公開日:2021/08/31
変化の公式(The Formula for Change)
株式会社Assatteの記事
環境変化と組織
生き物は、自分を取り巻く環境から水分・酸素・栄養などを取り込むことで生命を維持しています。同じように、組織は環境から人・物・金といった経営資源を取り込むことで事業を成り立たせています。生き物の生態系が場所によって異なるように、組織の事業活動も置かれた環境(ポジション)の影響を受けます。組織が良いポジション(下図:環境の中心)を占めていれば、資源の獲得を効率的に行うことができ、顧客から高い評価を得る、そして競合に対しても優位性を発揮することができます。
ただし、良いポジションを長くキープすることは簡単ではありません。顧客や競合、最新技術は常に変化を続けており、そのスピードはますます加速しています。急激な環境変化に取り残され、事業活動継続の危機に陥った会社を皆さんもご存じでしょう。もちろん、組織は環境に対して受け身である必要はありません。自分たちに有利な状況を作るために環境に働きかけることは可能です。
経営はゴーイングコンサーン(Going Concern継続企業の前提)と呼ばれるように、ほとんどの会社(組織)は存続を目指して、その活動を行っています。変わり続ける環境の中で生き続けるためには、組織も変わらなくてはいけません。優れた組織とは「環境変化に適応し続けることができる組織」なのです。

変化への抵抗
長生きは素晴らしいことですが、反面、年をとれば新陳代謝が低下し、心身も衰えます。組織も設立から時間を経るにつれて、環境変化に適応する力が衰え、逆に変化に対して抵抗する力が組織の内部に生じてきます。
変化に抵抗する力は、私たち人間が持つ「過去への執着」から生まれます。その代表が「過去の成功体験」です。現在の仕事の仕方や仕組み、組織風土などには過去の成功から導かれた知恵やノウハウがたくさん埋め込まれています。うまくいくかどうかわからない新しい方法より、実績のある過去の方法に頼るのは自然なことと言えます。また「愛着」や「居心地」も過去の執着の一つです。苦労を重ね、長く組織を支えてきた人たちは、組織に強い愛着をもっています。さらに社歴の長い人ほど、組織では高いポジションを得ており、人間関係も居心地が良い状態が形成されていることでしょう。つまり積み上げた過去が長い(多い)人ほど、変化に大きな抵抗を示すと考えられるのです。
環境変化へ適応するためには、現在の仕事や、組織の在り様を変える場面が出てきます。つまり変化のためには、過去を否定する必要があるのです。これは「過去への執着」を持つ人にとっては、自分の実績を否定され、居心地が良い場所を奪われることと同義です。そのため頭では変化が必要だと理解していても、本心(感情)では抵抗していることが多いと考えられます。そもそも、生き物(人間を含む)には、ホメオスタシス(恒常性)と呼ばれる、生体やその内部を安定した状態に保とうとする機能が備わっています。自分自身の安定した状態を脅かすような環境にさらされると、この機能が働き、現状を維持しようとする欲求や行動への動機づけが高まるのです。
このように、環境変化に適応するためであるにもかかわらず、私たち人間は、変化を迫られると心理的、あるいは生理的にそれを拒む(抵抗する)、矛盾した動きを取る場合があります。そのため、組織の変化を成し遂げるためには、このような「抵抗する力」を上回るエネルギーを投入しなくてはなりません。
変化の公式とは
「変化の公式(The Formula for Change)」は、組織開発(環境変化に適応する健康な組織づくり)という領域において多くの実践家の試行錯誤の中から生まれました(図)。

-
C:Change(変化)
現在地(現在の状態)から目的地(新しい状態)に移行することです。
n D:Dissatisfaction(不満足・危機感・失敗)
現在地にとどまることへの関係者の満たされない気持ちです。「このままいくと…」より事態が悪化するなどの危機感や心配が含まれます。現在地にとどまることに肯定的な見方や感じ方をしている限り変化は起きません。Dが高まることで現在地から離れようとするエネルギーが高まります。
-
V:Vision(ビジョン・展望・希望)
変化の先にある目的地とイメージのことです。「現状を変えなければならない」と思ったとしても、変えた先のイメージに「行きたい、なってみたい」と思えなければ、実際に動くことはありません。現状から変化した姿を具体的に描き、そこに行くことへの希望やワクワク感がエネルギーになるのです。
-
Fs:First step(第一歩)
現在地から目的地(ビジョン)に向けた最初の一歩のことです。目的地へ到達するためには、一歩一歩の積み重ねしかありません。最初の一歩、まず何をやるかが明確であること。変化に対して有効であると確信できることが変化への動きを起動するのです。
-
R:Resistance(抵抗)
変化によって生じるコストや痛みに対して、人間(組織のメンバー)が示すマイナスの反応です。反論や反対行動などのわかりやすい形だけでなく、無視なども含まれます。前述したように、組織に長く所属している人、組織内のポジションが高い人により強く生じると考えられます。
変化の公式に当てはめて考えると、C(変化)を実現させるためには、これを促進する要素であるDとVとFsを合わせた力が、R(抵抗)の力を上回る必要があります。つまり促進要素の力を高めるか、抵抗を減らすか、またはその両方を実現させなければ変化は生まれないのです。
変化の大きさ=抵抗の大きさ
これまで述べてきたように、変化にはなんらかの抵抗がつきものです。どんなに素晴らしいアイデアであっても必ず抵抗は生じます。さらに、その変化が大きければ大きいほど、抵抗も大きくなります。新しい社内設備を導入するのと、会社そのものを売却するのとでは、どちらの抵抗が大きいかは想像に難しくないと思います。
あなたが組織を変化させたいと考えたとき、その変化が大きいほど、強い抵抗に直面することになるでしょう。そのため多少遠回りになったとしても、はじめから大きな変化を起こそうとせず、小さな変化を積み重ねることが重要です。そのプロセスの中で「過去への執着」を持つ人(Resistance)を見極め、危機感(Dissatisfaction)と希望(Vision)を根気よく伝え、あなた自身が具体的な行動(First step)を示していく。変化とは、この泥臭い試行の繰り返しによってのみ実現されるものなのです。
この記事を書いた人
株式会社Assatte(アサッテ)です。「未来に進む勇気をすべての人に」を理念に、個人と組織が少し先の未来(明後日)に歩みを進めるご支援をさせて頂いております。心理学の専門家(Ph.D)や、組織コンサルティングの重鎮、大学教員などのメンバーが「アリストテレスに勝つ」ことを目指し、日々、人間理解への探求と実践を続けています。
すべての人が過去や現在に囚われることなく、未来に進むことができる。そして目の前の人だけでなく、その人が影響を与える次の世代の人のことまで考える。そんな社会は、より明るく、きっと面白いものであるに違いありません。その実現に向けて、CPASSでは「仕事」や「人間関係」、そして「未来」につながる情報や機会を提供したいと考えております。
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