公開日:2023/02/07
【経営者インタビュー】試験撤退を乗り越えて、経理部門から社長就任!唯一無二のロールモデル 森啓一(株式会社フォーカスシステムズ代表取締役社長)のキャリア!
今回はくにみんチャンネル特別編ということで株式会社フォーカスシステムズ代表取締役社長の森啓一さんにお話を伺いました。試験撤退、クビ宣告、激動の経理部門時代、急な社長就任など波瀾万丈な人生を送ってきた森さん。くにみんチャンネルに公認会計士以外の方が登場するのは森さんが初めてになります。受験生の方、経理部門の方、経営者の方など幅広い層の方にとって参考になる記事となっておりますので、ぜひ、最後までお読みいただけますと幸いです。
森啓一さんのプロフィール
森啓一
株式会社フォーカスシステムズ 代表取締役社長
大学卒業後、監査法人、税務会計事務所を経て、
縁あって全くの門外漢であったIT企業であるフォーカスシステムズに入社。
それまでの経験を活かし、経理の面から会社を支え続け、約11年前に代表取締役社長に就任。
就任時、コーポレートスローガン「テクノロジーに、ハートを込めて。」を掲げる。
森啓一さんの略歴
1989年 監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)入社
1995年 税務会計事務所入所
1998年 株式会社フォーカスシステムズ入社
2011年 代表取締役社長就任
01. 受験生時代のお話
――公認会計士を目指したきっかけを教えてください。
大学に入る意味がよくわからず、2浪して大学に入りました。大学でも1年、留年してしまったので同期の方たちとは3歳も離れてしまったことが、会計士を目指したきっかけの1つです。
当時はバブルだったので就職活動の時には「ボーナスがいくらもらえるのか」や「どこの会社に就職したらいい」といった話が同期の中で溢れかえっていました。ただ、3歳も下の方と同期として一緒に仕事をしていけるのかという不安があったので資格の取得を検討していました。そこで商学系最高峰の資格である公認会計士という資格があることを知り、会計士試験の世界へ飛び込みました。
――受験生時代が10年ほどあったと伺ったのですが、どのような受験生時代を過ごされていましたか?
大学卒業後は就職せず、公認会計士になるために専門学校へ通おうと考えていました。専門学校の「頑張れば受かる」という言葉を鵜呑みにして、試験に落ちても、「もう1年、頑張ったら受かるかな」という甘い気持ちで勉強を継続していました。ですが、2回目の挑戦でも落ちてしまったので、どこかに就職しないとさすがにまずいなということで就職先を探しました。
当時、まだ受かっていない人でも働きながら勉強ができるインターンを監査法人が募集しており、そこにうまく入ることができたので、受験生3年目からは社会人生活をしながら勉強するという形になりました。
働き始めてから3年が経っても何もいわれなかったのですが、5年目になった頃に、人事の方から「今年、落ちたら分かっているよね?」と言われてしまいました。自分の中でも会計士試験は難しかったなと感じていましたし、5年ぐらい勉強しても受からないのであれば次のステップに進むべきだと考えていました。
5年目の試験でも合格することができなかったので、短絡的ですが会計士よりも税理士の方が簡単かな?という考えから次の選択肢として税理士を選びました。
ということで税理士事務所に入るわけですが、当時の所長さんが「勉強は仕事の隙間でするものだ」という方針を持っていたので、平日の日中は仕事に集中し、勉強は平日の夜や土日の時間を使って行おうと考えていました。ですが、いざ働いてみると仕事が忙しすぎて勉強どころではなかったです(笑)。
そこで更に3年間を過ごすわけですが、結局、科目合格も満足に取れませんでした。結婚して子供ができたということもあり、資格試験からは撤退し、違う道を探そうと考えました。
――学習しながら勤められていた監査法人・税理士事務所では具体的にはどのような業務を担当されていましたか?
監査法人では、いろいろなチームに入ってお手伝いすることが主な仕事でした。今でもすごく有名なクライアントのアサインに入れていただいていたので、大手の会社を見ることができたことが監査法人に行って良かったと感じた点でした。
外資系の部署にもいたので、海外との取引があるクライアントや日本にある海外の法人を見たりしていたこともあり、アメリカやヨーロッパの会社の内部統制などについても勉強することができました。
税理士事務所では前職の監査法人とは打って変わって、明日倒産してしまうかもしれないような小さな規模の会社を担当しました。確定申告の際は1ヶ月の間に20社ほどの確定申告書の作成や仕訳業務を担当していました。
02. 経理部門時代のお話
――事業会社経験も無い中、35歳で転職するという選択はかなりチャレンジングな選択だったと思うのですが、フォーカスシステムズさんに転職しようと思った経緯や理由を教えてください。
税理士事務所時代に2年ほど関与していたクライアントがあり、そこの社長の方にフォーカスシステムズを紹介していただきました。
ITの知識などは全くなかったので一度はお断りしたのですが、「とにかく話だけ聞いてくれ」と言われてしまったので、顔を立てる意味でもお話だけお聞きすることにしました。
その後、フォーカスシステムズを尋ねると役員室に通され、当時の間接部門のトップの役員さんから「いつから来てくれるの?」と聞かれました(笑)。最初はお話を聞くだけという約束だったので、どういう状況なのかわからなくなってしまいました。その場ではちょっと考えさせてくださいとだけお伝えして部屋を出ました。頭を整理しながらエントランスへ向かうと、そこには経理部長さんが待ち構えており、いきなり駆け寄ってきて「これからよろしくお願いします。」と頭を下げられてしまいました。その時にやっと入社するという前提で話を進められていることを理解しました(笑)。
そこまでされてもなお、お断りしようと考えていたのですが、約1週間後に電話がきて「今のフォーカスシステムズの経理部は非常に未熟だから、自分のやりたいように仕事を進めていけるよ」という話をされました。結局、その一言が自分の中でとても魅力的に映り、家内とも話し合った結果、お世話になることを決めました。
――転職した直後に担当されていた具体的な業務内容について教えてください。
上場して間もない会社だったため、今ではありえないことですが監査法人が伝票を起こしたり、記帳をしたりなどしていました。そのような状況下で、私が入社したものですから、監査法人としては「会計の知識を持っている人がやっと来た」ということで、これまで監査法人が行なってきた全ての経理業務をITや会社の仕組みを全く知らない私が担当することになってしまいました。
当時、すでに社員数が600〜700人ぐらいはいて、売上高も80〜90億ぐらいの規模だったのでそこからは地獄のような日々を過ごしました(笑)。
会社の状況を覚えつつ、会計の土台を作るというのが最初の業務内容でした。具体的にはまず、全ての伝票を起こして、試算表を作るところから始めました。そうすると、監査法人の方から当然のように質問が来るので、その都度、役員や各現場の社員に状況をヒアリングして、自分の中でまとめたものを監査法人の方に伝えるという業務を行なっていました。
また、毎年国税が入っていたので、監査法人対応の傍で税務署対応も担当していました。
両者に対応していく過程で監査法人への対応と税務署への対応には違いがあることに気がついてからは自分の中で頭のスイッチを切り替えながら、対応していました。
――会社全体のお金の流れを把握することはかなり大変だったと思うのですが、その辺りの業務はどのように乗り越えられましたか?
監査法人や税理士事務所にいると、より批判的な視点で会社を見ると思うのですが、経理の仕事を始めてからはこの会社をいかに守るかという姿勢に変わりました。当然、上場会社ですので赤字を出すことはできず、黒字を出さなければなりません。黒字を出すことについて税務署は何も言ってきませんが、会計事務所は保守的ですので、様々な指摘をされます。その時に、会社全体を守るためにはどうすればいいのかを考えてどのような処理が適切なのかについて検討し、論理的に説得して、認めてもらい、グレーな部分を白に持っていくということをしていました。
あくまでも会社を潰してはならないという使命があるので、その点は税理士事務所や監査法人で仕事をしていた時との大きな違いです。
03. 社長就任後のお話
――入社してから10年ほどで代表取締役社長に就任されたと思うのですが、森さんが順調にキャリアアップできた理由についてご自身が考えていることがあれば教えてください。
たまたまフォーカスシステムズが創業者を中心に経営していく会社だったこともあり、会社の規模を更に拡大していくためには従来のスタイルではなく、合議性を取り、全役員が1つにまとまって考えながら経営していく仕組みを取りたいという創業者の思いがありました。ですので、俺が俺がというタイプの方が多い営業や開発部門の人ではなく、間接部門出身だった私が適任であると創業者は考えたのだと思います。
また、私は会社をいかに良くするかという視点で仕事をしていく中で、いろいろな問題が起きた時も自分が先頭に立って1つ1つ問題を解決していなかければならないという思いを常に持っていたので、その点も上から評価していただいたのかなと考えています。
――最初は経理で入社したけれど、経理業務にとどまらず会社全体のことを考え続けたことがキャリアアップに繋がったということでしょうか。
そうですね。基本的にお金さえあれば会社は潰れないので、お金をしっかりと管理していく部門は会社にとってかなり重要な部門です。なので、経理部門ではなく他部門の方で管理職になる方は最低限の経理の知識が必要だと思いますし、その知識を自分のものにしておかないと、昇進してはいけないというのが私の思いです。フォーカスシステムズでも年に2回、社内向けの決算説明会をやっているくらい会計の知識は重要視しています。
ですので、経理部門も自分の業務を効率的にこなすだけでなく、自分の知識を共有した方が会社全体にとって良いと思いますし、そう考えたことがキャリアアップに繋がったと考えています。
――森さんのお話を聞いていると、監査法人や税理士事務所だけでなく営業部門や開発部門など様々な立場の視点をもって物事を考えていらっしゃる印象を受けるのですが、それについて何か意識していることはありますか?
自分の立ち位置がどのように見られているかということはかなり意識しています。監査法人や税理士事務所であればクライアントが、事業会社であれば取引先など、様々な人から自分がどのように見られているのかについて考えるようにはしています。
――管理部門の統括と組織の代表取締役社長とでは、大きく役割が変わると思うのですが、それを実感したことや経理時代の経験が社長業務を行うにあたって活きたことなどはありましたか?
変わったことで言えば細かい数字を追わなくなりました。最初は経理時代の癖が抜けず、細かい数字までかなりチェックしていましたが、現在は細かいところは現場に任せ、私は投資家や債権者対応などを中心に業務を行うようにしました。また、管理部門の業務をしていた時は外部の人と会うことが滅多になかったので、その点は大きく変わりました。
また、最初は現場に足を運ぶことでどういう仕事しているかを見ようと思っていましたが、それは限界があるなと感じたので、業務内容を把握する時は、自分の得意としてきた数字で会社を見るようなスタイルに変えました。
あとは、守備範囲がとても広くなりました。社長就任前は管理部門しか見ておらず、営業や開発の人とは接点がなかったので、間接部門から社長になっても営業部門の人からは「あの人は誰だ?」という印象を持たれていました。ですので、何かしら話をしても「新しい社長が何か言ってるよ」という印象しか持ってもらえず、会社全体をまとめることができないなと感じました。そこで会社を1つにまとめるためにはどうしようかと考え、一部上場を会社全体の目標に掲げ、会社をまとめようと考えました。
経理時代の経験で活きていることは、現場に足を運ばずとも毎月の財務報告を見て、なぜこの数字になったのかを質問するだけで会社全体を把握できるようになったことです。また、会計数値を毎月チェックすることで何か不正を働いたらバレてしまうというイメージを植え付けることができるという点でも経験は活かせているかなと感じています。
――経理部門では与えられた仕事しかしないという人が一定数いるかと思うのですが、森さんのように与えられた仕事以外で会社にとってプラスの価値を生むために大事にした方が良い意識などはありますか?
経理だったら経理業務だけで1日が終わり、それが繰り返しになっていたので私は外部の研修や講座を受けていろいろな人と交流すべきだなと考えています。研修で出会った人と名刺交換をする中で「こういう考え方があるのか」や「こういう処理の仕方もあるのか」といった気づきを得る機会が増えていったのが、かなりプラスに働きました。その研修で様々な気づきを得たことによって会社を大局的に見えるようになりました。
――会社全体を良くしようというアンテナがあった上で、社外の人と交流し、様々な気づきを得て会社に持ち帰ることが重要なのですね。
――森さんの今後の展望について教えてください。
私も仕事人生の終盤に向かっているので、次の社長や役員をどうするかは今後、この会社が存続していけるかどうかの決め手になると思うのできちんと決めたいと思っています。世の中の会社を見ると、大手の会社でも後継ぎに苦労している会社がたくさんあるように見受けられますが、せっかく任命したのにそれを辞めさせることや、会長になった後に、また社長に返り咲くのはカッコ悪いなと思っています。
そうならないためには、信頼できる人、自分以上に頑張ってくれる人を後継者に据えることは1つ大きな仕事だと思っているので、やり遂げなければならないことだと考えています。
――森さんが社長に就任した際に、創業者の方がしっかりとバトンタッチをしてくれたように、今度は自分が次の世代の方のためにきちんと用意をしていきたいというところでしょうか。
そうですね。今、考えてみるとよく経理出身の人材を社長に任命したなと思います。ある意味すごい決断ですし、 なかなかそれってできる話じゃないと思います。あの決断ができたということは柔軟に世の中を見ることができている証拠だと思います。
経理などのバックオフィスはどうしても会社の売り上げに直接貢献できないので、経営者に煙たがられる存在の部署です。そのような風潮の中でも、本当に会社のためになることであれば、その風潮に屈せず伝えるという姿勢は重要だと思っています。
私もそうだったのですが、会社のためになることを伝えたのに「会社を辞めろ」と言われたら辞める覚悟は常に持っていました。
――苦言や本当は見たくない事実などを創業者の方に報告するということは、なかなかやりづらい仕事だとは思います。ただ、辞めろと言われたら辞めてやるみたいな覚悟を持って発言することで、森さんの会社に対する思いが伝わり、社長との信頼関係ができていったのですね。とても素敵な話だと思いました。
04. 森啓一さんからのメッセージ
――会計の勉強をされている方や若手会計人材の方に向けてメッセージをお願いします。
今、会計の勉強を面白いと感じて、会計士になりたい、これから勉強をしようという人たちは良い選択をしたのではないかなと思っています。
社会に出てみると、会計人材というのは非常に重要な人材ということがわかりますし、数字というものは世界中どこに行っても変わりません。その点で会計はグローバルで活躍できる下地が得られる分野だと思います。ただ、それだけではダメで、そこからさらにステップアップして、自分の付加価値として何をつけていくかということが重要です。ですので、会計という分野を選んでキャリアを歩んでいく中で、常に自分はその社会のためにどんな風に役立つのかなという視点が大事だと思います。もっと言えば、その会社のため、そして日本のため、世界のためにどのようなことができるのかという視点を常に忘れずに、チャレンジしていければ、楽しい社会人生活を送れるのではないかなと思っています。
――インタビューは以上となります。素敵なお話ありがとうございました!
インタビューの様子は下記よりご覧いただけます。
この記事を書いた人
「人と繋がり、可能性を広げる場」CPASSを運営するスタッフ達です。CPASSメンバーは、20~40代まで幅広い年齢層の公認会計士達を中心に、キャリア支援のプロフェッショナルなど様々なバックグランドを持つメンバー達で構成されています。「絶対に会計人達の役に立つ情報発信する」、「CPASSにしか出せない価値を提供する」をミッションとして集まった熱いメンバー達です。CPASS独自の視点からの見解を是非、楽しんでください。
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