公開日:2021/06/04
会社に寄り添う敏腕会計士、大庭崇彦(株式会社テトラワークス代表取締役)のキャリア!
トーマツから独立後、たった4年でIPO支援にて4社の上場に貢献をした大庭さん。そのような偉業を成し遂げた大庭さんが一番大切にしているものとは…!?
そして、今年から新たなスタートを切った大庭さんの今後の展望等をざっくばらんにお話ししていただきました!
大庭崇彦さんのプロフィール
大庭 崇彦
公認会計士
株式会社テトラワークス代表取締役
南富士有限責任監査法人グループ理事⾧
公認会計士協会東京会IPO支援プロジェクト副委員⾧
AuB株式会社社外監査役
株式会社テクノスピーチ社外監査役
コロンビア・ワークス株式会社社外監査役
ユニファースト株式会社社外監査役
トーマツでは、主に主にIT企業の株式上場支援ならびにベンチャー企業のアドバイザリー業務に従事。その後、株式上場並びにベンチャー支援を目的としてコンサルティング会社を創業し、創業10年で約1,000社の支援を通じて累計50社の上場会社を輩出。
「クライアント企業の企業価値向上ならびに時価総額の向上にコミットする」ことをミッションとし、2021年2月株式会社テトラワークスを創業。
大庭崇彦さんの略歴
2006年:監査法人トーマツ入所、トータルサービス1部に所属。
2011年:大庭崇彦公認会計士事務所設立、株式会社Bridge創業。株式会社BridgeにてCOOとして、特にアジア各地に展開する人脈、ネットワークを利用したスタートアップ企業、中小企業の海外進出支援にて活躍。約10年間で1,000社の支援を通じて累計50社の上場会社を輩出。
2021年:株式会社テトラワークスを創業し、代表取締役に就任。地元静岡に南富士有限責任監査法人を設立し、理事長に就任。
主なトラックレコード:すかいらーく(3197)、ホットランド(3196)、インターワークス(6032)、ビーロット(3452)、U-NEXT(9418)、Gamewith(6552)、RPAホールディングス(6572)他
01. キャリアの変遷、展望
ーー大庭さんはどのようなきっかけで会計士を目指したのでしょうか?
元々は、プロのサッカー選手になりたいと思っていて、大学2年生までは本気で目指していました。ですが、大学2年生のとある試合がきっかけでプロサッカー選手を断念しました。
一緒にプロを目指していた同期が既にプロ契約をしていたので、自分も彼らに負けたくない、違う方面で“プロ”として見返してやりたいと考えていました。だからこそ、公認会計士という資格を取って、経済界の“プロ”になろうと決意を固めました。
ーー合格後はどのような業務に従事していたのですか?
主にIPO支援業務に従事していました。トーマツのトータルサービス部に所属していて、バリバリIPO支援業務に関わっていましたね。チームワークが良く、ハードワークも厭わない集団でして、そこから学べたものは非常に多かったです。
ーーなぜIPO支援業務を選んだのですか?
IPO支援業務に興味があったからです。
というのも、教師になりたいという気持ちをずっと持っていたことが関係していると思います。
自分のイメージしている教師像は、”出来が悪い子の面倒を見て、ぐれないようにしてあげる教師”だったんです。なので、教師になった時に一番大切なのは、優秀な子の面倒を見ることより、家庭環境とかに何か問題があったような子供達の面倒を見ることだと思っていました。
この価値観の対象を生徒から企業に置き換えると、IPO支援業務が合致しました。例えて言うなら、”非上場というのはまだ大人になる前の会社であり、上場することによって大人な会社になっていく”というプロセスをサポートできると考え、そこにやりがいを感じました。要するに、東証=入試で、入試に向かう受験生のサポートをするという様なイメージです。(笑)
ーー独立のきっかけを教えてください。
一番の理由はもっと会社に寄り添いたい、支援したいと感じていたからです。
会社側に入りIPOに向けて一緒にやっていきたいと考えていました。だからこそ、監査法人を辞めて、IPO支援をやりたいようにやるという想いのもと、株式会社Bridgeの設立に参画し、「世界のリーディングカンパニーを創出する」という理念を掲げて奔走しました。
その他にも、2011年の東日本大震災でIPO案件が減少したことでIPOサポートが以前に比べてできなくなってしまったことや、J-soxが導入されたことによりクライアントとの距離がどうしても空いてしまう監査スタイルになってしまったことも、会社にもっと寄り添いたいという気持ちを助長し、独立を後押ししました。
また、当時30歳だったのですが、このまま40歳になるのは成長性という点で物足りなさを感じていて、いったんリセットしたくなったというのも非常に大きいです。
ーー独立当初について教えてください。
正直、とても暇でした。(笑) やることが無い時間が多かったです。
家族に“働いていないんじゃないか!?”って怪しまれないために、家に帰る前に公園で時間をつぶしたりもしてましたね。(笑)
ーー軌道に乗ったのはどのようなことがきっかけでしたか?
人との繋がりだったと断言できます。
最初に獲得した案件がインテリジェンスという会社の支援業務でした。
こちらはトーマツ時代の先輩から頂いた案件でした。なかなか大変な業務だったので、私以外の紹介された人達は断っていたのだと思います。私はその仕事を大変だろうが必ずやり遂げてみせるという思いで引き受けました。
結果的に、期待以上の成果を出し、信頼を勝ち取ることができました。このことをきっかけにして、この仕事で関わった方々からたくさんの仕事を依頼していただくことに繋がっていきました。
ーー1つの業務で信頼を勝ち取ったことがきっかけで仕事が増えていったんですね。その後はどのような業務を行っていたのでしょうか。
2014年末までに、IPO支援をしていた4社の上場を達成できました。独立して4年程でこの成果を出せたことになりますが、人との繋がりや皆様からのご縁、運の要素が大きかったと思います。
そして軌道に乗った2015年からは、この実績をトラックレコードにネットワークを広げていきました。具体的には、地方を回って地方ベンチャーの支援や拠点開発をしていました。
また、このような経験から“人との繋がり”を本当に大切だと考えていまして、紹介したり紹介されたりがしやすい環境/仕組み作りにも注力しました。いわゆるマネジメントの業務に移っていきました。
ーー今年2月から新たに独立されたそうですが、このチャレンジのきっかけは何だったのでしょうか?
そもそも私の中で10年という期間を1つの区切りとして考えています。具体的には、10年というスパンで、何かに本気で取り組み、また10年経ったら別の何かに本気で取り組むというチャレンジをしていきたいと考えています。
ちょっと話が飛びますが、私は歴史が好きなので例として歴史の話を挟ませてください。実は、石田三成が徳川家康に関ヶ原の戦いを挑んで敗れたのがちょうど40歳なんです。これを自分に置き換えた際、”今ちょうど40歳になったけれど、徳川家康に戦いは挑めないな”と思った瞬間に、自分がこれからチャレンジしようかどうか迷っていることは彼らの時代に比べればたいしたことがないなと感じました。だからこそ、もう一回自分の中で10年間という区切りを設けてチャレンジしたいと考えるようになりました。
新たなことに挑戦するのに、40歳という一つの区切りがよいきっかけになったんです。
ーー今後の展望について教えてください。
上場会社の時価総額向上の支援と地元静岡での監査法人の経営を中心に40代~50歳までの10年間を過ごしていきたいと思います。
まず、上場会社の時価総額向上の支援については、また私の教師観が関係しています。具体的には、“上手くいっていない子の更生をする”みたいな感覚です。(笑)
IPO支援をしてきた中で、上場後に停滞してしまう会社を多く見てきました。つまり、上場した後にリビングデッド状態に陥る会社に対して課題を感じていたんです。
それらの会社では、時価総額を向上しようとしても、上場時の経営陣が辞めているケースも多く、望むような結果を得られないのが現状です。
要するに、これからは“上場するための支援”ではなく、“上場後も成長するための支援”をしていきたいと考えており、その取り組みを行っています。取り組みについては、詳細を語ろうとすると語り切れないので、大まかな内容を挙げますと、成長戦略やIRを一緒に構築したり、トレンドを捉えた活動を言語化して公表する等です。
次に、静岡に新たに設立する南富士有限責任監査法人については、私自身、地元に育てていただいたという想いが強くあり、恩返しがしたいと思っています。
これは、都心部で働く皆さんも同じかと思います。
パートナーは各地方に事務所を構えているメンバーを中心に協力頂く形を取りましたが各地方に「おらが町の企業」を育てたい一心で立ち上げました。
時代の変遷は本当に早く、次々に新しい技術が生まれ、既存の産業もその変遷に合わせて変わっていかなければならないと思います。特に、製造業がこの時代に合わせて変わっていくことに対し助力したいです。将来的には、静岡~岡山あたり(太平洋ベルト)までの製造業のモデルチェンジをして、支えていきたいと考えています。
今後の目標は、40代でムーブメントを起こすことです。
10年後、また1スパンを終えた50歳で自分がどこまでいけるかを楽しみにして、存分に挑戦して頑張っていきたいと思います。
02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)
ーー仕事をする上で大事にしていることを3つ教えてください。
1 社内と社外に関わらずコミュニケーションを大切にすること
人と接する際には、丁寧過ぎるくらいの接し方をすることが大切だと考えています。
予定がある場合は必ずその日の朝に当日の予定についてのリマインドを兼ねた挨拶のメールを送付することや、プロジェクトが進行している時には毎週必ず対面でミーティングをして顔を合わせることを意識しています。
些細なことだとしても必ず連絡を取ることが大切だと感じています。定点でコミュニケーションを密に取っていれば、誤解や齟齬の回避にも繋がります。例え相手に言いづらいような内容であっても、ちゃんとコミュニケーションをとっていく。それが大切ですね。
2 信頼を勝ち取ること
サービスを提供する業務において、何よりも大切なことは信頼に応えた上で期待以上の成果を出すことだと思います。
依頼主との間で、“提供したサービス>期待“という構造が成り立つからこそ対価に繋がると考えています。つまり、求められているものが50だったとしたら51以上ものを提供する。これを繰り返していくことで対価を上げていくことができます。
また、期待以上のサービスを提供すれば、次回新たな高い期待をかけていただけることにも繋がります。このようにして期待に応え続けることで、自分に対する信頼もより強固にできます。
また、信頼を勝ち取るためには、相手の立場になって考えるということを何よりも意識しています。当事者意識を持って、相手の立場も考えることで、相手の欲しいものを想像して先んじてアクションを取れるからです。
先ほど述べたように、私は密なコミュニケーションを取ることを心掛けていますが、そのようにしてコミュニケーションを繰り返すことで情報を引き出し、欲しいものを想像して、依頼主に提供することができていると感じています。
3 クライアントファースト(自分の利益を追求しない)
当たり前のことかもしれませんが、『課題解決』時点をゴールにするのが自分のポリシーです。
実際、コンサル業界では“契約が終了すると報酬が貰えなくなってしまう”という理由から、依頼主の当初の課題を解決したとしても、何かしらの問題点を指摘して契約をずるずる伸ばすという事態が見受けられるケースがあります。
私はこれを良いコンサルだとは思いません。契約期間の短いコンサルこそが良いコンサルだと考えています。
依頼主の困っていることを迅速にクリティカルに解決し、無理に追加の課題を作らず、自分の利益を追及することなくクライアントファーストであることを心掛けています。これを繰り返すことで信頼も勝ち取れますし、何より何か困った時にまた依頼・相談したいファーストチョイスになることができると思っています。
03. 会計士という資格を取って良かったこと
ーー今までキャリアを歩んできて会計士になって良かったと感じることを教えてください。
1 社会科見学をしながらお金が貰えていたこと(機密情報へのアクセス)
会計士の醍醐味は、役員クラスの方しか見ることのできないような機密情報を新卒1年目から見ることができる点だと思います。
会計士として働いていると、普通のことのように感じるかもしれませんが、当たり前ではなく凄いことです。お金を払ってでも見たいと思うような凄い資料を見て勉強することができながらも、お金を貰える。本当に驚きの経験だったと今でも思います。
2 無条件の信頼を得られたこと
実は、公認会計士という肩書があるかないかで、相手のリアクションが大きく異なったという経験をしたことがあります。
発注ミスにより、名刺に公認会計士という記載を入れ忘れてしまった時期があり、気付かずにその名刺を配ってしまっていました。その名刺を交換した後にお会いしようとしたところ、お客様の反応が明らかに悪かったのですが、公認会計士であることを伝えたら、会っていただけるようになりました。(笑)
公認会計士という肩書があるだけで、まずは会っていただける。つまり、無条件の信頼を得られるのだと実感し、会計士という資格を取って良かったと改めて思いました。
3 先人の方々が築き上げた信頼のおかげでチャンスを貰いやすくなること
先人の方々の努力の資産があったおかげで、契約が成立することが多々あります。
社長や長年経理業務に従事していたような方と、「以前、トーマツの○○さんにお世話になり、たくさん勉強させていただきました。」というような話題で盛り上がることが多くあります。その話題がきっかけで契約に繋がるケースが多いです。
先人の方々が築いた信頼のおかげで、同じトーマツ出身(会計士)なら信頼できるというようになり、契約に繋がることがあるんです。
このように初めて会った方からでも、”信頼”という先代の築いた資産が引き継がれていることは会計士という職業の素敵なところでもありますし、何より会計士の魅力といえますね。
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