公開日:2024/07/25
入社後最初に担当した業務と苦労した点について スタートアップ編
こんにちは。
本日はスタートアップでの業務について、よりリアルな内容をお伝えすべく、下記3点に関して記載できればと考えています。
①入社前に実施した事前準備
②入社して最初に担当した業務
③入社して最初に苦労した部分(監査法人などのファームとのギャップという観点などなど)及び上記を乗り越えるためにどのような工夫をしたか
スタートアップへの転職を考えている方にとって、何かしらの参考になれば幸いです。
①入社前に実施した事前準備
下記2点を実施していました
・既にスタートアップにて勤務している知人への状況のヒアリング
監査業務やFAS業務と異なり、入社する会社によって業務内容や会社の雰囲気が異なる部分も多いですが、成熟した事業会社と比較してスピード感が速い点や、成長フェーズの会社のため業務量が多くなりがちな点等は基本的に共通しますので、知人の話をヒアリングするのは効果的と考えます。
その他、Wantedly等を通じて面接段階から情報収集を実施しておくのも、今後の入社のことを考えると効果的と考えます。
・スタートアップ関連書籍の通読
以下のスタートアップ関連書籍を読んでいました。
・『起業のファイナンス』
Amazon.co.jp: 起業のファイナンス増補改訂版 : 磯崎 哲也: 本
・『IPO物語 とあるベンチャー企業の上場までの745日航海記』
IPO物語――とあるベンチャー企業の上場までの745日航海記 | 和田 芳幸, 本村 健, 武藤 雄木, 佐藤 新也, 小池 赳司, 高木 明, 池田 美奈子, 羽間 弘善 |本 | 通販 | Amazon
※上記書籍については、下記記事でも内容を紹介しています。
スタートアップ関連書籍の紹介 |CPASS(シーパス) (cpass-net.jp)
ただ、上記2冊を読んだことによって、入社後の業務に直接役立ったかといえばそんなことはなく、1冊目に関してはスタートアップ関連書籍としては名著と呼ばれているため、読んだことがないのはまずいと考え、読ませていただいた形です。
スタートアップへどのようなロールで入社するかにもよりますが、私の場合ファイナンス周りも担当する経営企画として入社していますので、例えば監査法人時代には全く縁のなかった資本政策周りに関しては、非常に勉強になりました。
2冊目に関しては、私自身監査法人時代にIPO業務の経験がなかったため、入門書としてまず読ませていただいた次第です。
スタートアップでの業務に関しては、前例のないイレギュラーな業務が発生しやすいこともあり、FAS業務等と異なりなかなかこの書籍を読めば十分な準備になる、といった書籍は存在していないのが現状ですが、上記の通り「起業のファイナンス」や、IPO周りの書籍に関しては、読んでおいて損はないかなと考えています。
②入社して最初に担当した業務
私の場合、1人目の経営企画として入社しましたので、いきなりゼロベースでフォーマットを作成する場面も多かったです。
主に下記の業務となります。
・社内向けに報告する月次定例資料の作成
・株主向けの株主報告資料の作成
これまで上長が実施していた定例業務を私の方で引き継いだ形となります。実績集計等が必要になりますが、最初に実施した業務でしたので、今後に向けた上長からの期待値を下げないためにも、ミスがないよう入念にチェックを実施しました。
・精緻な資金繰り表が社内に存在していなかったため、当該資金繰り表の作成
これまで経理担当による簡易的な資金繰り表しかなかったため、より精緻に資金繰りを管理できるフォーマットを私の方で作成することとなりました。
当該フォーマット作成のためには、
① 会社における資金繰り構造を俯瞰して把握
② 上記それぞれの項目の具体的内容の把握
③ ①②の内容のフォーマットへの落とし込み
の3つが必要でしたが、①②に関しては入社後1ヶ月のため分からない部分も非常に多かったので、自ら積極的に情報を取りに行くことになりましたが(必要に応じて他部署へのヒアリングも実施)、会社理解や他部署の方とコネクションを構築するという観点では良い機会となりました。③に関しては、FASにて財務3表を作成した経験もありましたので、その際の経験が活きる形となりました。
・社内コスト管理フローの構築
部署ごとのコスト管理を実施する仕組みが全く整っていませんでしたので、私の方でコスト入力のフォーマットを作成し、部署ごとにフォーマットの使用方法を丁寧に説明していく流れとなりました。
後述しますが、事業会社の場合、監査法人やFASなどのプロフェッショナルファームと異なり様々なバックグラウンドの方がいらっしゃり、数字に対する感度や論理的思考力も人により様々であるため、対象者全員にとって使用が苦とならないフォーマットを作成する点や、対象者全員が理解できるような説明を心掛ける点などは非常に勉強になりましたし、入社後における最初の山となりました。
・社内各種ミーティングに参加することによる、事業内容や社内の状況に関するキャッチアップ
社内の様々なミーティングに参加することにより、各チームの業務内容や社内の現状の把握に努めました。勿論会社にもよりますが、事業会社は想定以上にミーティング量が多く、かつスタートアップなので意思決定のスピードも速く、キャッチアップの際は少々大変に感じる部分もありましたが、1つ1つ丁寧に理解を進め、不明点は各部署のメンバーにヒアリングを実施していきました。当該社内理解をおろそかにしてしまうと、上長である取締役との各種ディスカッションもスムーズに進まなくなってしまうため、社内理解に関しては特に確実に前に進めることができるよう意識していました。
少々長くなりましたが、以上が入社後最初に担当した業務に関する説明となります。
③入社して最初に苦労した部分(監査法人などのファームとのギャップという観点などなど)及び上記を乗り越えるためにどのような工夫をしたか
こちらは、大きく下記に分類されます。
・業務量そのもの及び種類の多さ、スピード感の速さ
監査法人やFASにおいても、業務量自体は多かったですが、あくまで監査業務やM&A関連業務など、決まった業務内容の中で業務量が多い状況でした。一方で、スタートアップの場合はそもそもメンバーの人数が少ないため、1人で複数の役割を兼務する場合も多くなっています。私の場合はあくまで経営企画として入社しましたが、入社後すぐの他メンバーの退職等も重なり、法務業務も兼務していました(現在は、その他経理・財務業務も兼務しています)。
そのため、頭の使い方の異なる2つの業務を兼務していたため、最初は大変に感じる部分もありました。また、基本的に経営企画業務も法務業務も、担当者は私1人でしたので、社内メンバーからの該当領域に関する質問は全て私に集中する形となります。そのため、タイミングによっては多くの業務量を抱え込んでしまうこともありました。また、スピード感の速さについては、スタートアップですので起案から意思決定までの時間が短くなっています。そのため、突如決定した内容に対し、急遽対応が求められるような場合も存在するため、最初は大変に感じました。
上記内容の克服方法に関しては、1つ目として正直慣れの部分も大きかった気がします。
それぞれの業務、そしてスピード感に慣れることで、私の方での対応速度も上がりましたので、自然と業務も裁くことができるようになりました。
また、すぐに対応可能な内容に関してはその場で対応してしまうことも大事かと考えます。あとで対応しようと考えてしまうと、対応事項が溜まってきてしまうこともありますので、質問・依頼をいただいたタイミングでフレッシュなうちに対応してしまうのが効果的です。
・社内メンバーのバックグラウンドは多岐にわたるため、プロフェッショナルファームにいた際と比較すると丁寧なコミュニケーションが求められる点
監査法人やFASの場合ですと、公認会計士バックグラウンドの方が多く、仮に他の業界の方がいらっしゃるとしても金融機関出身の方など、ある程度業界の近い方が多い状況でした。一方でスタートアップなど事業会社に入社した場合、メンバーのバックグラウンドは様々です。
例えば弊社ですと、私以外のメンバーには、元大手酒造会社にて製造責任者を務めていた方、大手広告代理店出身の方、大手化粧品会社出身の方など様々な方がいらっしゃいます。そのため、これまで成長されてきた環境もメンバーによって異なっていますので、プロフェッショナルファームとは異なり、全員が全員プロフェッショナルファームのような一定水準以上の論理的思考力や会計知識、そもそもの数字に対する感度を持ち合わせているような状況ではありません。そのため、物事をこれまで(監査法人やFASにいたころ)と同様のスピード感・内容で説明しても、伝わらないことも多々ありました。
入社した後、上記の状況を踏まえ、何か説明等実施する際には、背景や目的をこれまで以上に整理し、会計に関する内容など、専門的な内容の説明を実施する際には、できる限り噛み砕いた説明を実施することを心掛けるようになりました。
また、入社してしばらく経つうちに、各メンバーのスキルセット等も見えてくるようになりましたので、その人その人に応じてカスタマイズした対応もできるようになってきました。
・ゼロベースでの仕組み作りが多い点
そもそも私の入社前は経営企画担当者がおりませんでしたので、諸々仕組みが整っていない部分もあり、ゼロベースで業務フローなど仕組みを作っていく機会も多かったです(上記に記載した、社内コスト管理フローの構築など)。これまで監査法人やFASでは、ゼロベースで成果物を作り上げる経験は少しありましたが、あまり多いわけではなかったので最初は難しく感じる部分もありました。※少し話はそれますが、スタートアップへの転職を考えられている方は、クライアントの内部統制周りについてしっかり頭に入れておくと、上場準備に入っていく過程でも必要にはなってきますし、入社後役立つ場面も多い気がしています。
こちらに関しては、最初から100%の内容を1人で作るのではなく、ドラフトを作成し、あとは関係者とディスカッションしながらブラッシュアップしていく、くらいの感覚を持つようになってからは必要以上にプレッシャーを感じることはなくなりました。
・社内向け説明の機会が多い点
経営企画という役割で入社したため、毎月の実績説明や新しいフロー導入に伴う概要説明など、入社当初から社内向けの説明機会は多い状況でした。前職のFASでは、クライアントへの成果物報告などはマネージャー以上に担当いただく機会が多かったため、最初は自分のプレゼン力が低く、思うようなプレゼンができないことも多かったです。
こちらに関しても、嫌というほど機会がありますので、結局は場数を踏むことで心理的にも慣れてくる部分が大きく、現在は完璧にこなせる状況ではありませんが、以前よりも成長できてきています。
・社外とのコミュニケーションが多い点
証券会社や監査法人、銀行、株主など、コミュニケーションのカウンターパートが多いため、相手先によってどのような内容が求められるか、最初は切り替えに苦労しました。
こちらについては、基本的に質問される内容については、一定の傾向があることに気づいてからは、ミーティングの前にも上手く準備ができるようになりました。
・より高度な事業理解が求められる点
事業戦略等をディスカッションするミーティングに参加する機会も多いため、最初は自分の理解が浅く、議論についていけない部分もありました。監査法人やFASでは、どちらかというと過去の事業状況に対し客観的に目を向ける機会が多かったですが、事業会社の場合ですと未来に向けた戦略について当事者意識を持って考えていく形になりますので、当たり前ですが求められる水準は異なってきます。
こちらについては、現在もブラッシュアップ中ですが、まずは周りの方の発言内容をしっかり理解することと、自分ならどのように考えるかを、しっかり時間を確保した上で丁寧に思考していくことが大事な気がしています。
その際に、下記の記事でも紹介しました、
スタートアップ関連書籍の紹介 |CPASS(シーパス) (cpass-net.jp)
論理的思考力を高めるための書籍を読んでみることが大事になってくる理解です。
以上、本日は
①入社前に実施した事前準備
②入社して最初に担当した業務
③入社して最初に苦労した部分(監査法人などのファームとのギャップという観点などなど)及び上記を乗り越えるためにどのような工夫をしたか
の3点について記載させていただきました。
スタートアップへの転職を考える方にとって、何かしらの参考になれば幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
この記事を書いた人
慶應義塾大学経済学部卒業。公認会計士試験に合格後、2017年2月より有限責任監査法人トーマツへ入所し、会計監査業務、内部統制監査業務、定期採用関連業務に従事。その後2020年7月より、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社にて企業価値評価業務や会計監査支援業務、財務分析業務等に従事。
2022年4月より株式会社Clearにて経営企画業務、その他コーポレート業務全般(経理、労務、財務、法務)に従事。
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