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公開日:2025/07/22

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公認会計士・梶原さんが語るキャリアの軌跡

はじめに

本インタビューは、若手会計士に向けた実践的なメッセージです。梶原さんの学生時代から監査法人への就職、そしてスタートアップ企業への転身、さらには独立に至るまでの実体験を通して、挑戦する意義や自分自身の可能性を信じる大切さをお伝えします。

会計士を志したきっかけ

――まず、会計士を目指すに至ったきっかけを教えてください。

梶原:「会計士を志したのは、高校1年生の頃でした。山田真哉先生の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』を読んだとき、数字を武器にビジネスを語る仕事が存在することを知り、『こんな仕事があるんだ!』と強く感銘を受けました。あと、元々自己肯定感が低いので『公認会計士』という資格の響きが『かっこいい!』と思ったことも目指すきっかけの一つです(笑)。」

大学時代と監査法人での経験

――次に、大学進学や試験勉強のエピソードをお聞かせください。

梶原:「同志社大学に進学しました。大学1年の冬にTACに申し込み、2年生直前から会計士試験の勉強を始めました。はじめて受験した2011年5月短答では、ボーダーが73%に対して、72.6%で不合格という結果でした。この時の悔しさをバネに勉強方法を徹底的に見直しました。その結果として同年12月の短答式試験で無事に合格し、2013年には論文式試験もなんとか突破できました。」

――その後、トーマツを選んだ理由について教えてください。

梶原:「実はBig4の中ではトーマツだけを受けました。大学のゼミの先輩がトーマツで活躍されていたことや、説明会に参加した際に、日々の仕事や監査業務のやりがい、チームで働く楽しさを熱くお話しされていて『ここなら自分も成長しながら楽しく働ける』と確信していました。実際、入社後には説明会でご一緒した先輩とお仕事をすることが多く、楽しく日々学びを重ねることができました。」

――具体的にはどのような部署に配属され、どのような経験をされましたか?

梶原:「入社後は当時の大阪監査第6部門に所属することになりました。トーマツは『体育会系』という印象を持たれることが多いですが、そのトーマツの中でもとびきり『体育会系』と呼ばれる部署でした。チューターを務めてくださった先輩は、東大阪出身で少し型破りながらも、社会の厳しさや現場のリアルな部分を身をもって教えてくれた先輩でした。毎日のように怒られ、苦労はありましたが、後のキャリア形成において大変貴重な財産となった気がします。

業務内容としては、トーマツに在籍していた約6年間一貫して監査業務に従事していました。上場会社の他に、金融機関の監査もやっていたので自己査定の監査手続などもしていました。この経験は、独立して融資の支援や財務コンサルティングを行う際に役立っています。」

スタートアップへの転身と挑戦

――監査法人から転職を決意された背景についてお聞かせください。

梶原:シニアになった直後くらいから、監査業務に対して『これは本当に誰のための仕事なのだろうか?』という疑問が芽生え始めたのです。もちろん、監査法人での経験が無駄だったとはまったく思っていません。むしろ、学生上がりの自分が、企業の課長や部長といった“親世代”同然の人たちと対峙しながら監査業務を行うというプレッシャーの中で、多くのことを学ばせていただきました。

シニア1年目を終えたころに、ダニエル・ピンク著「フリーエージェント社会の到来 組織に雇われない新しい働き方」という本を読んで、監査業務だけを続けていると、将来の選択肢が限られてしまうのではないか、仮に監査法人を離れた場合に何も残らないのではないかという漠然とした不安を抱えていました。

また、同じころに株式会社ファーストリテイリング代表の柳井正さんが公認会計士協会のイベントで基調講演をされた際の記事を読み、「公認会計士には、既存の枠を超えた『非』公認会計士になってほしい」というお話しをされていました。公認会計士が数字のチェックをする仕事だけではもったいない、経営者と伴走し経営者のビジョンや目標の達成を支えるパートナーになってほしいという趣旨のお話しでした。

私自身、監査業務は楽しいと思っていましたが、これが本当に自分が究めていきたい道なのかと疑問に思っていました。せっかく仕事をするなら、自分がやり甲斐を感じることができ、誰かから感謝される仕事をしたいと考えるようになっていました。

そして、監査業務以外の仕事にチャレンジしてみようと考え、法人内での部署異動やFASやTAXへの出向を考えてみましたが、どれもしっくりときませんでした。

ちょうどその頃、トーマツ内でスタートアップに関する勉強会がありました。シリコンバレーでアクセラレーターをされている講師の方から、スタートアップがビジョン実現に向けて猛烈に仕事をしているというお話しを聞いて、「自分が求めていた働き方はこれだ!」と思いスタートアップに転職することを決めました。

とはいえ、関西ではスタートアップは多くはなく、探すのに苦労しました。その後転職したスタートアップに出会ったのは偶然で、東京で会計士専門で転職エージェントをされている方が主催しているイベントに参加した際に、「関西でスタートアップへの転職を考えています」とお話しをしましたが、関西では活動されておらず案件はないとのことでした。ただ、その方の大学時代の後輩がスタートアップをされているとのことで、紹介をいただき、結果としてそのスタートアップに転職することを決めました。

試行錯誤しながら行動することで、結果として自分が目指したい道が切り開けたように思います。」

――転職先のスタートアップでのご経験を具体的にお話しいただけますか?

梶原:「スタートアップ では、まさに“会計士”という枠を超えたチャレンジの連続でした。監査法人と違って、スタートアップは本当に多種多様なバックグラウンドを持った人たちが集まっていて、共通言語も常識もまったく違う。

監査法人では、社内で話しをする相手も基本的に会計士なので、ある程度の学力水準や専門知識が担保されていました。コミュニケーションも“前提ありき”で成立していました。

でも、スタートアップではそうはいかない。

だからこそ、意識的に“会計士っぽく振る舞わない”ようにしていました。

自分の専門性を出し過ぎず、相手に合わせて伝え方を変える。これは本当に大切なことで、自分の中でも会計士としての当たり前を一度“アンラーニング”することが必要でした。

正直、プライドを捨てることへの抵抗はありましたし、年収も下がりました。

でも、それ以上にビジョンを実現する一員として、当事者意識を持って動けることに大きなやりがいを感じていました。

入社当初は、経理・財務・人事・労務・法務・総務など、本当に何も整っていないところから一人で立ち上げていきました。

ちなみに最初に行った業務は自分の入社手続きです(笑)。

監査法人では出来上がった試算表や仕訳しか目にしてきませんでしたが、経理業務を通じてどのように試算表が出来上がってくるのか、どのように仕訳を切れば効率的かつ経営管理に役立てられるのかというのを学ぶことができました。また、資金繰り管理や給与計算では一つミスすれば会社が傾く・・・そんな責任感の中で、会計士としての視座も一気に引き上げられました。

そうして業務をこなしていた頃。

CFOへの月次報告の際、「過去の数字はどうでもいい。将来にどのようなアクションをとるべきか話してくれ」というフィードバックを受け、これは今でも強く印象に残っています。それまで“監査目線”で過去を正しく見ることに重きを置いていた自分にとって、企業価値を高めるためにどのような施策を立て、どう意思決定していくのか、どう対策するかという視点の重要性に気づかされた瞬間でした。

経理だけでなく、経営課題にも自ら取り組んでいく姿勢が求められる環境でした。 

監査対応をしながら…月次を締めながら…取締役会の準備まで並行していた時期は、正直ほとんど寝ていなかったですね(笑)。

でも、それくらい密度の濃い時間を過ごせたからこそ、自分自身が大きく変わったと実感しています。」

独立とこれからのチャレンジ

――現在は独立され、会社を立ち上げられたとのことですが、どのような活動をされていますか?

 梶原:「現在は独立してLapisNova(ラピスノヴァ)という法人名で、株式会社と税理士法人を運営しています。

法人名には『成長を目指す会社を支援したい』という想いを込めており、税務を中心に据えながら、社外CFO支援や経理DX支援、IPO支援など、企業の成長を多角的に支援しています。

税理士法人の共同代表は大学時代のゼミの同期で、大学卒業直後に税理士試験5科目に合格し、新卒でトーマツの税理士法人→資産税専門の税理士事務所→独立という経歴を持つ信頼できる存在です。

私たちは、“大きな組織ではなく、密度の濃い少数精鋭の事務所”を目指しており、量ではなく質を大切にしてお客様一人ひとりに向き合うスタイルを大事にしています。

また、私の妻が社会保険労務士として活動しており、将来的には会計士・税理士・社労士が連携したワンストップ型の事務所を実現できればと考えています。

そのほかにも、ありがたいことに複数の専門家コミュニティに参加させていただいております。CPASSもその一つです。

多様なバックグラウンドを持つ方々との対話から新たな刺激を受けるたび、自分も次は“与える側”になりたいという気持ちが強くなりました。これまでに得た経験や学びを、今度は誰かに還元していける“ギバー”であり続けたいと思っています。」

若手会計士へのメッセージ

――最後に、若手会計士の方々へ向けたメッセージをお願いします。

 梶原:「これからのキャリアを考える若手会計士の皆さんには、ぜひ“外の世界”を知ってほしいと思っています。

私自身もそうでしたが、監査法人という組織はどうしても閉ざされた世界になりがちで、ビジネスの世界においては当たり前に行われている仮説を立て、試行錯誤を重ねるような経験は、正直あまり多くはありません。

だからこそ、仮説→失敗→検証→成功というプロセスを経験する機会を沢山体験してみてほしいです。そこには、会計士としてだけでは得られない多くの学びがあります。

もちろん、監査業務が好きで、そこに強いやりがいを感じるのであれば、監査法人でのキャリアは素晴らしい選択だと思います。

でも、もし少しでも違和感を感じているなら、一度外に出てみてもいいと思います。仮に「やっぱり違ったな」と思ったら、また監査法人に戻ればいいだけのこと。チャレンジして、リカバリーできる場所は世の中にたくさんあります。

私自身は、スタートアップに大きな魅力を感じています。経営を間近で体感できるのは本当に刺激的で、たとえば会計士のバッジを一旦置いて、営業をやってみることだってできます。そうやって視野を広げていくことで、結果的に“会計士としての視座”も確実に上がっていくんです。

今いる場所にとどまる必要はありません。いろんな環境を比較・検証して、自分自身で“納得できる道”を選んでください。最初から正解かどうかなんて誰にもわかりません。でも、選んだ道を“正解にしていく努力”を重ねることで、必ず大きな財産になります。」

~fin~

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