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公開日:2023/10/05

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【世界一周会計士】日本の裏側、南米ブラジルの大手日系金融機関にて大活躍する会計士の方にインタビュー!Vol.11

世界一周会計士の記事

こんにちは!世界一周会計士の古作祐真です。

第11弾は、日本の裏側ブラジル、南米最大の都市サンパウロにて大手日系金融機関に勤められている山下さん(仮名)です。山下さんは会計士試験合格後、監査法人ではなく大手日系金融機関に就職し、大手メーカーに出向後、ブラジルに赴任されています。

なぜ山下さんは、監査法人ではなく金融機関を選んだのか、そして会計士の資格がどのように金融機関で活きているのか。このインタビューでは、そんな気になる山下さんのキャリア転換のきっかけについて深堀してきました!

    プロフィール

    2011年:公認会計士試験合格

    2013年:大手日系金融機関

    2019年:大手日系メーカー出向

    帰任後、大手日系金融機関ブラジル子会社へ異動

    ――山下さん(仮名)の簡単な自己紹介をお願いいたします。

    愛媛出身で、関西の大学に進学しました。3回生の2011年に論文式試験に合格し、2013年から大手日系金融機関に勤め始めて現在に至ります。

    最初は京都で法人営業を務め、3年目から経理配属になり、連結決算の対応をしていました。その後、日系メーカーに3年出向し、1年前にブラジルへ赴任しました。現在は経理ではなく経営企画を務めています。

    簿記は「親しみやすい科目」

    ――山下さんが公認会計士を志したきっかけを教えてください。

    後ろ向きな理由でも良いですか(笑)。実は第一志望であった大学に落ちたのがきっかけでした。

    当時は就職氷河期だったため、就職が厳しいと考えており、経済学部でたまたま受講していた簿記講座の延長で会計士を目指しました。大学1回生の後半から始めて3回生で合格することができました。

    資格であれば正直何でも良かったのですが、公認会計士の勉強を続けられたのは、僕にとって簿記が楽しかったからだと思います。

    どういうことかというと、簿記がとんでもなく「親しみやすい学問」だと感じたからです。

    例えば、鉛筆を100円で買ってきて、120円で売って、20円の利益を出したという概念は小学生でも分かりますよね。会計学は、利益をみんなが同じように計算するためにルール化しただけで、感覚的に理解できることを学問に落とし込んだだけだと思います。メルカリのようなフリマアプリでも簡単に利益や原価の概念を直観的に理解できますよね。

    ――おっしゃる通りですね…!「簿記は親しみやすい」というのは、言われてハッとしました。

    簿記は社会に出たら必ず使いますよね。ですので、義務教育で学ぶべき教科にしても良いと思っています。小学生でも1,000円のお小遣いからどのように最大の効用を得るかを考える訳ですからね。

    会計学も本質的には難しいものではなくて、100円で仕入れた鉛筆を120円で売るときに、20円の手数料を総額表示にするのか純額表示にするのか等、細かいルールを決めただけで、この概念は誰でも理解できるはずです。

    他方、法律は一般人にとって凄く遠いところにあると感じます。税法や会社法は専門的過ぎて分からないですよね。法律はその時代に合うように偉い方々が議論して普遍的と思われることをルールとして制定していますが、会計は誰が見ても「そうだ!」と思ったことをルール化しています。親しみやすさから会計学が面白いと感じ、結果勉強を続けられたのだと思います。

    ――非常に興味深い視点ですね。私も会計学の魅力を伝えるときは、このフレーズを是非使わせてください(笑)。

     

    金融業界では「人間力」を身に付けられる

    ――山下さんは監査法人には行かずに、新卒で大手金融機関に就職されていますが、金融のどこに興味を持ったのでしょうか。

    一言で言えば「人間力」を付けるためです。

    ビジネスは大きく分けると「モノを作る」か「作らないか」の二つに分類されると思います。モノを作るのがメーカー、作らないのがサービス業ですね。そのうち、金融業がどのようにしてお金を稼ぐかというと、目に見えない金融サービスを販売することになります。そしてそれは、誰が売っても本質的には価値が一緒なはずです。

    金融の世界では、「この人だから買う」、「あなたが信頼できるから買う」、「この会社だから買う」、といったように買う人と売る人の関係性によって価値が変化し得ます。自分の力が高ければ高いほど、商品が売れるという環境に身を置けば、自分がめちゃくちゃ成長できるのではないかと考えました。

    例えばお金を借りるという行為も、100万円を借りて金利が2%であれば、誰から借りても同じコストで同じ効用を得られるはずです。「この人から借りたい」と思われるには、人間力や信頼感がないと成り立ちませんよね。

    一方で、仮に自動車業界であれば、例えばテスラの最新車が魅力的であれば営業しなくても売れる可能性もありますよね。金融では商品による差別化がかなり難しいです。

    冒頭でも言いましたが、自分自身の市場価値を上げられるように金融を受けました。

    ――なるほど。入社後は最初から経理配属だと思っていたのですが、営業に入られたのですね。

    私の会社ではどんな新人でも、まずは営業部署に配属される方針でした。まず、「金融とはなんぞや」を知るために営業を担当します。『ドラマ半沢直樹』に似たような仕事です(笑)。

    金融機関の経理は「かなり重要視」される

    ――3年目からの経理部では、いきなり連結チームに配属されたと伺いましたが、難易度が高かったのではないでしょうか。

    そんなことはありませんでしたよ。

    連結会計システムが自動で会計処理してくれますからね。基本、我々は出力されてきたものが変ではないかをチェックするだけです。もちろん会計期間中に合併とか組織再編があると複雑で大変ですが、慣れてしまえば通常業務で難しいことは特にありませんでした。

    経理部には会計士の方も沢山いたため、会計士だからと言って色眼鏡をかけられることはなく、仕事がやりやすかったです。ただ、配属されるまで会計を深く勉強していない人よりは知っていることが多いため、仕事を多く振られますけど(笑)。

    金融だと、例えば複雑なデリバティブ商品を作ろうとしたときに、いつも「この金融商品の会計処理は何?」から議論が始まります。金融業界では会計を知っていることが非常に優位なのです。

    ――仰る通りです。私も監査法人でデリバティブを担当していましたが、会計処理次第でそもそも意思決定が変わったりするのを見たりしました。

    そうです。その点、経理は金融業界の中だと「かなり重要視」されます。少なくとも私の会社ではそうでした。

    特にデリバティブの会計処理は難しく、会計処理の可否で意思決定が決まります。「経理の○○さんに聞けば、何でもわかる」という状況になるため、経理が重宝されているのかと思います。

    一方で、私が出向していたメーカーは現場主義で、工場にいる職人の方々がパワーを持っているように感じました。そのため、出向した時に経理マンとしての立場や他部署の対応が全然違うことに驚いたのを覚えています。業界によって会計の優先順位が違うのだと学びましたね。

    メーカーでは、職人たちの情熱が製品にとんでもなく注がれているのを目の当たりにしました。「この部品を1グラム軽くできないか」ということを日中日夜、真剣に考えているのです。メーカーなので、当然といえば当然ですが、モノがなければ何も始まりませんので、その世界では理系寄りの仕事の優先度が相対的に高く、営業や経理の仕事は現場ありきで成り立っているように感じました。

    ――業界によって経理の立ち位置が違うのは、目から鱗でした。金融業界の会計は難しいですが、こう聞くと学ぶ意義がありますね。

    ――金融機関でお仕事をしている中で、会計士という資格は役に立ったでしょうか。またデメリットはありませんでしたか。

    メリットとしては、人より会計知識に関する飲み込みが早い点でしょうか。勉強しているので当たり前ですけどね(笑)。

    某有名大卒のスーパー出来る人も中にはいますが、大学で遊んでいた人よりは当然アドバンテージになります。金融業界では「常に正しくあるべき」というマインドで仕事をしますが、そのような思考回路は簿記や会計学を学ぶ中で体感してきたと思いますので、そういう点で業務になじみやすいのはメリットですね。

    上司からしても他の同期と比べて、基礎知識がある方に仕事を任せやすいと思いますので、若いうちから経験も多く積めます。学生時代に勉強したというアドバンテージは、社会人で中々埋めることはできないなと実感しました。

    一方で、「会計士」という色が付くので、経理以外のやりたいことが中々できなくなるデメリットがあります。人事部からしたら、人事シートに「会計士」と書いてあったら、経理しかないと思いますよね。

    「経理をやりたくないから監査法人に行っていない」と話しても中々その意図を汲み取ってくれません。学生から会計を勉強しているのはレアですので、本当にやりたいことがある人にとってはマイナスですね。ただ、今は縁もあって経理ではなく、経営企画で働くことができています。

    ――ちなみに入社して10年経ったかと思いますが、転職を考えたことはありませんでしたか。

    出向先のメーカーで1回考えました。正直、経理で一生食っていけると思いましたね。嫌になったらすぐに辞めようと思うことができたため、気持ちは非常に楽でした。メーカーは良い意味でも悪い意味でも経理が最優先される業務ではありませんでした。

    豊富な会計の知識があれば、かなり勝負できると思いますので、引く手あまたじゃないかと思います。ただ、もちろん経験を積まないと仕事を貰うことができないため、こうして日々経験を積んでいます。

    外に出てみると、会計に詳しいことはすごく強い武器になる、ということを実感します。監査法人は絶対に自分より会計に詳しい人が居るから、麻痺しちゃいますよね(笑)。

    ――凄く共感できます。私も監査法人に2年3か月しか居ませんでしたが、独立してみて、仕事はいくらでもあるな、と感じました。

     

    海外で大事なのは「ストレス耐性」

    ――話は変わりますが、ブラジル駐在のきっかけを教えてください。

    メーカーの出向から帰ってきたタイミングで、今後の進路を選ぶ機会がありました。

    その際は第3希望まで出すことができたため、第1希望は営業、第2希望はITと書きました。出向先ではIT化が思っていた何倍も進んでいて、今後この知識が必須だと思ったからです。

    そして、人生で1回は経験として海外で働いてみたいと思い、第3希望に「海外」と書いたら海外配属になりました。それがきっかけです。

    「海外での収益はどんどん大きくなっており、ますます重要になっていくので、経験を積んでください」と人事の方から辞令を受け、二つ返事で海外に行くことを決めました。希望は出したものの、国は選べず、人事からブラジルに行くように言われました。

    ちなみに「なぜブラジルなんですか?」と人事の方に聞いたら、「山下さんはストレス耐性がある」と人事評価シートに記載してあったからだそうです(笑)。社会人やっていく上で大事な要素ですよ。

    ――ブラジルと日本では、仕事の内容は違うのでしょうか。

    基本同じです。日本の業務を英語で行うだけで、本質は一緒です。ちなみにクライアントは日系外資、両方います。

    TOEICは800点も無い状態で海外に来ましたが、意外と何とかなっています。正直、気合いがあれば行けますよ(笑)。

    ”英語が分かるかどうか”よりも、”分からないときに「すみません、教えてください」と言える人”が海外に向いていると思います。海外でやっていけるかどうかは、英語ではなく、ストレス耐性です。ビビらず「分からない」と言えるかだと思います。

    そして、海外では日本よりも明らかに分からないことだらけになるため、聞かないと仕事が進まないし、シンプルに終わりません(笑)。仕事が進んでいないと、当然上司から問い詰められます。変に「こんなこと聞いても大丈夫かな」と心配していてはダメです。

    結果、聞けなくてメンタルがえぐられる、みたいな人にとって海外は辛い環境かもしれませんね。海外だとよりストレス耐性が求められると思います。

    ――監査の会計論点は次年度に持ち越すみたいなことが時折ありますが、経理は結論を必ず出さなければいけないですからね。

    ――それにしても、南米というあまり土地勘もないような場所にもかかわらず、よく赴任へ踏み切りましたね。

    多分ですが、これも就活時代に「自己分析」をして、自分のことをよく知っていたからこそ、駐在という意思決定も早くできたのかな、と思います。

    自己分析の重要性と監査法人での就活

    ――なるほど、一般就活だと「自己分析」は当たり前のように行いますよね。就活の話に戻りますが、監査法人の就活と一般就活では何が異なりましたか。

    「3年生合格=希少価値」があると思っていたため、あまり準備せずに監査法人の就活に臨みました。論文の合格発表から数日で始まりますし、偉いパートナーと会って楽しく会話をしたと思っていたら、いつの間にかどこの内定も得られず、何も分からないまま就活が過ぎ去ってしまいました。

    一方で、一般就活では自己分析がめちゃくちゃ大事です。内定を得られるかどうかは、自己をどれだけ深いところまで分析できたかに左右されるのではないでしょうか。

    ――今の会計士業界は売り手市場で、自己分析を全くしない人も受かる状況です。自分が大切にしたいものが何か分からないまま入る人も多いですが、自己分析をしていない状況で進路を決めるのは危険ですよね。

    自己分析なくして進路を決めるのは非常に危険です。当然ですが、進路なんて社会に出たら誰も教えてくれませんからね。

    1年目で当時リクルーターをしていた時に「4年間過ごすだけの大学のために高校1年から3年間みっちり勉強して準備をするのに、今後40年の進路を決めるのに、2か月位しか準備しないのはおかしい。同じくらい準備したほうがいい。」とよく就活生に話していました。

    当時は「幼稚園生から大学生まで、どのような人間だったか?」ということをひたすら自己分析で深堀りしました。

    今の会計士受験生は、何も自己分析せずに決めていると聞きますが、それが離職率の高さにも繋がっているのでは、とも思います。

    ――会計士を取るのに一般的に2、3年かかりますけど、監査法人の就活は2週間で終わってしまうのは、おかしい話ですよね。ただ、就活生もハズレを選びたくなく、王道を行けば間違いないという思考があるのだと思います。

    当時は就職氷河期でしたので、監査法人に受かるのは簡単ではなかったですね。

    ――そうだったのですね、今は若くして受かれば受かるほど、監査法人で採用されやすいのはご存じですか。大学3年生合格だと、かなり優遇されています。

    え、そうなんですか!?優遇されているのは全く知りませんでした。

    2011年当時、同じタイミングで内定した3回生は関西全体でも4人のみで、3回生で順位が100位台まででないと内定を貰えないみたいな印象でした。

    監査法人も即戦力が欲しくて、「来年受けに来てね」という回答でした。ただ、4回生でも監査法人を東西合わせて6つ受けても、1つ受かるかどうかという状況でしたね。

    ――実際に監査法人の就活に落ちてしまった後、どう動いたのでしょうか。

    当時は、来年また監査法人を受ければいいし、社会勉強のためにと思い、一般就活を始めたところ、一般企業の方が圧倒的に面白そうだと感じたため、4回生のタイミングで金融業界に就職を決めました。

    勿論ですが、会計士資格は一般就活で大きな強みになります。ですが、これも人間のさがなのか、「学生時代に会計士を頑張りました」とESに書くと、それ以外を聞かれることが多いんですよ。

    「会計士試験合格者」、「頑張ったことは会計士受験」とESに書いてあると人事も「もう分かったよ」と思うのでしょうね(笑)。

    会計士以外のことを聞かれるため、ネタを作るのが大変でした。

    ただ、書類審査はほぼ通ります。会計士という一芸があることは非常に強いです。その後は面接次第でしょうか。面接中はいじわるされますけどね(笑)。

    ブラジル人は実は「繊細」⁉

     ――話を戻しますが、ブラジルの方と一緒に働いてみて、カルチャーショックを感じたことはありますか。

    “悪意なく、できるできると言ってしまう”点でしょうか。

    例えば、とあるタスクをお願いして、「進捗は問題ない」と返答があったにもかかわらず、次の日によくよく聞いてみると、実は全然進んでいなかった、みたいなシーンが多いです。ですが、これが不思議で本人は至って真面目にやっているんです。

    ――ワザとじゃないのが信じられないですね(笑)。

    期日に間に合わせるためにやっているのではなく、自分ができることから、積み上げ方式で仕事をしているのが要因です。”ケセラセラ”(ポルトガル語で「なんとかなるさ」)というマインドを持っているため、彼らからしたらいつの間にか期日当日になっている、というイメージでしょうか。逆算思考では無く、積み上げ思考のため期日管理という発想が緩いのかもしれません。

    規律が厳しそうな金融業界でも、「間に合わなかったのは仕方ない。私はやれる範囲でちゃんとやったから。」という思考の方が多いのです。

    あとは、サッカーの重要度が想像よりも高いです。ブラジルならではですね(笑)。ワールドカップ中は、ブラジル代表の試合がある日を休日にする会社が多いです。試合の日に会社に来ていたのは、日本人だけということもありました(笑)。

    あとはブラジルの方はランチを2時間くらいとる時もありますし、基本的に定時で帰ります。まぁこれは日本以外では普通なんじゃないかなと思いますが。

    ――そう聞くとストレス耐性は必要そうですね(笑)。

    ただ、人事評価はフェアにされていて、期日に間に合わない人は評価されていません。勿論期日にしっかり間に合わせる、デキるブラジルの方もいますよ。

    積み上げ方式で仕事をする方への対策としては、実際に進めた成果物を見せてもらうことを心掛けています。何を根拠に「できた」と言っているのかを確認しに行っています。日本と同じ対策ですが、より明確にやっています。

    また、海外の方にライフを削って仕事をするという感覚は当然無いため、アウトプットを出して欲しいのであれば、依頼する側がうまくコントロールする必要があります。仕事はやるし、サボるわけではないけれど、いつ完成するか分からないですからね。

    ――やはりブラジルの方はイメージ通り、陽気でおちゃらけた性格なのでしょうか。

    いえ、意外にも国民性は真面目です。ワクチン接種率もほぼ100%ですし、コロナ期間中はほぼ皆がマスクをしていました。

    あと、これが一番大事なのですが、ブラジルの方々は非常に繊細です。正面から否定してはいけません。何かを注意するときも、まず「いつもありがとう」から始めます。

    怒ったつもりでなくても、シュンとしてしまうことがあります。「やってくれてありがとう。でもこの手続きはこうしたほうが良いから、次回からこうしよう」と優しく注意したつもりでもダメです。めちゃくちゃ繊細なんですよ(笑)。正論だけを言うのはもってのほかです。

    そして「ブラジルの方と仲良くリレーションを組もうと努力したか?」も大事です。メールは見ても返してくれないことがあるのですが、仲間意識を作ると段々と返してくれるようになります。

    彼らは”アミーゴ(友人)”関係を重視していて、電子的な関係だけでは動いてくれません。そのため、メールはあくまで備忘録程度の認識で、メールしてから会ってしっかりとお願いすることを心掛けています。ブラジル人は優しいので、困っていたら助けてくれます。ちなみに、ブラジル人に嫌われたら終わりです。

    ――意外でした。ラテンアメリカの方は能天気で何でも大丈夫なイメージでした。

    ブラジルはうつ病患者が多いことでも有名です。些細なことで訴訟に発展することもあります。

    ポルノグラフィティの曲名でも有名な“サウダージ”(意味:憧憬、切なさ)という言葉は、ポルトガル語から来ています。昔を思う切ない気持ちは、実はブラジルでは多く使われています。間違いなく陽気ではありますが、その反面、繊細さも兼ね備えています。

    ――「ブラジル=陽気」はとてもステレオタイプな考え方でしたね…。大変勉強になりました。

    ――ブラジルに来る前と来た後でギャップを感じた点はありますか。

    来る前は東南アジアのようなイメージかなと思っていましたが、普通に先進国だと思えるほどに街が発展していて驚きました。

    あと、治安は想像通り危ないです。とある日本人駐在員の方が、会社のビルからタクシーに乗るまでのたった2メートルの間で、若者達に囲まれ所持品を盗まれたケースもあります。ブラジルの方は基本的に凄く優しいのですが、悪さをしてしまう人がいるのも事実です。ブラジル滞在の際には気を付けてくださいね。

    (写真:上空から見たサンパウロの街並み)

    今後の夢は「カフェ経営」

    ――山下さんの今後の展望を教えてください。

    今まで本当に沢山働いてきたので…将来は地元の愛媛でカフェを開きたいと考えています。

    ――おお、カフェですか?一体どういうことでしょうか。

    実はメーカーに出向期間中に、救急車に運ばれたことがあります。企画部で価格決定や商品決定等の重要な意思決定を、社長も含めて行っていたため、気づかぬうちにストレスを抱えていたのだと思います。その一件から、健康第一で物事を考えるようになりました。一生懸命働いても健康が損なわれたらダメですからね。

    会社に入った時は「俺は偉くなってやるんだ!」と思っていましたが、幸せについて自分に問いただすと、健康を損ねてまで、やり遂げるべきことではないと思うようになりました。

    だからこそ、将来は副業で会計の仕事をしながら、カフェを開こうと思っています。そしてブラジルからコーヒー豆を輸入します。カレーが好きなこともあり、海の見える場所にカフェを建てて、カレーとコーヒーが評判のカフェにしたいです(笑)。

     ただ、これは会計士だからこそ自由にできる特権だと思っています。金融業界での業務やメーカーへ出向した経験から、世の中には絶対に仕事があるという実感がありますし、今頑張れば、将来何でも好きなことができると確信しています。何不自由なく仕事ができるようになるには、辛い経験は買ってでもした方が良いのではないでしょうか。

    ――今仕事が辛いと感じている会計士は勇気を貰えますね。

     

    ――海外に興味がある若手会計士に一言お願いします。

    “ケセラセラ(大丈夫)”の精神を持ちましょう。海外では実のところ、言葉以外の仕事内容はほぼ日本と一緒ですし、思っていたよりも何とかなります。

    迷っているならやりましょう。今あなたが想像している辛いことはほぼ起きません。

    そして、別の壁に必ずぶち当たることで忘れます。そしてその壁は、日本でぶち当たる壁と同じです。行けるチャンスがあるなら何も悩まずに行けばいいと思いますし、悩んでいる暇があるなら英語を勉強しましょう。

    そして、海外に行きたくない人も、是非海外に行ってほしいです。海外に活動の場を移すことは、大きなストレスがかかりますが、変化を常に求めてほしいのです。

    変化を拒むとその水槽の中でしか生きられなくなります。人間は他の水槽に移らないと大きくなれませんし、人間の進化論的にも、変化は受け入れなければいけません。

    会計士の勉強を始めた理由を本音で論理立てて話せる人なんてほぼいません。少なからずは、皆さん勢いでやっていると思います。

    海外に行く理由を探している人は、当時の気持ちを思い出してみてください。

    ”Just do it!”

    最後に

    いかがだったでしょうか。

    このインタビューで私が気づいたことは3つです。一つ目は「金融機関での経理の重要さ」、「自己分析の必要性」、そして「ストレス耐性の重要性」です。

    まず、金融機関の経理がいかに重要かということは、個人的に驚きでした。複雑な金融商品は経理があって初めて成り立つ、そして金融という専門性が地位を高めている、この視点はキャリアを決める上で非常に重要ではないでしょうか。

    また、山下さんはメーカーに出向し、経理の立ち位置が業界によって全く違う点にも言及されていました。会計が全く必要ではない会社はこの世には無いですが、業界によっては「会計」に対する見方に濃淡があるようです。

    会計が重宝されている業界に身を置くということは、実は大事な生存戦略で、「どの業界が経理や会計を大事にしているか?」という視点でキャリアを決めるのも、一つ大事な観点ではないでしょうか。

    自己分析の重要性については、一般就活をした方は言わずもがなですが、特にこの会計士業界では軽視されていると思います。今後論文式試験を控えている方は、是非試験が終わったら自分の人生を振り返ってみてください。

    監査法人の就活はわずか2週間で終わってしまいます。そして、現在会計士として働かれている方も、時間を見つけて自己分析を進めてみましょう。

    そして、「ストレス耐性」と山下さんは仰っていましたが、私は、単純に理不尽なことに耐えられる力ではなく、自分の非力さを認め、素直に相手のアドバイスを受け入れられる「柔軟性」だと解釈しました。

    成長マインドセットとも呼ばれていますが、海外ではプライドを捨ててチャレンジすべきだ、と改めて実感しました。世界一周はプライドを捨てられる、特に良いチャンスですよ(笑)。

    それでは、第12弾もお楽しみに!

    (写真:リオデジャネイロ セラソンの階段にて)


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    この記事を書いた人

    古作 佑真(こさく ゆうま) 

    山田 智博(やまだ ともひろ) 

    両者ともに、大学在学中に公認会計士論文式試験に合格後、KPMGあずさ監査法人グローバル事業部へ入社し、大手総合商社を主軸としてIFRS監査に従事。法人内の採用プロジェクトにも関与。

    古作は、同法人にて5年間、監査業務に従事し、各種主査を経験。また、DX部署にて監査SaaSツール開発や次世代監査(ドローン監査等)の業務にも従事。

    山田は、2年3ヶ月の同法人勤務後、2021年7月に独立。CPASSでのキャリア支援業務の他、フリーランスとして上場支援・キャピタリスト・リクルートコンサルなど複数社に従事。2022年7月には、会計コンサル会社を共同創業。

    会計は世界共通のビジネス言語。この言葉を証明するため、グローバルで活躍する会計士の情報や、自身の会計の知見を活かした各国でのコラムを執筆して参ります。

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