公開日:2023/08/28
関西の公認会計士キャリアの考え方(独立・キャリア全般編)
会計士には多様なキャリアの選択肢がある中で、「どのようにキャリアを選べば良いのかわからない」「そもそも選択肢が多すぎて全体像が把握できてない」などのお声を多くいただきます。
さらに、関西でのキャリアについてフォーカスされた情報は少ないように思います。
本シリーズでは、CPASSメンバーであり会計士の転職支援歴17年のキャリアアドバイザー広瀬に、同じくCPASSメンバーで会計士の梶原、CPA会計学院でチューターを務める会計士試験合格者の柳本が、会計士のキャリアについて根掘り葉掘りお聞きした対談の様子をお届けする記事です。
本記事はその第3弾として、「独立・キャリアの考え方全般」について取り上げます。
現在キャリアの選択に悩んでいる方や、今後のキャリアについて基礎的な知識を身につけたい方の参考になりますと幸いです!
INDEX
①対談者プロフィール
②独立するのに最適なキャリアは
③関西で年収1,000万円を目指すなら
④キャリアを考える最適な時期は
⑤将来のキャリアが決まったらやるべきことは
【組織内会計士】
1.大手上場企業
2.ベンチャー・スタートアップ
3.外資系企業
⑥最後に
①対談者プロフィール
広瀬 貴司
CPAキャリアサポート株式会社
株式会社伊藤園、株式会社MS-Japan、株式会社マイナビを経て現在に至る。
公認会計士のキャリア支援歴15年以上、通算で4,000名以上の公認会計士の転職相談に対応。東京・大阪いずれでも転職相談経験があり、マーケットの相違点についても精通。趣味は、投資とスポーツ観戦。
梶原大樹
株式会社LapisNova 代表取締役/公認会計士・税理士
大学在学中の2012年に公認会計士試験合格。有限責任監査法人トーマツ大阪事務所、スタートアップでの管理部長・CFOを経て、2021年に独立。現在は、社外CFO、IPO支援、バックオフィス構築などを行う。趣味は、サウナとゲーム。
柳本篤生
CPA会計学院大阪梅田校チューター
大学在学中の2022年に公認会計士試験合格。東京のBIG4監査法人に就職予定。趣味は読書とボルダリング。
②独立するのに最適なキャリアは
(梶原)
会計士になったからには将来は独立したいという方は多いと思います。独立を目指している方は、どのようにご自身のキャリアを選択するのが良いのでしょうか。
(広瀬)
「これなら絶対成功する!」というキャリアは、環境の変化等によっても変わってくるので無いに等しいと思います。そのため、独立した際に、どのような企業を相手にしてどのような業務を実施するかによって、どのようなキャリアを選択するのが良いかは異なると思います。
例えば、税務をメインで独立を考えた場合、監査法人では対面してこなかった中小企業が主なクライアントになります。また、監査業務だけでは税務実務の経験は十分と言えないことが多いため、税務実務の経験はあった方が良いと思います。
そのため、税理士法人などで、中小企業に対する税務業務やその周辺業務の経験を積んでおくのが良いと思います。監査法人のみの経験で独立した方は、税務実務のキャッチアップはできても、中小企業の経営者や経理の方とのコミュニケーションで苦労しているというお話は意外と良く聞きます。
(柳本)
自分がどのような形で独立するか逆算して考えることが重要なのですね。
ただ、将来的に独立したいと考えていても、自分がどのような業務に興味があるのか分からないという場合もあると思います。そのような場合は、どのようにキャリアを選ぶのがよいのでしょうか。
(広瀬)
そのような場合は、監査法人グループ内での出向制度を利用することをオススメします。特にBig4監査法人であれば、税理士法人、FAS、コンサル、事業会社など出向先は豊富にあることが多いです。出向制度を利用すれば、転職ほどリスクを取らずとも、監査以外の業務を経験することができるため、ご自身が興味ある業務を見つける観点からも非常によい制度だと思います。ただ意外にも、出向制度を利用せずに退職する方も多いため、もったいないなと個人的には考えています。
(柳本)
どのキャリアを選ぶにしても、次に進むキャリアに関する仕事を経験できるというのが、監査法人の良いところだと思いました。監査法人の中でキャリアについてじっくり考えることが重要になりそうです。
(広瀬)
その通りだと思います。監査法人にいても、多様なキャリアを築くことはできます。
ちなみに、梶原さんは監査法人でどのような業務を経験され、独立した現在は振り返ってみてどのように考えられていますか。
(梶原)
私は、監査法人時代は監査業務だけをやっていました。その後、スタートアップに転職しているのですが、まさに出向制度を利用して他の業務を経験すれば良かったと後悔しています。
独立した現在振り返って考えるのは、FASと税理士法人は経験しておきたかったと思いますね。
FASに関しては、財務DDや株価算定業務などは独立しても実施する業務だと思いますが、経験がないとなかなか手が出せないと思います。私はそのような業務の依頼があった場合には、信頼できる他の会計士の方にお繋ぎしています。
税理士法人は、税務実務の経験を積みたかったというのもありますが、特に高度な税務や深い税法理解が必要とされる環境に身を置きたかったというのもあります。独立してから出会った優秀な税理士の方というのは、税法のプロフェッショナルで、当然ですが会計基準・監査基準を武器に業務を行う会計士とは違った専門的スキルが必要と感じています。独立後も書籍や実地で学習はしていますが、税務だけに専念できる期間を持っていれば、より自分の武器にできたのだろうなと考えています。
(広瀬)
なるほどですね。ただ、梶原さんはスタートアップの経験があるというのも、独立してからの強みになっていると思いますが、その点はどのように感じますか。
(梶原)
強みと言えるほどではないですが、マネジメント層としてスタートアップで勤務した経験は独立した現在はとても活きていると思います。
独立後のクライアントは、中小企業やスタートアップの経営者のため、どういう観点でファイナンス、ガバナンスに関して課題を感じているのかや、経営上の悩み相談についても応えることができ、結果として信頼を得られていると感じる場面は独立後多々ありました。
私自身、独立は将来的なキャリアとして考えていたものの、いつ独立したいなどは考えていなかったのですが、プロフェッショナルでありながらも経営者に寄り添える会計士になりたいと考えていたので、スタートアップに転職したことは間違いではなかったと思っています。
③年収1,000万円を実現するキャリア
(柳本)
会計士になったからには、年収1,000万円は目指したいというお声を良く聞きます。どういうキャリアであれば実現できそうでしょうか?
(広瀬)
Big4監査法人であれば、マネージャー以上で年収1,000万円は見えてくると思います。
もっと短期間で達成したいということであれば、コンサルが一番可能性は高いと思います。一方、労働環境はハードなので、それに耐えられるのであればという感じですが。
事業会社においては、会社の規模や上場か非上場か、職種などによって異なってくると思いますが、管理職レベルであれば目指せる水準のように思います。
ただ、会計士としてのキャリアを長期的な目線でみると、年収1,000万円はどのキャリアでも目指せる目標ではあると思います。
(梶原)
スタートアップの場合、会社のフェーズにもよりますが、CFO・CAOなど取締役や執行役員クラスであれば年収1,000万円は十分に目指せる水準だとは思います。もちろん、相応のスキルと経験や取締役・執行役員になるだけの実績と経営者からの信頼を得る必要はありますが。
独立の場合、年収1,000万円を最初の目標にする方が多い印象ですが、非常勤の監査業務や下請けのコンサル業務などを積み上げていけば決して達成できない水準ではないと思います。
(柳本)
年収1,000万円からその先、3,000万円や4,000万円を達成できるキャリアとなるとやはり独立でしょうか。
(広瀬)
監査法人のパートナーで上層部になると達成できるとは思いますが、組織に属しながらとなると大手企業やファームの取締役など経営層クラスでないと難しいと思いますね。年収だけを追い求めるのであれば、おそらく独立が一番高いところを目指せると思います。その分、リスクは大きいと思いますが。
(梶原)
3,000万円や4,000万円を目指すとなると、独立が一番実現可能性が高いと思いますが、容易に目指せる水準ではないと思います。ベテランの会計士の方のお話しをお聞きするとそのような方もいらっしゃるようですが、専門性・難易度の高い業務をされていたり、組織化して規模を拡大されている方が多いように感じます。いずれも、それなりにリスクを取られている結果だと思いますね。
(柳本)
リスクとリターン。世の中上手いことなってるんですね。
④キャリアを考える最適な時期は
(柳本)
私はまだ会計士試験に合格したばかりなので実感が湧かないのですが、将来のキャリアについてはいつ頃から考えることが多いのでしょうか。
(広瀬)
修了考査に受かってシニアに上がるぐらいにキャリアについて考え始める人が多いと思います。会計士の資格を取り、先輩も辞職していき、今後の人生について考え始める時期がその頃ですね。スタッフ1年目、2年目は仕事が忙しく、そこまで考える余裕はないようです。
(梶原)
私の監査法人時代の同期も、修了考査後に一定数が監査法人を去っていたと記憶しています。ただ、例年に比べて退職する人は少なかったと思いますが、出向している人は多かったと思います。なので、結果的に修了考査1、2年後には監査業務から離れて次のキャリアを歩んでいる方が大半だったと思います。
(柳本)
監査法人でマネージャーまで経験した方が、より責任ある立場での業務経験を積めると思うのですが、マネージャーで転職する方は少ないのでしょうか。
(広瀬)
マネージャーでキャリア相談に来られる方も一定数はいらっしゃいますね。最近では、パートナー昇格は厳しいと感じ、今後のキャリアについて相談に来られる方が多いように思います。
しかし、監査法人のマネージャークラスになると年齢に比較して事業会社などと比べると年収水準が高いことが多いため、家庭を持っている方は年収面の条件がネックとなり、そのまま監査法人に残る選択をされる方や、準大手の監査法人に転職される方が多いですね。近年ですと、準大手に行く場合は、年収は逆に上がることもあります。
(梶原)
マネージャーで監査法人以外に転職することはできなくは無いと思いますが、特に条件面では妥協しないといけないことが多いということですよね。ただ、監査法人は人手不足などから業務量が増えて労働環境として厳しくなっているとも聞くので、事業会社に転職して、ワーク・ライフ・バランスを取りながら次のキャリアを歩むというのも一つの手ですよね。
⑤将来のキャリアが決まったらやるべきことは
(柳本)
将来どういうキャリアを歩みたいか、方向性が明確になった場合はその後どのような行動をしていけばいいでしょうか。
(広瀬)
まずは、実際に目指すキャリアを歩んで働いている人から情報収集してみるのが良いと思います。直接コンタクトを取ったり、知人経由で紹介してもらったりして、「実際のところどうなんですか?」と聞いてみるのが良いと思います。実際に働いている人の生の声を聞いてみるのが、一番イメージしやすいと思いますし、実体験を聞けるので、転職などした後に想像していたのと違うということも無くなると思います。
あとは、我々のようなエージェントと相談してみるというのも良いと思います。色々な方をサポートして、成功も失敗も見てきているので、エージェントを上手く活用していただくのが良いと思います。
(梶原)
先程、FASや税理士法人を経験しておけば良かったというお話しをしましたが、私の反省として、監査法人外の会計士との繋がりやエージェントの方とお話しした経験がほとんどなかったことも良くなかったなと考えています。
キャリアについて考えていなかったということもありますが、会計士に多様なキャリアがあるということ自体を知らなかったというのもあります。これは今思えば非常に勿体ないことをしたなと思っています。
少し宣伝っぽくなってしまいますが、CPASSでは会計士交流会や各種イベントを定期的に実施しています。このような場に足を運んでいただいて、色んな場で活躍されている会計士の方と出会うのは、今すぐ転職などを考えていなくても貴重な気付きを得られたりすることもあると思います。運営しながら、「自分が監査法人時代にこのような機会があったら良かったのに」と考えています笑。
⑥最後に
本編をお読みいただきありがとうございました。
第3弾である今回は、独立・キャリアの考え方全般について取り上げてきました。
独立については、その方の志向により千差万別、まさに自由自在です。だからこそ、どのようなキャリアを歩んで、独立するかを考えるのは難しいと思います。
独立に限らず、キャリアを考えるに当たっては、ご自身がどういうことをしたいか、どういう環境に身を置きたいかを自己分析することが非常に重要です。
CPASS関西では、随時キャリア相談を受け付けておりますので、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。
長年会計士のキャリアに携わってきた広瀬と、ベンチャーを経て独立した会計士の梶原、上場会社で経理を経験した後に独立した岩橋など、実体験に基づいたアドバイスが可能である点が私達の強みです。
キャリア相談は下記よりお申し込みください。