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公開日:2021/12/04

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CFOとしてIPOを実現し、ファンドのCEOとして活躍する飯塚健(Kudan株式会社の取締役)のキャリア!

今回のロールモデルは、Kudan株式会社の取締役である飯塚健さんです。大手監査法人を経てベンチャー企業のCFOに就任し、現在はCVCの代表取締役や若手公認会計士のコミュニティやCFO会の運営などもされています。大手監査法人からCFOやCEOというキャリアを歩まれている飯塚さんのキャリアの変遷をぜひ参考にしてみてください!

    飯塚健さんのプロフィール

    飯塚 健
    Kudan株式会社 取締役
    Kudan Vision株式会社 代表取締役

    一橋大学卒業後、2005年12月、新日本監査法人へ入所。2014年10月、マネージャーとなりITセクターを中心に未上場ベンチャーのIPO支援に従事。2015年6月に取締役CFOとしてKudanにジョイン。2018年12月、東証マザーズ上場。テクノロジードリブンCVCであるKudan Vision CEOに就任。

    飯塚健さんの略歴

    2004年:公認会計士試験論文式試験合格。
    2005年:新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入所。
    2015年:Kudan株式会社取締役CFO就任。
    2019年:Kudan Funds 株式会社(現Kudan Vision 株式会社)代表取締役就任。

    01. キャリアの変遷、展望

    ――飯塚さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。

    小学生のとき、算盤教室の先生から「会計士に向いている」と言われたことがきっかけでした。当時、算盤を習っていて、暗算が得意で段を取るくらい数字が好きだったのですが、中学校、高校で理系に進み、歯医者になることを選択肢の1つに考えるようになりました。ところが、血が苦手な自分は医者には向いていないということに気付き、かつて算盤教室で言われたことを思い出して、受験直前に理系から文転することを決断しました。その後、運良く一橋大学の商学部に入学でき、本格的に会計士を志望するに至りました。

    ――大学生活はどのように過ごされていたのですか?

    会計士を志して入学し、会計士の予備校に申し込みをしたものの、麻雀に明け暮れてしまい、勉強はあまりできませんでした。北海道で教育熱心な母親の元で育ったこともあり、東京での一人暮らしが開放的で4年間羽を伸ばして遊びました。しかし周りの皆が就活を終えた時期になり、ようやく「このままではまずい」と思うようになり、会計士の勉強を真剣に始めました。一緒に遊んでいた友人たちも就職できなかったため、皆で公認会計士試験を目指して勉強をし、合格することができました(笑)。

     

    ――受かったとき、どのような会計士になろうと考えていましたか?

    合格したときは、事業会社に会計士が行くという選択肢を知らなかったため、事業会社に転身することは考えていませんでした。元々中小企業の経営者を数字面で助けたいという思いがあり、監査法人でそれを実現することや引退して個人事務所の会計士として支援することくらいしか考えていませんでした。また、その過程でIPOの部署に入り、中小企業の支援をするためのノウハウを培いたいとも思っていました。そのために、まずは大企業の内部統制などを熟知しようと思い、入社した大手監査法人では国際部に入りました。

     

    ――監査法人時代は、どのように過ごしていたのか教えてください。

    1番厳しい部署だったため、社会人としての「いろは」を教えてもらいました。大企業監査で組織体制化されていて業務も細分化されていたため、間接業務も多く1年間現預金の勘定科目を見ていました。2年目に、「早く中小企業の会社の決算書を全科目1人で見たい」という気持ちが非常に強くなり、全く逆サイドなIPO支援の部署での募集に手を挙げて、国際部から飛び出しました。

    ――IPO支援の部署に移動して、最初の5年間で学んだことはなんですか?

    IPO支援の部署は独立採算の部門長の下、自分で営業して案件を取ってきて監査をするという文化で、国際部とは全く異なる世界でした。スタッフ2年目なのに、1人で税金を含む全勘定科目を担当し審査書類まで作成している同期の姿を見て、自分で勉強しないと生きていけない現実を知り、「お先真っ暗だ」と絶望しました。ずっとクライアントの部屋で間接業務や1つの勘定科目を見ていた世界から、自分のコストを意識する世界へと変わった瞬間でした。

    ――IPO支援をする中で、特に勉強になったことはなんでしょうか?

    当時僕の上司で、今ではIPO業界で有名な方が、IPO支援の提案をするときにしていた「経営者へ刺さるトーク」でした。経営者目線では監査は1つのツールに過ぎないため、監査人は監査にどう付加価値を出すのかが重要です。例えば、「この会社ではこういう契約形態にすると、取引をグロス売上とネット売上のうちネット売上にすることができ、結果的に利益率が上がる」という1つの提案をするとします。会計に関する1つの技術に過ぎませんが、経営者にとってはその提案によって時価総額が上がるかどうかに関わるので興味がある事象に聞こえます。そういう提案方法を間近で見る中、経営者と対等で話すためにはどういう観点で仕事をしないといけないのかが非常に良く勉強になりました。最終的にKudanに入社してCFOとなった後もその経験が活きました。

    ――その後KudanにCFOとして入った経緯を教えてください。

    IPO支援の部署で最初の5年間はひたすら勉強をする期間でしたが、後半の5年間は独り立ちし、自分でIPOの提案をして契約を取ることが増えていきました。色々なベンチャー企業のお客さんが増え、どんどん上場していく姿を見て、CFOの仕事はやりがいや面白みがあると感じたことが、きっかけの一つです。また、契約を取った案件の中で、会計士がCFOをしているベンチャー企業で、3年かけて上場できなかった会社を、自分がお手伝いさせていただき上場させたということがありました。その会社のCFOが僕の仕事ぶりを評価してくれ、「Kudanという会社が日本法人を設立するのでCFOとして入らないか」と紹介してくれました。断る理由がなかったこと、「セコンドではなくリングに上がらないか」と言ってくれたそのCFOの方に純粋に憧れを抱いたことから即決しました。

    ――Kudan入社前に社長と面会されたと伺いました。どのようなお話をされたのでしょうか?

    社長はイギリスに住んでいたので、1時間だけランチをしようと言われました。2015年当時、KudanはARの事業をメインで展開していたので、iPadの画面に実寸代の車を3Dモデルで高精度に再現する様子を見せてくれて、ARがグローバルベースの将来性のある技術だということ、Unityというソーシャルゲームを制作するためのツールを作っている会社のモデルが非常にスキーマレスで、同様のモデルをARエンジンで作りたいと思っているということを熱く語ってくれました。そして「来年会社を上場させるので、君はCFOをやった方がいい、ぜひうちに来てくれ」と、履歴書も出していなかったにも関わらず正式なオファーをいただき、Kudanに飛び込みました。

    ――実際にKudanに飛び込んでみて、3年半で上場させたのですよね。

    社長とメインインベスターから上場日を指定されていたので、逆算して何をすれば良いかは明確でした。エンジェル投資家がたくさんついていたので資金の心配がなかったのは非常によかったです。メイン事業はイギリスで行っていて日本法人はスモールな組織で良かったため、オフィスもメンバーも上場会社に耐えうる最小限を心がけました。周りの方に支援してもらいながらオフィスの決定から採用まで一つ一つ潰していきました。同期で1番優秀だった会計士にも入ってもらい、監査や税務といった内部的なものは彼に任せて、事業計画などの外部的なものは自分が担うといった役割分担をしました。

    ――上場に向けて一番大変だったことは何でしょうか?

    一番大変だったのは、数字作りでした。我々は研究開発の会社で、いわゆるディープテックという領域でアルゴリズムの深いところを作っている会社なので、マネタイズでいうと「アルゴリズムをプロダクトとして作って売る」ということをしない限り、なかなか数字作りは難しいです。確実に自動運転・自律走行の根幹技術の時代が来ることは明確でしたが、投資家にプレゼンするための数字をどうやって作るかという課題は、社長を含め幹部3人の頭を悩ませました

    ――Kudan上場後、CVCでファンドの立ち上げもされていますよね。

    Kudanにジョインしたときから、メインインベスターが色々な上場準備の会社に投資しているのを見ていて、インベスターと密にIPOを勉強してきたので、CVC事業は上場したら必ずやろうと決めていました。CVC事業をやりたいと思った理由は、研究開発の技術には良いものがあっても、製品化が見えていないために、投資家に説明することの難しさを痛感したからです。良い技術を持っているベンチャー企業はたくさんありますが、僕らのような人間が、事業化や投資をしていかないと消えていってしまうと思います。通常のベンチャーキャピタルとは違う、ディープテックな会社にどんどん投資していくCVCにしたいと思っています。

    ――飯塚さんの今後のビジョンを教えてください。

    まずは、ソリューションベースの会社に投資して足元を固めたいです。ディープテックの会社は、製品化の遅延など研究開発の期間が延長することで業績が低迷することが多いからです。今はKudanとのシナジーを一切考えず、ソリューションベースでイケてる会社には基本的にはお近づきになるというスタンスで、最終的にどこかで技術が結びつけばいいなと思っています。

    次のステップとしては、ディープテックのグローバルでイケてる会社に投資していきたいと思っています。ディープテックの会社の多くは、結局マネタイズが上手くいかず米国の会社に買収されるという潮流があるため、イギリスとドイツに拠点があるという地の利を活かして投資をしていきたいです。

     

    02. ベンチャー企業で働く上で大切なこと

    ――ベンチャー企業で働く上で監査法人での経験は何年くらい必要だと思いますか?

    極論、ベンチャー企業に飛び込む上でパッションが一番重要なので、そこに監査法人の勤務年数は関係ないと思います。経験や外部の方から信頼してもらうことは重要なので、個人的には、じっくりマネジメントクラスまで経験する方が良いと思います。特にCFOなど経営層から入るためには必要だと思います。また、監査法人で頑張っているとCFOのオファーの声がかかってくることもあります。監査法人でじっくり力をつけて、マネージャーやインチャージになり、部下を従えるまで経験を積むことが意外と事業会社のCFOになる近道かもしれません

    ――パッションが大事だと思うのはどうしてですか?

    会計士として優秀な方がたくさんいる中で、自分の「思い」を、惚れ込んだ経営者たちと共有できるかどうかということが非常に重要になると思います。ベンチャー企業では、採用一つとっても投資一つとっても意思決定をする上で、自分ごととして決めることが重要です。最終的に決断をするときに必要なものは、知識やノウハウではなくパッションだと思っています。また、パッションがあれば何がなんでも突破する力や多くの人を巻き込む力を発揮できるからです。分からないことがあってもCFOコミュニティや自分の足を使って、知識や経験は引っ張ってこられると思います。

    ――結果を出すために必要なことは何ですか?

    ポジショニングは非常に重要だと思っていますね。監査法人である程度キャリアを積んで頑張る人にCFOのオファーの声がかかるという話ですが、単純に大企業の監査をたくさんやって頑張っていてもポジショニングが悪ければ、声はかからないと思います。勘所の抑え方とアンテナの貼り方は肝要だと思います。僕は監査法人にいながらIPO営業をたくさんして色んなベンチャーのコミュニティに入り込んでいたため、声がかかりやすかったのだと思います。事業会社のCFOになりたいという思いが少しでもあるなら、情報にアンテナを張って、会計士コミュニティに参加するなど自ら動いて取りに行く積極性が大事ですね。

     

    03. CFO会での活動について

    ――若手会計士のCFOを増やすために、実際にCFO会で合格祝賀会などをされているとお聞きしました。

    CFO会計士を増やすために、合格した瞬間から事業会社のCFOという選択肢があることを伝えていきたいと思っています。僕の周りにはそういうことを教えてくれる人がいなかったので、合格祝賀会で浮かれて監査法人に行こうと思っているときに、「ちょっと待って、事業会社のCFOも一つの選択肢にあるよ」ということを頭の片隅に植え付けたいです。仮に監査法人に入って、契約書を見る際にも「これどこかで使えるかもしれない」という気持ちで見るのと単なるルーティンとして見るのでは全然違うと思います。

    ――若手のCFOからはどんな相談を受けますか?

    ファイナンスの相談が一番多いです。その他、Kudanは日本法人がホールディングスカンパニーで実態は海外にあり、海外にエンジニアを抱えているため、内部統制をどうしているのかという相談や、海外の事業会社を日本に上場させるにはどうすればいいかという相談が多いです。ただ、こういったノウハウは僕以外の会計士CFOの皆さんもお持ちなので、CFO会を通して、それぞれ自分の知らない守備範囲を補完し合う意見交換ができます。会計士として一定のスキルセットがあって、守秘義務を持っているからこそ、絶妙なコミュニティができていることを感じます。

    CFOは唯一の席ではなく非常にたくさんの席があります。現在1年に100社近く上場していますが、不本意ながら審査で落ちている会社がたくさんあります。我々会計士がCFOになり、情報やリスクを把握し経営をより良い方向に持っていくことができたら、新規上場社数自体も増やすことができ、その結果資本市場を潤すことができると思います。

     

    04. 飯塚健さんから若手会計士に伝えたいこと

    ――若手会計士へのメッセージをお願いします。

    会計士は資格を取った時点では、根っからのアントレプレナーではないとは思っていますが、資格を持っているという点で飛び込むリスクはないと思います。私自身には会計士試験に合格したときに事業会社に入るという選択肢はありませんでしたが、ベンチャー企業に飛び込む会計士が増えていって欲しいと願っています。

    「1社に1人は税理士」と言われていますが、「上場会社の1社に1人は公認会計士」と言われるようになれば良いと思います。税理士と公認会計士ではフィールドが異なるので、比較するつもりはありませんが、会計士は内部統制・会計・税務・経営と全般的に満遍なく知っているという点で、スキルセットとして最高な資格だと思っています。上場を目指している企業、上場企業などのガバナンスを気にしなければいけない会社には、公認会計士がいた方が良いと考えています。特にオーナー企業のNo.2のCFO、いわゆる番頭は公認会計士が担うべきだと感じます。皆さんには、ぜひベンチャー企業に飛び込んで、No.2として会社の経営を牽引していく立場にチャレンジして欲しいです。

    年に100社近く上場していますが、そのうち20社くらいは会計士が管理部長やCFO、CEOの役職を担っています。上述した最高のスキルセットという点で、今後会計士が8割くらいを占めてもおかしくないと思います。監査法人にいると、身近で経営者と接する機会もありますし、契約書やガバナンスを見られる立場にもあるので、その立場を活かして5年10年しっかりと経験を積み、事業会社に飛び込んで格別のやりがいを感じていって欲しいです。

    働き方が多様化して副業が多くの企業で認められるようになってきた時代なので、飛び込むにしても2、3社で迷っているのであれば、どちらも業務委託で付き合ってみれば、組織のヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を見ることができ、心配な部分は軽減されると思います。僕や国見先生をはじめ皆さんの先輩は、いつでも背中を押したいと思っています。ある程度経験を積んでパッションを抱いている人は、ぜひリスクを感じず飛び込んでいってください。


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