公開日:2024/07/01
【関西会計士のロールモデル】スタートアップ支援を通じて日本経済の再興を目指す!中辻仁(マジリス株式会社代表取締役CEO)のキャリア!
今回のロールモデルはマジリス株式会社代表取締役CEOの中辻仁さんです。
中辻さんは監査法人でキャリアをスタートさせた後、事業会社、スタートアップを経てマジリス株式会社を起業されました。
中辻さんには会計士を目指したきっかけから起業に至るまでの経緯、そしてこれから目指すところなど様々お話しいただいたので、是非ご覧ください!
中辻仁さんのプロフィール
中辻仁
株式会社マジリス 代表取締役CEO
公認会計士 米国公認会計士
23歳 公認会計士合格→EY新日本有限責任監査法人へ入所
26歳 米国公認会計士合格
27歳 米国留学
28~30歳 EYのFASでM&Aアドバイザー
30~32歳 大阪ガスで海外資源投資
33~36歳 大阪ガス子会社への出向でイギリス赴任
37歳~ スタートアップ転職
40歳~ マジリス株式会社起業
INDEX
①会計士を目指したきっかけ
②転職のきっかけ、転職先での経験
③起業のきっかけ、目指すこと
④若手会計士へ伝えたいこと
01.会計士を目指したきっかけ
ーまず、中辻さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。
高校時代はアメフトばかりしており、内部進学で大学受験もなかったので勉強を全然していませんでした。そこで、大学では勉強をしないといけないなという思いに駆られました。その中でサラリーマンにはなりたくないなという思いがあり、そうであれば資格を取る必要があると思ったため、弁護士か会計士のどちらかを取ろうと考え、数字が好きだったので会計士を目指しました。
ー勉強を始めた時期はいつ頃ですか。
大学一年生ごろから簿記の勉強をしており、二年生の時に簿記一級に合格し、それから本格的に会計士試験の勉強を始めました。そして一回の受験失敗を経験し大学を卒業した年に合格しました。
ー合格後の就活事情はどの様な感じでしたか。
J-SOXや四半期レビューが導入された時期で人手不足だったので売り手市場でした。
ーその中でEYに決めたのはなぜですか。
雰囲気が大きいです。就活をしていた当時はBig4の違いがあまり分からず、就活の時に話した方の雰囲気が良かったEYに決めました。
ー就活時には東京に行くという選択肢はなかったのですか。
当時はなかったですが、今思えば東京に行っても良かったかなと思います。
ーそれはどういった点ですか。
やはり、規模や業務の幅、人脈が全然違うので就活時に東京に行っても良かったかなと思うことはありました。
ー会計士試験合格時、どういう会計士になりたいと思っていたのですか。
それは明確で、会計士に受かる前から海外で仕事がしたいと思っていました。そこでMBAかUSCPAを取りたいと思っていたのですが、MBAは難易度が高いと感じたので、USCPAを取得し、その後海外留学を経てからMBAを目指すという計画を立て、まずはUSCPAの取得を目指すことにしました。また、会計士資格だけでは生きていけないと考えていたので、プラスアルファで掛け算が必要だと思っていました。当時、英語ができる人があまりおらず英語×会計で差別化ができると思い、その結果USCPAを目指すことにしました。
ーUSCPAはどのタイミングで取られたのですか。
監査法人で修了考査前の時期に取得しました。仕事も凄く忙しかったので時間がない中での勉強となり、かなりしんどかったです。
ーUSCPAとのダブルライセンスのメリットはどのようなところがありますか。
説得力が増すことだと思います。資格があるだけではお客さんに対してのバリューアップにつながるとは思わないので、時間があるならUSCPAを取ると良いとは思いますが、実務経験を積む方が大事だと思います。
02.転職のきっかけ、転職先での経験
ー監査法人ではどのような業務をされていたのですか。
金商法の会計監査とリファーラルと呼ばれる親会社が海外にある外資系企業の日本の子会社の監査をしていました。
ーアメリカ留学後にEYのFASに行かれたと思いますが、その経緯を教えてください。
留学中にキャリアを迷っていた中、本で投資銀行の仕事を知った時に、かっこいいなと思ったのがきっかけで投資銀行に行きたいと思いました。投資銀行に行く方法としては、MBAを取ってキャリアを変えていくか、一旦FASに行ってから投資銀行に行くか、FASに行きながらMBAの勉強をすれば両方リスクヘッジができると思い、FASで働きながら勉強することにしました。しかし、働き始めるとFASでの仕事が想像以上に忙しく時間を取ることが出来ず、成績も上がらなかったため、MBAについてはあきらめてしまいました。
ーその後、大阪ガスにはどうして行かれたのですか。
FASの次のステップとして投資銀行に行きたいと思い転職活動をしていたのですが、リーマンショック後で市況もあまりよくなくIBDの採用もものすごく絞られており、IBDの経験者でないとかなり難しい状況でした。結果IBDには行けなかったのですが、今までM&Aをしてきたので続けていきたいという思いがあり、事業会社かつ海外もいける可能性があるところへ転職したいと思いました。更に関西に帰りたいという思いも重なり、大阪ガスへの転職を決めました。
ー初めて事業会社に行くにあたって不安はなかったのですか。
凄くありました。初め驚いたのは会話が成り立たないという事です。今まで減損など問題なく通じていた言葉が通じなくなり、コミュニケーションの部分で苦労しました。また、部署には会計士の方がほとんどおらず不安でした。
ー大阪ガスでの最初の三年半は日本でどういったことをされていたのですか。
海外資源事業部というM&Aを行う部署に所属し、M&Aに関する減損対応やファイナンス、資金調達のスキームを考えたり監査法人対応をしたりしていました。それに加え、M&Aの戦略を作り投資銀行を回って営業活動をするFASに近いような仕事をしたり、移転価格の交渉等も行っていました。グローバルの仕事をほとんど全部やっていました。
ー後半の三年半でのイギリス駐在の業務はどの様な感じでしたか。
まず、駐在先の子会社では日本人がほとんどおらず、業務もほとんど全て英語だったのでその時に英語は一番伸びたと感じます。業務の内容としては親会社がスウェーデンGAAPを採用していたのでスウェーデンGAAPを日本基準に直し、連結の処理をしていました。また、タックスヘイブンの検討やグローバルな税務・ファイナンス、M&A業務、経営企画などバックオフィス業務を全て行っていたという感じでした。
ー海外駐在の後、スタートアップにはどういう経緯で行かれたのですか。
元々会計士を目指した理由の1つにサラリーマンになりたくないなというのがあり、大阪ガスでの仕事自体は楽しかったのですが、会計士資格を持って事業会社で働いていると全然リスクを取っていないなと感じ、当初考えていたことと違うと思いました。また、海外駐在先が規模の小さい会社でスタートアップに近い感じがあり、その中でスタートアップで勝負したいなという思いが芽生えました。
ースタートアップではどの様な仕事をされていたのですか。
初めは管理部長的な役割でガバナンスを整えることをして、ファイナンスも担当していたので、管理部長兼CFOのような役割でした。それに加えてIPO準備も並行して行っていました。
ー初めてやる業務が多かったと思うのですが、そこはどの様にキャッチアップされていたのですか。
特にしていたことはなく何とかなったという感じです。監査法人の時に小さい会社を監査することが多く全体を見れていたという経験と海外駐在先が小さな規模の会社だったことが大きかったかもしれないです。ガバナンスの構築の仕方なども学ぶことができたのが良かったです。
03.起業のきっかけ、目指すところ
ーこのタイミングで起業されたのはなぜですか。
起業するとなると初めの数年は仲間を集め仕組みを作る等しんどいだろうと思っていて、年齢的に今の時期がラストチャンスかなと感じました。また、経験値や人脈を含めて今が一番脂の乗っている時期なので起業することにしました。失敗してもCFOや監査をして生きていけるだろうというのもありました。
ー中辻さんの場合そのような心配をする必要はないとは思いますが。
かなり焦りを感じています。士業は無形資産を積み上げるゲームだと思っていて今の知識は劣化していきますし、知識や経験を積み上げ続けないと腕が下がっていくので常に危機感があります。
ー起業をしてこれから目指すところを教えてください。
いまのところ具体的に大きなビジョンはないです。しかし、海外生活が長く、その中で日本経済の衰退を感じている一方、サービスの質が高く、人や治安も良い日本は素晴らしい国だと思うので、日本経済に貢献できればよいなとは考えています。その中で、スタートアップは成長を加速させる1つのツールだと思っているので、スタートアップ支援を続けていきたいと思っています。
ーマジリスの事業内容を教えてください。
スタートアップの支援と主に上場会社を対象とした海外ガバナンスの二つを軸にしています。
ーマジリスという会社の名前の由来を教えていただけますか。
「merge」と「Iris」の造語です。「merge」は結合するという意味で「Iris」は虹の女神です。お互い知識を結合し成長していけたらいいなという思いを込めてこの名前にしました。
04.若手会計士に向けて伝えたいこと
ーこれから会計士になっていく方に向けてお勧めの一冊などあれば教えてください。
専門書よりもリベラルアーツを学ぶことをお勧めします。私自身が歴史の本や哲学書を読むことをよくしていて、そうすることで物事を構造化することができるようになりました。専門書はHOWにあたるものだと思っていて、環境が変われば役に立たなくなってしまいます。しかし、リベラルアーツはOSみたいなイメージですぐには知識にならないですが、長期的には効果があると思います。専門書であれば、プログラミングや英語、株を勉強するのが良いと思います。会計に強い人は沢山いるので、そこで勝負して勝つことは相当な努力が必要ですが、会計とそれらを掛け合わせるだけで希少な人材になれるので、会計と違うことを勉強する事をお勧めします。
ー仕事をする上で大切にしていることはありますか。
あきらめないことです。今までの経験から、ほとんど全てのことはあきらめなければ何とかなるということを学びました。人の能力はほとんど同じだと思っているので、差が出るのはあきらめないかどうか、最後まで頑張れるかどうかによると思います。気合と根性であきらめないというスタンスは非常に大事だと思います。
ー最後に若手会計士に伝えたいことはありますか。
人生は逆張りした方がいいと思います。人と違うことをすることは怖いですが、逆張りする方が長期的に見たらその人にとってプラスになっていることが多いと思います。周りを見ていても逆張りしている人の方が成功している人が多いと感じます。人と同じことをしていても同じリターンしか得られないので人と違うことをやる方がよいと思います。監査法人に行って他の会計士と同じように順張りするキャリアもありだとは思いますが、少し違った会計士になりたいという思いがあるなら、逆張りした方がより高みに行ける可能性が高いと思います。