公開日:2021/08/16
インド!スタートアップ!道なき道を切り開き続ける 石川桂太(株式会社エアークローゼット)のキャリア
今回のロールモデルは、株式会社エアークローゼットの石川桂太さんです。海外会計事務所インターン⇒海外コンサル現地採用⇒スタートアップというキャリアを歩んでいます。論文式試験合格後に公認会計士にならないという選択肢を取った方で、非常に興味深い内容になっております。ぜひご覧ください。
石川桂太さんのプロフィール
石川 桂太
株式会社エアークローゼット
社長室長 執行役員 CSO 兼 マーケティンググループ長
慶應義塾大学在学中に会計士試験に合格した後、インドの大手会計事務所でインターンを経験。2013年に新卒で野村総研インド法人に就職し、海外進出戦略コンサルタント・M&Aアドバイザーとして活動。当時史上最年少でシニアコンサルタントに就任。airClosetの”新しいライフスタイルを創る”という理念に共感し、2015年6月に入社。CSO 社長室長として、全社の戦略策定を担うとともに、新規事業/アライアンス・事業推進・解析/データサイエンスを管轄。2018年4月からマーケティンググループを立上げ、月額制ファッションレンタルサービスairClosetの400%成長を実現。2022年7月東証グロース市場に上場。オフィスカジュアルから普段着まで幅広いお洋服が届く、月額制ファッションレンタルサービス『airCloset(エアークローゼット)』・メーカー公認月額制レンタルモール『airCloset Mall(エアクロモール)』・ディズニーアイテムのファッションレンタル『Disney FASHION CLOSET』・『パーソナルスタイリング診断』のマーケティング責任者を務める。
石川桂太さんの略歴
2011年:公認会計士論文式試験合格。
2013年:NRI Indiaに新卒現地採用で入社。
2015年:エアークローゼットの初期メンバーとして入社。
2017年:同社 社長室長 執行役員 CSOに就任。
2018年:同社 マーケティンググループを創設。
01. キャリアの変遷、展望
――突然インドに行ったきっかけを教えてください。
CPAのイベントで、強烈な先輩から、「会計士だけのキャリアに囚われずに、色々な世界を見るべきだ」というお話を伺ったのがきっかけです。いろいろなOBの方々を訪問していく中で、“世の中は広いな”と実感しまして、いろいろな場所を見てみたいと思うようになりました。
「“海外”、“成長している国”、“英語圏”というワードで何か良いところはないですか」と先輩に聞いて回ったら、たまたまインドで働いている八田さん(※)に出会いました。「八田さんの下で仕事をさせてください」とメッセージを送ったら、当時インターンを募集していなかったにもかかわらずOKをもらえたのです。それでインドへ行きました。
※八田さん: CPASSでは八田さんのインタビュー記事も掲載しています!ぜひご覧ください!
URL: https://cpass-net.jp/posts/hattatakuzo
――インドでのインターンの1年間はどうでしたか?
大変でしたね。何しろ初めての一人暮らしがデリーだったもので(笑)。
最初の1週間は気が張っていたこともあって体調面で問題はなかったのですが、1週間後に路面店でご飯を食べたら、お腹を壊して入院してしまいました(笑)。
――生活面でも大変だったのですね。仕事面ではどうでしたか?
僕自身は英語がすごく苦手だと感じていたわけではなかったのですが、インドの英語はまた少し違っていて、聞いたり話したりするのに苦労する状態が2か月ぐらい続きました。
せっかく“インターンで活躍してやるぞ!”という思いで意気揚々とインドに行ったのに、言葉が通じず仕事が全くできない状態で、本当に落ち込みました。けれど、2か月ぐらい経ってから急に言葉が聞き取れるようになり、少しずつ仕事ができるようになりました。慣れって大事ですね。
――インターンでの業務内容について、教えてください。
日経の会社がインドに進出する際の、①登記、②法人設立手続、③工場設立の際の法規制遵守、④会計監査のサポート、⑤移転価格税制のアドバイスといった、コンプライアンス全般のサポートを行っていました。
インドの方と一緒に仕事をすることが多かったです。500人ぐらい社員がいたのですが、八田さんと僕以外は全員インドの方でした(笑)。
――インドにはどのような方が多いのでしょうか?
インド人のプロフェッショナルの方は、すごく仕事のレベルが高いです。15億人の層の厚さは伊達ではないです。
あとは、優しい人が多いですね。よく、銀のコミュニケーション、金のコミュニケーションと言われるのですが、例えば日本は、“相手がされて嫌なことをしない”というコミュニケーションスタイルじゃないですか。逆にインドは、“自分がしてほしいことを相手に期待するし、自分もしてあげる”というコミュニケーションスタイルだったので、個人的には居心地が良かったですね。
――大手監査法人や東証一部上場企業、コンサルティングなどの内定を全てお断りして、インドに残った理由を教えてください。
就職した当時(2012年頃)は、“グローバルに活躍する”ということが新聞でよく取り上げられていた時代で、自分も“グローバルに活躍するビジネスマンになりたい”と強く思っていました。いろいろな選択肢を模索していったのですが、最初から新卒を海外に派遣する企業ってなかなかないのです。それに、“日本にいるのにグローバルで活躍したい”というのもどこかおかしいと考えていたのもあり、それならインドで最初から仕事ができる野村総研のインド法人に現地採用で入った方が早いと考え、インドに残ることを決めました。
――野村総研の現地採用でインドに残るという決断もまた大変そうですね。
研修も全くなく、「こういう風に仕事をしてほしい」、「この資料を見ておいて」と言われるだけでした。これが異常だったということを友達から言われて気づきました(笑)。
英語が流暢なわけでも、コンサルティングの仕事ができるわけでもなかったので、周りからできないやつだと認識されていたと思います。その期間は、正直辛かったですね。
――最初の2か月間、コミュニケーションを取れないから「来るな」と言われたり、資料を100枚作ったのに没にされたりと、普通の人だったら心が折れそうな気がするのですが、折れずに突き進めたのはなぜなのでしょうか?
会計士や日本の大手で就職するといった、いわゆるエリート街道の選択肢を捨ててきたので、正直負けたくないという気持ちだけでしたね。心は半分くらい折れていましたよ(笑)。でも、できないからってそこでおめおめと諦めて帰るのはダサいじゃないですか。負けたくないという気持ちが強かったからこそ、乗り越えられたんだと思います。
――野村総研に在籍していた2年間での業務内容について教えてください。
11年目はコンサル系の仕事が多かったです。インドに進出した日本の企業に対して、①インドの市場環境分析、②分析に基づく戦略策定、③進出オプション策定というような仕事をしていました。
2年目は、主にM&Aの仕事をしていました。どちらかというと野村総研よりも野村證券の仕事に近いですね。①インド企業を買収するパートナー探し、②買収の交渉、③ビジネスデューデリジェンス、④契約書の交渉、⑤クロージングというような仕事をしていました。インドの交渉の現場はすごくエキサイティングでしたね。日本人は交渉下手ですが、彼らは百戦錬磨。グローバルで戦っている感覚になりました。
――野村総研の経験を経て日本に戻ってきたと思うのですが、いきなり立ち上がったばかりのスタートアップにジョインしたのはどのような思いがあったのでしょうか?
コンサルの仕事では自分で意思決定ができず、フラストレーションがたまることが多かったんですよね。なので、自分の意思決定で事業を動かしてみたいと当時思っていました。それでスタートアップという選択肢が浮かび上がりました。
インドやバングラデシュでの起業といったお誘いがあったのですが、インドでやるには正直まだ早いと思っていました。インドは人口が多いので、当然エリート層の厚さも日本の10倍。その人達が、自国でビジネスしているんです。当時の自分の実力だと、まだ勝てないなと思っていました。だから、日本で事業家として経験を積んでからもう一回グローバルで戦おうと思い、日本のスタートアップにジョインすることを決めました。
――エアークローゼットとはどのように出会ったのか教えてください。
当時シェアリングに興味があって、たまたまFacebookのタイムラインにエアークローゼットという開始前の新規サービスが出てきました。面白そうだなと思って、代表の天沼を検索して、突撃DMしました(笑)。
インドから日本に戻るタイミングで天沼はじめ創業メンバーと話し、素敵な人達だなと感じました。スタートアップは人がとても大事だと思っています。だから、信頼できる人に出会えたというのは大きかったですね。
あと、ビジネスモデル的にもまさにイノベーションだなと思ったのです。“洋服をスタイリストに選んでもらう”“それを借りる”って世の中にないじゃないですか。でも需要があると直感しました。
一方で、事業化が難しいとも思ったんですよね。でも、だからこそ、このモデルを事業化できれば、将来自分が何かやりたいなと思った時にどうにでもなると考えました。それでエアークローゼットにジョインすることを決めました。
――エアークローゼットの9人目の社員だと伺ったのですが、具体的にはどのようなことをやっていたのでしょうか?
まず、入社当日でKPIの可視化を任されました。その時、僕はKPIの設計は分かるけど、可視化に関してはどうすべきか分からない状況でした。KPIの可視化のためにSQL(プログラミング言語)について本を見て覚えるところから始まりました。
次に、最初に大きな仕入が発生する事業モデルなので、成長資金を得るために、資金調達を行いました。どのように収益化していくかを事業企画書に盛り込み、大手の会社へ交渉しに回っていました。大手の会社から事業についてデューデリジェンスをされて四苦八苦していましたが、結果的に10億円ぐらいの資金を集めることに成功しました。
その後は、①在庫のモデルや物流といった事業全般のプロジェクトマネジメント、②事業拡大のための資金調達といったCFO的な役割を担っていました。
――入社1年後に、CPAの仲間がジョインしてきたのですよね。
森本という親友がジョインしてくれました。彼は根っからの天才で、土日に事業計画をボランティアで見てもらっていました。僕自身、管理部門が得意ではないと感じていたので、任せられる人が欲しいと思っていたのです。2015年12月、真冬の銭湯で森本にお願いをしたのを鮮明に覚えていますね。その後は資金調達を森本に全部任せ、僕は売上を伸ばす方に集中できるようになりました。
コストの改善にも人が欲しくてFacebookで探していました。そしたら市塚さんというCPAの先輩が出てきました。Facebookさまさまですね(笑)。事業に興味を持ってもらえて、そのままジョインしてもらうことになりました。市塚さんには物流の改革や収益の改善といったところで貢献してもらっています。
――石川さんのお話を伺うと、常に0→1のチャレンジをしているなと感じているのですが、0→1のチャレンジをし続ける理由を教えてください。
シンプルに自分のwillに向き合って意思決定するのを大事にしているからですかね。本気でやりたいと思えることに対して挑戦しています。会計士という選択肢を捨てたり、普通の新卒としてのキャリアを捨てたりと、いろいろな弊害はありました。けど、“今自分がすごいと思うことにベットしたい”という気持ちに対して、シンプルに意思決定することを心掛けています。
よく、「will, can, mustが重なるところで意思決定をしなさい」と言われますが、僕自身はwillしか見ていないですね。インドで言葉や仕事が分からない中でも、何とか仕事になった経験があるので、このように思っているのかもしれません。
――今後の展望を教えてください。
まずはIPOも視野に入れつつ、エアークローゼットの事業を伸ばしていきたいなと考えています。そして将来的には、トップになるということも大事にしていきたいです。最終的には経営者の指導者のように、“指導者の指導者”になりたいと考えています。
02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)
――仕事する上で大事にしていることを教えてください。
一番大事にしていることは“信じ抜くこと”です。エアークローゼットを始めたときに「洋服なんてレンタルする人1人もいないよね」とか「そんなビジネスモデルなんて成り立つわけない」などと、周囲から言われていました。でも、“この事業は成功しない”って自分が1パーセントでも思ったら、パワーが出なくなるし、間違った意思決定に繋がると考えています。
“この事業は成功するし、世の中のためにもなり、お客様の感動体験にもなる”と100%事業を信じることは大事にしているし、自分の強みなのかもしれません。
100%信じられるからこそ、本気でぶつかることができます。本気だったらそもそもモチベーションのコントロールなんて必要ないですしね。
それに加えて、仲間の成長や仲間の可能性を信じることもすごく大事にしています。本人たちよりも僕の方が信じているのではないかってぐらい(笑)、仲間を信じていますね。
あとは、謙虚さを大事にしています。真摯に人のアイデアを吸収しようと思い続けることがすごく大事だなと実感しています。人に助けられているということを忘れないようにしないと、人からの助けを得られないし、周りの人にも失礼だなと思います。そうならないように自分は謙虚でありたいなと常に思っています。これがまた難しいですけどね。
最後に、仕事を選ぶ際に、自分のwillに対してシンプルに意思決定をすることを心掛けています。“信じ抜くこと”ってwillで選んでいるからこそできると思うのですよね。逆に“can”や“must”で選ぶと、信じ抜けなくなる可能性があると思うのです。willで信じたことに対して挑戦し、結果が出るまでやり続けることを大事にしています。
本来、会計士という資格は武器のはずなのに、足枷にしてしまっている会計士の後輩が多いなと感じているのですよね。やりたくもないことを何年もやるのはとてももったいないことだなと感じています。会計士をやると決めたなら会計士の可能性を信じ抜いてやったほうがいいし、信じ抜けないのだとしたら違う選択肢も見て会計士試験が武器になるような活躍をしてほしいと思っています。
03. 論文式試験に受かって良かったこと
――論文式試験に受かって良かったことを教えてください。
ソフトスキル面でいうと、物事を体系的に学んで本質をつかみ取るというスキルを得られたことだと思っています。マーケティングにしてもプログラミングにしてもどこでも使えるスキルですよね。学べる状態を学ぶことができたのは大きな経験です。
ハードスキル面でいうと、財務会計、管理会計などのいろいろな科目に触れる中で、マネジメントをする上での必要最低限の知識、ないしは勘所を学べたことですね。それを学べたからこそ、新しい挑戦をする上での自分の勉強に活かすことができています。
株式会社エアークローゼットのWEBサイトはこちら
https://www.air-closet.com/
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