公開日:2022/10/21
経理の視点から会社を突き動かす!齋藤和也(ブルタイム株式会社 代表取締役)のキャリア!!
今回のロールモデルは、ブルタイム株式会社 代表取締役、齋藤和也さんです。齋藤さんは、監査法人でキャリアをスタートさせた後、ベンチャー企業を経て、ブルタイム株式会社を設立されました。また、現在は経理スクールも経営されています。今回齋藤さんには、独立する過程での困難や心構え、経理スクールへの想いなどをお聞きしましたので、ぜひご覧ください。
齋藤和也さんのプロフィール
齋藤 和也
ブルタイム株式会社 代表取締役
女性向けオンライン経理スクールCuel 創業者
公認会計士
PwCあらた有限責任監査法人を退所後、AIやセキュリティソリューションを開発するスタートアップ企業に上場準備や経営企画、財務の責任者として転職。その後独立し、複数のスタートアップのコンサルや社外役員に就任。2019年よりオンラインの経理スクールを開始。
齋藤和也さんの略歴
2008年 公認会計士試験論文式試験合格
2009年 PwCあらた有限責任監査法人に入所
2018年 ブルタイム株式会社代表取締役就任(現任)
2019年 オンライン経理スクールを開始
01. キャリアの変遷
――齋藤さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。
会計士を志した一番のきっかけは、大学1年生の時に受けた簿記の授業です。簿記を初めて学習した際に自分の肌に合う学問だなと感じたため非常に興味を持ち、簿記を極めたいという思いから会計士の受験を決意しました。また、会計士は難関国家資格であるため、そのような資格を持っておけば自分の強みになると考えたことも理由のひとつです。
――受験生時代から独立は意識されていたのですか?
受験勉強をしている時から独立はかなり意識していました。受験生時代から合格したらどのようなキャリアを歩みたいかについてかなり考えていたのですが、やはり独立という選択肢が私にとっては魅力的でした。どのような分野で独立するかは決まっていないものの、独立することは決めているというような状況でした。
――新卒で通常の監査部門ではなくアドバイザリー部門に行くという選択をされましたが、どのようなお考えがあったのですか?
この選択も将来的な独立を念頭に置いたものでした。独立にあたって何か自分なりの武器を見つけておきたかったのですが、監査業務よりはアドバイザリー業務の方が武器を見つけやすいのではないかと考えました。
――アドバイザリー部門ではメガバンクのニューヨーク上場支援なども行っていたのですよね?
当時は国際会計基準(IFRS)が全盛期であり、私が担当したメガバンクからも日本基準からIFRSにコンバージョンしてニューヨーク上場したいという依頼がありました。そこで私は日本基準とIFRSのギャップを分析して、コンバージョンすると財務数値のどこにどのようなインパクトがあるのかを算出しました。また、仕訳や開示資料の作成なども支援しました。
1年のうち8割近くはこの案件に関わっていた一方で、残りの2割でデューデリジェンスや通常の監査業務にも触れることができたため、アドバイザリー部門では様々な経験を積むことができたと思います。
――6年間ほど監査法人で勤務されたあと、ベンチャー企業に転職されます。どのような心境の変化で転職に至ったのですか?
理由は3つあります。1つ目は、メガバンクのニューヨーク上場という大仕事をやり遂げ、達成感を感じたからです。ニューヨーク上場は新聞に掲載されるほどの大仕事であり、自分の仕事が世の中に知られたということに大きな喜びを感じました。同時に、自分はIPOのような大仕事に達成感を強く感じるタイプだと知り、ベンチャー企業のIPOに興味を持つようになりました。2つ目は、ルーティンワークが自分に向いていなかったからです。監査業務のように毎年同じ時期に同じ業務が回ってくる仕事はあまり得意ではなく、逆に成長途中の会社を支えていく方が性に合っていると感じていました。3つ目は、将来的に独立した際の武器を作りたかったからです。転職時ももちろん将来的な独立は視野に入れており、ベンチャー企業での業務を通じてスタートアップ支援という強みを磨きたいと考えました。
――実際に転職された後はどのような業務を行っていたのですか?
経理業務や財務管理から、経営企画や開示、IPO対応に至るまで非常に多様な業務を行っていました。監査業務やIPO準備業務の経験しかなかったにも関わらず、様々な業務を依頼され、初めは何から手を付けていいかわからないような状況が多々ありました。そのため、監査法人や証券会社、CFO業務に詳しい友人など様々な人に助けを求めながら、自ら手を動かして答えを導いていく日々が続きました。監査法人にいたときの100倍は大変でしたね(笑)。
02. 独立後の歩み
――ベンチャー企業で1年ほど勤務された後、ついに独立を果たされます。どのような理由で独立に至ったのですか?
独立の理由は2つあります。1つ目は、一通りCFO業務を経験することができたからです。ベンチャー企業で経験を積み、CFO業務を独立する上での武器にできるという状況になったため、独立に踏み切りました。2つ目は、会社の上場が難しい状況になってしまったからです。上場を目指して内部統制や財務情報の整理を進めており、あとは業績が伸びてくれば上場できるというところまでこぎつけたのですが、肝心の業績がなかなか伸びませんでした。上場が遅くなってしまうとそれだけ独立の時期も遅くなると考えたため、社長と相談して上場前に独立するという形になりました。ただ、決して喧嘩別れになったわけではなく、社長と私でお互いに納得して出した結論でした。
――独立した後はどのような困難があったのですか?
独立した当初は、お客さん0人、仕事仲間も0人というような状況だったため、とにかく孤独で大変でした。お客さんを獲得しに行こうにも営業の経験がないため、名刺を作ってたくさんのイベントに参加し、たくさんの人に名刺を配ることで自分を売り込んでいました。最初の1、2年は貯金を取り崩しながら生活するような状況だったため、不安や焦りでしっかり眠れない日々が続きました。
業務内容についても、独立初期は本業のスタートアップ支援業務よりも、スポット案件として税務相談やデューデリジェンスを依頼されることが多かったです。また、会計士に仕事を斡旋してくれる会社があったので、そちらに登録して仕事をいただくこともありました。生活を維持していくためには仕方のないことですが、やはり本来やりたかったスタートアップ支援を思うように行えなかったことは辛かったです。
――スタートアップ支援に本格的に従事されたのはいつ頃からですか?
独立して3年経過した頃からだと思います。1、2年目で経験したことが3年目でやっと実を結び、上場準備始めたての企業に対するコンサルティング案件を勝ち取ることができました。
――独立から現在に至るまで様々な課題に直面されたと思います。そのような課題にはどのように対処してきたのですか?
過去の経験や知恵を使うこともあれば、その論点について詳しい人に質問しに行くこともありました。いずれにしても、たくさんの本を読んで学んだり、たくさんの人に名刺を配って人脈を広げたりといった経験が、現在の課題解決に活かされていることは間違いありません。特に会計士は狭い業界であるため、人と人との繋がりを大切にしてネットワークを構築しておくことは非常に武器になると思います。この記事を読んでいる皆さんにも、ぜひ人と人との繋がりを大切にしていただきたいと思います。
――現在はスタートアップ支援の他に経理スクールの経営も行っていますが、どのようなきっかけでスクールを立ち上げたのですか?
スタートアップ企業を支援する過程で、ベンチャー企業に経理人材を育成する環境がないという問題点に気付いたことがきっかけです。ベンチャー企業は人手不足のため、経理人材を十分に教育できず経理体制が脆弱になってしまいがちです。脆弱な経理体制はベンチャー企業のIPOを阻害するため、経理人材の教育不足が結果としてベンチャー企業の成長をストップさせてしまうことにもなりかねません。経理人材の教育不足を解消しベンチャー企業の成長に貢献するため、経理スクールを立ち上げました。
経理スクールでは、会計ソフトの入力や入出金管理などの基本的なスキルから、事業計画書の作り方や資金調達に必要なKPI設定などの実務的な知識まで、幅広い内容を教えています。また、単純な座学にとどまらず、ゼミや勉強会といった形で受講生と交流する場も設けています。
――齋藤さんの今後のキャリアビジョンを教えてください。
今後3~5年くらいは経理スクールの業績をしっかり伸ばしていくつもりです。そしてそこから先は、第二創業のような形で起業家として人生を歩んでいきたいと考えています。将来的には、専門知識を切り売りする士業的な働き方から、事業の仕組みそのものを構築する働き方に移行していきたいというイメージを持っていますね。
03. 齋藤和也さんの若手会計士へのメッセージ
――若手会計士にメッセージをお願いします。
監査業務ひとつひとつに目的意識を持って取り組むことが大切だと思います。入所1~2年目では、昨年の監査調書を見てその通りに作業を進めてしまうことも多いかと思いますが、「何の目的でこのような調書を作っているのだろう」とか「この勘定科目にはどのような意味があるのだろう」といった、目的意識を持つか持たないかで成長速度が遥かに違うと思います。
私自身、監査法人時代は監査業務に対するやる気があまりなく、前年調書をそのままコピーしたりしていました。しかし、現在のスタートアップ支援業務には監査法人時代の経験を活かせるものもあり、監査業務に目的意識を持ってやっていればもっといいアドバイスができるのにと思うことがあります。同じような後悔をしないためにも、皆さんには目的意識をもって監査業務に取り組むことをおすすめします。
この記事を書いた人
「人と繋がり、可能性を広げる場」CPASSを運営するスタッフ達です。CPASSメンバーは、20~40代まで幅広い年齢層の公認会計士達を中心に、キャリア支援のプロフェッショナルなど様々なバックグランドを持つメンバー達で構成されています。「絶対に会計人達の役に立つ情報発信する」、「CPASSにしか出せない価値を提供する」をミッションとして集まった熱いメンバー達です。CPASS独自の視点からの見解を是非、楽しんでください。
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