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公開日:2024/09/17

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CVCの2024年動向とスタートアップ投資の展望:「JAPAN CVC Report 2024」を振り返って

2024年6月26日に、ジャフコグループでは初の試みとして「JAPAN CVC Report 2024」を公開しました。日本企業の新規事業開発やイノベーション創出を支援する株式会社Relicと共同でリリースしたこちらのレポートは、CVCの国内動向や投資戦略、運営の実態、シナジー創出の焦点について、38問のアンケート調査と3社へのインタビューを基に分析を行いました。

調査は2023年12月13日から12月22日の間にオンラインで実施しており、国内のCVCで投資業務に関わる146名から有効回答をいただくことができました。おかげさまで、レポートをご覧になった方から様々なご意見やご感想をいただいています。

今回は、スタートアップ投資に関心をお持ちの方に向けて、本CVCレポートの中でも特に注目したい点について、私なりに考察してみたいと思います。レポートの詳細については、以下URLよりダウンロードしてご覧ください。https://www.jafco.co.jp/event/archive/002266.html

本レポートの内容がCVCを運営される方々の参考となり、スタートアップエコシステムの発展とイノベーション促進につながれば幸いです。

    事業シナジーと財務リターンのバランスの観点

    CVCは、事業会社の企業活動としてスタートアップ投資に取り組んでいます。その主目的は事業シナジーの創出にあるものの、企業活動である以上、直接的・間接的を問わず、何かしら本業の貢献が期待されます。

    しかし、新規領域における事業シナジー創出は決して容易ではありません。思うような成果に繋がらないケースもありますし、仮に定量的な結果が出るにしても、相応の時間がかかることがほとんどです。

    そのため、自社に足りないピースを求めてスタートアップに投資するにしても、期待する成果にたどり着くまでには、長期かつ継続的に取り組んでいく必要があります。

    今回、レポートを見ると、CVCの方々が事業シナジーだけではなく、財務リターンにも重きを置いている姿勢が伺えました。中には、定量的な数値として1倍以上の財務リターンを目標として設定されているという回答もありました。

    目標数値まで設定して財務リターンの指標を追っている方が半数近いという結果からは、事業シナジーと財務リターンを偏りなく両方意識した投資スタイルが伺えました。これは非常に印象的でしたし、CVC活動を長期で継続していくという観点から見ても良い流れのように感じられます。

    失敗からの学びと投資先選定基準・意思決定プロセスの改善

    また、投資対象となるスタートアップのステージを尋ねた設問では、事業KPIがまだでていない段階のアーリーフェーズを戦略に組み込んでいるという回答が9割を占めました。

    CVCの性質上、事業シナジーを重要KPIとするため、数字が出ていないアーリーフェーズの企業には投資判断がしづらい部分もあるかと思います。それでも、投資戦略の対象としてCVCの9割がアーリーを組み込んでいるという結果は、挑戦的なスタートアップに対する期待値の表れのように感じられました。

    また、失敗事例から学んだ教訓として「投資先の選定基準の見直し」と「内部の意思決定プロセスの改善」の2つが上位に並んでいる点は、非常に興味深いと思いました。

    これまで私自身、CVCの方々と何度も意見交換してきました。特にCVC活動に長く携わっている方に話を聞くと、ほぼ100%皆さん、今回レポートに上がってきた「投資先の選定基準の見直し」と「内部の意思決定プロセスの改善」をされていました。そのため、レポート内容と私自身の所感が一致していたという印象です。

    投資先を探す際、当初の投資領域だけを意識して進めてしまうと、投資対象が非常に限定される傾向にあります。場合によっては、そもそも投資できそうなスタートアップが当該領域に存在しない可能性もあるでしょう。

    CVCに限らず、スタートアップ投資に携わる者として、視野を広く持ちつつ、過去の事例からきちんと学びながら、見直しや改善を常に行っていく重要性を改めて感じました。

    CVCにおける投資経験の蓄積とラーニング 

    今回のCVCレポートでは、GMOペイメントゲートウェイ株式会社、ダイキン工業株式会社、そして住友商事株式会社の3社にインタビューをさせて頂き、事業シナジーを生み出すまでの試行錯誤を伺いました。

    私は2006年からスタートアップ投資に関わってきましたが、今回のアンケート調査や3社のインタビューを拝見して、CVCにおける経験値の蓄積とラーニングが深まってきていることを実感しています。

    紙面の都合上カットした部分にも非常に役立つ気づきや学びが多く、私達ベンチャーキャピタリストがCVCから学ぶことも今後更に増えていくように思います。

    スタートアップ投資に興味のある事業会社の方やCVC関係者の方はもちろんのこと、今回のCVCレポートは、VC関係者にとっても参考になる内容になったのではないでしょうか。 

    今回は初の試みということで、アンケートの設問設計など課題は色々ありましたが、調査を定期的に行っていくことで、より多くの気付きが得られるのではないかと考えています。

    CVCレポートを読んでみての気付きやご感想などは、ぜひJAFCO宛にお寄せいただければ幸いです。これからスタートアップ投資を始めたいなどのご相談なども随時お待ちしております。

     ▼他記事一覧▼
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    この記事を書いた人

    新卒でJAFCOに入社。VC投資、ファンドレイズ、M&A、投資先支援といった幅広い業務を経験。

    2014年より、シード・アーリステージを中心に30社以上の投資先支援担当として、事業開発、業務提携などに貢献。

    2017年から、採用支援に携わり、これまでにエグゼクティブクラスを中心に面談を実施。投資先のコアメンバー採用において多数の採用支援実績あり。

    https://note.com/vc_jafco/

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