ずなんらかの問題がある。仮に、問題がないように見えたとしても、「このままいくと」という危機意識を持って目を凝らせば、必ず問題が見えてくる。問題に気づけば、困る(考える)のが人間。困らないということは漫然と物事を見ているだけで、仕事をしていないに等しいと言うのです。
問題を発見することが問題解決の本当の出発点です。問題は“あるべき姿と現状のギャップ”ですから、あるべき姿と現状の両方が認識されていない限り、問題を発見することはできません。物事のあるべき姿をしっかりと考え、現状を曇りや偏りのない目で見ることを心がけましょう。
この記事を書いた人
株式会社Assatte(アサッテ)です。「未来に進む勇気をすべての人に」を理念に、個人と組織が少し先の未来(明後日)に歩みを進めるご支援をさせて頂いております。心理学の専門家(Ph.D)や、組織コンサルティングの重鎮、大学教員などのメンバーが「アリストテレスに勝つ」ことを目指し、日々、人間理解への探求と実践を続けています。
すべての人が過去や現在に囚われることなく、未来に進むことができる。そして目の前の人だけでなく、その人が影響を与える次の世代の人のことまで考える。そんな社会は、より明るく、きっと面白いものであるに違いありません。その実現に向けて、CPASSでは「仕事」や「人間関係」、そして「未来」につながる情報や機会を提供したいと考えております。
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