公開日:2021/08/07
会計×ITで中小企業を支える世界に挑む 国見英嗣(株式会社ナレッジラボ代表取締役CEO)のキャリア!
中小企業を支援するためにナレッジラボを起業し、マネーフォワードグループにジョインした、国見英嗣さんにこれまでのキャリアの変遷についてお話しいただきました。
管理会計・IT・起業・M&A・中小企業支援などに興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
国見英嗣さんのプロフィール
国見 英嗣
株式会社ナレッジラボ 代表取締役 CEO
公認会計士
トーマツグループに入社後、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社でM&A、事業再生業務を経験しナレッジラボを設立。 ナレッジラボでは事業再生コンサルティングを立ち上げるとともにコンサルティングノウハウを詰め込んだ経営管理クラウド「Manageboard」の開発も行うなどテクノロジーに強みを有する公認会計士である。
国見英嗣さんの略歴
2003年:公認会計士試験論文式試験合格。
2003年:監査法人トーマツ入所。監査だけでなくM&A業務にも従事。
2013年:同法人を退職し、ナレッジラボを起業。事業再生をメインに。
2017年:事業再生で得たノウハウを活かし、経営に活用できる予算管理サービスのManageboardを開発し、リリース。
2018年:M&Aでマネーフォワードにジョイン。
01. キャリアの変遷、展望
――国見さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。
IT×会計が良いなと感じたことがきっかけです。
大学では工学部に所属しており、入学当初は機械工学を学んでいました。そこから数学研究室に移り、数学の勉強をしながらプログラミングを書くというような日々を送っていました。当然ながらITに興味があったため、将来的にITを軸にできる面白いものはないか?と探していた折に、先輩からIT×会計が面白いと勧められ会計士に興味を持ち、大学院進学時に会計の道を選びました。
――もともと理系にいらっしゃってITや数学的な素養があり、数値を可視化する等が好きだったのですね。
そうですね。だからこそ、昔からITと会計を掛け合わせて“どうすれば世の中の役に立てるのだろうか?”と考えていました。
――トーマツではどのような経験をされましたか。
監査業務を一通りと、M&A業務の経験をしました。通常監査や金融機関の監査に付随する自己査定、J-SOXのIT統制等を含め、一通りの監査を5年ほど経験した結果、違うことをやりたくなり、M&Aに移りました。
M&A事業部では大企業と中小企業双方に関わっており、大企業は1年間を通して接するような形で中小企業は年に何回か接するというような形でした。
――約10年勤めたトーマツを退社されて、独立するに至った経緯を教えてください。
M&A事業部に異動したことが私の人生の転機です。
まず、大企業と中小企業双方と関わる中で、大企業で働く際のスタイルと中小企業でのスタイルが全然違うことに驚愕しました。何よりも大きかったのは中小企業の場合、経営者と直に話す機会が多かったことです。大企業相手の場合は、経営者に会うことは基本的にないのですが、中小企業相手の場合は、それこそ昼から経営者とよく話します。話をたくさんしているので、経営者の熱い思いを聞く機会も多く、中小企業の経営者は“本当に格好いいな”と感じるようになりました。それと同時に彼らがめちゃくちゃ困っていることが多い点にも気付きました。というのも、営業等の自分の専門領域には強いものの、財務や人事の側面がめっぽう弱い方が多いからです。そのため、景気が良い時は会社の業績が好調でも、景気が悪くなると一気に会社が悪い方向に傾いてしまう、というケースが多かったです。
つまり、経営の基盤であるお金と人の経営管理ができていない中小企業が多いということに気付いたのです。とはいえ、大手監査法人に所属していたため、中小企業に対する仕事ばかりはできない状態でした。
そこで、監査法人に10年勤めて得た知見を、次の10年間で困っている中小企業に還元していきたいと考えるようになりました。その思いもあり2013年にナレッジラボを立ち上げました。
――独立されてまずは何を始めたのですか。
中小企業の事業再生です。
実は、明確にこれをやりたいというのが独立当初はありませんでした。
中小企業の力になりたいという思いが先走って独立した形だったので、何をやれるかを探していました。その当時、事業再生に携わっていた監査法人時代の元上司から、事業再生が面白いと伺ったため、一旦事業再生を始めた形になります。
事業再生は、銀行や金融機関から仕事を引き受けられるとその上司から伺っていたので、とにかく最初は関西中の信金に飛び込み営業をしに行きました。(笑)
飛び込み営業を続けた結果、紹介してくださる方も現れ、その方から数珠つなぎでネットワークができていったのですが、M&Aの時とはまた違ったショックを受けました。事業再生の際に関わる中小企業とM&Aの時に関わっていた中小企業では、当たり前のことかもしれませんが、レベルが数段違ったのです。M&A対象の場合、売却前提の会社となるので中小企業の中でも整っているという印象の会社が多かったです。しかし、事業再生対象の場合、中小企業の中でも弱っている会社のため、”解像度が低い”という印象の会社ばかりだったのです。世の中にある会社の9割が中小で、その中でもこうした”解像度が低い”という印象の会社がかなり多いことが衝撃的でした。
”解像度が低い”という印象は、具体的には、必要な資料を要求した際に全ての資料の用意がなかったり、売上の管理についてヒアリングをすると全て頭に入っているという回答が返ってきたり、というような状況から感じました。経営計画も策定しておらず、資金管理も銀行に借入に行く時だけ作るといったようなぼろぼろの状態でした。
――そこで中小企業に対する更なる課題意識を持たれたのですね。
はい、その通りです。
まず、多くの中小企業は、経営データを使えていないのではなく、そもそもデータ自体がないのだということを痛感しました。つまり、経験と勘の経営をされている方がほとんどだったのです。そこで、会計のプロとして採算分析等を実施し、会社の経営状態を可視化した結果、最初はコンサルを毛嫌いして真剣に話を聞いてくださらなかったような経営者の方も、耳を傾けていただけるようになり、経営データの重要性の理解もしていただくことができました。
それをきっかけに経営データの作成や経営計画・予算の策定、予実分析を徹底するようになり、どんどん良くなっていく会社が多かったです。会社の枠組みで業績を良くしていくことができるのだと感じた瞬間でもあり、やりがいを感じました。
――様々な企業を支援していった結果、次のステップへはどのような課題を持って進んだのですか。
独立してから2~3年は、事業再生に明け暮れる日々でした。その日々の中で、徐々に”管理会計の力を利用すれば、経営がもっと良くなるのでは?”と感じ始め、さらに事業再生をしていく中で、気付いたことがありました。我々が財務モデリングを作成することで、仮にその会社がその時良くなったとしても、結局”我々がいなくなったらまた悪い方向へ戻ってしまう”、つまり一時的な改善にしかなっていないということです。この課題を解決するために、誰もが自分自身で財務モデリング等を作成して経営を上手く回せるようになるにはどうすればいいのかを考えるようになりました。
そんな折に、周りを見渡したところMoney Forwardやfreeeが台頭して、『クラウド』を活用してバックオフィスで企業のサポートをするという活躍をしていることに気付きました。
この『クラウド』と自分たちのノウハウを掛け合わせれば、今よりもっと多くの中小企業を救えるのではないか、と考え2016年よりITに経営のリソースを全振りしてスタートした結果、Manageboardが誕生しました。
――いきなりシステムを作るというとかなり大変なイメージがありますが、実際はどうでしたか。
おっしゃる通り、何もない状態ですので何からすれば良いかも分からずかなり大変でした。
とりあえず頭の中にイメージはあったので、エンジニアにまず会いに行き、創りあげたいものを説明したのですが、全く興味を持って貰えませんでした。それもそうで、頭の中に出来上がっているイメージを相手にわかってもらうなんて無理な話ですよね。(笑)
エンジニアを諦めて外部の業者に丸ごとシステム開発のお願いをしようとも考えたのですが、これももちろんイメージの共有ができないという同じ問題が生じ、諦めました。
この他にも様々な選択肢をあたってみたのですが、結局自分らでやるしかないということに気付きました。そこで、社内に前職エンジニアの者がいたので、彼と2人でシステム開発に本業そっちのけで約半年の月日を費やして取り組みました。すると、驚くことに大枠のイメージ通りに動くものが出来たのです。この基盤が出来上がった上で、エンジニアに話を持って行ったところ、やっと創りあげたいものを理解してもらえて、雇うことができました。
その後は、資金調達にも成功し、2018年にManageboardを本格的にリリースできる運びとなりました。もともと、2016年頃からMoney Forwardとクラウド会計を広めようという活動をしていた関係もあり、Manageboardリリース後M&AでMoney Forwardにジョインしました。
――Money Forwardに入ろうと決意した経緯を教えてください。
正直なところ、直感です。
お声がけいただいてから、1ヶ月半ほど悩みましたが、ご縁を感じたこともあり直感的にジョインすることを決意しました。
――Money Forwardに入られてみて良かったことを教えてください。
言葉では表せないほど様々な感覚がありますが、強いて挙げるとすれば、Money Forwardに入ったことで、実現できるビジョンの世界観が明確になり、魅力的な仲間を集めやすくなり、かつ、Money Forwardのノウハウや知見を学びながら成長が加速している点がとても良かったと感じております。
日本SaaSの先駆者であり、教科書的存在のMoney Forwardが目の前にいてくれるおかげで、自分たちに欠けている点を教えてもらえるし、Money Forwardの良い点を盗ませてもらえています。また、当時は10数名でナレッジラボの経営をしていましたが、今では40数名まで人数規模が拡大し、仲間が一気に増えたことも嬉しかったです。素敵な人たちが多く、そんなメンバーと働けることが刺激的ですね。
――Manageboardをリリース後、Money Forwardに入られて数年でこれだけ拡大されているので、10年先20年先が楽しみですね。
3年前と今が全然違う状態ですので、10年と言わず今から3年後でもどうなっているのかワクワクします。
今までの活動は常に会計がベースにありました。これからは、会計をもっと世の中に広めていき、プロだけが担当する領域というイメージになってしまっている会計をもっと一般の方が利用できるようなものにしていきたいです。それが結果的に中小企業の支援になると考えております。
02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)
――仕事をするうえで大事にしていることについて3つ教えてください。
(1)ミッションとビジョンを明確にすること
監査法人勤務の時代や事業再生に明け暮れていた当時は、”今”に意識が行きすぎて、ミッションやビジョンなんてものは特に決めていませんでした。
しかし、IT企業に転換してヒトとカネが大切になった時に、ミッションとビジョンがないとその双方が集まらないと気付いたのです。
人が集まる状況というのは、自分が何を達成するために働いているかを理解している状況だと私は考えております。この”何を達成するために”というのが曖昧になってしまうと、景気が良いときは皆付いてきてくれるけれど、悪くなったときはどんどん離れていってしまいます。人を束ねる立場になったこともあって、この事実にここ数年で気付きました。最初の数名の時は、阿吽の呼吸でミッションやビジョンを理解しあえていることが多いですが、ヒトが増えた組織になると言語化がすることが大切です。
(2)チームで仕事をするということ
起業してから、世の中のためにインパクトを与えるような仕事をしたいと考えたとき、チームでそれをやり遂げたいと感じるようになりました。
ひとりだと、自分で何かを解決したとしても喜びを分かち合える人がいませんし、何よりできることの幅が小さくなってしまいます。つまり、自分ができることは限られているからこそ、自分とは違う能力を持っている色々な人を巻き込んで掛け算のアウトプットが出るようなことをしたいのです。
チームで大切なことは、3つの要素をいかに伸ばすかだと考えています。その要素は、メンバー毎の個性、その強み、メンバーとチームの関係性です。
良いチーム、強いチームになるためには、メンバーの強みにフォーカスすることが大切だと考えています。なぜなら、弱みは他のメンバーに補ってもらえますし、強みが伸びるように意識してもらえれば、個性も強みもチームとの関係性も全て良い方向に動きます。メンバー各々が強みを出してくれた方が結果的にチームの成長にかなり繋がりますよね。
(3)固定観念を持たないこと
これまでの経験から、固定観念を持たずに、やれることには何でもチャレンジしていくことが大切だと気付き、自分自身も常にチャレンジすることを心がけています。
会計士だからこれはやる、会計士だからこれはやらない、という考えは、はっきり言って損をしていると私は考えています。枠にとらわれずに仕事をしてみたら楽しいですし、やろうという強い気持ちがあれば何でもできると知ったからです。
とりあえず面白そうだからやろう!という行動が面白いものを作るきっかけにもなりますので、固定観念を持たずにこれからもチャレンジしていきたいです。
03. 会計士という資格を取って良かったこと
――国見さんが様々な経験をされてきた中で、公認会計士で良かったなと感じることを教えてください。
今この時代に会計士として様々なことに関与できていることが良かったと感じるところです。今まさに時代の節目にいると感じていて、会計の世界でも様々な変革が生じています。例えば、20年ほど前は会計のデータは全て紙で処理されており、貴重なデータにもかかわらず会計士や経理しか触れられないようになっていたため、そのデータを利用したり分析したりする人がほとんどいませんでした。
今では、会計データはクラウド化され、誰もがアクセスできます。会計データと勤怠データ等の様々なデータも繋がっているため、ひとりひとりの日々の行動と会計データの繋がりが可視化され、誰もが自由に分析できるようになりました。会計とテクノロジーの掛け合わせがどんどん進化しているのです。
こういった変革の時代に会計士として関われたからこそ、会計をベースに様々な結果を出せたのだと感じています。また、会計をもっと色々な方の身近な存在にするために自分自身がやりがいをもってチャレンジできています。
ナレッジラボさんのWEBサイトはこちら
https://knowledgelabo.com/
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