公開日:2021/11/11
起業家を目指し、スタートアップ&ベンチャーキャピタルで活躍する、今野大輝のキャリア!
今回のロールモデルは、CPAのOBでもあり、大手監査法人を経て現在はスタートアップ企業の経営とベンチャーキャピタルにてミドル・バック業務を担っている今野さんです。ベンチャーキャピタル・スタートアップ・CEOといった分野に興味のある若手会計士の方は多いと思います!仕事や人生の可能性を広げるご参考に、ぜひご覧ください!
今野大輝さんのプロフィール
今野 大輝
上智大学経済学部卒業後、早稲田大学大学院に入学。大学院1年次に東京CPAにて公認会計士試験合格後中退、2017年有限責任監査法人トーマツ(TS事業部)に入所。主に、IPO準備会社からIPO直後のミドルマーケットの企業を中心にIPO支援/財務諸表監査/内部統制監査などに従事。2020年3月に、既存産業×テクノロジー領域で新規事業を創出するコンセプトの会社XTechへ入社。主に管理系業務のBPO/コンサル/SaaS事業を軸としたBizSuiteへ出向し社内ベンチャー立上げに従事すると共に、XTech Ventures(ベンチャーキャピタル)にて、ミドル・バック業務に従事している。
今野大輝さんの略歴
2016年:公認会計士試験論文式試験合格。
2017年:有限責任監査法人トーマツ東京事務所 入所。
2020年:XTech株式会社 入社。
01. キャリアの変遷、展望
――今野さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。
大学受験当時目指していた大学に落ちてしまったことでコンプレックスを抱いたことが大きなきっかけでした。コンプレックスを克服するため①大学時代に高い目標に挑戦し自信を持ちたかったこと、②一般的に年収1,000万円を超え、大都市で勤務できる会計士という資格が魅力的だったこと、の理由から勉強を始めるに至りました。そして論文式試験合格のタイミングでキャリアの道筋について、今一度考えました。既にコンプレックスは解消されており、本当に自分がやりたいことは何かというのを考えたとき、公認会計士としての専門性を活かした独占業務とは別の形で世の中に何か価値あるものを提供する仕事をしたいと思いました。また中小企業の経営者である父の影響もあり、自分も将来起業して経営者として大きい会社を引っ張っていきたいという気持ちがありました。特に上場企業の経営者に対する憧れがあったので、最初の監査法人でのキャリアは上場支援業務、いわゆるIPO業務を選択しました。
――監査法人時代はどのように過ごしていたのでしょうか?
トーマツではTS(トータルサービス)という部署に所属していました。私がTSを選んだ理由は①経営者は常に会社全体を俯瞰的に見る必要があるため、クライアントや監査を早いうちから大局的に学べるように比較的小規模クライアントの監査を希望していたこと、②将来的に自分が起業した会社を上場させることを考えるとIPO関連業務の経験が必要と考えたこと、の2つでした。3年間、上場企業への金融商品取引法監査、会社法監査、IPO関連業務など幅広く色んな業務に関与しました。特にグローバルに展開する上場企業で海外の構成単位の監査人と英語でコンタクトしながら監査を行ったことや、自ら手を挙げて当時流行っていた仮想通貨のベンチャー企業の監査に関与できたことは貴重な経験でしたね。それ以外に、興味のあったテクノロジー系の会社の監査も関与させていただきました。
――XTechに行くことになったきっかけはなんですか?
一言でいうと起業の疑似体験をしたかったからです。3年間監査法人の経験を積んでみて、改めて起業には起業の経験が必要だと思いました。さまざまな選択肢がある中で、私の中で2つの軸を持ちました。それは①資本金や会社の規模が小さく、立ち上げて間もない創成期の会社で経験を積むこと、②Fin TechやHR Techといった◯◯×Techが流行している中、テクノロジーに精通しているビジネスでないとIPOが出来るような大きなビジネスは立ち上げられないと考えたため、TechやITを絡めた新規事業を創出できる環境があること、でした。その2つの軸を元にエージェントの方から話を聞いたり、採用媒体を自分で検索し情報収集したりする中、既存産業とテクノロジーの掛け算で新規事業を創出するというコンセプトのXTechを見つけ、応募をしました。XTechは新規事業を創り続けていて、社内ベンチャーも積極的に行なっており約15社の新規事業の子会社が独立してあります。そうした環境に身を置くことで、新規事業の立上げに初期段階から関わることができると思い、飛び込みました。正直な話、スタートアップへの転職は不安もありました。ただ入社することを決断した時点では夢の実現の第一歩としての挑戦だと前向きな気持ちでした。
――今野さんはXTechで何をされているのか、教えてください。
起業をしたいという話をしたところ、社内ベンチャーのBizSuiteにて会社立上げをやらないかと提案してくれました。BizSuiteの立上げ期から参加させてもらったので、本当に貴重な経験を積むことができています。BizSuiteの事業として大きくは、①BPO事業、②コンサルティング事業、③SaaS事業の3つのサービスがあります。具体的には、①は管理系業務のアウトソーシング、②は将来の業容拡大を見据えた業務標準の作成、IPOコンサル、再生コンサル、③は月次決算の早期化・効率化をサポートするSaaSを提供しています。入社したてから、大企業向けに営業にいくこともありましたが、営業経験もなく立上げ期でマニュアルなどもなかったので、どのようにご提案をすれば良いか全く分からず固まってしまったことは苦い思い出ですね。
また、XTech Ventures(ベンチャーキャピタル)でミドル・バック業務も実施しています。具体的に①ミドル業務では投資先の会社の資金繰りや財務指標の確認などによる投資後の継続的なモニタリング、②バック業務ではXTech Venturesの管理業務全般の統括を行っています。定期的に投資先から管理業務全般のご相談を頂くので、オンラインでクイックに投資先のご相談に乗らせて頂いたり、ご興味ある投資先には実際にBizSuiteとして支援をさせて頂いております。
――BizSuiteに出向した当初苦労されていたと伺いましたが、それについて教えてください。
監査法人では定型業務が多かったのに対し、BizSuiteでは営業・マーケティング・採用など経験したことのない初めての業務ばかりでした。会計士が入社してきた、という会社からの期待も感じていましたので、期待ギャップを少しでも減らせるよう精一杯頑張りました。当然、メンタル的に相当な負荷がかかっていて、特に最初の3か月は今までに経験したことがない程メンタルがどん底に陥りました。週に10回くらいは逃げたいと思っていました。でも逃げずにここまで走ってこられたのは、“起業したい”という気持ちに対してプライドがあったからでしたね。
――BizSuiteでのチャレンジを乗り越えられた秘訣はなんですか?
メンタルがどん底に陥っていたとき、社長の多治川から自分なりのリカバリープランを持つように指導を受け、克服しました。具体的には自分のメンタルの状態を普段から意識的に把握し、オリジナルの整え方で立て直すことです。メンタルの負荷にどこまで耐えられるのかは人によって異なりますが、自分のメンタルの限界を知っておくことで手遅れになる前にリカバリーできるので、とても大事だと思います。最近はこのメンタルコントロールがうまくいっているように感じます。
また、精神的な負荷を感じる要因として人間関係で過度に気を遣い疲弊してしまっていたことに気づきました。そこで自分にもメンバーにもお客様にも、とにかく誠実に向き合うことを意識した上で、より素直なコミュニケーションをとるようにしました。すると、自然と信頼関係を構築できるようになっていきました。
入社して1年経った今、ようやく自分の中での動きが変わったことを実感しますね。初めての業務であった営業や採用なども徐々に経験を積む中で、より主体的に動けるようになりました。最近では社外含めて良い評判を頂くことも増え、自分の成果を大きく実感できています。
――XTechに入社して感じられるやりがいはなんですか?
大きく分けて2つあります。
(1) 経営者目線で物事を見ることへの実感
BizSuiteの代表取締役である多治川をはじめとして、グループ内外の経営者の方と関わりながら働いていることで日々刺激をもらっています。振り返ると、経営経験を積まれた方とのコミュニケーション頻度は、転職前と転職後で大きく変わりましたね。監査法人在籍時は、経営者の方とお話する機会は年に数回程度でしたが、現在は日次で数回というのもざらにあります。また、経営会議に参加し、経営者目線で自分の意見を言う場もありますので、必然的に経営者目線を求められます。
(2) 多様な仕事
先程もお話したように、営業から採用まで幅広く業務を行っています。事業自体がコンサルティング事業、BPO事業、SaaS事業など幅広く、お客さまの既存のシステムの見直しなど含めて管理業務全般を全て担うので、多種多様な仕事ですね。大変なこともありますがやりがいはあります。
――今野さんが今後付けていきたい力について教えてください。
営業力に尽きます。事業説明をし、お客さまの課題を引き出してより適したサービスをご提案することは、BizSuiteの提供できる価値を認めていただくのに必要不可欠だからです。また、これは資金調達や採用など多方面に通じていくスキルとも考えています。営業力をつけて、周りの人を巻き込んでいきたいですね。
――今野さんの今後のビジョンについて教えてください。
起業して経営者になりたいと思っています。これは会計士試験合格後からずっと思っていたことなので。XTechであれば社内制度を利用して起業するという選択もできますし、会社を出て自分で起業するという選択もあるかと思います。
02. 仕事する上で大事にしていること(仕事論)
――仕事をする上で大事にしていることについて3つ教えてください。
(1)会社目線で考えること
例えばですが、目の前のお客様や自分のことを考えると“ちょっと忙しいからこの業務は別の部署に”と思ってしまう瞬間があるかと思います。その時に、会社目線で考えると、その業務を誰が担うべきか、どういう意思決定をすれば会社にとって最適解となるか自ずとわかります。そういった経営者目線はXTechに入社してから徹底的に叩き込まれました。取締役のご経験が豊富な方々と日々ご一緒する中で、ご指摘を受けながら養われたと思います。また、クライアントに対しても担当者レベルではなく会社の全体最適を意識してサービスを提供しています。
(2) 信頼を得るためにやり切ること
単純なことですが、約束を守ることに尽きますね。人から任された時にやり切ることをしていかないと誰も次に任せたいと思いません。結果的に社内のメンバーやお客さまの信頼を失いかねません。一度やると約束したら、誠実に向き合って相手の期待に一つずつ応える。丁寧に約束をやり切っていくことで、社内のメンバーやお客さまの信頼が得られます。
(3)仕事の振り方
仕事が忙しくなり、自分がやり切れないことを理由に部下に仕事を下ろすのは絶対にNGです。部下に仕事を振る時には、仕事を「下ろす」のではなく「任せる」ことが大事だと思います。相手の向き不向きのみを基準とするのではなく、部下が理想とするキャリア像へと少しでも近づけるように意図して仕事を任せるように意識しています。部下の相談に真摯に向き合った上で、“成長を促すためにこの仕事をやって欲しいと考えている”という言い方をすることで部下の仕事に対するやる気も変わり、会社全体に良い影響を与えられます。
仕事において①会社目線で考えること、②信頼を得るためにやり切ること、③仕事を任せて振ることを大事にすることで私自身にも会社にも良い影響を与えることができているのを強く感じます。
03. 会計士という資格を取って良かったこと
――今野さんがさまざまな経験をされてきた中で、公認会計士で良かったなと感じることを教えてください。
(1)自信がついたこと
大学受験で失敗してしまい、コンプレックスを抱え自信を喪失していましたが、会計士試験に合格したことで「なんでもやればできる」と自分を信じられるようになりました。そして自信を得たことで、人生に対して前向きにチャレンジする姿勢がつきました。今でも、「なんでもやればできる」というマインドはスタートアップにて色々なチャレンジをする上での大きな支えとなっています。
(2)肩書きによる箔
会計士という肩書きによって箔がつき、仕事上のチャンスに恵まれていることを感じます。資格を持っていなければ入社できなかったような会社に入社できたり、お会いできなかった部長や役員クラスの方々とお会いできたり、今のポジションを任せてもらえたりと、会計士という肩書きがあるからこそチャンスを頂けていると思います。
また、肩書きのおかげで顧客からの信頼も得やすいことを感じます。部長や役員クラスの方々と実際にお会いすると、自分の年齢では身に余るくらいの信頼をして頂けることが多く、対等にお話をすることができます。会計士という肩書きのおかげで、最初から信頼を置いてもらっていることを感じます。
(3)受験生時代の知識
仕事をする上で活きる幅広い知識を習得できました。スタートアップで色々なことに挑戦していく中で、常に新たに知識を得ていく必要がありますが、会計、税務、会社法、経営といった会社に関するベースとなる知識があることで、他の人より理解するのが早いことを感じますね。受験生時代に一生懸命学んだ知識は今でも活きています。
04. 今野大輝さんから論文生や若手会計士に伝えたいこと
――論文生や若手会計士へのメッセージをお願いします。
私は、会計士がファーストキャリアでスタートアップに進むことも良い選択だと思います。監査法人に行くという流れに乗る必要は全く無く、スタートアップは未知だと思いますがそれを「怖い」と思ってしまうのは非常に勿体ないと思います。在学中合格の大学生は、監査法人勤務をする前にスタートアップでインターンをしてみると良い経験になると思います。
監査法人3年、スタートアップ1年半という4年半の知見がある今、仮に私が就活生に戻れたとしたら、私は元々起業して会社全体の舵取りを行う経営者になりたかったので、監査法人にはいかずスタートアップに飛び込んでいきますね。CEOを目指すのとCFOを目指すのとで違うと思いますが、CEOであれば監査法人勤務の経験は必須ではないと思います。
CEOは経営全体の責任を負った立場の役職である一方、CFOは最高財務責任者の役職なので、CFOを目指すのであれば監査法人での勤務がCFOとしてのベースになってとても有意義な経験になると思います。
現在監査法人で勤務している方には、何よりも興味のある分野について、主体的に手を挙げて取り組むことが大事だと伝えたいです。百聞は一見に如かずという諺にもあるように、机上で学ぶより経験した方が早いからです。チャンスが来たら果敢に挑戦していってください。失敗も含め色々な経験をしながら学んでいくというマインドでいれば良いと思います。
また何年くらい監査法人で勤務をするのが良いかというのは、それぞれのキャリア次第で絶対の正解はないと思います。起業やその他監査業務と違うことをしたいと思うのであれば、今すぐにでも辞めて良いと思います。スタートアップのCFOや会計の専門家としてキャリアを進みたいのであれば、監査法人は非常に良い経験ができる組織だと思うので、自分なりに腹落ちするまで勤務するのが良いと思います。
最後になりますが、皆さん、就職する時に立てたキャリアプランを忘れず、必要があれば修正しながら自分の決めた年数でやり切ってください。
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