人と繋がり、可能性を広げる場

公開日:2021/10/09

  • 100人のロールモデル
  • MBA
  • NPO
  • 女性の働き方
  • 独立

MBA×ソーシャル×独立×社外監査役、多才な分野で活躍する大山みのりのキャリア!

今回のロールモデルは、大手監査法人・MBA留学・アドバイザリー業務・NPO参画・グロービス経営大学院講師・独立と、子育てと両立しながら幅広い分野で活躍している大山みのりさんです。仕事とプライベートのバランスやポートフォリオをご自身で決めてキャリアを歩まれているお話を、ぜひ参考にしてみてください!

    大山みのりさんのプロフィール

    大山 みのり
    大山みのり公認会計士事務所 代表
    学校法人グロービス経営大学院 専任講師
    株式会社イングリウッド 社外監査役
    NPO法人二枚目の名刺 理事
    青山学院大学 国際政治経済学部 国際経営学科 卒
    英国University of Oxford Saïd Business School, MBA
    公認会計士

    大山みのり公認会計士事務所代表。1999年に公認会計士試験合格後、中央青山監査法人国際部に入所。主として外資系企業日本法人、日本企業等の監査を担当する。
    2006年から2007年にかけてはプライスウォーターハウスクーパースグローバルキャピタルマーケッツグループにて国際間の会計基準差異コンバージョン支援業務に従事。
    その後、2008年に英国に留学しMBA取得。
    2009年帰国後はプライスウォーターハウスクーパース株式会社にてディールス部門M&A統合支援チームに所属、主にクロスボーダー案件にかかるPMI支援やカーブアウト支援に従事する。
    また、NPO法人二枚目の名刺に2009年設立時より参画する。2015年に独立、個人開業。2016年より学校法人グロービス経営大学院にて会計領域の講師を担当する。

    大山みのりさんの略歴

    1999年:公認会計士試験論文式試験合格。
    2000年:中央青山監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)国際部に入所。
    2006年:プライスウォーターハウスクーパースグローバルキャピタルマーケッツグループに異動。
    2008年:University of Oxford Saïd Business SchoolにてMBAを取得。
    2009年:プライスウォーターハウスクーパース株式会社(現PwCアドバイザリー合同会社)に異動。
    2009年:NPO法人二枚目の名刺に設立時より参画。
    2015年:独立し、大山みのり公認会計士事務所を開業。
    2016年:学校法人グロービス経営大学院にて会計領域の講師を担当。

    01. キャリアの変遷、展望

    ――大山さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。

    きっかけは何かの専門家になりたいと漠然と思ったことです。最初から会計の仕事をしたいと思っていたわけではないのですが、国際的な仕事をしたかったということもあり、色々と模索する中で会計士という仕事を知りました。ハードルが高そうだなと思いましたが、挑戦することにしました。

    ――合格後、中央青山監査法人の国際部に入所されたとのことですが、どのような仕事をされていたのでしょうか?

    主に外資系クライアント(欧米の会社の日本法人)の監査業務に従事することが多かったです。途中で部署の再編成などもあったため、日本の上場企業の監査も担当し、色々な経験を積むことができました。

    ――監査法人に8年ほど在籍されていた中で、最後の約2年は監査以外の業務をされていたのですよね。

    外資系のクライアントを担当することが多かったこともあり、諸外国との会計基準の違いを研究する専門部隊に所属することになりました。

    主にIFRSや米国基準との会計基準の違いを調べて、海外に上場しているクライアントにアドバイスしたり、海外の会社が日本の会社を買収したときに会計基準の違いを分析したりしていました。

    ――監査法人時代にご結婚し、その後留学されていますよね。留学に行った経緯を教えてください。

    監査法人では、専門家として専門性を追及していたのですが、色々なクライアントに伺っている中で、「“会計”という考え方はビジネスに関する事項の1つなのだな」と段々気が付いてきたんです。

    クライアントは、様々なビジネスを展開しているので、求められていることをきちんと知るためには、会計以外のことも知っていないと本当の意味でのクライアントサービスが提供できないと思いました。

    様々なことを知った上で、専門家としてサービスを提供したいと思い、留学に行くことを決意しました。

    ――留学中に“人生の転機”ともいえるご経験をされたのですよね。

    約1年の学びの時間だったのですが、本当にカルチャーショックを受けて、自分にとっては価値観が変わるような経験になりましたね。最初はマーケティングや、ストラテジー、オペレーションを学ぶつもりで、もちろんそれ自体も学んだのですが、予想外の出会いがありました。その1つのキーワードが“Social”です。“社会のために”という価値観にそこで初めて出会いました。

    オックスフォードのビジネススクールには、色々な国のクラスメイトがいて、例えば、途上国から来ているクラスメイトは、「ビジネスを学んで、自国に帰り、学んだことを活かして、自国の人々の暮らしを良くしたいんだ」と語ってくれました。

    オックスフォードでは元々ソーシャルビジネスが研究されていたため、そういう思いを持った方が集まりやすかったのかもしれません。最初はあまり興味がなかったものの、仲間と過ごしているうちに、徐々に自分も影響されて、社会のために活動したいと思い始め、卒業する頃には、日本に帰ったら自分も社会に対して何か価値を提供したいなと思っていました。

    ――帰国後、“Social”に関われることを探しつつも、より専門性を磨くために、PwCのアドバイザリー部門でお仕事をされていたとのことですが、具体的にどのようなことをされていたのでしょうか?

    最初は国境をまたぐM&Aを専門にするクロスボーダーのチームに入り、デューデリジェンスなどを行っていました。そこからPMIというM&Aをした後の統合支援を行うチームに移り、長く所属することになりました。

     

    ――PMI業務について、監査との違いを踏まえて教えてください。

    まず、PMIというのはM&Aのプロセスの1番最後に登場するプロセスで、M&A合意後に、クライアントが思い描くシナジーを実現させるために支援する仕事です。M&Aの合意後でも、統合が上手くいかずに契約に至った後に解散してしまう案件も意外と多いんですよね。そういったところに伺って、様々な部署の方と社内で調整しながら、計画を立てて、思い描くシナジーを実現させるためにサポートをしていました。

    1番自分で難しかったと思うのは、“人”の問題です。監査の時は数字や会計処理、リスクといったテクニカルな事項を議論していたのですが、初めて人の気持ちや思惑といったものの中で物事を進めていかなければならず、相手のことを考えてコミュニケーションを取ることの難しさや大切さを痛感しました。

     

    ――PMIを成功させるための秘訣は何でしょうか?

    個人的には2つあるかなと思っていて、①関与している人の利害をきっちり理解することと、②案件の成功は何なのかを考えることだと思います。

    M&Aの直後は特に、出身母体や所属している部署によって、利益やイメージしているものが違うので、個々の参加者が何を大切にしているのかを理解することが大事だと思っています。クライアントのためにと言っても、クライアント自体が多様なので、まずそこをよく考えるということです。

    もう1つはゴールをきちんと見据えて、個々の最適よりも、案件の成功が何なのかを考え、目指すことです。

    この2つのバランスを取りながら進めていくのが難しくもあり、やりがいでもありました。

     

    ――PwCで働きながらも、NPO法人二枚目の名刺にも関わるようになったきっかけを教えてください。

    先ほども少し触れましたが、1番のきっかけは留学中に「社会的に価値を出したい、社会のために役に立ちたい」という思いが自分の中に芽生えたことです。

    専門家としても活躍していたかったので、本業はやりつつも何かしたいなと思っていたときに、自分の翌年に同じ大学にMBA留学していた方々から、二枚目の名刺のコンセプトについてお聞きしたんです。それを聞いたときに、「それ絶対やった方がいいよ、面白いよ、やろうよ!」と言って、最初は何もないところから始まりました。

    ――二枚目の名刺の立ち上げ時期はどのように進めていったのですか?

    二枚目の名刺の活動というのは、社会人が自分の持っているスキルをNPOに対して使ってアドバイスをするというものなのですが、何もないアイデアだけのところから始めたので、最初はコンセプトを紙に落とすところから始まりましたね。

    そこから数枚のパワーポイントにして、最初のアイデアを出した数人で色々なところに出向いていって、「こんなことを考えています!誰か興味ある方いませんか?」と、とにかく話していました。

    そうすると不思議なことに「それ面白そうですね」と言ってくださる方が段々と集まってきて、アイデアがソリッドな感じになってきたんです。そして、実際にサポートしてみようという段階に至り、NPOの方と繋いでいただいて最初のプロジェクトが発足しました。

    最初は本当に手探りだったので、NPOの方にどういう風にすると響くのかといったところが難しかったのですが、試行錯誤しながら、最初のプロジェクトをやり遂げました。

     

    ――二枚目の名刺を持つメリットや学んだことは何でしょうか?

    コンセプト的に、どうしてもNPOの方に役に立つ、価値があるという側面に目が行く方もいるかと思いますが、それ以上に、実はアドバイスやプロジェクトに参加した社会人の方へ返ってくる部分、学びになる部分が大きいように思います。

    自分自身が経験したことだと、例えば、本業の中で「ありがとう」と言われることってそんなにないと思うんですよね。会計士として仕事をしていると周りも会計士の方が多いので、会計士であることが特別でなくなってしまうこともありますし、クライアントに伺っても報酬を頂いてサービスを提供している上で改めて感謝されるということは少ないと思います。

    そんな中で本当にちょっとした考え方や簡単な知識を共有することで、「なるほどね!ありがとう!」と言ってもらえることは、すごく自分の勇気になったり、これを続けていきたいと思う源になったりします。

    そういう素朴な感情という面もありますし、テクニカルな面でも自分の本業でやったことのないことを気軽に挑戦できるというのも二枚目の名刺のメリットだと思います。

    ――二枚目の名刺で大山さんが経験した本業以外のことを教えてください。

    本業が会計士だとなかなか経験することはないと思うのですが、値決めのプロジェクトに参加しました。原価計算のシミュレーションをして赤字にならないラインを算定したり、他のチームが市場アンケートを取って妥当な販売価格を出したりして、皆で意見をすり合わせながら決めました。

    やったことのないことを二枚目の名刺で挑戦するというのは、自分自身の経験にもなるし、スキルアップにもなるんですよね。NPOにサービスしたこと以上に自分の成長にすごく大きな影響があったと思います。

    ――学ぶと言えば、非営利団体だとチームマネジメントもより学べますよね。

    二枚目の名刺の良さには、フラットで、ヒエラルキーや忌憚なく意見が言えるというところが1つあると思いますが、だからこその難しさはあります。お金の関係がない中でマネジメントをする難しさというのがあり、意志の統一や思いの共有をしてまとめていくというのは本当に勉強になります。

    ――その後独立するまでに人生2回目の転機とも言える価値観の変わる出来事があったのですよね。

    独立の発端となった自分の価値観が変わったポイントというのは、出産を経験したことです。PwCにいた時に上の子を出産したんですけれども、その時に初めて自分の中で違うベクトルの価値観というものを複数持たなければならない状況になりました。

    今までは思い立ったら突っ走るタイプだったのですが、仕事も頑張りたいし、子供との時間も大切にしたいという、相反する価値観の中で、どこで自分のバランスを取るのがいいのかを葛藤しながら仕事をするようになりました。

    ――どういった葛藤があって独立に至ったのでしょうか?

    PwCにいた時にもそういう迷いを感じながら、ダイバーシティの活動にも参加させていただいていて、お子さんのいるワーキングマザーやワーキングペアレンツの方と意見交換する場をずっと持っていました。そこで皆さんの話を聞いているうちに、自分が1番丁度良いバランスを取るポイントというのは人によって違うということに気が付きました。

    仕事と家庭の折り合いのつけ方は人それぞれで、強要されるものでも真似するものでもないのだなと感じたときに、自分の心地良い働き方を模索し、自分自身で、人生のポートフォリオを作って働いてみたいなと思って、独立しました。

    ――独立された後、どのような仕事をどういったバランスでされているのですか?

    まだ子どもが小さいので、若干キャパシティは小さいのですが、グロービスの講師の仕事に腰を据えて取り組んでいます。とてもやりがいのある仕事で、受講生との出会いもありますし、自分自身も本当に学びになる機会となっています。他にも役員をさせていただいていたり、会計事務所としてクライアントサービスも提供したりしていて、良いポートフォリオでできているなと思っています。

    ――会計事務所の仕事は具体的にどのような業務なのでしょうか?

    時によって変遷しているところもありますが、新しく外資系企業となった日本の会社のレポーティングのサポートや内部統制の整備をしたり、デューデリジェンスのレビューを他の専門家の方と一緒に行ったりしながら、会計監査もライフワークとしてやっています。

    ――今後のビジョンを教えてください。

    自分自身どうしたいのかと問いながらも、敢えてあまり固く決めていないというところはあります。ご縁を大切に、身を委ねてみようと思っています。昔は将来の年表を考えるタイプだったのですが、出産などの経験を経て、人生は予想外のことばかりだなと思うようになり、先のことを考えすぎないようになりました。

    子どもが大きくなってきたらもう少し仕事に割ける時間が増えると思うので、現場にコミットする時間を作りたいです。

    02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)

    ――仕事する上で大事にしていることを3つ教えてください。

    (1)聞かれたら必ず答えること

    シンプルなようで意外と難しいところもあると思うのですが、やはり専門家であるが故に、質問をされたら何らかの解を求められていると思うんです。「わからない、できない」という答えはあり得ないと思っているので、難しいことを聞かれた際にも、頑張って裏で調べて確認しながら自分なりに考えて回答しています。

    質問を受けて答えることによって、自分自身の成長のきっかけになることもあります。

    難しいことを聞かれてそれで知識が増えることももちろんありますし、素朴な疑問を問いかけられたときに、基本に立ち戻ってよく考えて回答するので、それで自分の基礎的な知識が築かれているようにも思っています。

    (2)コミュニケーションの際に相手のことをよく考えること

    PMIの経験をした時に感じるようになったことだと思うのですが、人に何か説明をして相手に伝わらないのは、相手のせいではなく、自分のせいだと思うんです。相手のニーズを想像できていなかったから、伝わらなかったという自分の落ち度だというように考えるようにしています。

    グロービスのクラスで登壇するときも受講生の方のニーズを考えますし、できるだけ心に刺さるように気を付けています。NPOの活動でもビジネス用語や専門用語を使っても伝わらないこともあるので、同じ目線で話せるように準備をしてから挑むようにしています。

    (3)違いを大切に、尊重すること

    特に独立してから会計士以外の方と仕事をすることが多くなり、色々な方とコミュニケーションを取る中で、それぞれの方が素晴らしい専門性やスキルを持っていて、またそこから学ぶことが多くありました。自分も専門領域のことを伝えて、お互い共有して尊重し合いながら、良いものを作るという過程がすごく大切かなと思っています。

    二枚目の名刺の活動の中でも、色々な一枚目の名詞を持っている方が集まってくるため、それをすり合わせながら何かを動かしていきます。違いがあるからこそ大変な時もありますが、それが合わさったときにすごくシナジーが出るんですよね。この違いの尊重というのは私の中で最近テーマになっています。

     

    03. 会計士という資格を取って良かったこと

    ――会計士という資格を取って良かったことを教えてください。

    (1)任せてもらえる仕事が大きいこと

    例えば、駆け出しの20台前半でもある程度の規模のクライアントのトップマネジメントの方にインタビューができると思うのですが、なかなかそういう仕事って巷にないと思います。早い段階から大きなことを任せられるので、責任はもちろんありますが、その分必死になるし成長も早くなると思うんですよね。

    背中に冷や汗が出るときもありましたが、だからこそ、その場を乗り切れるように、頑張りますし、その経験がすごく勉強になったと思います。スタートダッシュを切れるところが会計士のメリットの1つですよね。

     

    (2)定量的に物事を考えられるようになること

    思考的に漏れがなく、MECE的に物事を捉えるのにすごく役立っているなと思います。定性的なアイデア出しももちろん重要なんですけれども、それを実行していくために、定量的にシステマティックに考える必要がありますよね。

    例えば、売上を上げたいと思ったときに個数なのか、値段なのか分解をしながらネタ出しをしていくと、玉突き的なことも含めて網羅的に考えらえるようになるのかなと思います。

     

    (3)女性に向いている仕事だということ

    女性に向いている理由は2つあると思っていて、1つは内容的な面で、丁寧さが大切になってくるということです。きっちり文章を残したり、数字を丁寧に網羅的に見たりといったスキルは、女性ならではの細やかさを活かせますし、女性が得意としているところでもあるので、内容的にすごく力が発揮できる分野なんじゃないかなと思います。

    もう1つは、女性ならではのキャリアを築いていく上で、どうしてもライフイベントなどでトーンが変わることもあると思いますが、会計士の資格、専門家としての地位が軸としてあれば、また前線に戻ってくることができます。トーンダウンしたとしても、そこを礎としてまたプロフェッショナルとして働けるというのは強みになるので、女性にはぜひオススメしたいなと思います。

     

    04. 大山みのりさんが女性会計士に伝えたいこと

    ――女性会計士へのメッセージをお願いします。

    女性はどうしても結婚や出産といったライフイベントなどでトーンダウンしなければならないときが男性よりも多いと思います。なので、その前にできるだけ自分なりにやり切る、出し切るという経験をすることが大切だと思います。そうすることで、スキルや専門性、ブランドが身につき、それが築けているとトーンダウンしてからも仕事のお声が掛かると思いますし、何かをやり切った経験は自信にも繋がります。

    どうしてもトーンダウンすると、不安になることもあるのですが、やり切っている経験があると、あの時の自分はやり切った、今後もできる、と思えて自信を抱いて進んでいけるんじゃないかと思います。

    そういう時期を経験できるのであれば挑戦してみるというのも良いかなと思います。

    NPO法人二枚目の名刺のWEBサイトはこちら

    新着記事

    LBOとは

    2023/01/10

    LBOとは
    モヤカチ

    2021/07/05

    モヤカチ
    問題解決

    2021/07/05

    問題解決
    PEとVCの違い

    2021/05/10

    PEとVCの違い

    新着記事をもっと見る