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公開日:2024/06/05

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これまでのキャリアの背景及び転職を考える方へのアドバイス

こんにちは。

監査法人勤務の方はそろそろ繁忙期の終わりが見えてきた頃でしょうか。

4月には修了考査の合格発表もあったかと思いますので、時期的にもネクストキャリアについて考え始める方が多くなってくるのではないかと考えています。

本日は私のこれまでのキャリア及び意思決定背景についてお話させていただきつつ、監査法人勤務の方からいただく機会の多いいくつかの質問について、私の考えをお伝えできればと考えています。


    これまでのキャリア及び意思決定背景

    まず私は2017年2月に、有限責任監査法人トーマツに入社いたしました。部門は(金融やIPO、パブリック部門ではなく)一般監査部門でした。

    入社当初は、3年ほどでインチャージを経験し、機会があれば海外派遣に手を挙げ、少なくともマネージャーまでは監査法人に残るつもりでいました。

    そのため、まさか自分が監査法人を3年半で辞めることになるとは当初の自分は全く想像がついていませんでした。
    そのような中、監査法人3年目で転職を考え始めることになるのですが、その背景についてまずはお話させていただきます。

    転職決断の背景は下記の1~3になります。

    1.   心境の変化
    監査法人3年目で、何となく一年間の流れが分かってくるようになり(繁忙期、四半期、内部統制等)、まだまだ監査人として学ぶべき内容は沢山あることは痛感していたものの、より想像の範疇を超えた「未経験の業務に従事してみたい」と考えるようになりました(監査自体が嫌いだったわけではございません)。

    2.   漠然とした「経営に強い会計士になりたい」という想い
    私は会計士受験生時代から、漠然と「経営に強い会計士になりたい」という想いを持っていました。監査法人で業務経験を積み、インチャージになれば、確かに経営者とディスカッションする機会も多くあると思いましたが、あくまで「経営者と会計トピックをメインにディスカッションする」に過ぎないのかなと考えました。となると、より経営に近い立場での業務に従事した方が良いなと思い、少しずつ転職を意識し始めることになりました。

    3.   転職するなら早めが良いという周りからのアドバイス
    私の周りにも監査法人からスタートアップや戦略コンサルティングに転職し、活躍されている方がおりましたが、その方々から、監査以外の業務にチャレンジするなら、最初は一定程度の慣れが必要になってくるため、早めにチャレンジした方が良い、とのアドバイスをいただいていました。なので、監査以外にチャレンジするなら早い方が良いなと考え転職を意識しました。

    上記背景から初めての転職を決断することとなりますが、様々な業界の中でも、なぜFASへの転職を決めたかについて下記に記載いたします。

    FASへの転職を決めた理由

    ①   ビジネスマンとしての基礎体力を高めたい
    転職を意識し始めたのがちょうど27歳の時でしたが、経営に近い立場での業務(プライベートエクイティファンド、スタートアップCFO等)にチャレンジするには、まだまだスキルとして足りない部分も多いと考えていました。そのため、もう少しプロフェッショナルファームで働くことで、ビジネスマンとしての基礎体力(論理的思考力など)を高めていきたい、会計・監査以外の武器をもっと増やしていきたいと考えました。

    ②   コンサルティング業務に対する憧れ
    会計士受験生時代から、元々コンサルタントには興味・憧れを持っていました。ありきたりな話ではありますが、コンサルタントになって、クライアントに対しアドバイスを提供することができるようになれば、クライアントに感謝されることも多く、やりがいを感じる瞬間も多いのではないか、という仮説を持っていました(FASで働いてみて痛感しましたが、実際はそこまで上手くはいかなかったりするのですが…)。

    ③   会計士としての強みを活かせる場所
    まず、コンサルティングの中でも戦略コンサルティングかFASに興味を持っていました。戦略コンサルティングは、論理的思考力を活かして、経営層が抱えている答えのない難易度の高い課題を解決することができるスーパーマンのようなイメージがありました。FASは、数字に強く、ビジネスと会計数値を高度に連携させて攻めの会計思考ができる、攻めの会計プロフェッショナルのイメージを持っていました。
    戦略コンサルティングとFAS、それぞれに魅力を感じていましたが、様々な検討を行った結果、(当時は)会計士としての強みを活かせそうなFASの業務により魅力を感じ、FASへの転職活動を進めていくことに決めました。

    (余談ですが、今思い返してみますと、大変な環境ではあると思いますが、戦略コンサルティングへの転職にチャレンジしてみても良かったなとも思っています。一定期間、厳しい環境で修行することで、通常の会計士が持ちえない差別化の図れる武器(高度な論点思考力、戦略思考力など)を身につけられる世界に飛び込んでみても良かったかな、と思っています。)

    上記のように考えた結果、FASへの転職を決断しました。

    それからFASへ転職し、その1年9ヶ月後に現職のスタートアップへ転職することになります。スタートアップへの転職を意識し始めた背景ですが、

    「会計士を志したときから、漠然と「経営に強い会計士になりたい」という想いがあり、当該理想の会計士像に近づくためには、スタートアップで働くことが近道であると考えた」

    というのが答えとなります。上記の詳細について、

    ・事業会社を選んだ理由
    ・事業会社の中でも、小規模の会社を選んだ理由
    ・小規模の会社の中でもスタートアップを選んだ理由

    という形でブレイクダウンしてお話できればと考えています。

    ・事業会社を選んだ理由

    そもそも「経営」の分かりやすい定義について、監査法人入社以来考えていましたが、個人的には「ヒト、モノ、カネに関する戦略を策定し、当該戦略を実行していくこと」だと考えています。

    「ヒト」の最高責任者がCHRO、「モノ」の最高責任者がCOO、「カネ」の最高責任者がCFOとなり、すべてに関する最高責任者が「CEO」となるイメージです。

    「経営」に携わることができる場所については、戦略コンサルティングファームやプライベートエクイティファンドなど、様々な場所がありますが、私自身前職がFASでプロジェクトベースでの働き方をしており、プロジェクト後はなかなかクライアントに貢献できる機会が少ないこと、またFAS業務による成果物提供という形でしかクライアントに貢献できないことについて、もどかしさを感じていました。そのため、次のキャリアでは、プロジェクトベースでの関与というよりも、プロジェクト関係なく当事者意識を持って関与していきたい、1社に集中してやり切っていきたいという想いを持っていたため、ネクストキャリアとしては事業会社を選ぶこととしました。

    ・事業会社の中でも、小規模の会社を選んだ理由

    監査クライアントにおける、グローバルクライアントと小規模クライアントの話に似ている部分もありますが、私は初めての事業会社への転職でしたので、小規模の会社の方が会社の全体像を掴みやすく、経営視点を身に着けやすいのではないかと考えたため、小規模の会社を希望しました。また、創業経営者と近い立場で業務に従事したいという願望もありましたので、小規模の会社を希望する形となりました。

    ・小規模の会社の中でもスタートアップを選んだ理由

    スタートアップに入社することで、酸いも甘いも様々な経験ができると考えたため、スタートアップを希望しました。スタートアップは積極的に事業を伸ばしていくフェーズの会社ですので、勿論緊急事態が発生し大変なことも多々ありますが、そのような波乱万丈な環境に身を置いた方が経験も積めるし、何より面白いのではないかと考えましたので、スタートアップを選ぶ形となりました。

    上記を踏まえ、現在株式会社Clearにて経営企画として従事していますが、基本的に会計士出身の取締役と二人三脚で業務を遂行しており、かつ代表取締役と連携する機会も多いので、役員陣2名の動きを間近で見ることができたり、代表取締役の創業に対する想いに触れることができたりなど、日々素晴らしい環境で働くことができています。

    以下、その他スタートアップへの転職を決断した背景を補足させていただきます。

    「スタートアップらしい革新的なビジネスに関与したい」

    スタートアップに関する情報は、以前よりX等から収集をしていましたが、どの会社もビジネスが革新的であり、面白さを感じていました。そのような背景もあり、折角事業会社に転職するなら、ありきたりなビジネスの会社よりは、真新しいこれから世の中に大きな影響をもたらすようなビジネスの会社に転職したいと考え、スタートアップを志望いたしました。

    個人的にはスタートアップの中でも、最新のIT系の会社よりは、農業や工業など、日本の伝統産業の発展に寄与するような業種の会社に興味を持っていましたので、そのような会社を中心に情報収集をする形となりました。

    「事業が爆発的に伸びる瞬間に立ち会ってみたい」

    近年スタートアップに関するドラマが増えており、私も当時韓流ドラマ「梨泰院クラス」を見ていたのですが、当該ドラマに入り込むうちに、私も自分達の事業の成長に悪戦苦闘しながらも事業が爆発的に伸びる瞬間に立ち会うことで、社員メンバーとその達成感を分かち合う経験をしてみたいと考えるようになりました。勿論、スタートアップ以外でも達成感を感じる経験は十分できると考えていますが、当事者意識を持って事業を伸ばした際の達成感は格別なのではないかと考え、スタートアップへの転職を意識するようになりました。

    現在スタートアップに転職して1年半ほど経過し、「事業の爆発的な伸び」とまではいかないですが、月間受注が目標を大幅に達成した月等は社内もお祭りムードとなりますし、何とも言えない達成感を感じることができています。

    「将来的に、ビジネスが斬新で面白いスタートアップを対象とした独立を考えているため」

    元々私は将来的に独立し、自分の事務所を立ち上げたいと考えていますが、その際にどのような会社をクライアントとしていきたいかを考えた際に、辿り着いたのがスタートアップでした。スタートアップの中には、これまでにないビジネスモデルであり、将来的に世の中を大きく変えていく可能性のあるような会社も多いですが、そのような会社と関係を作っていき、サポートし続けていきたいと考えています。その場合大事となってくるのは、スタートアップでやり抜いた経験だと考えたため、スタートアップへの転職を志望するようになりました。

    「幅広い経験を積んでいきたい」

    私はもともと知的好奇心が旺盛なタイプだったため、専門性を突き詰めていくスペシャリスト的な働き方よりは、様々な業務にチャレンジするような、ゼネラリスト的な働き方に興味を持つようになりました。その点スタートアップの場合、担当者の入れ替わりも激しいですし、非定型的な業務も多く発生するため、様々な経験を積めるのではないかと考え、スタートアップを志望するようになりました。

    以上が、スタートアップへの転職を志した理由となります、そしてこれまでの私のキャリア及び意思決定背景となります。

    以下、監査法人勤務の方からご質問をいただく機会の多い内容について、私の意見を記載していきます。

    監査法人勤務の方から多くいただく質問

    監査法人時代に戻れるならどのようなスキルの習得を意識するか

    個人的には下記3点を考えています。

    ①    社外とのコミュニケーション力
    ②    プロジェクトマネジメント力
    ③    事業理解力

    ①については、FAS関連の記事でも執筆しましたが、(少なくともバリュエーション部門に所属していた私は)監査法人時代と比較しますとクライアントと直接積極的にコミュニケーションを取る機会は多くありませんでした。一方でスタートアップに転職してからは、金融機関や株主の方とコミュニケーションを取る機会も多いですので、社外とのコミュニケーション力に関しては現職にて鍛えられている気がします。そして監査法人時代の新人の時からクライアントコミュニケーションが求められる環境が大変貴重でありがたい環境に感じています。

    会計士がプロフェッショナルである以上、プロフェッショナルファームにいても独立しても、社外とのコミュニケーションはつきものですので、監査法人にいるうちに得意にしておくと、後々ポジティブに働くと考えています。

    ②については、役職が上がれば上がるにつれ、プロジェクトをマネジメントする機会が増えていきますので、監査法人時代から、小さい部分ですと確認状の作成から回収まで、大きい部分ですとインチャージとして監査全体のスケジュール等の設計する経験等を積んでおき、かつ自ら積極的に工夫を凝らしてみる経験をしておくと、社外でも役立つスキルとして資産になってくると考えます。

    ③について、監査法人でもよく事業理解が大事と言われることが多いと思いますが、具体的に何をすれば良いか、迷われる方も多いと考えます。

    以下紹介する内容については、事業会社で経営企画業務に従事している私目線での意見にはなりますので、あくまでも一意見としてご参考いただければと思います。

    ・対象会社の売上から当期純利益までについて、どのような要素から構成されるか説明できるようにする
    (売上は、A事業及びB事業から成り立っており、A事業の売上はTo C向けの商品販売ビジネスなので1人あたり購入単価×購入者数に分解され、B事業はTo B向けサブスクリプションビジネスなので、月額×登録者数に分解される。販管費に関しては固定費と変動費に分けられ、固定費は人件費とオフィス賃料、社会保険料、変動費は特に項目が大きいのは広告宣伝費で、広告宣伝費はA事業の商品aの計画販売数量と連動する、などなど)

    ・上記理解を基に、どうすれば対象会社の売上が上がるかを考えてみる
    (上記A事業の場合、1人あたり購入単価に伸び代がありそうなので、商品のセット販売を企画することにより上げていく、など)

    ・(上記とは別軸での整理の方法にはなりますが)商品の仕入から販売までの流れについて、ヒト・モノ・カネの流れを整理してみる

    上記に記載した内容は、意識的に実施しない限り難しい内容かもしれませんが、様々な情報を入手できる監査法人だからこそできる部分でもあると思いますので、ぜひ実践いただければと思います。

    また事業理解力が高い場合、FASやコンサルに行く場合も、事業会社に行く場合も確実に財産になりますのでおすすめいたします。

    関連する書籍という観点では、下記がおすすめです。
    ・[図解]IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ
    [図解]IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ | 冨山 和彦, 経営共創基盤 | 経営科学 | Kindleストア | Amazon

    以上、個人的な意見ではありますが、監査法人時代に戻れるならどのようなスキルの習得を意識するかについて記載してみました。

    インチャージを経験してから転職した方が良いか

    インチャージを経験することにより、上述のプロジェクトマネジメントスキルが身に付くと考えられますので、プラスの経験になると考えます。

    ただ一方で、インチャージをやる以外にもプロジェクトマネジメントスキルを身に付ける経験はできるはずですので、まずそのような機会には積極的にチャレンジされることをおすすめします。

    また、監査以外のやりたいことを見つけられている方で、インチャージを経験されてから転職しようか悩まれている方は、やりたいことにチャレンジされた方が良いと考えます。

    理由としては下記3点です。
    ・キャリアのチェンジは早ければ早い方が良いため
    ・(上記と少し重複しますが)業界によっては年齢制限がある、若ければ若いほど良い業界もあるため
    ・転職先でもマネジメント経験を積むことは可能なため

    まとめますと、インチャージを経験することで成長できる部分も多い理解ですが、監査以外にやりたいことが決まっている方は、そちらを優先された方が良いと考えます。

    キャリア関連で意識すべきこと

    今従事されている業務へのモチベーションを高める観点でも、将来自分が目指していきたい、自分の目標となる方は探されると良いと考えます。

    例えば下記会計士の履歴書では、様々な会計士のキャリアについて書かれているため、理想の方を見つけた上でその方のようなキャリアを歩んでいかれるのは良いと考えますし、

    会計士の履歴書 | 活躍する会計士たちの仕事やキャリアを紹介 (kaikeishinorirekisho.com)

    CPASSでも定期的に会計士交流会を開催していますので、気になるキャリアの方に話を聞いてみるのも良いと考えます。

    一方で、(上記記載の内容と少し矛盾してしまいますが)自分の目指したいキャリア像は瞬間によって変わってきますので、将来の理想像から逆算したキャリアもありですが、一番はそのときやりたいことをやっていくことかなと考えています(私自身も上記記載の通り、監査法人入社から現在まで何度も目指したいキャリア像は変わっていますので)。

    自分のやりたい業務は何かを見つけるためにも、日頃から幅広く情報収集をされることをおすすめいたします。

    本日は私のこれまでのキャリアに関するお話をしつつ、その他キャリアに関するいくつかの内容を記載させていただきました。

    キャリアに悩まれた方は、CPASSキャリアでもキャリア相談を実施していますので、お気軽に相談されてみても良いかもしれません。

    この記事を読まれた皆様が、是非納得のいくキャリアを歩まれることを心より祈っています。

    最後までお読みくださりありがとうございました。

    この記事を書いた人

    慶應義塾大学経済学部卒業。公認会計士試験に合格後、2017年2月より有限責任監査法人トーマツへ入所し、会計監査業務、内部統制監査業務、定期採用関連業務に従事。その後2020年7月より、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社にて企業価値評価業務や会計監査支援業務、財務分析業務等に従事。
    2022年4月より株式会社Clearにて経営企画業務、その他コーポレート業務全般(経理、労務、財務、法務)に従事。

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