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公開日:2021/09/14

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監査法人の経験は、経営コンサルに必ず役立つ!監査法人、VC、税理士法人のキャリアをもつ会計士が、中小企業向け経営コンサルの実務を大公開!

松原潤さんの記事

この記事をお読みの方は、監査法人勤務で転職を考えているが、自分のスキルが監査法人以外の職場で役立つのだろうかと不安に感じていたり、経営コンサルに興味はあるが、会計や監査の知識だけで通用するのかと悩まれている方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。

監査法人に勤務していた当時の私も全く同じ不安を抱えていました。しかしながら、今は自信をもって断言できます。必ず監査法人で得た経験は、その後のキャリアに活きます。私の実体験を交えて、以下お伝えしていきます。

私は、監査法人を4年で退職し、トヨタグループのベンチャーキャピタルに10年勤務後、税理士法人を設立し7年になります。私たち税理士法人ブラザシップは、経営支援型の税理士法人です。税理士法人・会計事務所のほとんどは、中小企業の決算書や税務申告書を作成代行する業務が中心ですが、私たちは売上の約半分がコンサルティングという、業界では珍しい税理士法人です。

経営の結果は数字に表れます。逆に数字を分析すれば、どこに経営課題があるのかは概ね特定できます。ならば、数字を決算書や税務申告書作成に使うだけでなく、経営に活かしていこう、という考え方です。

私たちのコンサルティング売上のうち、メインはマネジメント・アドバザリー・サービス、略して「MAS」という業務です。私たちが提唱するMASとは、財務をベースにした経営者のマネジメント力を上げるコーチングサービスです。ポイントは、財務とコーチングです。

財務数字は、過去の紛れもない事実です。事実に基づいて現状を正しく把握することは、経営コンサルティングにおいて最も重要なことです。中小企業はリソース(人、もの、金、情報)が限られますので、財務数字をもとに的を絞った改善をしないと成果が出ないのです。

具体的には、MASは財務分析からスタートします。前期比較で増減をみる、月次推移で趨勢をみる、因数分解して分析するなどです。因数分解は、例えば、利益を売上と費用に分ける、売上を単価と数に分ける、数を新規とリピートに分ける、商品ごとや得意先ごとの収益性、従業員ごとの生産性などに分けて分析するなどです。

ここで監査法人時代の分析的手続きが役立ちます。監査法人は大企業を相手にしていますから精査することは出来ず、決算書を大局的に分析することから始めます。前期比較したり、月次推移をみたり、因数分解をすることで、異常が無いかを分析します。この分析は、MASで行う財務分析と非常に近いアプローチなのです。

それに対して、税理士が財務分析を行うと視点が少しズレることが多いと感じます。税理士は中小企業の決算書を作る立場にあり、仕訳を一本一本積み上げていく仕事をしています。そのため、大局的に分析するよりも、細部(例えば仮払金や預り金残高など)が気になってしまう方がいます。1円まで合わせないと決算書や税務申告書は作成できないので、細部を合わせることは大切ですが、細部に気を取られるあまり、大きな傾向や異常値を見落とすこともあるように思います。会計士は、短時間でポイントをつかむ能力が非常に長けていると考えます。

財務分析をして、改善すべきポイントが分かったら、次は具体的にどう改善していくかです。ここで大事なことは、答えをコンサルタントが出す必要はなく、相手の社長から引き出せばよい、という考え方です。

コンサルティングをしている以上、何をすればよいのかの答えまで、コンサルタントが出さなければならないような気がします。しかしながら、社長はその業界のプロであり、プロを上回る答えを素人であるコンサルタントが出すのは困難を極めます。思いつきでアイデアを言ってみようものなら、「それなら過去やってみたけど結果が出なかった」「素人に何が分かるんだ」と社長に反論されてしまいます。

そこで私たち行きついた手法がコーチングです。コーチングとは、適切な質問を投げかけ、傾聴し、承認して、実行を後押しすることです。すなわち、答えは社長が出すのであり、社長が答えを出せるようにサポートしていくのです。

実は、中小企業の社長は、答えをコンサルタントに教えてもらうことを期待していません。中小企業の社長は、数字に苦手意識がある方が多く、また相談できる幹部がいないことが多く孤独で、誰かに相談したいというニーズを持っています。

数字に強い私たちが、社長が数字を読めるようにサポートしたり、良い質問をして社長に考えてもらったり、出てきた答えに対して壁打ち相手になって、思考を整理して気づきを提供する、やりっぱなしにしないで毎月フォローして必ず実行を後押しする。これだけで中小企業のコンサルティングは十分成果を出すことが出来るのです。

ここでも監査法人時代の経験が活きてきます。ビジネスを販売サイクル、仕入サイクルなどサイクルごとに分けて、内部統制を確認していく質問と同じ要領です。良い質問をすると、適切な答えが返ってきます。監査法人は答えを出す立場になく、あるべき姿を提示してクライアントに考えさせることをしています。これもコーチングと似ています。また、監査調書をまとめて上司に報告するためには、論理的に書くことが必要であり、会計士は自然と論理的思考が鍛えられています。

私も監査法人で働いている時には、自分にどんなスキルが身についているのか実感できませんでしたが、今振り返っても見ると、確実に監査法人の経験があって今があると感じます。

監査法人時代と比べて違うのは、今は中小企業がお客様なので、非常に身近な事例で手触り感があります。監査法人のクライアントは、グローバルで複雑なビジネスが多く、数千億や兆の金額感であり、私は自分の仕事がどう社会に役立っているかのイメージが持てませんでした。

それに対して今は。社長との距離感が非常に近く、社長と相談しながら経営判断を一緒に行い、その結果がダイレクトに分かる環境にあります。社長に心から感謝されることも多く、非常にやりがいが感じられる仕事です。社長のマネジメント力を上げるコーチでありながら、逆に社長から学ぶことも多く、成長を実感できています。

私たちの事務所にも公認会計士が3人いますが、中小企業向けのコンサルで皆大活躍しています。公認会計士が活躍できる仕事は世の中に溢れています。会計は社会を変える力を持っています。中小企業は会計士のサポートを待っています。ぜひキャリアの一つとして、中小企業向けのコンサルも選択肢に入れてください。皆さんの今後の活躍を期待しています!

この記事を書いた人

税理士法人ブラザシップ 代表社員 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務後、トヨタ系ハンズオン型ベンチャーキャピタルで、様々なベンチャー企業の修羅場を経営者と乗り越える。現在は経営支援型会計事務所の代表を務める。
コアスキルは、財務、コーチング、戦略的思考、心理学。経営者のポテンシャルを120%引き出して理念ビジョンを叶える仕事と、ベンチャー支援がライフワーク。

 

税理士法人ブラザシップ

 

https://www.brothership.co.jp/

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