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公開日:2021/07/29

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マイクロファイナンスで世界を救う!若手グローバル会計士 佐竹亮のキャリア!

今回のロールモデルは、途上国向けの小規模金融、いわゆるマイクロファイナンスを事業としている会社でご活躍されている佐竹亮さんです。監査法人時代には4年目にしてロサンゼルス駐在を経験されております。グローバルに活躍したいと考えている公認会計士の方には、非常に興味深い内容になっておりますので、ぜひご覧ください。

    佐竹亮さんのプロフィール

    大学2年時に公認会計士試験に合格し、非常勤としてEY新日本監査法人に入社。大学在学中に、語学留学、EYフィリピンで金融アドバイザリー、国内会計事務所で経営アドバイザリーを経験。大学卒業後はEY新日本で3年間勤務後、EYロサンゼルス事務所で2年間駐在。IFRS、US-GAAP、J-GAAPでの監査をそれぞれ経験。

    2020年8月よりマイクロファイナンス(途上国向け小規模金融)を事業としている五常・アンド・カンパニーに転職。五常では、2030年までに1億人へ金融サービスを提供することを目指し、機会の平等を実現すべく活動している。学生時代のフィリピンでのインターンでマイクロファイナンスと出会い、五常への転職のきっかけとなった。

    佐竹亮さんの略歴

    2012年:大学2年次に公認会計士論文式試験に合格。
    2013年:ニュージーランドに語学留学、EYフィリピンにインターン、その後アジアを中心にバックパッカー生活を経験。
    2015年:EY新日本監査法人に入社。
    2018年:EY ロサンゼルスに駐在。
    2020年:帰国後、五常・アンド・カンパニーに入社。

    01. キャリアの変遷、展望

    ――大学1年次から勉強を始めて、最短となる1年間で合格されていますが、そもそも会計士になろうと思ったきっかけを教えてください。

    国見先生の熱い勧誘がきっかけです。

    学習を始める前までは公認会計士という単語すら聞いたことが無い状態でしたが、会計士講座の説明会に参加したことがきっかけで存在を知り、その資格に惹かれました。説明会に参加するだけでジュースを1本貰えるからとりあえず参加した、という高校生らしい考えでの参加でしたね(笑)。

    もともと、大学では何かに本気で取り組みたいと考えていたので、会計士を知る前までは体育会テニス部に入ろうとしていましたが、より将来に直結する公認会計士の資格に魅力を感じたため、目指すことを選択しました。

    ――合格後に語学の勉強をしようと考えたきっかけを教えてください。

    合格した年に監査法人と一般事業会社の双方で就活をして「合格した後の2年間、大学で何をするべきでしょうか」という質問をしたところ、返ってきた回答のほとんどが“遊び”か“英語”の2つでした。

    正直、英語には全く興味が湧きませんでしたが、あまりにも皆が勧めるので、一念発起しチャレンジすることを決意しました。最初に留学したのはニュージーランドで、半年間の語学留学でしたが、最初の3か月は相手が何を話しているのか分からず、友達もできなかったため、非常に苦労した記憶があります。最終的に、雑談くらいはできるようになり、様々な国籍の人と交流した経験によって、世界観が一気に広がりました。

    ――その後EYフィリピンにインターンしたきっかけを教えてください。

    半年間英語しかやっていなかったので、「このままだと社会人になった時に会計を忘れてしまっているのでは」という不安を抱えていた折に、インターンのチャンスが巡ってきたので、飛び込むことを決めました。

    日本にいるとマイノリティになるきっかけは特にないですよね。フィリピンでは周りに外国人しかおらず、日本語を理解できる人が誰もいないという環境で過ごしていたのですが、その経験はとても貴重であり、楽しかったです。また、フィリピンは移民国家なので、マレー系、中国系、スペイン系など違う文化を知ることができました。

    実は今の職となっているマイクロファイナンスにもそこで出会いました。当時、EYが作成していたインパクト測定のレポート(マイクロファイナンスサービスを受けることで子供に学校に行かせることができるようになった等、サービス需要者への生活の変化について)をたまたま読んだ際に「めちゃくちゃ面白いな」と感じたのが最初の出会いです。

    ――当時から「将来マイクロファイナンスをやりたい」というビジョンを持っていたのでしょうか。

    正直、全く持っていませんでした。寄付やボランティア、プロボノ等の貧困への支援を通じて、間接的に関与したいとは考えていましたが、本業でやろうとは一ミリも思っていませんでした。といか、そもそも日本にいながらそういった仕事をできるとは考えもしてませんでした。

    当時は“かものはしプロジェクト”というNPOに携わっており、インド・カンボジアで問題視されていた人身売買をテーマに活動をしておりました。実際に、カンボジアではその問題をかなり少数の件数まで減らすことに成功しました。当時は現地で解決するためのお金のサポートやお金を渡す仕組みづくり、活動成果のレポート等にも携わっていました。

    • 筆者の一言

    佐竹さんは監査法人勤務時代から、合間を縫って自分の興味のある分野の組織に属して積極的に活動しています。「監査法人が忙しいから」とチャレンジをやめるのではなく、実際に転職する前に、佐竹さんのようにボランティアで関わる等をすると、自分に適した職種であるかの“スモールテスト”を行えて、転職前に自分の適性を見極めることができるかもしれません。

    ――日本で勤務後の駐在生活について教えてください。

    2015年にEYに入社し、最初の3年間は日本で勤務し、その後2年間はアメリカに駐在していました。EYフィリピンインターンの経験も相まって、入社当時から絶対駐在に行きたいと考えていたので、1年目から希望を出していました。結果入社して4年目でロサンゼルスに行くことになり、駐在組の中でもより英語を使うローカルチームに配属され、実際に海外の方に囲まれて仕事をさせていただきました。

    ――海外で働いてみて、日本との環境の違いは感じましたか。

    同じEYにもかかわらず全く違う環境だったことに驚きました。

    まず、メンバーの成長速度が全く違いました。日本では大体4年で職位が上がっていきますが、アメリカでは2年という短いスパンで昇進していきます。しかし、各職位で求められるスキルは日本と同じなので、皆追い付くために必死に仕事をしていました。

    一番違うと感じた点は、責任の所在が明確なことです。日本ではチーム一体となって仕事をこなしていく風潮がありますが、アメリカでは各ランクの責任が明確で、割り当てられた仕事は基本的に一人でこなす必要がありました。なので、チームメンバーとの関係はもちろん良かったのですが、良い意味で“シビア”でした。

    また、監査先進国ということもあり、新しい監査手続の導入などのスピード感もアメリカが勝っていた印象です。

    • 著者の一言

    一口に監査法人と言っても、日本と海外で働く環境が様変わりするようですね。筆者の聞いた話では、5年でマネジャーに昇格できる(日本では基本10年)こともあるそうです。シビアな環境だからこそ成長できるという点で、海外でもグローバルファームは魅力的な就職先として選ばれ続けています。

    ――帰国後EYを出ることになると思いますが、そのきっかけを教えてください。

    一番は「監査を続けることで自分自身の市場価値が上がるのか?」という問いにYesと言える自信がなかったことです。品質管理を保つために文書化に時間を割き、監査法人として責任を問われないようにする、という点に疑問を感じていました。

    当時は最終的なキャリアの終着点をファンドやベンチャーとしていたため、もう一回プロフェッショナルファームでの業務を経験した方が良いと考えていました。どこに行こうか悩んでいる時に、偶然にも五常・アンド・カンパニーと出会いました。たまたま会計士を求人しており、学生の時の経験から自分の価値観とマッチし、入社を志望しました。

    ――佐竹さんの今後のビジョンを教えてください。

    少しでも現在の勤め先である五常・アンド・カンパニーの目標に貢献したいと考えています。五常・アンド・カンパニーはM&Aで自社を大きくしていくビジネスモデルで、IPOを目指しています。そのため、組織が大きくなった場合でも、組織がうまく回るように、現在は経営体制の構築に努めています。またM&Aのためには、お金の調達がライフラインとなりますので、ファイナンスの側面からも組織を構築しています。自分の経験としても初めて事業会社で働いているので、凄くエキサイトしています。

    たまたま会計士と出会い、たまたまフィリピンでマイクロファイナンスと出会い、経験が繋がっていくのが、スティーブ・ジョブズの“Connecting the dots”だな、と感じています。今はとにかく目の前のことを頑張って、将来のために“濃い点”を沢山増やしていきたいと考えています。

    02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)

    1 スピード

    相手方と合意した期限は必ず守ることを大事にしています。これは監査法人での働き方が活きていると感じますが、監査では、監査報告書という明確なDueを確実に達成するために調書の作成が必要です。しかし、いくらクオリティが高くても、Dueに間に合わなければ成果はゼロであることが明白です。調書を完成させるために、上司にレビューをしてもらったり、クライアントに資料を依頼したりと、自分が頑張るだけで全てを達成できるわけではないので、ボールを自分のところで抱えずに回し続ける、ということを常に意識していました

    2 相談する時に、自分の中で答えを出す

    仕事を進めていく上で、判断に迷う時が必ずありますよね。そういう時は重要な話である場合がほとんどなので、上司に意見を貰いに行くと思います。「自分はこう思うのですが、〇〇さん(上司)はどう思いますか?」と提案することが重要だと考えています。「分からないのですが、どうしましょう」ではなく、自分で考えた仮説を必ず持っていくこと。その積み重ねにより、仮説検証の思考が身に付けられますし、それ自体が昇格して部下を持った時の練習にもなります。

    3 すべて自分ごとのように捉える

    自分が直接的に関わっていなくても、すべて“何かしらの形で間接的に関わっている”と意識することです。

    例えば、組織の良くないところについて愚痴を言うことがあるかもしれません。しかし、そこで組織を作る一員として、いい結果も悪い結果も、常に自分が関わっていると感じることが大事です。「どういう改善ができるのか?」を考えて仕事をする、自責思考を常に意識しています

    03. 会計士という資格を取って良かったこと

    ――今までキャリアを歩んできて会計士になって良かったと感じることを教えてください。

    1 業界や業種に囚われない

    EY時代は主に製造業などの金融以外の業界を監査していた一方で、今はマイクロファイナンスという金融分野に従事しています。通常は前の経験を活かすことができない領域ですが、会計・数字というベースがあるので、どの業界でも前の経験を活かして働けるのが大きいと考えています。

    2 グローバルで活躍できる

    数字は世界共通言語なので、言葉は100%理解できなくても、数字である程度コミュニケーションが取れるところが利点です。例えば、同じ士業である弁護士ですと、言葉が大事なので、ローカルの人たちと闘うのは難しいですが、会計士は数字で語ることができるので、言葉や国境はあまり関係ない点が、グローバルに働ける一つの強みになっていると感じています。

    3 好きなことにチャレンジできる

    月並みですが、食いっぱぐれないという点も大きいです。業界の波を受けないので、「仮にこの業界がダメになったら、他の業界に移ればいい」という考え方もできます。ダメになった時のリスクが少ない分、リスクをとることもできます。会計士という資格を取れたからこそ思いっきり色々なことに挑戦できますね。


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