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公開日:2021/07/14

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アートやカルチャーを専門領域とする会計事務所代表 山内真理のキャリア!

今回の記事は、アートやカルチャーを専門に会計サービスを提供する山内真理さんです。芸術に興味のある公認会計士の方はもちろん、現在勉強中の方にも、とても興味のある内容だと思いますので、是非参考にしてもらえればと思います。

    山内真理さんのプロフィール

    1980年千葉県生まれ。一橋大学経済学部卒。

    公認会計士山内真理事務所/株式会社THNKアドバイザリー代表。公認会計士・税理士。

    有限責任監査法人トーマツにて法定監査やIPO支援等に従事した後、2011年にアートやカルチャーを専門領域とする会計事務所を設立し、現在に至る。

    豊かな文化の醸成と経済活動は裏表一体、不可分なものと考え、会計・税務・財務等の専門性を生かした経営支援を通じ、文化・芸術や創造的活動を下支えするとともに、文化経営の担い手と並走するペースメーカー兼アクセラレータとなることを目指す。また、これら担い手との協働を通じ彼らの提案力を会計面からサポートし、産業とクリエイティブの融合の触媒になりたいと考えている。

    知財領域の法律専門家等を中心に法律的側面から文化・芸術支援の非営利活動を展開するArts and Lawの理事、認定NPO法人東京フィルメックスの理事、東京芸術祭監事ほか。

    共著共著「クリエイターの渡世術」、原案・監修「漫画家と税金~確定申告やってみた」一部監修「イラストレーターの仕事がわかる本」他。

     山内真理さんの略歴

    2006年:有限責任監査法人トーマツに入社
    2011年:同社を退職、アートやカルチャーを専門領域とする公認会計士山内真理事務所を設立、代表に就任
    2014年:法律家NPO Arts and Lawの代表理事(共同代表)に就任
    2018年:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会の理事に就任
    2019年:株式会社THNKアドバイザリーを設立し、代表に就任
    2020年:東京芸術祭 監事に就任

    01. キャリアの変遷、展望

    ――会計士を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

    大学では経済学部に所属していたので、数字は身近な存在でした。数字を使った専門的職業として公認会計士という資格を知った時から、「この資格があったらいいな」と漠然と考えておりました。

    当時ブランディングに興味を持っており、その分野をテーマとしたゼミに所属し、ブランディングを高めるためのコミュニケーション方法、組織文化からブランディングの価値創造の変遷、というテーマで取り組んでおりました。ゼミにはゼロから物事を作れる素晴らしい方たちがたくさん集まっていましたが、一方で企画が得意な人は、数字などの定量的なものに対して苦手意識を持っているが多くありました。このときに、「クリエイティブな領域を数字でサポートするのに会計士資格が活きるのでは?」と直感的に感じたのが、会計士を志したきっかけです。

    ――監査法人ではどのように過ごされていたのでしょうか?

    監査法人トーマツで4年程勤めておりました。TS(トータルサービス)という部署で中小向けの法定監査とIPO支援を主にやっておりました。独立志向の方が多い監査法人・部署で、監査以外にも色々なものに触れたいと思い入社しました。一方で、当時は監査が忙しい時代で、法定監査の稼働率が非常に高く、経営の中身を見ることができること自体には意義はありましたが、クリエイティブ支援や文化芸術に直接活きるものがなく、方向性が合わないと徐々に感じておりました。

    その中で、業務以外で携わっていた、文化支援をしている弁護士の仲間たちと会っていく中で、「自分の専門分野でもできるアプローチがある」と感じ、独立はなるべく早い方がいいと考えました。その後直ぐに行動に移し、2010年12月に辞め、次の4月には独立しました。

    著者の一言

    山内さんの場合、業務以外での活動(文化支援)が独立のきっかけとなっています。このように監査法人以外での活動は、自分のキャリアを見直す良い転機にもなります。監査法人での仕事ももちろん大事ですが、自分の興味のある分野に積極的に取り組むことも、長期的な視点で大事だと思います。

    ――創業されて10年経ちますが、上手くいったこと、苦労したことは何でしょうか?

    創業当初は色んなお客様を対応しており、例えばボランティアとビジネスの間くらいの境界線で働く方の支援や、ビジネスを軌道に乗せることがなかなかできない方へのコンサル等をしましたが、そうした領域におけるナレッジが十分でない中で大変苦労した記憶があります。そのような方々の“駆け込み寺”的な存在として、ニーズを汲み取りながらビジネス化する領域を増やしていくサービスを行っていました。

    また、“美術””カルチャー””クリエイティブ“と一言いっても三者三様で、多様性のあるプレイヤーと関わることで、10年かけて業界の全体像を知ることができました。ようやく事務所として黎明期を抜けたと思っていて、前に進んでいる手応えができてきました。「この領域なら山内の事務所」という一定の認知が醸成され始めたおかげで、例えば作品や知財が絡む相談や継承、そうした領域のマネジメント全般について、遠方の方含め当事務所を探し当ててくれる人が増えたのが大きいです。

    ――山内さんの事務所のユニークな部分は何でしょうか?

    主に2つあると考えています。

    1点目は、他の事務所にはない付加価値を提供できる点です。例えば、国を越えて複数拠点で活動するボーダーレスな小さなプロダクションや個人のアーティストが増えてきており、グローバル企業だけでなくても海外拠点が複数必要になるケースが頻出しております。そのため、国際税務などの国際展開支援もサービスの一環として提供しております。

    また、地方でもたくさん会計事務所はありますが、税金以外にも、知的財産はじめ固有の文化や人々の創造や表現に関わるものを社会にいかに残していくか、という地域文化振興の視点が必要ですが、文化の特殊性を専門としている会計事務所がないのが実情です。そこで私たちが知財の継承等、ニーズに応えたサービスを提供しております。

    2点目は、他領域の専門家やお客様と「協働」することです。“多角的問題解決”と呼んでおりますが、経営の課題解決は一方通行ではなく、双方向協働することで、更に大きな課題解決ができると考えております。クリエイティブの視点と会計事務所の課題解決の視点を組み合わせていく、お客様や外部の異業種専門家とOneチームを作っていく試みも、私たちのユニークなところでもあります。

    著者の一言

    山内さんは「自分の好きなもの×会計」で独立し、アートという分野の会計士として一目置かれる存在となっています。「自分の好きなものは何か」と一度自己対話してみることで、今後のキャリアのヒントが見えてくるかもしれません。

    ――今後はどのような事務所にしていきたいですか?

    会計が得意ではない芸術文化業界・クリエイティブ業界ですが、決して会計を理解する能力がないという訳ではなく、「会計の教育を受ける機会が少ない」というのが実情です。より文化的に面白くなっていくには、そのような方達がマネジメント力や経営力を兼ね備えることが必要と考えています。そのため、アートやクリエイティブという領域の中での専門プラットフォームを作りたいと構想しておりまして、会計専門職としての専門分野を活用した異業種の専門家との協働も考えています。例えば、弁護士といった士業だけでなく、デザイナーや建築士等、他の専門領域に精通する方々とコラボする等です。立ち位置の違う多様性があることで、社会インパクトを増やすことができるのではないか、と考えており、個人的にすごくやりがいのある点です。

    02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)

    (1)目指すところを見失わない

    「そもそも何を目指しているか」に立ち返ることが、チームメンバー含め大事だと考えています。私たちは「創造的活動を仕組み化し支援する、文化支援、産業とクリエイティブの融合」といったことをミッションとしていますが、会計処理などの数字上のアドバイスだけで視野が狭くなってしまうと、本質を見失ってしまいがちです。

    アートやカルチャーという領域は、売上高や利益だけでなく、創作の当事者として満足度の高い作品が届けられるか、という視点が加わってきます。作品を創作し続けるために、経済活動として持続可能性を保つというバランス感を得ることが必要不可欠です。その立ち回りを期待されていることを念頭に置いて、時々ミッションに立ち戻りながら業務することが大事だと考えています。

    (2)丁寧に温かみを持って寄り添う

    外から入ってきた方やクライアントの方からよく言われるのですが、「温かみを持って寄り添うこと」は大事にしています。クライアントとのコミュニケーションも当然大事にしていますが、丁寧に接することを常に意識していて、チーム内でも困った人がいたら積極的に助けたりと、温かみをもって寄り添うことをしています。このようなカルチャーは今後も大事にしていきたい点です。

    03. 会計士という資格を取って良かったこと

    専門性の明確化、ポジション取りができるようになった

    「会計」というポジションを見つけることができたのが一番大きいです。対外的にも説明可能な価値を発揮できる場所を見つけられたおかげで、「文化・芸術」という長期的な取り組みに携われるようになりました。

    大きい組織で価値を発揮する人もいますが、私は他の人が既にやっていることであれば他の人に任せて、自分の畑を切り開いていきたいと思っています。道なき道を切り開くことが好きですので、会計という軸で、長きにわたってモチベーションを保ちながら携わる自分の軸ができたと考えています。


    公認会計士山内真理事務所/株式会社THNKアドバイザリーのWEBサイトはこちらhttps://yamauchicpa.jp

    山内さんのTwitterアカウントはこちら https://twitter.com/Mary_tokyo

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