公開日:2021/09/02
上場会社エアトリでCEO兼CFOとして活躍する 柴田裕亮(株式会社エアトリ代表取締役社長 兼 CFO)のキャリア!!
一部上場企業の株式会社エアトリで代表取締役社長 兼 CFOを務める柴田裕亮さんにお話いただきました。上場企業CEOというキャリアを歩まれている柴田さんのキャリアの変遷を是非参考にしてみてください!
柴田裕亮さんのプロフィール
柴田 裕亮
株式会社エアトリインターナショナル 代表取締役社長 兼 CFO
公認会計士
1982年生まれ。2005年に東京大学経済学部経済学科を卒業し、監査法人トーマツに入所。法定監査・IPO支援業務等に従事。その後、2010年より野村證券株式会社に2年間出向し、国内・グローバルIPO、ファイナンスに係る証券審査に従事。トーマツ帰任後は、数多くのクライアントの上場案件に関与したほか、IPO支援室の中核メンバーとして、法人全体にわたるIPOクライアントの支援、講演・執筆等を実施。2015年、株式会社エボラブルアジア(現 株式会社エアトリ)の取締役CFOに就任。2016年の東証マザーズ上場、2017年の東証一部市場変更を牽引。2018年のDeNAトラベル等、数多くのM&A案件を経験しており、投資事業においては約66社、27億円の投資実績。2019年に同社代表取締役CFOに就任し、2020年に同社代表取締役社長 兼 CFOに就任。
柴田裕亮さんの略歴
2003年:公認会計士論文式試験合格。
2005年:監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)入社。
2010年:野村證券株式会社に出向(2012年帰任)。
2015年:当社取締役CFOに就任。
2018年:株式会社エアトリインターナショナル(旧称 株式会社DeNAトラベル)取締役に就任。
2019年:当社代表取締役CFOに就任。
2020年:当社代表取締役社長 兼 CFOに就任。
2020年:株式会社エアトリインターナショナル(旧称 株式会社DeNAトラベル)代表取締役社長 兼 CFOに就任。
01. キャリアの変遷、展望
――柴田さんが、会計士を目指したきっかけを教えてください。
2つあります。まず1つ目は、ビジネスに関心があったことです。
私は、経済学部に所属していたのですが、社会科学全般に興味がありました。しかし、学問とビジネスには乖離があるため、学問の道を進むのか、ビジネスの道を進むのか、どちらかの選択に迫られました。官僚や学者に興味がなかった訳ではないのですが、やはりビジネスの方により強い関心があったため、ビジネスの道を選択し、会計士の資格を取ろうと考えました。
もう1つは、身近な会計士の先輩がいたことです。サークルなどを通じて会計士で活躍している先輩と知り合いになりました。その人たちがサークルの活動の中でもより積極的に発言されていて、格好いいという印象を持っていました。そのため、会計士に魅力を感じていました。
――見事、当時最年少の大学3年次合格をなされた後、トーマツのTS事業部へ入社した理由を教えてください。
こちらも2つほどあります。
1つ目がTSの理念に共感したから、もう1つが人に憧れたからです。
まず、TSの理念は英文でトラステッドビジネスアドバイザー、”信頼されるビジネスアドバイザーたれ”というものでした。それは、監査のみに注力するのではなく、クライアントにしっかり寄り添おうというものです。この理念のもとで働きたいと考えていました。
次に、人についてですが、TS事業部の皆さんは格好いいと感じる魅力的な方が多かったからです。
――TSで過ごした最初の5年間の経験について教えてください。
本当にさまざまな仕事をずっとさせていただきました。常時稼働率が高かったです(笑)。
比較的自由なカルチャーだったことから調書をしっかりと仕上げていれば、クライアントにいろいろな提案をしても良い文化でした。ですので、もちろん与えられた仕事をとにかくやっていていましたし、クライアントへの提案もして、いろいろなことをこなしていたため、稼働率が高くなっていましたね。
非常識なところとやんちゃなところがありつつ、今と比べると尖った働き方をしていましたが、当時の温かい先輩たちに恵まれて比較的自由に育ててくださったと感じています。
――TSで5年過ごした後、野村證券の審査部に出向した経緯を教えてください。
TSで働いていた5年間の中で自身のキャリアについて考えることが多くなりました。そこで、機会があれば外の空気を吸ってみたいと部内で希望していたところ、タイミング良く野村證券への出向の話がトーマツに入ってきたため、パートナーに推薦してもらいました。
――野村證券での2年間はどのようなものでしたか?
非常に勉強になりました。野村證券は、証券会社の中でも審査が厳しいことで有名な証券会社です。出向で入社してから、その野村で代々受け継がれている審査の業をみっちり2年間伝授していただきました(笑)。
――監査法人での経験とはどのように違いましたか?
一番違ったのはマインドです。監査法人はどちらかというとアドバイザーというスタンス、審査は市場の番人ともいわれるほどですのであくまで門番というスタンスです。つまり、監査は企業に寄り添うことができたけれど、審査では最後のチェックをする役割のため、それができません。思考回路が大きく違うのです。このことに、最初は戸惑いが多かったのですが、両社の経験で両面を知ることができたので、IPOにおいて非常に活きる経験となりました。
――出向からTSへ戻った後の3年間はどのようなことに取り組んでいたのでしょうか?
大きく分けて3つあります。
1つ目は、リクルートホールディングスのIPOプロジェクトです。2014年10月に上場するまでをサポートさせていただきました。
2つ目が、IPO部隊としてIPOの案件の責任者を複数社担当しました。幸いなことに担当した会社がほぼ全て上場し、とても良い経験をさせていただきました。
3つ目が、IPO支援室での業務です。トーマツ全体のIPOチームの支援や証券取引所などとの対外的なやりとりの窓口、執筆講演などを担当していました。
今振り返ると人生で一番働いていましたね(笑)。
リクルートホールディングスの上場は、時代を象徴するような上場案件でビッグプロジェクトでしたので、1日の内7、8時間は関与していました。それ以外の時間で2つ目と3つ目の仕事をするというダブルワークのような状態でした。
――TSに戻ってやりがいのある濃い3年間を過ごしていたのですね。その期間も今後のキャリアをどうするかについては考えていたのですか?
はい。忙しい中でも考えていました。経営にやはり興味があったので、①監査法人の中で経営層を目指すのか、②事業会社で経営層を目指すのか、この狭間で悩んでいました。
――上記のような状況の中、2015年にエアトリへIPOを目指して入社した経緯を教えてください。
大きく分けて2つあります。
まず1つ目は、TSに所属していた時からリトルマーケットに行ってみたいと考えていた事です。リトルマーケットでは、IPO後時価総額100億円でスタートできても、初値が天井となってしまい、時価総額がそこから向上してブレイクする企業が少ないです。上場後、時価総額1,000億円、2,000億円、1兆円を目指す企業がなかなか出てきていないから、そういう会社に行って作り上げたいという気持ちがありました。
2つ目は、人間関係的な部分になります。当時のエアトリの代表だった吉村が大学時代の同級生で、元から信頼関係がありました。そんな吉村がメガベンチャーを目指していたため、世界観にも共感したのです。さらに、たまたまエアトリのIPO監査の営業で吉村がトーマツに来たこともあって、半ば運命的な形で2、3年ぶりに会いました(笑)。
その時に誘われて、ご縁を感じたため、エアトリ入社までに1ヶ月ほど悩みはしましたが、直感で入社することを決めました。
実際に入社してみて、IPO直前でやることは目白押しでしたし、かつ事業会社自体のIPOを自分で担うのも初めてだったのでかなり苦労しました。さらに、IPO直前期4回目だったため、過去に準備したものが会社の中に点在している状態を1から整理してやっていく状態だったので、かなり頑張りました。
――上場されてみて、上場前と後でどのような変化がありましたか?
会社の事業スピードが2、3倍になり、本当に世界が変わった感覚でした。
月並みな発言にはなりますが、上場メリットを実際に味わうとこんなにも違うのかと感じました。会える方や取引先の幅が広がり、採用できるメンバーも変わりました。資金調達も容易に行えるようになり、その資金を使ってM&Aなどの投資活動もできる。上場前に比べてスピード感が全然違いました。
――上場後、積極的に事業展開をする中で、実際に柴田さんが担っていた業務について教えてください。
攻めのCFOと守りのCFOです。
まず、攻めの業務では、資金調達やM&Aのソーシングから実行などの推進、エクイティ調達などです。
次に、守りの業務では、バックオフィス全般に干渉していました。それこそ、財務経理、総務人事、法務労務、IR、PRなど全て担当していましたね(笑)。
――最初は知らないことも多かったと思います。そういう事柄のキャッチアップはどのようにしていたのですか?
何とかその場その場で調べたり、相談したりでやっていけていました。各場面で会計士の経験が活きたと感じています。会計士のネットワークの存在は私の中で非常に大きく、CFOの同業に相談できたりなど、信頼できる人や人脈に頼ることができました。
――2016年に上場して、その当時ほぼ同じ規模のDeNAトラベルを買収していますが、その当時のことについて教えてください。
おっしゃる通り、同規模の会社のM&Aということもあって経営陣一丸となって取り組んだ案件でした。単純にエアトリとDeNAトラベルの経営で業務が2倍に増える感覚です(笑)。
結果的に、買収以前は、売上300~400億円の規模でしたが、買収後数年で売上1,500億円の規模に伸びていきました。この5年間でのやりがいは非常に多く、楽しいこととハードシングスの双方が多く、毎日がドラマみたいでした。恐らく会計士がやれる業務はありとあらゆるものを経験させてもらったのではないでしょうか。
――どのような経緯で、CEO兼CFOという立場をとることになったのでしょうか?
まずは、上場後の事業規模の拡大に比例して、意思決定の量と幅が広がった中で、より明確な役割分担が必要になったので、共同経営者になりました。
そこから1年後、また役割分担が必要なフェーズとなり、吉村と大石がより事業の促進に注力するため私がCEOを務めることになりました。
この2人は本当にパワフルで、一緒に経営に携わることができたのはとてもいい経験です。尊敬する経営者を問われたら、私はこの2人を間違いなく挙げますね。
――コロナ後のV字回復で最高益達成おめでとうございます。実現するために、どのような取り組みをなされたのですか?
2020年1月にCEOに就任して、すぐにコロナ禍となってしまいました。そんな状況下で構造改革としてやったことは主に3点あります。
(1)徹底的なコスト削減
ありとあらゆるコストを削減して、損益分岐点を下げ、利益体質にしました。
(2)エアトリ経済圏、事業PFを見直して再構築
事業のリスク分散、つまりキャッシュを生み出す事業がより多くなるように再構築をしました。
(3)CFOとしてM&Aやファイナンス面(資金面)
銀行借入が約100億円ありましたので、当面の資金繰りを安定させる必要がありました。取引していた銀行20~30行に1行1行丁寧に接して、会社の現状と姿を伝えて、支援の継続をお願いして回り、無事継続してご支援いただくことができました。
――今後の展望について教えてください。
2つ達成したい目標があります。それらは、CEOとしての目標と個人としての目標になります。
1つ目が「エアトリ5000」です。これはエアトリの中期成長戦略でもあり、“5年で取扱高5,000億円達成に向けて、終わりなき成長を目指す”というものです。
エアトリを誰もが知る旅行サービスにして、国民的なプラットフォームにしたいと考えています。コロナ禍の影響により、業界がよりインターネット化にシフトしていることがエアトリにとって追い風になっています。この状況を前向きに捉えて成長させていき、日本初の世界に向けたメガベンチャーへというのがCEOとしての目標です。
2つ目がコミュニティや組織への恩返しです。私の次の世代にバトンタッチしていけるような仕組みを作りたいと考えています。現時点でもFacebook上で公認会計士のコミュニティを作っています。私自身が周りに助けられてきた経験があるからこそ、そういうナレッジを皆さんに届けたいです。もっと言えば、会計士が活躍するステージはもっとあると考えていて、会計士の皆さんにはもっとチャレンジをして欲しいです。若い世代をどんどん繋げていき、幅広く活躍する若い人が出やすい環境を作ることが個人としての目標です。
02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)
――仕事をする上で大事にしていることについて3つ教えてください。
(1)問題解決思考
やれない理由を考えるのではなく、“どうすればできるか”にだけ集中することです。組織を引っ張っていくためには、誰かが先頭に立って“どうすればできるか”を提言できるかが大事だと考えています。どんなに難しい時でもこの信念で頑張り、考えて進み続けることを大切にしてきました。
(2)スピード
意思決定のスピード感です。目の前のタスクについて、リスクはもちろん考えつつも、すぐに動くことを大切にしています。リスクを考えながら瞬時に判断すること、時間をかけて100点を作るのではなくて、いかに短い時間で合格点を満たす60~70点の成果物を作れるのかを大事にしています。
(3)物事を相対的にとらえること
いろいろな人がいて、それぞれに立場や考えがあり、見えている世界は基本的に違います。そう考えると、正解は決して1つじゃないと言えます。だからこそ、多くの人を巻き込みながら相対的に物事を捉えて事業を進めていくことを大切にしています。そのように進めれば、違う意見が挙がったとしても必ずある共通点を見つけ出し、一番望ましいアイデアを探すことができます。
03. 会計士という資格を取って良かったこと
――柴田さんがさまざまな経験をしてきた中で、公認会計士で良かったなと感じることを教えてください。
こちらも3つあります。
(1)監査法人でいろいろな会社を見ることができたこと
マインドの持ちようによっては、たくさんの会社の情報にアクセスできたり、いろいろな人に会うことができたりします。会社はいわば生き物です。“会社という生き物がどのように生きていくのか” を若い時に学べた結果、会社が実際どのように動いていくかのイメージを持てるようになりました。
投資に関しても監査法人での勤務経験が活きています。投資を検討している会社が将来的に成長するかどうか、が感覚で分かるようになったのです。直感は経験に裏付けられていると一般的に言われますが、これは本当で、直感で「この会社は成長するな」と感じることがよくあります。むしろ、もっと監査法人時代の若い内からより多くの会社を見ておけばよかったと感じています。
(2)会計士という仲間を得たこと
監査法人を退職してから、会計士仲間にとにかく助けられました。
この繋がりの大切さは若い時以上に感じています。会計士の皆さんは本当に温かいし、信頼できる方ばかりです。ビジネスをやっていると、人に裏切られることなどに起因して、人間不信になることがあると聞きます。その点、会計士は職業柄、一定の信頼性や倫理観があります。このような根底として信頼できる繋がりがとてもいいなと感じます。
(3)会計というベースがキャリア形成の基礎になっていること
私のキャリアのかけ算は“会計士×IPO×CFO×CEO”です。
私の中では、このかけ算は会計士が前提となっており、会計のベースがあるから成り立っているものだと考えています。会計士として学ぶことができた専門的なスキルや若い時の経験など、全てが良かったです。
よくビジネスは総合格闘技に例えられます。総合格闘技を闘う上で、さまざまな専門性の知識や企業を見た経験が今でも活きています。会計という基礎を得られたからこそ、飛び込んだ後でも活躍できたのだと感じています。
04. 柴田裕亮さんが若手会計士に伝えたいこと
――柴田さんは、次の世代の活躍を願っていると伺いました。ぜひ若手会計士に伝えたいことについて教えてください。
若手会計士に伝えたいことについても3つあります。
(1)会計士の皆さんが活躍できる舞台は想像以上に多いということ
若い方は、悩んだらやりたいことをぜひやってほしいです。
近年は、会計士がチャレンジする環境はかなり整っていて、挑戦のハードルが下がっている印象があります。
また、私が監査法人の外に出て分かったのは、会計士がとにかくさまざまな場所で求められているということです。まさに、井の中の蛙だったことに気付きました。
皆さんが思う以上に活躍できる舞台があるので、恐れずに飛び出てほしいです。何事にも対応できるマインドさえあれば何でもできます。
(2)先輩方のナレッジを有効活用してほしいということ
会計士業界の先輩方のチャレンジの成功や失敗のナレッジはかなり蓄積されています。これらを上手く使って成功してほしいと切に願っています。それこそ、私がしてきてしまった遠回りも価値があるはずですので伝えていきたいです。
日本のベンチャー界が急速に変わってきているのは、成功した経営者が経済的な面などで若手を応援しているいわゆるエコシステムができあがっているからです。会計士業界でもこのシステムを作れたら嬉しいです。
(3)ビジネスや経営はとても楽しいということ
会計士の皆さんは、もしかしたらビジネスを遠い存在に感じているかもしれません。私自身もその苦手意識を当初は持っていたのか経営者ディスカッションが苦手でした。
しかし、実際にビジネスをやってみると会計士でやっていた内容と変わらないところもありますし、それよりもやれることの幅が広がって、圧倒的にやりがいと楽しさが増えました。
20代の時は、「40歳で引退する」と生意気にも言ってしまっていましたが、その気持ちは今となっては一切なくなっています。
40歳で引退なんてもったいなさ過ぎますよね。こんなに楽しい事は他にないのですから。
株式会社エアトリインターナショナルのWEBサイトはこちら
https://www.airtrip.co.jp/
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